2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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(注:全編英語の会見を翻訳書き起こししています)
司会:紳士淑女のみなさん、こんにちは。外国特派員協会へようこそ。本日のイベントの司会をさせていただきます。本日のゲストは熊本県知事蒲島郁夫氏です。ちょうど1年前に大地震に襲われました。本日は、県知事が、再建状況や、震災後の様々な課題についてお話しくださいます。スピーチは英語ですが、質疑応答は日本語で行います。ヒロオカ氏が通訳を努めます。またお手元にいくつか資料をお渡ししています。
蒲島郁夫氏(以下、蒲島):こんにちは、私の名前は蒲島郁夫と言います。熊本県知事を務めております。
本日お話ししたいことは、「逆境の中にこそ夢がある」ということです。現在、熊本県は巨大地震の影響で、いまだに大きな問題を抱えています。しかし、私が実施する行政は他の県とは異なります。私は、県知事に就任する以前、東京大学の教授を務めておりました。通常、多くのみなさんは、教授というものは、良い政治家ではないと見なすでしょう。しかし、これは事実ではありません。
私の哲学は、先ほども申し上げた通り、「逆境の中にこそ夢がある」ということです。私自身の人生というものは、多くの逆境に直面してきました。私は1947年生まれで、今年で70歳になります。農家の7男として生まれ、1965年に高校を卒業しました。私は、たいへんな「落ちこぼれ」でした。「落ちこぼれ」でありながら、私は大きな夢がありました。3つの夢です。政治家、小説家、牧場主のいずれかになることを夢見ていました。
1968年私が21歳の時、私はアメリカ合衆国に渡る決心をしました。牧場主になるためです。農業研修の一環としてアイダホ州に行きましたが、蓋を開けてみると実際は、低賃金の労働者として働くというものでした。1971年24歳の時、普通の人は18歳で大学に行きますが。私は、ネブラスカ大学農学部にこの年で入学しました。1979年、その2年前から政治学専攻に転じました。なぜなら、政治家になりたかったからです。ハーバード大学の政治経済学博士課程に進みました。
そして、50歳の時に、東京大学大学院法学政治学研究科教授に就任しました。51歳の時には、熊本県の知事に当選しました。
このように私は様々な経験を積んできました。しかし、私の人生というものはそれほど平坦ではありませんでした。こうして「逆境の中にこそ夢がある」というスローガンを持つようになりました。これは私の人生におけるモットーでもあり、先ほど申し上げたように「逆境の中にこそ夢がある」ということが、熊本行政における方針でもあります。
政治学者から政治家に転向した私は、3つの行政方針を持っていました。1つ目は、リーマンショックの直後に熊本県知事に就任したため、経済に依存する価値観から幸福度に依存する価値観へ転換したいと考えていました。2つ目は、リーダーシップというのは、逆境の中でこそ熊本県を導くビジョンを提示するものだ、ということです。熊本県民とともにトンネルを通り抜ける必要があるからです。だから、ビジョンを提示しなければいけません。3つ目は、現在目の前にある問題を解決することです。現在逆境にあったとしても、多くの解決するべき課題があります。
こうして、熊本県行政に取り組んできました。熊本県の行政を改革するために、公共政策のパラダイム・シフトを実施しました。通常、行政というものは、ガイダンス、規制、統制、継続などを強調します。しかし、これは事実ではありません。公共政策のゴールというものは、熊本県民全体の幸福度を最大化することです。だからこそ、私は何度も熊本県民全体の幸福度の最大化を強調してきました。
私が9年前に知事に就任して以来、行政に対して3つの方針を取ってきました。第1に「意思決定」。第2に「明確なゴール設定」。第3に「責任を持つ」ことです。
本日はこのうち2つのアプローチについてご説明します。明確な目標設定について、くまモンを例にご説明します。くまモンは、もう少ししたら登場します。
そして、熊本地震における責任についてです。
その前に、どのような「意思決定」か、例を挙げてご説明します。2008年に熊本県知事に就任しました。この時、熊本県は経済的困難に陥っていました。経済問題を解決するために、思い切った意思決定が必要とされていました。私が行った1つは、自分の知事給与の削減です。知事給与は124万円でしたので、シンプルに100万円カットしました。
つまり1ヶ月の給与は24万円でした。しかし、所得税のことをすっかり失念しておりました。所得税を支払うと14万円しか残りませんでした。しかし、問題はありませんでした。なぜなら、7年で150億以上の経費削減に成功したからです。削減できた年間経費は約53億から106億と倍になりました。
そして、現在、熊本地震に対応していますが、熊本地震や他の多くの事態に際して、最も重要な備えというのは、経済の健全化であると思います。熊本地震に際してこれを痛感しました。最も重要な災害に対する備えは、経済の健全化なのです。
次は、「明確なゴールの設定」です。私のゴールはWHYの最大化です。WHYとは全体幸福度を意味します。私なりの方程式によると、このWHYは4つのことに依存します。まず第1は、経済的な豊かさが幸福度に影響します。だから、Economic(経済)はとても重要です。第2は、Pride(誇り)です。人々が誇りを持って生きることは熊本県民の幸福にたいへん重要です。第3は、Securuty(安心)です。安全と社会化。第4は、Hope(希望)です。このように、私の公共政策のゴールはEPSHを様々な政策をもって向上させることと言えます。
これから、みなさんに1つの公共政策の事例をお見せします。くまモンです。
くまモン、出ておいで!
オッケー。くまモンは、古典的な公共政策とは言えません。しかし、くまモンは人々を幸せにします。くまモンのおかげで、熊本県経済は潤い、熊本県民に誇りを与え、くまモンの活動を通じで安全や社会化の向上を支えてきました。くまモンは非常に多忙ですので、老人ホームを訪問することはできないので、これからこれを使って、くまモンの老人ホームの訪問を行いたいと考えています。
おしゃべりくまモン:老人ホームを訪問することはできないので、これからこれを使って、くまモンの老人ホームの訪問を行いたいと考えています。
蒲島:くまモンは、英語を話すこともできます。
おしゃべりくまモン:くまモンは、英語を話すこともできます。
(会場笑)
蒲島:司会の方に話しかけてもらいましょう。
司会者:こんにちは、お元気ですか? ありがとう。あなたの言葉とは何ですか? 母国語は?
おしゃべりくまモン:こんにちは、お元気ですか? ありがとう。あなたの言葉とは何ですか? 母国語は?
(会場笑)
蒲島:このようにしてすべての人々の幸福度を向上させます。
くまモンは、熊本県庁の臨時職員でもあります。ある日、くまモンは、部長に就任しました。部長というのは、上から3番目の地位です。知事、副知事そして部長です。くまモンは現在、熊本県営業部長に就いています。営業部長として、このグラフを紹介してください。2015年における彼のグッズ販売は10億アメリカドルを達成しました。すでに大変素晴らしい数字です。しかし、昨年の売上は12.8億アメリカドルを突破しました。くまモンのおかげで、熊本にたいへんな経済的豊かさがもたらされました。
また、くまモンのおかげで、私たちは誇りを得ることができました。こちらは、ウォールストリートジャーナルの1面記事です。ウォールストリートジャーナルがくまモンの話を取り上げてくださったのです。これは熊本県民にとってはたいへんな誇りです!
私がお見せしたのは、おしゃべりくまモンです。おしゃべりくまモンのおかげでお年寄りのみなさんはとてもハッピーになります。くまモン自身は話すことができません。だからこそ、彼はこうも国際的なのです。彼は日本語も何も話しません。
(会場笑)
もう1つ重要なことは、くまモンの利用はタダなのです。ロイヤリティフリーです。
もし、あなたが何を持って理想的なコミュニティや社会だと考えるかと尋ねるならば、差別のない社会と答えます。人種、宗教、性別、年齢、住まい、社会的地位すべてです。くまモンの宇宙では、誰もが平等なのです。差別はありません。くまモン宇宙に入るのも、フリーです!
制限もありません。誰もが参加して利益を得ることができます。つまり、フリーであること、そして自治はとても重要なのです。もう1つはボーダレスです。つまり、くまモンの宇宙には政治的な境界が存在しません。そしてオープンです! 開かれた社会では、誰もがくまモンの宇宙に参加することができます。
このように、理想的なコミュニティを創造するために、私たちはくまモン宇宙を利用しているのです。これは、くまモンの繁栄、ひいては熊本県の繁栄において、非常に大事な部分だと考えます。
この写真が示すようにくまモンの宇宙は今もなお、拡大し続けています。非常に急速に拡大しています。
左上の写真は「くまモンMINI」です。MINIオックスフォード工場が「くまモンMINI」を製造しました。非常に生産的かつ利益をもたらしました。もう1つは、ドイツ企業シュタイフが「テディベアくまモン」を作りました。「テディベアくまモン」は1体300アメリカドルという値段でインターネットを通じて販売されました。1500体がわずか10秒で完売しました。10秒です! シュタイフは利益を上げることができ、くまモンもまた有名となりました。くまモン商品の完売があまりにも速かったからです。
左下は、フランスの「バカラくまモン」です。また、カメラ会社のライカは、「ライカくまモン」を制作しました。このように、くまモンの宇宙は拡大し続けています。くまモンが有名になるということは、つまり、熊本自体が有名になるということです。これがゴールです。ゴールとは、様々な手段を通じて人々を幸福にすることです。
1つの公共政策の事例は、くまモンです。他にも、橋を建設すること、道路を作ることなど、様々な公共政策が存在します。しかし宇宙を作り出すというのは、また異なった公共政策です。これが、私たちが取り組んでいることです。
そして、本日最も重要なことは、熊本地震です。これからお話しします。「責任を持つ」ことは、熊本における蒲島行政の第3の方針です。「責任を持つ」というのは、先ほどお話しした「逆境の中にこそ夢がある」ということと共通する点があります。より良く再建することに責任を持つということです。常に前向きに「逆境の中にこそ夢がある」ということは、地震から再建するプロセスの最中においても常に夢を持つということです。「どうすればいいのか? どうすれば熊本を幸せにできるのか?」これが熊本地震に対応する際の私の哲学です。
熊本地震に対応する原則とは何か? 第1は、地震によって被災した方々の痛みの最小化です。第2により良く再建することを常に考えることです。震災以前よりもより良くするのです。これが第2です。今、すべての職員が震災対応に追われています。しかしすべての職員が「どうすればより良く再建することができるのか」を考えています。第3に、「より良い再建」を更に将来の熊本の発展に繋げるためにはどのするか、常に考えることです。常に将来にわたる熊本の発展を考える、これが第3の原則です。
震災から約1年が経ちました。現在その対応フェーズは変化を迎えています。まずは、人命救助が第1優先でした。水と食料の供給が第2番目です。そして、第3番目は避難所の提供です。第4番目は仮設住宅の提供です。現在、私たちはこの仮設住宅提供のフェーズにいます。避難所はすでになく、仮設住宅に被災者は住んでいます。2年後には被災者は自分の住宅を見つける予定です。もしくは、行政から低価格の住宅を提供する予定です。このように常に局面は変化しています。
震災を経験した場合、まず第1に、健全な経済状態であることがとても重要です。そして、第2に変化する局面に応じて、適切な対応を取ることがとても大切です。どのように私はこの変化に対応したか、お話しします。
私がハーバード大学の学生だった時、サミュエル・ハンティントン氏について学びました。彼は「ギャップ仮説」という理論を唱えました。期待値と実態の差です。人々は多くの期待を持っています。そしてその期待値は、素早く変化します。実態が追い付かないと、それは不満を生みます。そして、暴動に繋がります。だから、実態を可能な限り早く、人々の期待値に一致させなければいけません。彼らが不満を覚える前に、です。これは、熊本地震のように大きな震災に直面した際、非常に重要な点だと思います。
それでは、どのように期待値に応えたかご説明します。最初、人々は避難所で満足しています。そこには水と食料がありますから。しかし、すぐに人々は不満を覚えるようになります。だから、仮設住宅を速やかに提供する必要があります。人々の「痛み」を最小化するために、私たちは木造の仮設住宅を用意しました。比較的リラックスができ、快適です。
同時に、仮設住宅の近くに、組み立て式住居を設置しました。
現在、震災から1年経って、熊本の人々はまだ仮設住宅に入居しています。しかし、仮設住宅はとても狭いので、早い段階で仮設住宅に不満を覚えるようになるでしょう。熊本型復興住宅を通常の住宅よりも安価に提供する必要があります。また、住宅の購入ができない人々のために、このような復興公営住宅を用意しなければいけません。つまり、人々が仮設住宅に不満を覚える前に、可能な限り早く先手を打って実態を提供する必要があります。これが震災から1年経った今、私たちが行っていることです。
第2は熊本城です。熊本城は震災により多くのダメージを受けました。そのため、熊本城を修復する必要があります。実態を提示することができないので、代わりにこのような発表をしました。天守閣の修復を今から2年半後に当たる2019年までに終わらせると。これはとても難しいことですが、どうしても発表の必要がありましたし、1度発表したからには、必ず達成しなければいけません! そうでなければ人々は不満に思うでしょう。発表するということはとても重要です。
その他の建築物についても20年以内に修復を終え、一般公開すると発表しました。これが、人々の不満と痛みを削減するということです。
もう1つは阿蘇山です。阿蘇山は世界最大級のカルデラ地形を持ちます。1度減少した観光客を取り戻すべく、様々な施策を実施しています。これは熊本のもう1つの宝です。阿蘇山へのアクセスを再建します。これは簡単なことではありませんが、やらなければいけないことです。
第3は、震災に強い港の建築です。熊本には八代港という港があります。現在クルーズ船の招待を進めています。2015年には、わずか10隻でした。2016年にはさらに10隻。そして今年2017年には70隻ものクルーズ船の入港を予定しています。さらなる将来の発展に向けて、八代港における震災に強い港の建築を推進します。何年か後には、200隻のクルーズ船が入港することを想定しています。これは震災以前よりもより良い再建だと言えます。熊本の更なる発展です。
最後に熊本の更なる発展のために、インドネシアバリ島とMOU(基本合意書)を締結しました。バリ島はみなさんご存知のように、非常に観光に力を入れています。私たちはバリ島から観光業を学び、代わりに農業技術を提供する予定です。
お時間が来たようですので、この辺りで終わりにします。
最後にお伝えしたいのは、私の公表政策におけるモットーは「逆境の中にこそ夢がある」です。そして、このモットーが、熊本地震から熊本が再建するに当たっても適応されているということです。
ありがとうございました。
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