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前澤友作氏「ディア・ムーン」計画発表会見 9月17日(全2記事)

【全文1/2】前澤友作氏「人類のため、すばらしい芸術作品を創造したい」イーロン・マスク氏と共同で月旅行計画を発表

2018年9月17日、スタートトゥデイCEOの前澤友作氏はSpaceX創業者のイーロン・マスク氏とともに会見を開きました。会見中、前澤氏は月を周回して戻ってくる旅行計画「ディア・ムーン」を発表。会見の様子を全文書き起こしでお送りします。

イーロン・マスクが「BFR」発射計画を明かす

イーロン・マスク氏(以下、イーロン):この場にようこそ! 今日は新型ロケット「BFR」について詳しく説明したいと思います。そして、ロケットの乗客を紹介します。まずはBFRロケットについてお話しします。

SpaceXを創業した目的は、宇宙を旅できるように人類の進化を促し、ロケットのテクノロジーを進歩させることでした。そして複数の星の間を移動し、宇宙を旅する文明をつくることでもあります。

今までの歴史を振り返ってみると、文明を終わらせるような、天災や人災について考えておくことは重要です。地球から巣立ち、複数の星に移住する試みは重要なのです。そして、その計画をできるだけ早く進めることも重要です。

そのチャンスがずっとあると考えるべきではありません。今こそ試みなければいけませんし、できるだけ早く複数の星に住める文明を持たなければいけません。防衛的な理由でもあります。

ひとつの星ではなく複数の星に住むことが重要です。火星、月、金星、木星、こういった太陽系全体。そして最終的には太陽系を出て他の銀河系へ。極めてエキサイティングな未来だと思います。私たちが求める未来です。未来について残念に思わされることはありますが、宇宙に住むことはもっともエキサイティングなことです。

朝起きることでさえもエキサイティングになる。人類であることを誇りに思えるのです。みなさんもそういう見方をしてくれることを期待します。それが目的でもあります。未来について興奮してもらうことです。

SpaceX、これまでの艱難辛苦

イーロン:この計画の火星での予想図です。

これは10年前、軌道を飛行するSpaceXの10周年記念の様子です。2008年9月の出来事です。初めて軌道に乗るまでに3回失敗しています。

この時に成功していなかったらSpaceXはなかったでしょう。4度目が最後のチャレンジだったのです。大変な打ち上げでした。しかし、これで軌道に乗ったことで、大きなNASAの契約が取れ、スペースステーションサービスの契約が取れたのです。SpaceXの成功の礎となる2つの出来事でした。

これが今年の出来事につながります。「ファルコンヘビー」の打ち上げです。約1,500kgの小さなロケットです。再利用はできません。もっともパワフルなファルコンヘビーは、737人とその荷物を運ぶことができます。マネキンを乗せた「テスラ・ロードスター」も船内に積み込むことができます。火星の軌道に重いものを運ぶことができたわけです。「ケープ・カナベラル」(アメリカ東部宇宙ロケットセンター)に2つのロケットブースターを戻すこともできました。ロケットはセンターにうまく戻れませんでしたが、今後は可能になると考えています。

なかなか軌道に乗れないというところから、ブースターを再利用するというところまで、10年かかりました。しかし、極めて大きな変化でした。今ではブーストを何回か打ち上げるというステージにいます。「ドラゴン」(ファルコンによって打ち上げられる宇宙船)を飛ばすこともできました。

10年で非常に大きな変化です。2018年までにSpaceXがこうなると、2008年に誰が予想したでしょうか。私はゼロだと思います。そういう想像ができた人が思い浮かばないです。それは私も含めてですが(笑)。なかなか軌道に乗らない小さなロケットが、今夜、ブーストもできる車を火星に送るのです。

なぜ車を火星に送るかが少しわかりにくいかもしれません。本当の理由は、単純に面白いと思ったからです。わかりやすい目的ですよね。普通、企業がロケットを発射する時、コンクリートの板などを搭載したりします。でも、それでは面白くない。だから人々が一緒に楽しめるような面白いものが欲しかったのです。

それが車であり、車に乗っている宇宙飛行士なのです。デヴィッド・ボウイへのトリビュート(注:代表曲『スペイス・オディティ』がカナダの宇宙飛行士によって宇宙で歌われた)でもあり、物語の『銀河ヒッチハイク・ガイド』などもそうですね。

BFRはいかにして打ち上げられるのか

イーロン:BFRの最新情報です。製作面では、去年とは異なる、重要な部分があります。全長118メートル。搭載重量は100メートルトン。これはこのまま火星に持って行くこともできます。停留所があればそこから月や木星、太陽系の外にも行けます。BFRは停留所とともに、太陽系の惑星間の移動システムとしてデザインされています。搭載容量を1,000立方メートルに増やし、前方の作動フィンとメインの作動フィンがあります。飛行はおそらく半直感的なものになります。それについて少し説明しましょう。

2つの作動フィンがあります。他のものとは違うものです。宇宙空間でこの乗り物をコントロールできると想定しています。実際には飛行機よりスカイダイビングのような感じです。再突入の際に止まるエネルギーが働き、力を放出します。非常に大きなウィング2つを動かすには大きな力が必要です。リングの下にあるウィングは作動しません。ただの足です。ほかの2つはシンメトリーの関係です。

BFRの再突入に関して、こちらは物理的なシミュレーションです。理解しづらいことではあるのですが、地球の周りの軌道に乗ると、とても速いスピードになります。ある高度で重力が消えることはなく、直感で動作させることは難しいです。上昇するためには、地球の周りを音よりも25倍速く動かなければなりません。

宇宙ステーションは90分で地球を1周します。BFRの再突入を理解するためには非常に重要なコンセプトです。軌道は地上に対して平行です。高度が必要な理由は大気圏を出るためです。地球に大気圏がなければ、理論上は地上から1メートル、3.8フィートで大丈夫です。

ロケットが落下する時はスカイダイバーのようになります。まず機体がしばらく落ちていきます。浮くように落ちていき、最終的にエンジンが着地します。直感的な挙動はせず、慣れ親しんだ感覚とは違います。月に着地する場合は、空気がないので軌道修正のエンジンだけでいいです。

BFRの全貌を公開

イーロン:BFRの次のステップは建設です。今も実際に作っています。写真はBFRのメインシリンダーの部分です。半径9メートルで、スケールも感じていただけるように非常に大きなものです。

BFR最初のシリンダーセクションがこれです。ドームとエンジンセクションを作っていきます。

こちらがロケットエンジンです。BFRの旅客機とブーストの両方に使われます。200トンの推力があります。300気圧を想定し、高い数値になると380気圧となる可能性もあります。燃焼装置はガスです。テクノロジーに興味のある人はどうぞ。私はこのエンジンデザインにすごく興奮していて、SpaceXのチームはすばらしい仕事をしたと思っています。彼らはすごい仕事をしたと思って……。

(会場拍手)

待ってください。本当にクレイジーな問題だったので、このエンジニアリング、そしてデザインはすばらしいことだと思います。宇宙・航空業界のテクノロジーをもってしても難題だと思います。正解を見つけることにすら長い時間がかかりました。しかし、問題の本質が一度わかると、簡単だったとは言いませんが、流れるように答えが出ました。とにかく問題の定義がとても大変でした。

こちらは軌道です。飛び立ってブースターが離れ、月を回り、戻ってきて着陸します。4~5日の旅です。無人のテスト飛行を何回かしようと思っています。誰も乗せずに飛ばすということも大切なので。本当に待ちきれません。

資金を集めるのに苦労しました。ありとあらゆる方法を模索しなければなりませんでした。衛星の発射やスペースステーションのサービスなど、ここ数年で荷物を運んでいます。次の年には宇宙飛行士を送ります。

宇宙インターネット計画「スターリンク」にも取り組みます。開発中のグローバルなブロードバンドです。重要な収入源にもなります。

私たちのロケット開発に、ここにいる乗客も非常に協力的です。BFRの最初の乗客を紹介したいと思います。前澤友作、壇上へどうぞ。

(会場拍手)

前澤友作氏から自己紹介

前澤友作氏(以下、前澤):ありがとう、イーロン! みなさんありがとうございます。私は日本から来ました。私の名前は前澤友作です。MZと呼んでください。

記者会見に来ていただき、ありがとうございます。そしてライブ配信を見ていただき、ありがとうございます。ついに言えます。「月に行くことを選んだ!」と。

(会場歓声)

ついに言えました。ここに来れてとてもうれしいです。この発表をあなたたちや世界の人々とシェアできることに、とても興奮していますし、誇りに思います。感謝しています。月と、このプロジェクトについて話す前に自己紹介をしたいと思います。ちょっとだけ、いいですか。英語を話すのが上手ではないので、慎重に聞いてください。

(会場歓声)

この写真を見て下さい。これは私です。私はスケートボーダーでした。どこかわかる人はいますか? いない? サンタモニカですよ!

(会場歓声)

18歳の時にサンタモニカに住んでいました。私はスケートボーダーでした。アメリカにとても感銘を受けました。ファッション、ミュージック、アート、カルチャー。あなたたちのようなナイスな人々です。とても優しかった。6ヶ月後に私は日本に帰り、音楽を始めました。

私はバンドでドラムをやっていました。私たちのバンドの音楽はとてもうるさいので、聞かなくてもいいです(笑)。私はこうやって音楽をしていたわけです。

その後、起業しました。私の会社は20年前に誕生しました。今年で20周年です。

(会場歓声)

私の会社は今年で創業20周年になります。

(会場拍手)

ありがとうございます。そして、ようやく私たちのファッションレーベルを立ち上げました。その名前はZOZOと言います。ZOZOのスローガンは、「Be unique.Be equal.」です。私たちは、一人ひとりがユニークな存在であると同時に、平等な存在です。

このことは私たちにとって、非常に重要です。みなさん、あとでZOZOTOWNで確認してみてください。これで私の紹介は終わります。

なぜアーティストを月に連れて行くのか

前澤:これから、月のことやプロジェクトのことを話します。メイントピックです。

みなさん、どうして僕が月に行きたいのか、そして月で何をしたいのかと思っているでしょう。そして、なぜ僕がBFRのすべてを購入したのか。BFRはとても大きいですね。私にとって、このプロジェクトは非常に意味のあることです。

民間人で初めて月に行くことが、どれだけ価値のあることかをずっと考えてきました。それと同時に、どうやって私が世界に作品を届けられるか、そのことがどれだけ世界平和に貢献できるのかを考えてきました。これは私が人生をかけて叶えたいことなのです。

(会場拍手)

ありがとうございます。

今日私の計画をみなさんにお伝えしたいと思います。私は子どものころから月が大好きでした。ただ月を見ているだけで想像力が満たされました。月はいつも同じ場所にあり、人間をインスパイアし続けています。

これが、実際に月を見て、月に行けるチャンスを逃したくないと思った理由です。同時に、このすばらしい経験を自分だけのものにはしたくありませんでした。そんなの寂しいですよね。

私は一人でいるのが好きではありません。すばらしい経験、事柄をできるだけ多くの人たちと共有したいんです。これがアーティストたちと月へ行こうと思った理由です。

(会場拍手)

これから、私は一緒に月へ行くアーティストを世界中から選抜します。最初に一緒に行くべきアーティストとして思い浮かんだのは、ジャン=ミシェル・バスキアでした。ご存知のように、今日はコム・デ・ギャルソンのバスキアが描かれたTシャツを着ています。彼はもう亡くなった、ニューヨークで活躍したアーティストです。

あるとき、私が彼の絵を眺めていたとき、もし彼が宇宙へ行き、「月を間近で見たらどうだろう」「地球を外から見たらどうだろう」と思いました。彼は非常にすばらしい作品を残したに違いないでしょう。こう考えると心が踊りました。ある時から、そのほかに誰かいないかと考えるのを止められなくなりました。

ピカソ? アンディー・ウォーホル? マイケル・ジャクソン? ジョン・レノン? ココ・シャネル? 彼らは私が敬愛するアーティストです。しかし彼らはこの世にはもういません。しかし、今日、たくさんのアーティストが私たちのそばにいるのです。私は人類のため、そして次の世代の子どもたちのために、すばらしい芸術作品を創造したいと思っています。

「ディア・ムーン」プロジェクトの可能性

前澤:私は多くのアーティストが宇宙へ行き、実際に間近に月を見て、外から地球を見てほしいと願っています。そして、この経験を反映した作品を作ってほしいと思っています。これが私がデザインしたプロジェクトで、「ディア・ムーン」と名付けました。

(会場拍手)

これからディア・ムーンの詳細について説明します。2023年に、このプロジェクトの主催者として、プロジェクトを遂行する6~8人のアーティストを世界中から招待します。彼らには地球に戻ったあと、作品をつくってもらいます。その傑作は、私たちの夢をインスパイアしてくれるはずです。私たちはいつも月にインスパイアされてきましたよね。

例を挙げると、ベートーベンの「月光」、ファン・ゴッホの「星月夜」、ビートルズの「ミスタームーンライト」などです。数え切れないほどの芸術作品が月からインスピレーションを得て作られたものです。

時代を超えて、月は私たちの想像力を満たしてきました。私たちの愛と尊敬を込めて、この惑星の永遠のパートナーとして、プロジェクト名をディア・ムーンと名付けました。

現段階ではどのアーティストを招くかを決めてはいません。しかし可能な限り、この星を代表するトップアーティストを招きたいと考えています。画家、フォトグラファー、ミュージシャン、映画監督、ファッションデザイナー、建築家などです。

2023年までにはまだ時間があります。SpaceXのチームとどのアーティストにするかなど、すり合わせていければと考えています。もし私から声がかかったら、招待を受けてくださいね。ノーと言わないでくださいね。

(会場歓声)

公式サイトでプロジェクトを続報

前澤:まだ発表できないことがたくさんあります。ですので、現段階の情報を話します。ディア・ムーンのための公式サイトを作りました。この記者会見のあとに公開されます。それではご覧ください。「dearmoon.earth」です。チェックしてください。私のSNSでも発表しますので、私のアカウントもフォローしてください。

このプロジェクトについてどう思いましたか?

(会場歓声)

英語が下手くそなので私はとても緊張していました。うまくいってよかったです。そして私の英語が痛々しいものでなかったことを祈ります。最後に、ディア・ムーンについて私が伝えようとしたことの要約をお伝えします。今からビデオをお見せします。

(動画が流れる)

動画ナレーション:1968年のアポロ8号の月周回軌道に到達してから50年、人々が月に行く時がやってきました。 2023年、SpaceXは世界初の民間による月のミッションを発射します、このBFRの宇宙船で。

最初の乗客は日本の起業家、前澤友作です。世界的にも有名なアートコレクターです。アートに世界を平和する力があると信じる人です。前澤は勇敢な決断を下しました。画家、フォトグラファー、ミュージシャン、映画監督、ファッションデザイナー。前澤は地球を代表するアーティストを月への旅に招待します。

月への距離は24万マイルです。クルーは1週間、宇宙で過ごします。月を見たときに、地球の全貌を見たときに、彼らが何を感じるか、そして何を生み出すか。彼らの作品は人類の遺産になることでしょう。驚くような宇宙のアートプロジェクトが始まります。ディア・ムーン。

(動画が終わる)

(会場歓声)

前澤:ありがとうございます。ありがとうイーロン、そしてSpaceXチーム。この日を実現してくれました。私はとても興奮しています。ありがとうございます。

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