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北川進 京都大特別教授 ノーベル化学賞受賞会見(全4記事)

思い出されるのは学会で叩かれ、汗と涙で過ごした記憶 ノーベル賞・北川進氏が語る、研究に向き合う姿勢【全文2/4】

2025年のノーベル化学賞を受賞した北川進 京都大特別教授の記者会見の模様を全文書き起こしでお届けします。

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ノーベル賞受賞の電話を受けた際に考えたこと

司会者:では続いていかがでしょうか? (記者を指して)ではお願いします。

記者3:京都新聞のササキと申します。この度はおめでとうございます。受賞の一報を聞かれた時の状況について北川先生におうかがいします。お仕事を片付けられている時に電話を受けられたということでしたが、その時はお1人でおられたんでしょうか?

北川進氏(以下、北川):はい、そうです。

記者3:電話を受けられてまず率直にどんなことを思われたのかと、受賞のことを最初に伝えられたのはどなただったんでしょうか?

北川:電話を受けた時に頭に巡ってきたのは、どう答えたらいいのか。真っ白には(なって)なくて、どう答えたらいいのかなという。非常にうれしいんですよ。感激するんですけれども、みなさんどういうふうに言っていたんだろうと思いました。

だけど委員長が権威的じゃなくてフレンドリーな話をされたので、打ち解けられて、ちゃんと自分の感謝の気持ちと、今までやってきたことはやっぱり報われたんだなという考えを持ちました。

電話を受けた時は「フェイクじゃないか」と疑った

記者3:受賞の旨を最初に伝えられたのはどなただったんでしょうか?

北川:向こうの委員長の……。発音が難しいのでまたあらためて確認してください。選考委員長です。電話がかかってきた時、やはり非常に大きな賞だし、名誉あるものだから、本当かなと思ってしまいました。フェイクじゃないんだろうかと。

ところが今日ノーベル委員会が発表した3人の委員長を含めて、専門家が2人発表したんですけども、その人と交代してちゃんとお祝いの言葉をいただいたので「あ、これは本当だな」とだんだん思えてきて。そこでちょっとリラックスして、感謝の言葉を述べた次第です。

記者3:電話はどれぐらいの時間なんですか?

北川:会話時間は20分ぐらいです。というのは、いろいろ決まりごとがありますので、それについての説明を受けました。

記者3:受賞の報告を最初にされたのはどなただったんでしょうか? 北川先生が受賞をされたということをご自身の口で……。

北川:それはですね、私は研究担当理事なので、大学のルールをしっかり守る必要があります。

(会場笑)

そういう意味で、最初は高等研究員の部長の谷川さんに話をしに行きました(笑)。

一番感謝しているのは家族・妻

記者3:一先ほど環境に恵まれたとか、ご友人やご家族に恵まれたというお話は先ほどされていましたが、一番感謝を伝えたい方はどなたでしょうか?

北川:もちろん家族、妻ですね。もちろんコラボレターっていうか、今では同僚と言っていいのか、(そういう人たちが)教授たちでいます。で、(その人たちにも受賞の話を)本当は言いたいんですけど、その委員長に「1時間後に発表するから絶対に言わないでくれ」と言われたんで(笑)。

(教授たちに隠れて)言ったら(委員長に隠れて言ったことが)伝わるかなと思ってちょっと心配になって言いませんでした。本当は感謝してます。

司会者:(記者を指して)では続いてお願いします。

ターゲットに対して“デザインして作る“化学

記者4:毎日新聞のナカムラと申します。先生にお尋ねなんですけれども、今回の受賞決定にあたって、その評価として、脱炭素などの人類の最も重大な課題を解決するのに貢献するだろうと触れられていたかと思います。これらを踏まえた時に、今後先生の研究がどのように伸びていってほしいか、どのようにお考えでしょうか?

北川:私はこの間ずっと、この材料というのは気体に非常に貢献しつつあるんだと。要するに気体を捉える、そして混合ガスを分離する、そしてそれを反応変えていくという、そういう一環の化学に非常に貢献するものということで(そういう意味で)今言ってます。

特に空気ですね。空気はご存知のように、メインのコンポーネントが酸素と窒素とでできてるってみなさん習ったと思うんですね。

酸素は原子で何かというとOですね。それから窒素はNですね。それから水蒸気、H2Oがあります。ということは水素Hもあります。だからHON、それからCO2。今言われてる●●。

これって何を作ってるかというと、例えばタンパク質。我々の体のメインコンポーネントを作っています。それから食料。それから燃料。かなりのものにかかわっているんですね。

ところが空気を考えてみたら、どこにでもあります。差別しないです。小さな国でもいくらでも空気は取れます。ということは、空気というのは目に見えない金なんですね。インビジブルボールと言うんです。

これのコントロールをしっかりやろうとすると、穴の開いた多孔性材料が必要なんです。特に従来の材料だけではできない。もっと特化した優れた材料が必要という意味で、我々はデザインして作ると。

この化学は、ターゲットに対してデザインして作る化学なんですね。それができるということで、これからは気体の時代だと考えていますけども、期待に向かうと思います。

化学は否定するものではない

記者4:追加してお尋ねなんですけれども、SNSの急速な発達などもあって、化学を否定するような動きも世界各地で見られているかと思います。化学者として思われていることであったり、お伝えしたいメッセージなどがあれば教えてください。

北川:やはり化学っていうのは、発展してる歴史を見ると、決して否定するものではない。それをいかに使うかというところで、間違った使い方もあります。そういう意味でノーベル賞が生まれたんだと。

だから、私は化学に対して非常にオプティミスト、楽観しています。ますます化学者が貢献していく必要があるんやないかと思ってます。

ノーベル賞受賞の予感は特になかった

司会者:(記者を指して)では、続いてその後ろの手を上げている方、お願いいたします。

記者5:日本経済新聞のアオキと申します。受賞おめでとうございます。2点あります。ノーベル賞の候補としては、しばらく前から長いこと(お名前が)上がっていらっしゃったと思うんですけども、ここにきて受賞するみたいな、最近になってその予感が高まってきたみたいなことはありましたでしょうか?

北川:事の発端はですね……。10年以上前かな。当時のトムソン・ロイター、今のクラリベイト・アナリティクス……。トムソン・ロイター引用栄誉賞というのをいただいたんです。

それはもう青天の霹靂で、そんな賞があったかどうかと私もわからなかったんですけど。そこから毎年ですねだからもう年中行事みたいなもんで。

この学術はどこまで広がってきてるのかとかは、やはり自分が一番よくわかっていますから。最近はシンガポールで学会がありましたけど、1,000人集まるようになったんです。だから非常に影響力が高まってきたっていうのはわかっています。ただ、この化学がちゃんと認められるかどうかは、なかなか私もわかりませんでした。

というようなことで、特に今年がどうかというようなことは思っておりませんでした。

記者5:わかりました。ありがとうございます。

材料が社会に広がっていくために乗り越えなければいけない課題

記者5:もう1点、混合エネルギーだったり環境だったりところで、あらゆるところで期待されていますが、社会により広がっていくために、何か乗り越えなければいけないもの、課題になってるところみたいなもので分析されているものがあればお願いします。

北川:いろいろあるんですけれども。私の研究室から、株式会社Atomisというスタートアップを作った樋口さんという方がいるんですけれども、スタートアップを作ることによって、非常に展望が見えたなと思います。

どういうことかっていうと、私の材料はいろいろな企業の方々に使ってもらってやっとわかるんですよ。「1kgください」と言われても、研究室では基礎研究で1gを作らないような研究をやっています。

だからとても伝わり方が遅かったんですけども、今世界で目に見えるだけでも40以上のスタートアップができています。そういう意味で、この材料を使おうという人がそこにコンタクトしていくということで、非常に進んでいくと私は思ってます。

私はじゃあ何をしたらいいというかと言うと、まさにキュリオシティーです。今までできないこと、それから誰もが考えても「これは絶対無理だ」というようなことにチャレンジして。それを実現していくことによって。また新たな発展があるんじゃないかと今思っていて、そういう基礎研究やる人と、その応用から実用に持っていくところとのタイアップですね。そこをうまくオーガナイズしていく必要があるんじゃないというふうに思っています。

記者5:ありがとうございます。

「今日の受賞につながった」と思い出される苦労

司会者:では、お願いいたします。

記者6:読売新聞のシンタニと申します。本日はおめでとうございます。北川先生にお尋ねします。研究で、たくさんご苦労されてきたということをおっしゃられていました。今日の受賞に際して、思い出した苦労、「こういう苦労をしたから今日の受賞につながったな」と思い出されるような苦労があれば、具体的に教えていただければ幸いです。

北川:ノーベル委員会で紹介していただいた、1997年にガスが可逆的に吸着する、入り込む。で、壊れないという論文を出して、アメリカでのサマータイムに権威者が集まってやる会があるんですけど、そこで発表したら、「そんなの本当か」という感じで、非常に叩かれました。あれが1番苦労した時です。

私(その時は)そういう学会初めて行ったので、(学会は)2日あるんですけど、部屋の予約もしてなくて。取れた部屋が桟敷っていう1番上の狭い狭い部屋で。いつも涼しくってクーラーの入らない地域なんですが、その時は異常に暑かったんです。だからもう温室の中にいる気持ちに。

当日ダメだって言っていっぱい叩かれて。で、その熱いところで涙か汗かわからない(ものが出て)という、そういう経験もしました。

だけど、それ(研究結果)は本当なので。我々がやった実験においてしっかり見つけたことなので、それに対しては一切揺らがらず、さらにそれを進めていこうという気持ちでいました。

受賞したもう1人のヤギさん(オマール・M・ヤギ氏)も、アメリカの中で「そんな材料は使えるのか」と(叩かれたと)いうことで、相当いろいろ苦労したというのは聞いたことがあります。

記者6:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。ご質問の途中ではあるんですけれども、今から阿部文分科学大臣のほうから電話が入る予定になっております。いったん質問は繰り返させていただきますので、ご了承ください。


※本記事はAIによる自動書き起こしデータをもとに、編集部が内容を確認・編集しています。

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