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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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大隅良典氏:よろしくお願いします。
本日、夕刻にノーベル委員会から受賞のお知らせをいただきました。もちろん研究者としてはこの上もなく名誉なことだと思っております。
この数年、思いもかけずいろんな賞をいただくことになりましたけど、ノーベル賞には格別の重さを感じております。
ノーベル賞、私は少年時代にはまさしく夢だったように記憶しておりますが、実際に研究生活に入ってからは、ノーベル賞は私のまったく意識の外にありました。
私は自分の私的な興味に基づいて、生命の基本単位である細胞がいかに動的な存在であるかということに興味を持って、酵母という小さい細胞に長年いくつかの問いをしてまいりました。
私は人がやらないことをやろうという思いから、酵母の液胞の研究を始めました。
1988年今から27年半ほど前に、液胞が実際に細胞のなかでの分解に果たす役割というものに興味を持ちまして、そういう研究を東大の教養学部の私自身たった1人の研究室に移ったときに始める機会があり、それ以降、28年にわたってオートファジーという研究に携わってまいりました。
オートファジーという言葉は耳慣れない言葉かと思いますが、酵母が実際に飢餓に陥ると、自分自身のたんぱく質の分解を始めます。その現象を私は光学顕微鏡で捉えることができたということが私の研究の出発点になりました。
馬場美鈴さんという、電子顕微鏡でその過程を解析することで、実はそれがそれまで動物細胞で知られていたオートファジーという現象とまったく同一の過程だということがわかりました。
酵母は遺伝学的な解析というのにとっても優れた生物なので、さっそく私たちはオートファジーに必須の遺伝子というのを探すことを始めました。
幸いこれも大学院生としてジョインした塚田美樹さんという人の努力で、わりに短時間の間にたくさんのオートファジーに必須の遺伝子をとることができました。
それらの遺伝子は実はオートファジーの膜現象に基本的な分子装置であるということが私たちの解析でわかることになりました。
幸いこれらの遺伝子は酵母のみならず人や植物細胞にも広く保存されているということがわかりました。
こうしてオートファジーの遺伝子が合成されたということで、それまでのオートファジーの研究は質が大きく転換をすることになりました。
その後はさまざまな細胞でオートファジーがどのような機能をしているかということが世界中のたくさんの研究者で解析をされて今日に至っております。
で、私はずっと酵母という材料でオートファジーの研究をしてまいりました。そのような基礎的な研究が今日のオートファジーの研究の大きなきっかけになったということであれば、私は基礎生物学者としてこの上もない幸せなことだと思っています。
もちろん現代生物学は1人でやりおおせるものではありません。私もその間、27年間、私の研究室で研究を、たゆまぬ努力をしてくれた大学院生、ポスドク、それからスタッフの方々の努力の賜物だと思っております。
それから、酵母から動物細胞のオートファジーへと転換してくれました水島昇、吉森保、両氏にも今現在、動物細胞におけるオートファジーの世界を牽引している2人とも、私は今日の栄誉を分かち合いたいと思っております。
今後、オートファジーというたんぱく質の分解っていうのは細胞の持っているものすごく基本的な性質なので、今後ますます、いろんな現象に関わっているということ明らかになってくれるということを私も期待をしております。
1つだけ強調しておきたいことは、私がこの研究を始めたときに、オートファジーは必ずがんにつながるとか、人間の寿命の問題につながるということを確信して始めたわけではありません。
基礎的な研究というのはそういうふうに展開していくということをぜひ理解していただければと思います。基礎科学の重要性をもう一度強調しておきたいと思います。
これまで私の研究の場をあたえていただきました、東京大学教養学部、理学部、基礎生物学研究所、それから東京工業大学には厚く御礼申し上げます。
これまでの私の研究のほとんどは文科相の科研費によって支えられたことにも、いただきましたことにも感謝をしたいと思います。
で、この間私の研究を支えていただいた2人の恩師、この5月に亡くなられた今堀和友先生と安楽泰宏先生には、心から感謝の意を申し上げたいと思います。
最後に、戦後の非常に大変な時代から常に私を温かく見守ってくれた、今は亡き両親にまずは今日のことを報告したいと思っております。
また私の家族、とりわけ折に触れて私を支えてくれた妻、万里子に深く感謝をしたいと思っております。ありがとうございました。
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