ノーベル賞・坂口志文氏が語る「制御性T細胞」の発見　現代医学・医療の発展に大きな影響を及ぼした研究の軌跡【全文1/3】

制御性T細胞なしに現代の医学・医療は語れない

司会：みなさま、本日はお忙しい中、多数お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。私は本日の司会を務めます、広報担当理事の竹村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

ただいまからノーベル生理学・医学賞を受賞されました、本学の名誉医学博士・研究センター特任教授の坂口志文先生の記者会見を行わせていただきます。記者会見には、坂口先生に加えまして、熊ノ郷淳総長に同席いただいております。

それではまず、坂口先生ご所属の免疫学フロンティア研究センター総務係長の村部幸子さんから、花束の贈呈をお願いしたいと思います。あらためまして、まずは大阪大学総長の熊野よりご挨拶させていただきます。

（花束贈呈・写真撮影）

司会：先生お願いいたします。

熊ノ郷淳氏：本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。この度、本学の免疫学フロンティア研究センターの坂口志文先生が、ノーベル生理学・医学賞を受賞されましたこと、ご報告申し上げます。坂口先生におかれましては、大阪大学を代表しまして、心よりお喜び申し上げます。大阪大学としましては、本学在籍中の受賞は今回初めてということで、大変うれしく思っている次第であります。

今回坂口先生の受賞の対象となりましたのは、制御性T細胞の発見、そしてその重要性を世界で初めて解明されたことです。坂口先生が発見した制御性T細胞なしには、現代の医学、医療というものは語れませんし、坂口先生がこの領域をまさに切り開いてこられました。

そして今、世界中でこの制御性T細胞の研究が飛躍的に進んで、医療への応用などにもつながっています。まさに、医療と医療領域に本当に迫っている成果があると思っております。

また、この受賞は坂口先生が、長年基礎研究真摯に突き詰めてこられたことの結果で、このことは現在困難に向き合いながら日々の研究生活を積んでいる若い研究者や、学生さんたちに本当に大いに励みになるのではないかなと思っております。坂口先生、本当にありがとうございます。そして本当におめでとうございます。

坂口志文氏（以下、坂口）：ありがとうございます。

坂口氏が実施してきた研究内容の説明

司会：ありがとうございました。今回受賞されましたました坂口志門先生から、ご挨拶並びに、受賞内容に関しましての、ご説明をいただきます。坂口先生、よろしくお願いいたします。

坂口：今回、このようなかたちでノーベル賞をいただくことになりまして、私自身、大変光栄に思っております。この間、いろいろな方と一緒に研究してまいりました。学生諸君、また共同研究者の方々、いろいろな方にお世話になってまいりまして、その人たちにも深く感謝しております。

私のやってきた研究は、免疫反応をいかに制御するかということになります。ご存知のように、COVIDとかワクチンとかが社会的にも随分話題になりましたけれども、免疫反応というのは、それをいかにして強くするかと、その反対に異常な免疫反応をいかに抑えるかの2つが重要であります。

私が研究してまいりましたのは、いかに免疫反応を制御するか、抑えるかという研究であります。免疫反応が自分に対して起こると、関節リウマチとか、1型糖尿病とか、そういう自己免疫病が起きます。このメカニズムがわかると、そういうものをいかに治療するか、いかに起きなくするようにするかということにつながります。

がんに対しては免疫反応が起こってほしいわけですけれども、がん細胞は自己から出てきたものであります。自己もどきの細胞です。ですから、それに対して免疫反応が起こらないようなメカニズムがあるわけですね。

制御性T細胞を標的にして、それを減らすと、免疫反応が上がります。ということは、がん免疫に使えるということになります。

また、臓器移植につきましては、移植臓器の拒絶が起きることが1番の問題でありますけれども、他人、別の人からもらった臓器を、あたかも自分のものとして免疫がみなしてくれる。そのためには、免疫抑制というものが重要です。この制御性T細胞は、そういうことの抑制にも働いて、臓器移植をより安定で安全なものにしていくことにもつながります。

このように、いろいろなことで制御性T細胞を標的にした医療が可能です。

このような受賞を機会に、この分野がますます発展して研究が進み、また実際のベッドサイド、臨床の場で応用できる方向に研究が進展していくことを望んでおりますし、これからももう少し私たちも寄与できればと考えております。以上です。

ノーベル賞受賞の知らせを受けた感想・報告した方

司会：先生、ありがとうございました。（質問者の方）お願いいたします。

記者1：毎日新聞の田中と申します。坂口先生、この度は受賞、本当におめでとうございます。記者として、2つおうかがいさせていただきたいと思います。今回の受賞に際して先生が、初めに思われたことの感想を、すみませんがもう1度おうかがいさせてください。

坂口：そうですね、うれしい驚きにつきます。私たちでやってきた研究が、人に役に立つ、臨床の場で役に立つようにもう少し発展してきたら、そういう何らかのご褒美があるかもしれんとは思いましたけど。ですけれども、この時点でこのような名誉をいただくのは非常に驚きでありますし、また光栄に思っております。

記者1：受賞の知らせを受けて、まずどなたにお伝えされたとおっしゃいましたでしょうか。

坂口：長く家内と一緒にやってまいりましたので、もちろん家内はよろんでくれると思っておりました。また、先ほど申しましたように、研究ってのは1人ではできませんので、学生諸君、また共同研究者の方々、この長い間いろいろな方と一緒に仕事をしてきましたので、そのような方々に感謝しております。

記者1：先生の長い研究生活の中で、もちろん順調だった時だけでなく、思うような結果が出なくて、苦労された時もあったと拝読いたしました。そういった時に先生を支えられたモチベーションが何だったのかを教えてください。

坂口：先ほど申しましたけれども、私の場合は自分を守るべき免疫系が、時に自分に反応してしまう、自分を攻撃して自己免疫病とかの病気になるわけですけれども、そういうメカニズムが何なのかというのが、最初の興味でした。

ですから、その興味を解決してくれると申しましょうか。そういうメカニズムであれば、研究していく価値があると思ってやってきました。ただ、そのような考え方、制御性T細胞、要するに免疫反応を抑えるリンパ球がいるというのは、あまり人気のあるアイデアではありませんでしたので、研究費を稼ぐとか、そういうところで少しは苦労したかもしれません。

でも、決して私1人ではなくて、同じような考えを持ってる人がやはり世界中にいまして。その人たちと一緒にやりながら、だんだんその分野が大きくなってきたということで、ある意味その人たちを代表して、今回の受賞になったんだと思っております。

記者1：ありがとうございました。

患者さんたちをどのような気持ちで励ましたいか

司会：ありがとうございました。それでは、後方の方、お願いいたします。

記者2：先生の受賞は自己免疫疾患の患者さんにも勇気を与える受賞だと思いますけれども、患者さんたちをどのような気持ちで励ましたいと思いますか。

坂口：私たちが子どもの頃と現在を比べましても、感染症に対する治療法、ワクチンにしろがんの治療法にしましても、やはり進歩してきております。そういう意味で、まだまだ解決すべき、治療法を見つけるべき病気はたくさんあります。その1つは自己免疫病でもありますし、その他にもいろいろあります。

ですから、そういう基礎研究が進み、それが実際の人の疾患の治療予防につながっていく。私たちのやっていることも、望むらくは1つの例になるかと思います。

そういう意味で、現在はなかなか治療が難しいと思われている病気につきましても、やはり解決策はあると、有効な治療法は必ず見つかるものである、また予防法も見つかってくると私は信じております。

研究の過程についてどう思うか

記者2：ありがとうございます。もう1点、今回の受賞の業績について、財団の発表によれば、先生が最初に制御性T細胞を発見して、その後に2人が制御性T細胞を作る特定の遺伝子を見つけたのかと思います。まさに先生の発見がきっかけだったと思うんですけど、そのことについてはどのように思いますでしょうか？

坂口：そうですね。私たちはそういう細胞を見つけました。その細胞、分子マーカーを見つけることによって、他の人たちにも、その細胞を研究できるようにしたわけですね。

そのようなかたちで研究が進んできたんですけれども、ちょうど2000年頃に彼らによってFoxP3という遺伝子が見つけられました。このFoxP3という遺伝子は、異常があると、非常に高率に自己免疫病が起きます。

この重篤なアレルギー、炎症性腸炎ですね。炎症性腸炎はこの場合、普通の私たちの体の腸内細菌には免疫反応を起こしません。起こしませんけれども、FoxP3という遺伝子に突然変異があると、炎症性腸炎が起きてくるということで、1つの遺伝子でいろいろな疾患が説明できるということで注目を浴びておりました。

その遺伝子が見つかったんですけれども、その遺伝子がいったいなぜ、どうして、そういう病気を起こすのかは謎でした。その時に、私たちも含めて、実はFoxP3という遺伝子は、制御性T細胞の1番重要な遺伝子であると。マスターレギュレーターと言いますが、その機能を司るような、制御の要になる遺伝子ということで、彼らの発見と、私たちの研究がうまく結びついたということになります。

※本記事はAIによる自動書き起こしデータをもとに、編集部が内容を確認・編集しています。