2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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記者3:海事プレスのイナガキと申します。よろしくお願いいたします。
平子次期社長におうかがいしたいことがあります。先ほど篠辺社長が課題と言うか、やり残しの1つとして「国際航空貨物事業の競争力の強化」ということを言及されていたんですけれども、グループとしてANA Cargo、OCS、あとはANAホールディングス、そして、フレイター(注:貨物専用機)の運行というかたちで、グループとして今後、国際貨物、国内貨物事業をどのように強化されていくか。期待されている部分と今後の強化策を教えてください。
平子裕志氏(以下、平子):いくつか航空貨物に関しましては特徴的な点があると考えております。1つは需要のいわゆる乱高下が非常に激しいビジネスだということでありまして、一昨年から昨年にかけて需要が急減したということ。それに伴って単価が大きく下がったというような側面がございました。
単価が下がった原因の1つは、燃料サーチャージの減少とか、あるいは円高に一気にいってしまったとか、こういった市況的な要因もございますが、なにはともあれ、需要の乱高下が非常に大きい業界だと認識を持っているところです。
そのなかで航空貨物を今後どう見ていくかなんですが、やはり他の会社にはない特徴を出していける、こういった会社になっていくべきだと思っております。具体的に言うと、もともとOCSを買収したときに「エクスプレス事業を強化していくんだ」といった触れ込みで我々も臨んできたわけですが、なかなかエクスプレス事業も思うようにいかないということであります。
平子:今後、我々が目指すべくは、1つはネットワークですね。ネットワークといいますのは、フレイターを使うことによって、いわゆる、セカンダリーマーケット、サードマーケットに対するアクセスというのが、格段に良くなってくる。このへんの自負はございますので、他社にはないネットワーク、これをどう使っていくのかということです。
問題はその中身なんですが、昨今、法人旅客が非常に旺盛に日本に来ていただいているわけですが、そこで買い残されたお土産とか品物については、本国に戻ってから、いわゆるeコマースというかたちで、輸入をすると。こういう仕組みが今後増えていくんじゃないかと、我々は考えています。
そういった中で、私どもはOCS、あるいは、そこの関連会社でACDという会社があるんですが、そこで越境eコマースの仕組みをシステマティックに構築していく。こういったようなことも、今進めておりますので、なにか新しいチャレンジングなイノベーションのものを同時に追求しながら、なおかつ、フレイターといいますのは、旅客機と違って需要が少なくなれば比較的運休をすることも可能ですから、そういった、オペレーションの柔軟性、こういったものも確保しながら、最終的な帳尻を合わせていくと。これが私どもの国際線のあるべき姿だと考えています。
記者4:ロイター通信のシラキと申します。よろしくお願いいたします。篠辺社長におうかがいします。今後は、ANAホールディングスの副会長というお立場になられるわけですが、これまでももちろん取締役というお立場はあったかと思うんですが、伊東会長ですとか、片野坂(真哉ANAホールディングス社長) さんなどに、副会長という新しいポストで、事業会社としての航空事業から、ANAホールディングスの視点に立った上で、新しいポイントというか、見るべき視点などで、任されたことがあるのかどうか。
例えば、JALさんが8.10ペーパーを解除されて、4月から普通に戦って来るわけなんですけども、そういう意味で、ANAホールディングスとして強化していく方向性で、なにか話し合われていることがあるのかどうか。そのあたりを、新しい役割について、もしあれば教えていただきたいんですけれども。
篠辺修氏(以下、篠辺):実際の役割分担はこれからになります。というのも、今日は、全日本空輸株式会社の社長の交代の人事が決まっただけですので、その後の体制については、まだ検討の最中でありますので、その中で、決まることになります。
ただ、私の立場自身は、事業会社であった全日本空輸の経営の執行責任から離れますので、グループ全体の中で、どういうかたちで監督していくのか、あるいは、運営方針を立てていくのか、選択と集中について、今後どういう修正がいるのかいらないのか。そうしたところの目配りをやっていくことになります。
JALさんとの関係では、1つは航空輸送事業のフルサービスキャリアという分類からみるのと、LCCのマーケットとの関係で、私どものホールディングはLCCとフルサービス両方を見ながら、言ってみれば、ヒト・モノ・カネの配分方針を作っていきます。
そうしたところについて、これまでの経験なりを活かしながら、あるいは、LCCを外から見た立場から、今度はどういう見方に変えていくかな、そういったところを議論したり、方針に反映したりというふうに考えております。
そのほかの事業についても、選択と集中については、ここまでは我々も順調に成長できていますけれども、順調がそうは続くと思っていませんので、どういうかたちで将来へ備えていくのか。そういったことを考えていくことになると思っております。
記者5:週刊東洋経済のナカガワと申します。平子さんに2つほどおうかがいします。1つは、直近はホールディングスのCFOとして財務のほうを見てこられて、数字にお強いのかなと思うのですが、そういった視点を、社長になられてどう活かしたいかということが1つ。
もう1つはこれも過去の経験をどう活かすかという話ですが、今後を考えた上では海外とのサービス、キャリアとの競争を考えていかなければならないと思います。そういった意味で、ニューヨークで勤務された経験ですとか、そういった国際経験という考え方をグローバルに活かすためにどうしていきたいかをおうかがいしたいと思います。
平子:最初のご質問でありますが、わたしもこの2年間でありますが、ホールディングスのCFOとしてとくに経理財務まわり、あとはIR、こういった仕事に携わって参りました。実際にこの仕事をやってみて感じましたのは、やはり数字は嘘つかないなということなんですね。数字だけ追いかけてもナンセンスだと思っていまして、やはりそこの裏付けとしてしっかりとした事業構築がないとだめだと。
ですので冒頭申し上げましたが、我々従業員がお客様に対してどうのような仕事をしているのかということ、それが数字に直結するということ、これを私は痛感いたしました。したがいまして、数字を見ながら、現場の状況を判断するということはあるのですが、逆に現場をまずはしっかり見て、その後12ヶ月分数字を見てみるとまた違った見方が見えるのかな、という感覚を持っておりますのでこれをぜひやっていきたいなということが1点です。
それから、他の外国のエアーラインとの関係がありますが、世界のエアーラインは、本当に合従連衡の時期を迎えていると私は思っております。デルタ航空さんが日本の発着路線を少し減便して、韓国のコリアンエアーさんとジョイントベンチャーをする。こういった1つの事象をとってみても、彼らも今後生き残るためにどういう方法が1番良いのだろうかということを本当に考えてきていると思っております。
私どもも、おかげさまでユナイテッド航空・ルフトハンザ航空と、それぞれ欧米で非常に良いパートナーに恵まれまして、この辺のビジネスモデルが功を奏しているというわけなんですが、やはりこれだけで良いのかという視点も必要だと思っております。
これまでの成功体験がかならず未来に直結するということでもないと思っておりますので、ここは、現状を見ながら、しかも世界のグローバルパートナーの意向も探りながら、今後最敵な組み合わせといいますか、当社の立ち位置というのを模索していきたいと考えております。
記者6:朝日新聞のナイトウです。どちらにお答えいただいても構わないのですが、「重要な経営課題」ということで発表が出ていて、株価もだいぶ動いて株式市場が混乱したのですが、重要と表現した意味というか理由というのは、投資家向けにもう一度説明してほしいということです。
篠辺:表題について、中で合議して決めたわけではなかったものですから、少し反応に驚きました。ですから経営の案件の中で重要な決定には違いないんですけれども、そういう意味ではもう少し表現がなかったかなというのは正直反省をしております。
実際に冒頭にご説明をしたとおり、臨時の取締役会で決めたのは人事案件で社長交代のことだけであります。現在、それはもちろん中期計画がローリング中でありますから、その中ではテーマは盛り込んでおりますので、いずれ丁寧なご説明はいると思いますけれど、今現在第3クォーターの決算説明のやり取りを、こういったあと、なにか特別な事情が起きているかというと、それはまったく起きておりません。
むしろ、まだ説明をできていない検討中のアイテムについて、できるだけ早くまとめてご説明をしていくというのがよいのかなと思っております。そういう意味では、人事案件だけであることをどう表現すればいいのかなというのは改めて感じました。申し訳なかったかなと思っております。
記者6:すみません、あと1点だけなんですが、新しく社長になられる平子さんにおうかがいできればと思います。今、国会のほうで文部科学省の天下りの問題が非常にクローズアップされていて、全日本空輸、ANAホールディングスも、国土交通省からOBを受け入れていると思いますが、そういった関係をちょっと見直していくようなこともあるのかというのを教えてください。
平子:私どもも確かに、人材という観点で、私どものなかで貢献していただけるという方をお選びさせていただいているということですので、その観点で、いわゆる、法律に触れないといいますか、そういった範囲で私どもも引き続きこういった方に来ていただきたいとは思っております。
記者7:西日本新聞のクロイシと申します。平子さんにおうかがいしたいんですけれども、大分県出身ということで、大分県のどちらの市町村のご出身かというのと、いつぐらいまで大分で過ごされて、航空業界、全日空さんを志したきっかけ等。あと趣味とか休日の息抜きとか過ごし方とかあれば、よろしくお願いいたします。
平子:大分県出身で、生まれが別府で4歳から大分市に住みまして、18歳までおりました。
実は、私が全日空に入った動機はその時点ですでにもう十分に形成されていまして、小学校のときは旧大分空港の真ん前に住んでおりまして、毎日飛行機の離発着を見て育ったという、こういう人間であります。
これに加えて、当時はYS-11という飛行機がデビューしたてだったということもありまして、その遊覧飛行に乗せてもらう機会がありまして、そのときの体験が一生忘れられないということで、私はずっとパイロットになりたいと思っていたんですが、残念ながら視力の関係でそれを断念せざるを得なかったということで、まだ、三つ子の魂と言うんでしょうか、その気持ちがあって、航空業界を受験したと。これが入社の動機であります。
趣味は、とりたてて趣味というものはないんですけど、ずっと好きだったのはクラシック音楽。とくにシンフォニーとかオペラ、こういった壮大な曲を聴いて、ストレスを解消するという、これが私のストレス解消法であります。
まああの、それ以外は特段……。スポーツというのはいろいろやってきたんですが、とくに歩くことはできるだけ心がけてまして、階段なんかもあれば階段はエスカレーターを使わず上るとかですね。
こういったことで、私も実は入社以来体重がほとんど変わっていない人間ですので、そういった意味では比較的これまで健康に過ごせてきているという、こういった人間であります。よろしくお願いします。
記者8:よろしくお願いします。平子さんと篠辺社長に1つずつお尋ねします。
平子さんにお尋ねしたいのは、先ほど「海外での認知度ということをこれから取り組みたい」とおっしゃってましたけれども、御社の場合、今『スター・ウォーズ』の飛行機を飛ばしたりだとか、かなり外国人向けの訴求策というのをとっていらっしゃると思うんですけれども、現状の進捗としてどれぐらい進んでいる、何合目まできているとお考えなのかということを教えてください。
篠辺社長には、ずっと787(注:ボーイング787)導入を手がけられてきましたけれども、現状かなりいろいろな問題が出尽くしてきているとは思うんですけれども、事業会社の社長としてご覧になってきて感想をお聞かせください。
平子:では最初に、私のほうから。実は、いろんなかたちで話題になるんですけれども、LPGA(注:全米女子プロゴルフ協会)の……女子ゴルフですね。このスポンサーに一昨年からなっていまして、ここに私どもの名前が出るというこういったようなこととか、今ご指摘のような、『スター・ウォーズ』のペインティングとか。こういったかたちで注目をあびるようなことというのはやってきています。
一過性でなければいいなと我々は思っておりまして、むしろ持続的に私どものマーケティングがお客様のなかに染み込んでいくようなものってないのかな、ということで、私が米州室時代に指示しましたのは、「やっぱり本格的なマーケティング戦略を作ろうじゃないか」ということで、当時あったアメリカの中にある部署なんですが、マーケティングの部署にそれを指示しました。
実際にアメリカ人がANAという名前をどれだけ意識するんだろうかと。今、実際に国際線の半数が外国人という実態なんですが、米国線もほぼそれに近い、半数ぐらいが私どものお客様になっているという事実があるんですけれども、実際には先ほど申し上げたような、ジョイントベンチャーで、例えばユナイテッド航空のチケットで私どもに乗ってもらっているというのも含めての数字なんですね。
これがまあ、将来的にANAのチケットで乗っていただくようなかたちになればいいなということで。ということは逆に言うと、ANAをどれだけ意識して乗ってもらえる人がいてくれるんだろうかということですので、直接彼らにそういうマーケティングをして、マイレージも含めてですけれども、自ら乗っていただけるような、こういう仕組みづくりをやっていきたいということのなかで、今おそらく着々とそのプランが遂行中だというふうに聞いております。
そういう意味ではまだまだ5合目ぐらいのイメージなんですけれども、少しずつ進捗してきているという実感は持っております。
篠辺:787について。私が社長になるときにバッテリーの問題がちょうど起きまして、18機を3ヶ月ほど止めたわけですね。ですから余計、導入プロジェクトの責任者をやっていたこともあって、たくさんの質問を社長就任の時もいただきました。
あれから4年。まあ、きみまろ(注:綾小路きみまろ)さんみたいになっちゃうわけですが、信頼性は当初期待していたレベルに上がってきています。例えば777(注:ボーイング777)だとか、767(注:ボーイング767)とくらべて、完全に追いついたかというと、どうやら追いついた、というレベルです。
一方、これはおもしろいんですが、767だとか777は、今度は、「エイジング」と呼んでおりますけれども、長年使っていくと今度は新しいモードの不具合が出るという領域に徐々に入ってくるわけです。そういう意味では787は初期故障のモードをどうやら終えるというところに来ていると思います。
ただ、昨年もエンジンではご迷惑をかけたりご心配をかけたわけですけれども、エンジンについてはまだまだバージョンアップを続けてまいりますので、そういう意味ではロールス・ロイスを我々は採用していますから、そこが抜かりのないかたちでバージョンアップをしてくれれば、ここまでのパフォーマンスは期待通りを出ていますし、私どもの体制も十分かなう体制に出てきてますので、私自身はこの4年間の間で、やっと落ち着けるようになったのかなと。
それで、整備をやっていますと、不具合があるかないかっていうのは、ないわけがないんですね。どんな飛行機でも。大事なのは、その不具合をコントロールできているか。
お客様にとっては便が切れたりディレイしたりしないで済むようなかたちで、できれば不具合を未然に防止する。出たとしても、運航に影響がないかたちで、これはスペアの機体も含めて、トータルとしてお客様には不安やご心配をかけないようなかたちがとれているかというのが大事で、そこはもうだいぶできてきたと思っております。
ただ、まだまだいろんなかたちでこれからも、みなさん方にはご報告のチャンスが少ないことを祈るばかりですけれども、そういう意味の経験からすれば、いろんなことを経験しながら、さらに良いレベルに。これから、人生で言うなら青年期に入る機材、まだ悪さするかもしれません(笑)。不良にならないように、ホールディングスに行ってもしっかり見ていきたいと思っています。
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