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北川進 京都大特別教授 ノーベル化学賞受賞会見(全4記事)

「見えてるものが重要や」というやり方は終わっている ノーベル賞・北川進氏が語る「無用の用」の意義【全文3/4】

2025年のノーベル化学賞を受賞した北川進 京都大特別教授の記者会見の模様を全文書き起こしでお届けします。

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「チャンスは祈るもんじゃなく、自分で作りあげるもの」

阿部俊子氏(以下、阿部):北川先生、文部科学大臣の阿部俊子でございます。このたびのノーベル賞の受賞、誠におめでとうございます。

北川進氏(以下、北川):ありがとうございます。お忙しいところ電話していただいて。

阿部:ありがとうございます。昨年もお会いさせていただきまして、お話をさせていただきました。今年ノーベル賞に2人の受賞者が出ましたこと、我が国の学術研究の推進の高さ、世界的に国内外に示すものでございますので、本当に誇りに思います。本当に先生、おめでとうございます。

北川:ありがとうございます。

阿部:先生、研究者を志す若い世代にぜひメッセージをお願いいたします。

北川:はい。先ほどもこの記者会見で言ったんですけども、やっぱりチャンスっていうのは、祈るもんじゃなくて自分で作り上げるものなんです。

それは、自分の周りの教育していただいた方とか、学校における環境とかが作っていくので、ふだんからそういうことを拒否せず周りの人と協働しながら、自分を作り上げていっていただきたいと。私はまさにそういうふうに、周りに恵まれて進んできました。そういうことです。

次世代を担う研究者を育成するために、国が支援すべきこと

阿部:ありがとうございます。もう1つ、我が国の次世代を担う研究者を育成するために、私ども文部科学省がしなければいけないこと、支援できることが何かを教えていただけますか?

北川:もちろんみなさんがおっしゃるように、基礎研究をちゃんと重視する。基礎研究というのは息の長い研究ですね。それをぜひ大きくやるような施策をお願いしたいんですが、まず第1に若い人の研究時間を確保するような施策が必要だと思います。

私は今研究担当理事をやってるんですけども、非常に感じるのは、研究者がサポートを受けて研究するという形があまりできていない。研究者は、何から何まで全部やる必要があるんですね。だから研究支援人材をしっかりとサポートして、大学の中に増やしていく。そういう政策を取っていただくと、若い人たちも非常に生き生きと研究できるんじゃないかと思ってます。

阿部:分かりました。しっかりと先生にご指導いただきながら、私どもも若手研究者を支援するためにがんばってまいりますので、これからもぜひよろしくお願いいたします。

北川:はい、ありがとうございます。今日はありがとうございました。

阿部:おめでとうございます。

ブレイクスルーの瞬間は?

司会者:ご協力いただいてありがとうございます。ではご質問の方、中央の朝日の方。後ろからマイクが参ります。

記者6:朝日新聞のツボヤと申します。今日はおめでとうございます。1つおうかがいしたいんですけれども。先ほどは、このMOF(金属有機構造体。PCPとも呼ばれ、気体を穴に取り込んで分離・貯蔵できることから、環境やエネルギー問題の解決に役立つとして注目されている)を、開発するのに30年以上かかったというお話でした。

この開発のブレイクスルーの瞬間はどういう状況だったのか、どのタイミングが先生にとって「これはできるぞ」という思いを持たれた瞬間だったんでしょうか?

北川:それは非常に明確でして。1992年なんですけど、私が近畿大学にいた時に、ある結晶材料を実験していたんですね。ところが、近畿大学ではまだその構造を決めるコンピューターやプログラムがなかったので、京都大学に来てたんですよ。

それで、朝8時前に来てやると、大型計算機センターがガラガラなので、そこに非常に巨大なデータを入れていくんです。計算しておかしいっていうので、また何回かやっていくんですけど、午前中早いとどんどん仕事がはかどるのに、昼ぐらいになってくると、みなさん京大の研究者がどんどん出てきてやり出すと。計算機の速度は速いんだけど、入力で(時間が)かかるんです。

今の万博みたいなもんです。入れないんです。そうすると、一旦(データを)入れたら1時間以上、2時間以上待つ必要があるんです。その時に、中途の構造を見たら、きれいに無限の穴が空いていて、中に有機の分子が入っていたんです。

私は今まで、穴が開いていない密度の高いものを作る努力をしてたんです。電気を流すとかして。ところが、それを見た時にこれはおもしろいというのが、ピーンと来たかなんか分かりませんけど、非常に興奮したことがあります。爾来(それ以来)、92年から97年に成功するまで、ずっとやり出したという流れです。

記者6:ありがとうございます。その時やっぱりビビッと来たというんですけど、(ノーベル賞を受賞された)今思うとどうですかね。当時のことを振り返ると、どんなふうに思っていますか。

北川:あれは完全にターニングポイントなんです。やっぱりあの時にやっておいて良かったなと思います。だから自分の感性を信じるのと、その時は「絶対にそんなの壊れる」ってみんな言ってましたから。それにチャレンジするということと、やっぱり興味というものが融合して、私自身の方向性を支えたんだと思います。

記者6:ありがとうございます。

基礎研究に必要な予算を切れ目なく確保することが重要

司会者:はい、ありがとうございます。では、今また質問のところ大変申し訳ないんですけれども、続いて、城内科学技術担当大臣から電話が入る予定になっております。ちょっと質問を中断させていただきます。

城内実氏(以下、城内):科学技術政策担当大臣の城内実でございます。この度は、北川先生、ノーベル化学賞の受賞誠におめでとうございます。

北川:ありがとうございます。

城内:(一部音声不良)今回の多孔性材料は、大変すばらしい発見であるというふうに認識しております。実社会に広範に変革をもたらすものだとうかがっております。

このようなすばらしい発展を、今後も生み出していくためには、やはり何と言っても、基礎研究に必要な予算を切れ目なくシームレスに、継続的に中断することなくしっかり確保することが、私は極めて十分であると思っておりますので。科学技術担当大臣として、私は多分もうすぐ変わると思いますが、後任の者にもしっかり引き継ぎをしたいと思います。

そして、先ほど冒頭からの記者会見を拝見させていただきましたが、先生は辛いことがあっても諦めずに継続して挑戦することが大事だと。そして、京都大学の福井先生の一門として大変研究環境に恵まれたこと、また、チームプレイが重要だといったこと、さらには私も多少関わっておりますが、スタートアップとの役割分担が大事だということをおっしゃいました。

本当におっしゃったとおりだと思います。たまたま今日、スウェーデンの(エリック・)スロットネル民生大臣がお越しになりました。ノーベル賞とは直接関係ない方ではありますけれども、なんとなく今日会談して「あれ、なんかもしかしたら化学賞を取れるかな」という予感がございまして、本当に良かったと思います。

私は国際頭脳循環の担当もしておりますが、科学技術外交もしっかりこれまでやってまいりましたが、何か先生の方で、国際頭脳循環、あるいは外国の学者さんとの協力で何か感じたこと、こうした方がいいということがありましたら、一言おっしゃっていただいていただければ幸いでございます。

研究に取り組む若い人のためにインセンティブを

北川:いろいろ熱意のある施策をおっしゃっていただきまして、ありがとうございます。まさにその通りで。国際的に循環する場合に、今我々が一番困ってるのが、まあカレンシーのレートの差か知りませんが、外国と日本の給料の差が激しいんですね。

やっぱり若い人が非常にインセンティブを得られるのは、時間をあげることと、ちゃんとした研究をやって成果を出した人には、ちゃんと報いてあげることが今一番重要ではないかと思っています。ぜひそういう制度についてもお考えいただくと、非常にありがたいと思います。

城内:はい。先生、ありがとうございました。我が国の研究力の低下というようなことも問題視されておりますので、海外そして、日本とその彼我の格差をしっかり埋めていく。そして、先生がおっしゃったように、成果がしっかり出せるように、そして出した場合はそれに対して報いができるようにしっかり取り組んで参りたいと思いますので、今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。

と申しまして私からのお祝いの挨拶とさせていただきますが、記者のみなさん、すみません。これにて私からの中断は終えますので、どうか受けてください。以上です。本当に先生、おめでとうございます。

北川:ありがとうございました。

ノーベル賞受賞者が化学者を目指したきっかけ

司会者:すみません、では質疑に戻りたいと思います。いかがでしょうか? では一番前の方。その手を挙げた方。

記者7:朝日新聞の●●と申します。この度の受賞おめでとうございました。先生が化学者を志したきっかけについて教えていただけますか?

北川:化学をですか? 自然科学は好きでして、中学から高校に行くに従って、やはり自然科学はおもしろいということと。

あとは化け学系を志したというのは、やはり授業で言えば覚えることが多かったんですけども、やはり物質がこう出来上がるというのが、要するに今で言えばナノスケールが構造を持っているということですよね。それがあるというのは非常に、ワクワクすることでした。そういう意味で化け学系を志しました。

「無用の用」は大原則

記者7:先生のご研究成果は「無用の用」という言葉で表現されることも多いかと思います。この言葉について、今お考えになっていることを教えていただけますか?

北川:いや、もうそれはもうまさに「無用の用」です。先ほど言いましたように、まったく穴の開いていない密なものは非常に安定なんです。安定なんですけども、穴が開いてくると壊れますよね。穴と考えると無用なんです。

ところが、その穴に原子や分子を入れ込んで貯めたり、いろいろ変えたりしていく。そう考えると役に立ちますよね。すなわち、考え方を1つ変えるだけで役に立つんですね。

だから今、世の中も「見えてるものが重要や」「これで行こう」というふうにやることは、私らからしたら、もう終わってるじゃないのという感じです。だから、この無用の用というのは、非常に大きな我々の原則になってます。

記者7:ありがとうございます。私から最後に、先ほど学会で発表されて、当初は懐疑的な見方が多かったということですけれども。その後、風向きが変わってきたと言いますか、認められるようになってきたのはどういうことから。いつ頃からそのように感じられたんでしょうか?

北川:それは厳密には分からないんですけども。本当にもう徐々に、5〜6年というか、97年に出してから、(オマール・M・)ヤギーさんも98年に出してるので、その後、2000年ぐらいにかけてポロポロ出てきて、もう2000年から2005年ぐらいに急激に出てきました。だから、10年以内に仲間がぎゅっと増えてきたという流れですね。だから今はもうものすごい競争です。

記者7:ありがとうございました。

※本記事はAIによる自動書き起こしデータをもとに、編集部が内容を確認・編集しています。

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