CLOSE

ヤフー・LINEの経営統合会見(全5記事)

【全文2】ヤフー × LINEは「世界をリードするAIテックカンパニー」になりえるか 両社長が明かした、日本・アジア基軸の成長戦略

ヤフー株式会社の親会社であるZホールディングス株式会社とLINE株式会社は、経営統合することで基本合意したと発表しました。これを受けて2019年11月18日、Zホールディングス株式会社の代表取締役社長・川邊健太郎氏とLINE株式会社の代表取締役社長CEO・出澤剛氏が共同で記者会見。来年10月までに登場する新会社のビジョンや思いを明らかにしました。会見の模様を全文でお送りします。

補完的な利用者基盤を持ち合う両社

川邊健太郎氏(以下、川邊):危機感と志を共有しまして、我々これからやっていきたいなと思いますけれども、具体的な統合におけるシナジーがどのようなものがあるのかということが重要だと思っておりますので、こちらについてこれから説明させていただきたいと思います。

それぞれのシナジー、1つまずあるのが、利用者基盤だと考えております。ヤフーは月間利用者が6,700万人ほどおります。ヤフーに何かお願いをしたい、ビジネスのクライアント様が300万社以上ございます。

出澤剛氏(以下、出澤):一方のLINEは国内の月間ユーザー数で8,200万人おります。そして、同じくクライアント数で、350万社のお客様とつながっております。

川邊:利用者というのは、単純に足し合わせられるものではないと考えております。当然、両方とも日本において大変愛されているサービスですので、重複のユーザーがいると考えております。

ただし補完的なユーザー層かなとは思っております。LINEは、やはりアプリにて大成功したサービスですので、若いユーザーが多い。一方でヤフーは創業20数年経っておりますので、PC時代からのシニアなお客さんがたくさん使ってくださっています。

また、ユーザーの接点において、LINEはスマホのアプリ、ヤフーはスマホに加えてPCや各種ブラウザからもたくさん利用されておりますので、そのようなかたちでの利用者基盤の補完関係が両社ではあるんじゃないのかなと、現在考えております。

さらに、海外ユーザーについてご説明させていただきますと、LINEは多くの海外ユーザーを抱えております。世界全体では1.85億人のユーザーに使っていただいておりまして、提供の国と地域は230にものぼるというところです。

とくに台湾やインドネシアでは、高いシェアを誇りまして、各国ではすでにLINE Payの提供を始めて拡大している途中ですし、今やっている3カ国で銀行開設の準備も同時に進んでいるところなので、今後金融事業の拡大にもこういったユーザー、フットプリントというのは非常に有意義なものだと考えております。

最大のシナジーはサービスの補完関係

川邊:そして我々がシナジーと考える最大のものは当然、両社が提供するサービスです。Yahoo! Japanは検索を祖業としてしまして、メディアのサービス。たとえばYahoo!ニュースですとか、Yahoo!ファイナンスに拡大をしていきました。

川邊:最近で言いますと、みなさんご存知のとおり、「Eコマース革命」に向けて、さまざまな努力をおこなっております。この1年で申し上げますと、モバイルペイメントのPayPay、まさに今日プレスリリースを出させていただきまして、利用者が2,000万人となりました。PayPayを核に、Fintechの事業も現在拡大しております。

出澤:一方のLINEは、メッセンジャーアプリとしてスタートしまして、その利用者さんとのつながりを生かして、その上でニュースであったりゲームであったり、コマースなど、さまざまな生活に関わるサービスを提供しています。

LINEアプリひとつあれば、すべての生活関連サービスが非常にクオリティ高く享受できるという。いわゆる最近の注目の言葉で言うと、「Super Apps」といわれるような構想を当初から行ってきたわけでございます。

そして近年では、ペイメント、ブロックチェーンなどのFitechの事業、そしてLINE ClovaをはじめとするAIの事業に、非常に大きな投資をしてきているというのがLINEの現状でございます。

川邊:このサービスのシナジーも補完的だと思っております。それすなわち、ヤフーでは、まったくメッセンジャーのサービスを提供できておりません。それに対して、LINEはすでに国民的なメッセンジャーサービスである。

一方で、LINEはEコマースはそれほど力が入っている事業ではないですけど、一方でヤフーはEコマースを近年頑張っているということで、それぞれの弱い点を補い合える期待を持っております。

MaaSに取り組む上でのシナジー

川邊:そしてもう1つのシナジーが、株主も含めた大きなグループシナジーが我々には強みとしてあるのではないかと思っております。

すなわち、ヤフーの株主としては国内通信事業者のソフトバンクがございます。当然通信のサービスとしては、ソフトバンクはこれから5Gをやっていきます。そして、Y!mobile、LINEモバイルなどの、さまざまなブランドの通信サービスを提供しています。

一方で、「ビヨンドキャリア」ということで、通信のサービス以上をやっていこうとしている会社でもございます。その戦略の中で、今回の我々と非常に補完的だなと思っているのはMaaSの部分ですね。移動の部分で、MONETやDiDiというような、非常に戦略的な取り組みをしておりますので、こういったシナジーがあるかと思っております。

またすでにYahoo! Japanと生じているシナジーといたしましては、これもかなりおなじみになりつつありますけれども、「ソフトバンクのスマホユーザーであればポイント10倍」などといったものを展開しております。

こういったものが、統合を果たした暁には、「LINEのユーザーもポイント10倍」みたいなことが、もしかしたらできるかもしれません。

アプリ、スマートスピーカーなどの技術連携

出澤:一方の株主であるNAVERなんですが、韓国ナンバーワンのポータルサイトでして、日本におけるヤフーさんに非常に近い部分があって、検索を中心にさまざまなサービスを展開しております。

検索の関連技術だけではなく。技術開発に非常に力を入れておりまして、たとえばカメラアプリのSNOW、非常に若い方たちに人気がありますけれども。SNOWですとか、3DアバターのZEPETOといわれるような、世界的に使われるスマホアプリを提供している会社です。

実際にLINE ClovaのAI技術はLINEとNAVERの共同開発をしているという部分もありますので、このような技術連携というのは、AI化を進めていく上で、さらに大きな意味を持ってくると考えております。

川邊:はい。ヤフー、LINE、そして株主である通信会社のソフトバンク、そしてNAVER。どれも東アジアに位置する会社です。それが、グループシナジーを効かせて、ぜひ世界に羽ばたいて。今のところGAFAとBATというのが、世界において、大きなデジタルのサービスを提供しておりますけれども、我々がぜひこのグループにおいて、第三極、そういったシナジーを作っていきたいなと考えております。

人財ならびに投資、ダイナミックなリソース活用を

そして、両社統合のシナジー。もう1つ、大変重要なところが、人財でございます。ヤフー、LINEともに日本国内においては大変大きなデジタル企業です。その社員数は両方合わせると、なんと2万人以上の社員がおります。

未来を作るという意味においては、エンジニアやデザイナーといったいわゆるクリエイター、データサイエンティストが大変重要なんですけれども、我々両社あわせますと、数千人の規模になっていきます。デジタルの社会において、数千人のクリエイターが未来を作っていける。そういう人財のシナジーも、大変期待をしております。

出澤:もう1つ、非常に大きなシナジーが、両社の投資額でございます。この1,000億という数字は、両社の年間の投資額を合わせた金額になります。今後もこれまで以上に、1,000億規模以上の投資を大胆に実施していきます。統合が完了した暁には、共通化する部分も当然出てくることを考えると、今まで以上に迫力のある投資ができるものと考えております。

そして、今ご紹介してきたようなシナジーをどのような領域で生かしていくのか。

例えば、メディアコンテンツの領域では、双方のデータを適切に利用することによって、当然ながらユーザーさんの許諾をいただきながら適切に利用することによって、今まで以上にひとりひとりのユーザーに寄り添ったサービス・情報をお届けすることができるんじゃないかと思いますし、広告の領域においては、検索、ディスプレイ、アカウントなど相互のソリューションを組み合わせた形で新しい価値をご提供できると思います。

そしてコマースにおいても、メッセンジャーとECとの連携による新しい価値観、新しいユーザー体験を生み出すことができると考えています。

そして両者が積極的に推進しているFintech。この分野、とくにペイメント事業においては、両社の強みをかけ合わせて、ユーザーさん、店舗さん、その双方に利便性を飛躍的に向上させることができると思いますので、スピードアップ、スケールアップを、このペイメント事業においてしていくと。

そしてそれはO2Oの事業であるとか、あるいは銀行はじめFintechの事業、ペイメントの先につながっている力強い垂直的な立ち上げにつながっていくもの、という確信をしています。

AIのテクノロジーに中長期的に集中投資を

出澤:そしてこれらの我々が創り出していく中心となるのが、このAIのテクノロジーです。今の時代は、インターネットの時代からAIの時代に移行しつつある時期だと考えています。携帯回線は5Gになっていって高速化していきます。その中で全てのデバイスがインターネットにつながるIoTの時代になります。日常の行動の多くの部分がデータ化されて残っていくという時代です。

これはユーザー側から見てみると、インターネットと日常生活がよりシームレスに、意識していると思わずにインターネットに触れあっている、もっと便利になっている。そんな時代になっていくと。そんな時代の基盤となるのが、AIのテクノロジーだと考えています。

AIのテクノロジーによる新しい課題解決、新しいインターフェース、新しいユーザー体験、我々はこの領域に積極的かつ、中長期的に集中投資をしていきたいと考えています。

その挑戦の中から、さまざまな新しい、ユーザーに喜んでいただける価値を創造して、日本、アジア、世界の利用者のみなさまの生活に資するような、両社でそんな存在になっていきたいと強く願っています。これが先ほど来申し上げている、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」というものの意味であります。

川邊:先ほどご覧いただいて表にあるとおり、海外のプラットフォームは大変強い研究開発費を持っておりますので、我々はそこに対抗していくためには何か集中していかなければいけないということで、そこの集中ポイントはおそらくこれからの技術であるAIだろうと確信を持っておりますので。ぜひそのあたりもご理解いただければと思っております。

IoTの時代、日本の法令に基づいてユーザーを守る運営を

川邊:サービスをつくる、あるいは事業をつくるというのは本当にワクワクすることでありますけれども、それと同じぐらい、今後我々がより一層気を遣わなければいけないのは、プライバシーの保護、そしてサイバーセキュリティだと考えております。

当然これは両者統合を果たした暁には、より強化していくという方向性でありますが、より具体的な原則をここで改めて確認させていただきますと、お客様のサービスの利用を通じて生まれたデータというものは当然お客様のものでございます。さらにそのデータ全てにおいて、日本国の法令に基づき運営をしっかりとしていきたいと思っております。

蓄積されたデータ、これは、常にサイバーセキュリティの技量を高め続けて、守れるようにしていきたいと思っております。日進月歩で進んでいくサイバーセキュリティですけども、常に我々は高め続け、データを守るということを心掛けていきたい。こういった原則を、改めてこういう場でも申し上げて、プライバシー保護、サイバーセキュリティにも力を入れていきたい。そのように考えております。

以上のシナジー効果をもちまして、我々は「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」になっていきたいと考えております。どうぞご理解のほどよろしくお願いします。

出澤:言い換えますと、お子さんですとか、学生さん、働く人、子育てする人、高齢者。あらゆる人々の日常生活をポジティブに変化させていく、社会全体をアップデートしていく。そんなことを両社で目指していきたいと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。

2人のCo-CEO、共同代表制による経営

川邊:最後に、想定している経営体制について、私のほうからご説明させていただきます。まず統合が果たされた暁のストラクチャー、できあがりの姿をこちらに図示してございます。

Z ホールディングス株式会社が統合会社となりまして、その下にYahoo! Japan、LINE。こちらが100パーセント子会社として、兄弟会社として位置いたします。

そしてZ ホールディングス株式会社は、引き続き東証一部に上場していく、と考えておりますので、その上には株主のみなさまがいらっしゃいます。株主は、主には一般株主と大株主のみなさま。

いま、統合の比率等が今日のプレスリリースでも掲載されておりますけれども、それらを計算して、現在のところの想定比率で申しますと、一般株主が35パーセント、そして大株主であるJV(ジョイントベンチャー)が、約65パーセントぐらいの株主比率になるのではないかと考えております。

そしてこの65パーセントの大株主であるJV社。これまでのそれぞれの会社の大株主であった国内通信事業者のソフトバンクとNAVER社が、50:50の比率でこのJVを所有するというかたちになります。

そしてZ ホールディングス株式会社の連結は、国内通信事業者であるソフトバンクが連結をいたします。そのような計画を現在たてております。

このZ ホールディングス株式会社のガバナンスでございますけれども、取締役は現在10名を想定しております。Z系の取締役は3名、LINE系の取締役は3名でございます。そして取締役プールの最大母数が社外取締役でございまして、こちらから社外取締役を4名選出したいなと考えております。

これは当然、一部上場企業でございますので、一般の株主もいらっしゃいます。そういった少数株主のみなさまにも配慮した経営をするという意味において、社外取締役をコーポレート・ガバナンスコードの3分の1以上、かつ最大の母数グループにすることによって、より一層コーポレート・ガバナンスを強化していきたいと。そのような思いから、このような体制を取っていきたいと考えております。

そしてこの新制Z ホールディングスの経営体制でございますけれども、まずはこの統合をきちんと果たして、自走していく体制にしていかなくてはなりません。

それに関しましては、私と出澤さんが代表取締役Co-CEOという、まったく同じ肩書を持ちまして、共同代表制でその責任を果たしていきたいと考えております。

加えまして、代表取締役社長という観点におきましては、現任でございます私が、引き続きZ ホールディングスの代表取締役社長として務めさせていただきたいと考えております。

出澤:私も、Co-CEOとして、両社のシナジーを最大化すべく、しっかりとコミットしてまいりますので、引き続き、ご支援、よろしくお願いいたします。

川邊:なお、そのほかの社外取締役を含む取締役に関しましては、現在検討中でございますので、候補が決まりましたら、みなさまにお知らせをしたいと考えております。

続きまして、統合までのスケジュールでございます。本日、この基本合意書というものに我々締結をいたしました。このあと最終の契約をする予定でございますけれども、だいたいそれを年末年始のどこかで終わらせたいなと、締結をしたいなと思っております。

その後は各種の申請・審査・手続きというものがございます。なにせそれぞれ時価総額が1兆円を超える会社同士の経営統合でございますので、なにかとさまざまな審査や申請がございます。したがいまして、多少時間がかかるという想定でおりますけれども、それでも2020年の10月頃にはこの統合を完了させたいと考えております。

世界をワクワクさせる最強のOne Teamへ

以上、いろいろな発表をさせていただきましたけれども、いかがだったでしょうか。

冒頭申し上げましたとおり、ヤフージャパンは「!(ビックリ)」と、ユーザーをビックリさせたいという価値観を大事にしております。そして、LINEは「WOW」と、同じようにお客さんをビックリさせたい、「WOW」と言わせたいというような価値観を大事にしています。

そういった、これからこの統合後、日本のインターネットユーザーが、あるいは世界のインターネットユーザーが「ビックリ」「WOW」と、「さすがこのグループから出てくるサービスは違う」と、そういうようなワクワクを提供したいと思っておりますし、そのような取り組みをしていきたいというように強く思っております。

出澤:やはりユーザーのみなさんをワクワクさせる、ワクワクしていただくには、我々自身が楽しまないとそういったものはできないと思います。我々、川邊さんと私だけではなくて、先ほど来ご紹介している2万人の社員全員でワクワクしながら、新しい挑戦を楽しんで、そして志高く事業を拡大していきたいと、このように思っております。川邊さん、どうぞよろしくお願いします。

川邊:はい。よろしくお願いします。今日、お互い全社員緊急集会というものを行いまして、まさに「ワクワクしようぜ」と社員にも言ってきましたので、すべての関係者のみなさまとワクワクしながら進めていきたいなというふうに思っています。

そして、その目指すところは、繰り返し申し上げますけれども、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」に我々はなりたいというように考えておりますので、ぜひみなさまのご理解をよろしくお願いいたします。

今回2人で発表というかたちで慣れない形式となりましたけれども、がんばってこれからやりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

出澤:よろしくお願いします。

川邊:ご清聴、誠にありがとうございました。

※続きは現在書き起こし中です

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 【全文10】前澤友作氏「いかがわしくロックな魂で、人を驚かし続けていきたい」 ZOZO社長退任後から始まるゼロからのチャレンジ 

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!