2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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記者8:日経新聞のスギモトです。まず川邊さんに1点お願いします。社長像として、ずっと6年間宮坂さんと仕事を一緒にされていて宮坂さんから社長として学んだこと、CEOとCOOとして学ばれたことを、できれば具体的にどんなシーンでどんな言葉、どういう行動に学ばれたのかということを教えてください。
それと関連して先ほどの質問にもありましたけれども、社長交代を決められたときに宮坂さんから具体的に何と言われたのか、差し支えなければ教えてください。
宮坂さんに質問なんですけれども、あたらしい挑戦。もう少しヒントをいただけないかなと。今頭の中にどういう分野への参入というのがあるのか。もしくは本当にないのであれば、どうやって新しい山を探そうとされているのか。もう少し具体的に教えていただけないかなと思います。
川邊健太郎氏(以下、川邊):1点目ですけれども、私自身は学生のころにベンチャーを立ち上げていきなり経営者になってしまって。2000年にヤフーに入って、以後18年間ヤフーグループやソフトバンクグループにいるだけが社会人での経験なんですね。
その中で言うと、私のビジネスにおける師匠というのは間違いなく宮坂、井上、孫という、この3人だなぁというふうに考えておりまして。それぞれ強い影響を受けてます。
とくに宮坂さんについては、とくに大きい組織というものはたくさんいろんな人がいる。そして事業あるいは未来を創っていくのは、確かにその中で大変有能なエース社員かもしれないけれども、創ったそれをオペレーションしていくのは莫大な普通の社員というか、そういう人たちによって支えられていると。
昔、「一隅を照らす者は国の宝なり」というのを最澄が言ったと聞いておりますけれども、その一隅を照らす社員の人たちの重要性であるとか、彼らの気持ちを汲み取って会社というものは運営していくべきものなんだとか、そういったところを人格面における社長としての在り様というものをこの6年間でたくさん学んだと考えております。
ほかにもたくさんあるわけですけれども、ちょっと気恥ずかしいのと言ったらキリがないんですけれども(笑)。
宮坂学氏(以下、宮坂):照れ臭いね(笑)。
川邊:1番はそこのところだと考えております。あと?
記者8:社長交代を告げられたときに、どういう言葉で告げられたのか。
川邊:あ、そっかそっか! 組織の話は常にしているわけなんですけれども。まず前提としては、先ほど宮坂が自分で申し上げていた通り「次の社長をつくるのが社長のやるべき仕事なんだ」というのは、確かに就任当時からずっと言っていましたし。
人材開発企業ということで、あらゆる社員の可能性を育てていこうということで、ずっとやってきたので、常に社長をどう交代させるかみたいな話はしてきています。なのである日突然そうなったというよりかは、いろんな話し合いの中でこうなっていったというところです。
その中で2018年度の組織をどうするかという話をして、最終的には2人で六本木の飲み屋に飲みに行ったときに、「18年、組織はこういうふうにしたいと思っている」と。
先ほど説明をしたような理由でインターネットカンパニーからデータ・ドリブンカンパニーに相当移行していこうとしている中で、やはりここでもう一度会社の活力を出すにはリーダーを変えることが最大の効果のある手段だと思っているので、最終的には「川邊がやったらいいじゃん」という(笑)。
なんて言うんでしょう。まあ、こういう仲なので(笑)。非常にライトに「川邊やったらいいじゃん」「俺は川邊がやったらいいと思ってるよ」というようなかたちで言われたということであります。
記者8:それって先ほどおっしゃられていた11月ごろの話ですか?
川邊:そうですね。
記者8:飲み屋ってバーかなんかでしょうか?
川邊:飯食いながらです。ご飯食べながらです。
宮坂:ちなみに僕の誕生日でした(笑)。
川邊:そうだったんですか! ぜんぜん気がつかなかったです(笑)。
記者8:宮坂さんも先ほどの「Z」の話をお願いします。
宮坂:何度も申しました通り、今まずはちゃんと、今ある事業を新しいリーダーシップのもと、トレーションするというのが一番大事なことだと思いますので、そこに頭のほとんどを使っているので。具体的な感じではまだ正直ないです。
漠然とあるのは、やっぱりヤフーでやるものはどうしても、これぐらいの投資をしてこれぐらいのリターンがあることをやっていこうという、市場性をものすごい見ながらやるものが。確率の高いものを確率高くやるっていうのが大事だと思いますので。
やはり知の探索みたいな領域っていうのは、まず最初に意思ありきではないかなと思っています。自分たち、Zの誰とやるかはまだ会社の中でも決まってないんですけど、自分たちがやりたいことはなんなのかということを、まず意志ありきで考えて。その意思をITで実現できるんだろうかということを考えていく順番になるのかなと思います。
なのでまあ、よく最近世間で話題になっているいろんなが領域ありますよね。具体的には名前は言いませんけど、いろいろ。話題になるようなテーマのものを何か選んでやるのかもしれませんけど、「これ今来てるからいいよね」「海外でこれだからこういうのやりたいよね」ではなくて、まず意思ありき。
自分たちは何を心の底からやりたいのかということを考えないと、こういった失敗確率の高いチャレンジングなテーマというのはなかなか続けることができなくなっちゃうと思いますので。このトレーションがひと段落したら、Zのメンバーと一緒になって、自分たちは何を心の底からやりたいのかをしっかり話し合って、見定めていきたいなというふうには思っています。
記者8:じゃあまだ決まってはいらっしゃらないんですね。
宮坂:はい、まだ決まってはいません。
記者8:ありがとうございます。
とくにそのベンチャーとの戦いですけど、大手であるがゆえに、組織力・資金力は、まとめれば大きいと思いますが、その一極集中、一点突破を図ってくるベンチャーに対して、日々のオペレーションのコストをかけていかなければいけないヤフーと。新しい領域にベンチャーが出てきたときに、なかなかそこに機動的に、資金を集中させる、移動させるのは難しい面もあるかと思うんですが。
そういった観点で、どういうふうに新しいベンチャーが来た時にそこのジャンルで対抗していくのか。たとえばポートフォリオの整理とか、今の現状のサービス体制を変更するお考えがあるのかどうか、というのをまずお聞きしたいです。
川邊:今おっしゃられたことは、私、先月ある会合でまさにそういうような話で、「困っちゃうよね」というようなスピーチをさせていただいたんですけど。
大事なことはまず、そうやってベンチャーにやられる構造を、ヤフー側の経営者が理解していることが大変重要ですよね。それがわからなくて、「どうしてやられちゃってるんだろう」っていうことがわからないと、いつまでたってもやられっぱなしですから。
構造を理解していさえすれば、それに対する対処というのは、意思決定の力一つでやっていけるのではないかなというように考えています。6000人の社員がいて、半分くらいはエンジニアなわけですから、そのエンジニアを1つの分野に集中させるという意思決定さえできれば、それは対抗はしていけると思いますし。
一方で、莫大なオペレーションがあることは間違いなく事実ですから。そういうのはまさに、ITを使って、自動化ですとか、AI化していって、リソースを機械に任せるというようなトランジションを行っていくことが、まず重要だと思います。
サービスに関しては当然、戦いの構図を作るために、統廃合は常にしていきますけども、この6年で私はCEOとしてそこのところを相当集中してやっていたわけなので、ある程度できているかなというように考えておりますので。
サービスの統廃合というよりは、既存の事業にかかっているオペレーションの自動化、AI化、こういったものを行うことによってリソースを稼ぎ出して、そして、ベンチャーの戦い方に対して対抗していくというようなのが道筋なんではないかなと考えています。
あんまりこういう手の内を、こういう記者会見でしゃべるというのは、ちょっとどうなのかなというのはしゃべってて思いはじめてるんですけども(笑)。ちょっと不慣れなもので、しゃべってしまいました。はい。
記者9:ありがとうございました。
司会者:よろしいでしょうか。
記者10:データドリブンカンパニーは、宮坂氏時代から始まっているわけでして、そういう意味ではすでに取り組まれていると思います。ただ、「山は高い」とのことでした。どれぐらいの時点で、川邊さんにバトンを渡すのかについて、感触を教えていただければと思います。
宮坂:これからインターネットの会社で世界で勝ち残っていくためには、まずデータをものすごく持っていることが大事だと思います。それから、そのデータを使って、データから価値を取り出せる技術者・科学者がいること……「人」ですね。これがすごく大事だと思います。
3つ目は、それを実際に使えるコンピューティングのリソースですね。いくら(人が)わかっていても、コンピュータのパワーがないと回せませんから。この3つが、けっこう重要かなと思っています。
これらの3つがあれば、ある種の永久運動のように、データがサービスをよりよくし、そこからデータが生まれ、そこからまた改善が始まるという無限ループが、大きなインターネット会社で今起き始めていると思います。
ヤフージャパンでも、そういうことが今起き始めています。トップページのタイムラインや広告など、データを使って配信をして、そこから得られたフィードバックを使い学習して、また配信していくという、データを使った無限ループのエコシステムを、いろいろな会社が今作り始めている時代だと思います。
そういうところにいち早くヤフーもいこうということで、今でき始めたことは、「少なくともデータをもう少し溜められるようにしよう」「データを溜める基盤の整備を開始しよう」といったことかなあと思っています。
なので、大きな変化を起こすのは、新しいリーダー・新しい体制だと思います。(現時点が)具体的に1合目や2合目なのかと言うと語弊があると思いますので、ちょっと控えさせてください。以上です。
記者10:道半ばでバトンを渡されることについて、逡巡などはなかったのですか?
宮坂:そうですね……ゼロかというと、それは嘘になると思います。やはり、新しい挑戦をするときに新しいリーダーに代わるということは、実はすごくいいタイミングだと思いますので。物事は、常にゼロ・イチで変わるというよりは、徐々に変化しているものをバトン交代していくものだと思います。
道半ばというよりは、非常にいいタイミングではないかなあと、自分では思っています。
記者10:ありがとうございます。
記者11:インプレスのオオタと申します、よろしくお願いいたします。お話を聞いていた感じだと、ちょっと難しいかなと思いますが、携帯電話事業について聞きたいと思います。
ワイモバイルを、イー・アクセスさんから回収されることが撤回になりましたけれども、今は楽天さんが周波数に名乗りを上げるとか。楽天さんは、eコマースでも競合関係にあると思いますけれども。
そういう携帯電話事業にまた挑戦するとか、あるいは別の筋立てで挑戦する可能性があるのかというのが、まず1点目の質問です。
2点目の質問は、今の連携の仕方について。「ワイモバイルでサービスを使いたい」ということもあると思いますが、そういう面でさらに強化していく方向性が何かあれば、教えてください。
川邊:ワイモバイルの買収のときは、投資家・アナリストを中心に、「とくにピンとこない」という感じだったのですけれども。各ネット企業の大手がMVNOで参戦し、今回楽天さんがキャリアに参入されることを聞いて、我々が当時社内で話したり考えたりしていた戦略は、実はある意味、後の世に繋がることだったんだなあと思っています。
その後、そもそもYahoo! JAPAN IDがないと使えない携帯会社ですので、我々としてはワイモバイルでの連携強化とか。この1年で言いますと、ソフトバンクのお客さまに、Yahoo! プレミアム会員になることで特典を提供することにより、eコマースを中心とした、さまざまなサービスを提供していく連携が進んでおります。
なので、資金がとてもかかる携帯電話事業に、ここから改めて我々自身が参入するよりは、ワイモバイル、ソフトバンク、あるいはほかにも、やれるところとは一緒にやっていく。
この前提、今の提携関係で、携帯電話事業に関しては、もっともっとヤフーのお客さまに喜んでいただけるような品揃えを、増やしていきたいなと考えています。
記者11:ソフトバンク以外にもより解放していくみたいな。例えばドコモさんですと、「dアカウント」みたいなかたちで、ドコモユーザー以外でもたくさんドコモのサービスを使えるわけですけれども、その方向性というのはかなり大きくあるということでしょうか?
川邊:Yahoo!というサービス自体は、幸いにも、各キャリアを利用されているお客様も使ってくださっているわけです。なので、我々から見ると、各キャリアにいるYahoo! JAPANのお客様が我々にとって大事なお客さんですので、そういった方々に対して、なにかお得になること、便利になることはどんどん提供していきたいなというように思っております。
記者12:フリーライターのサノと申します。川邊さんに1点お願いします。今回、データの会社だけじゃなくてスマートフォンの会社というところも継続されるというお話だったと思うんですけど。
このスマートフォンの部分について、今後取り組んでいきたいこと、あるいはこれまでやってこれなかったことで新たにやりたいことであるとか、そういったスマートフォンに関する取り組みを教えてください。
川邊:宮坂も申し上げていたとおり、スマートフォンで完全に1位の会社になったとはぜんぜん思っていないです。まだまだユーザー数も伸ばしたいですし、課題も山積だというように思っております。
まずはもっともっとやはりユーザーを増やしたいですね。幸いにも、スマートフォン上のWebとアプリを合わせた合算でいいますと、断トツに日本で一番多いユーザーを抱えているサービスですけれども、ことアプリだけに関してだけ見ますと、競合に後塵を拝しているので、利用者をもっと伸ばしていきたいです。
また、各アプリ、とくにコマース系のアプリの使い勝手をもっともっとよくしていきたいですし、動画への取り組みなんかも強化していきたいと思っています。
また、新領域ですよね。ここへのチャレンジをしたいと思っておりまして。モバイルペイメントですとか、あるいはそこからつながるFinTechみたいなものも今年はものすごく強化をしていきたいなと思っておりますので、当然、スマートフォンの会社に加えてデータドリブンの会社にしていこうという構想ですし、そのデータドリブンが間違いなくスマホでの展開にも貢献してくれるというようなつながりで事業、サービスを考えております。
記者13:産経新聞のニシオカと申します。川邊さんのお人柄についてお聞きしたいと思ってるんですけど、趣味とか休日なにして過ごされているのか教えていただけると幸いです。
川邊:インターネットをこよなく愛しているんですけれども、一方で趣味は非常にアウトドアでして、釣りが大好きです。
あと、実はハンターでありまして。今、地方は非常に害獣の被害が、ここでするような話じゃないんですけど、人柄ということについて、害獣の被害が多いんですけれども、そういったハンターとして害獣駆除みたいなことを地方でおじいちゃんのハンターたちと一緒に週末やったりですとか、そういうことをしております。
あと晴耕雨読というのが人生の理想形だと思っておりまして、天気が悪い日は本を読むのが(好きです)。宮坂も実はすごい読書家なんですけれども、私も本を読むのが大好きで、本を読んだり、読んだ本の貸しっこを宮坂とやったりとか(笑)、そういうことをしております。
記者13:そのハンターというのは狩猟免許みたいなものをお持ちだということですか?
川邊:はい。そうです。
記者13:ありがとうございます。
司会者:よろしいでしょうか。では、ありがとうございました。以上で質疑応答を終了させていただきます。
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