2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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潮平芳和氏(以下、潮平):今日、本当にここにお集まりの海外特派員の皆さま、市民の知る権利とジャーナリズムの発展のために日々戦っている皆さまと貴重な時間を共有できることを嬉しく思います。こういう場を設定していただいたことに感謝申し上げます。
武富さんが本当に沖縄県民の怒り、苛立ち、本当に悲しい思い、全ての思いをほとんど喋り尽くしたので、このまま連名で会見を済ませてしまおうかという気がしないでもないわけですが(笑)、しばらく武富さんとかぶらない形で意見を述べさせていただきたいと思います。
記者会見といえば、良いことをしたか、あるいは悪いことをしたか、どちらかの場合に記者会見することが多いのだと思いますけれども、琉球新報も沖縄タイムスも権力を監視するという当たり前の活動をしていて、こういう場で記者会見をせざるをえない。このことは何を意味するのでしょうか?
ここにお集まりのジャーナリストの皆さまがまさに心の中で思っているように、この国の民主主義、表現の自由、言論の自由は、やはり危機的な状況にあるのかと思います。
今朝の紙面を沖縄から持ってまいりました。安倍首相が公明党の山口代表に対して今回の報道圧力問題を陳謝したという記事。これは共同電ですけれども、それで一面トップを飾っております。
安倍首相がこの段階で陳謝したことは半歩前進と言えなくもありませんが、私はタイミングと場所を間違えていると思います。
なぜ問題の発覚後、すぐに国権の最高機関である国会で陳謝しなかったのか。あるいは1億2千万の国民の前で、目に見える形で陳謝しなかったのか、甚だ疑問であります。
潮平氏:何か知事選挙への影響を考慮して陳謝したという話も伝わってきますが、自分の党の議員が報道機関に圧力をかけたことについて反省が二の次なのか、そういう意味で大いに疑問であります。
今回の自民党勉強会における一連の報道圧力発言は、事実に基づかない無責任な暴論であり、それはもう断じて許せないという思いでいっぱいであります。
議員の1人が「マスコミを懲らしめるには広告料が無くなるのが一番だ」、そして「文化人や民間人が日本の経団連に働きかけてほしい」と、そういうふうに求めた発言は、政権の意に沿わないメディアは兵糧攻めにして経営難に追い込み、そのメディアの表現の自由、言論の自由を取り上げるという、これはもう言論弾圧そのものだというふうに考えております。
このような言説を目の当たりにすると、この国はもはや民主主義国家をやめて、全体主義の国に一歩一歩進んでいるのか、そういうふうな懸念を持たざるを得ません。
「マスコミを懲らしめる」という発想自体が、日本国憲法の尊重、遵守義務にも違反し、二重三重の意味で今回の問題は憲法違反だというふうに考えます。
別の議員が「沖縄の2紙が沖縄の世論をゆがめている」「世論が左翼勢力に乗っ取られている」という主旨の発言したようですけれども、沖縄の新聞がもし世論を弄ぶような思い上がった新聞だったら、とっくに県民の支持を失い、地域社会から退場勧告を受けていたことでしょう。
地域住民、読者の支持無くして新聞は成り立ちません。持続可能な平和と環境を創造する新聞、社会的弱者に寄り添う新聞が驕り高ぶることなどあろうはずがありません。
潮平氏:少しだけ歴史の話をさせていただきます。1940年に、沖縄では3つの新聞が統合し「沖縄新報」という新聞が設立されました。沖縄新報は国家権力の戦争遂行に協力し、県民の戦意を高揚させる役割を果たしました。
そのことによって、おびただしい数の住民が犠牲となりました。沖縄の新聞にとって、そういう悲惨な末路を招いたことは痛恨の極みであります。
皆さまのお手元に英訳した今回の共同抗議声明があると思います。その中にもあるとおり、戦後、沖縄の新聞は、戦争に加担した新聞人の反省から出発し、戦争につながるような報道は二度としないという考えが報道姿勢のベースにあります。
琉球新報についていえば、一貫して戦争に反対するとともに、過酷な沖縄戦や、人権を脅かされ続けた戦後の米軍支配の経験も踏まえ、沖縄にも自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値を日米両国民と同じように適用してほしい。平和憲法の恩恵を沖縄にももたらしてほしい。
そういった主張、論説を続けておりますし、その精神で日々の紙面も作っております。また、軍事偏重の日米関係ではなく、国民の信頼と国際協調の精神に根差した持続可能な日米関係を目指すべきだと主張しています。
こうした主張をすることが、どうして世論をゆがめていることになるのか不可解ですし、沖縄2紙が偏向呼ばわりされるのは極めて心外であります。
半分ぐらいはしょりますけれども、結論的なことを一言申し上げれば、今回の報道圧力問題が、この国の民主主義の終わりの始まりではなく、この国の表現の自由、言論の自由を再生強化する再出発の機会になればというふうに考えています。
そのために海外メディアの皆さまも一緒に戦ってくれたら幸いであります。予定よりもはしょりますけれども、以上です。
記者:安倍首相が国民全体に、何らかの形で謝罪すべきだというふうに思っていらっしゃるのでしょうか? そして今回の問題ですけれども、日本社会とメディア、そして政府との信頼関係が非常に揺るがされたと思うのですが、日本のメディアにおきまして、時々日本のメディアの方々は政府と近すぎると思うこともありますでしょうか?
潮平:まさに謝罪すべきだと思います。確かに国会で答弁するときは総理大臣の立場でありますけれど、同時に自民党総裁でもあるわけですから、都合のいいときは自民党総裁として語って、都合の悪いときは語らないという、使い分けはやるべきではないと思います。
これは誰が見ても自民党の議員が問題発言をしたわけですから、そういうことを本当に問題だという意識があるのであれば、本人たちから話を聞いて諌めるのが党の総裁としての責任ある態度ではないかと思います。
政府とメディアが近すぎるのではないかという質問ですね。これは皆さんもまさに東京でお感じになっていることだと思うので、私から改めて言うことがないのかもしれませんけども、ちょっと違った視点で申し上げれば、在京のメディアは確かになかなか政権与党批判、政府批判を真正面からやることは最近少なくなっているというふうに私も感じます。
集団的自衛権の問題、TPPの問題、あるいは原発政策の問題、在京のメディアを見ると賛否が真っ二つというふうに見えます。しかし、ここで私はあえて強調したいのですが、東京のメディアの常識が日本のメディアの常識ではないということです。
日本には50以上の地方の新聞、地方紙、ブロック紙という新聞社がありますけれども、その仲間たちのスタンスは集団的自衛権の問題にしろ、TPPにしろ原発政策にしろ、大半が批判的です。
これ以上は申し上げませんが、ぜひ海外のメディアの方々には、東京の視点だけで日本政府を評価する、政党を評価するということは、今日を機会に少し改めていただければなあというふうに考えます。
記者:中東のメディアです。もっと地方紙を読むべきだということですが、恐縮ですが、御社の2つのサイトを見てもあんまり英語の記事がないというのが大きな問題です。我々の予算も限られておりますので、翻訳を全部できませんので、もっとたくさん他の言語のものを載せてください。
で、議員が広告料収入をとかって言ってるんですが、実際にそういうような広告をやめるような企業が出てくるということは心配しておりますでしょうか? 財政的に何か困難に陥るを心配していらっしゃいますでしょうか?
そしてまた同時に、反対攻撃というのでしょうか、考えてらっしゃるのでしょうか? 多くの日本の企業が、実際にそういう政治家にも献金しているわけですけれども、「そういう献金をやめてください」というような、そういうキャンペーンを張るとかは考えていらっしゃるんでしょうか?
武富和彦氏(以下、武富):今回の件に関する反応という部分でいうと、少なくとも沖縄県内の企業からは、自民党の国会議員がいうようにスポンサーを降りるような動きとか、広告収入で圧力をかけるという動きは一切ありません。
今日ここに来る前に空港で、沖縄県内では比較的大きな会社の社長さんとたまたま待合室で一緒だったんですけれど、「頑張れ」と。「潰されるんじゃないぞ。負けるな」ということで、むしろ激励の言葉をもらいました。
まあ、そういう意味で言うと、こちらかも冗談で「潰さないでくさいよ」と、「潰させないでくださいよ」と言うんですけれど(笑)、「それは任せとけ」と。少なくとも今日会った経営者の方はそういう反応です。
武富:実際会社のほうにはメールや電話、FAX等でいろいろな反応があります。普段からいろんな反応はあるんですけれども、やはり今回の百田発言、国会議員発言を受けて、そういう会社にかかってくるメール、反応が増えました。その7割から8割は激励です。
もちろん「売国奴」とか、「非国民」とか「日本から出て行け!」という、そういう過激な「潰れろ」に近いような非難のメールもありますけれど、そういうのは、今回の問題が起きる以前から、一定程度ありましたので、そういう批判的な声が急に増えたということはなく、むしろ応援する声が増えたという感じです。
実際30日に、沖縄から離れた神戸の方がわざわざ飛行機で会社まで訪ねてきて、「本土のほうにこういう無知な先生がいまだにいるのに驚いている」と。要するに百田さんと国会議員の方ですけど、「そういう人たちばかりじゃないぞ」ということで。
神戸の商店街で、沖縄の新聞を購読しようという運動を始めたそうです。で、実際数十部の購読申し込み書類を届けてくれました。
そういう意味でいうと、かなり報道を威圧するような、沖縄の新聞を潰したほうがいいというような、攻撃的な過激な声もあるんですけれど、現時点での沖縄県内での受け止め方、読者の方々、県内外の受け止めでいうと、百田さんや一部国会議員の方の思惑とは反対の方向に動いているのではないかという印象です。
記者:オーストリアの新聞の者です。東京ではよく話題になっているのですが、政府が各報道機関に「できるだけ中立な報道をするように」という依頼をしているわけです。沖縄でもそういうような「中立の報道を」というような指導というのか、依頼というのは来ているのでしょうか?
潮平:意外と申しますか、沖縄の自民党の地方組織の幹部が先だって、辺野古新基地問題で、賛成と反対半々と言わないまでも、もっと賛成意見を載せて欲しいと、そういうふうな指摘をしておりました。
その点については、我々も真摯に受け止めたいと思っております。必ずしも、賛否半々の意見載せるのが公正中立ということではなくて、世論の8割が反対をしていると。各種選挙でも辺野古新基地に反対する候補者が全勝するという状況の中で、社会を映すというふうな観点に立った場合、紙面でやっぱり反対意見が多めになるのは仕方がないと思います。
だからといって賛成意見を無視する、軽視するという立場は取りません。可能な限り声なき声、少数意見も救い上げるような、そういう新聞でありたいと思っております。
武富氏:一言だけ付け加えさせてください。今沖縄県民の間で「沖縄を植民地扱いするな」という声が近年強まっております。
ここにおられます海外特派員の皆さまにも、沖縄の近現代の歴史に思いを馳せていただいて、沖縄県民がなぜそのようなことを言うのか、歴史を、教訓を導き出すことで、皆さまの認識をより深いものにしていただければなあというふうに思います。
それからお手元に配った資料で、3ページから4ページにかけて、安倍首相が唱える「積極的平和主義」。これが沖縄県民からすれば、いわゆる平和学でいうところの「積極的平和という概念」と似て非なるものだと。
沖縄県民としては、積極的な平和、構造的な暴力がない平和を望んでいるというようなことを書いてありますので、それをまた後ほどお読みいただければというふうに思います。
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