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「表現の自由」国連特別報告者 デビッド・ケイ氏 訪日調査後 記者会見(全5記事)

記者クラブ制度、政府やスポンサーの懸念… 国連報告者が日本メディアの独立性を問う

2016年4月19日、日本外国特派員協会主催により、国連人権理事会が任命した特別報告者で「表現の自由」を担当する米カリフォルニア大アーバイン校のデビッド・ケイ教授が記者会見を行いました。本パートでは会見後の質疑応答部分をおおくりします。訪日後、約1週間に及び日本のメディアについて調査を行ったケイ氏。記者クラブ制度や、政府、広告、スポンサーからの懸念があることなど、日本のメディアが独立しにくい理由について語りました。

日本の記者クラブと放送法の問題

記者1:アントニー・ローリーと申します。シンガポールビジネスタイムズの記者です。多くのインタビューを受けて、今のメディアの自由にどういうところからの弾圧があるのかについて、どうお考えでしょうか? それは、日本の安全保障の懸念から来ているのでしょうか?

または、ほかのアジアの国に比べて、日本が自由すぎるという懸念から来ていると思われますでしょうか? こういった問題の原因はどこにあるとお考えでしょうか? お願いします。

デビット・ケイ氏(以下、デビット):ご質問ありがとうございます。これは非常に難しい質問だと思います。比較するような形でお答えすることはできないのですが、圧力というものは、大きくわけて2つのファクターから来ていると思います。

歴史、構造的なところを見ますと、日本におけるメディアというのは、先ほども申し上げたように、記者クラブのような制度が存在していまして、メディアの組織、構造が特定の会社をベースにして組織されているということが1つの原因になっていると思います。

そういった政府とかなり近い組織、社会的なネットワークに所属していることが背景にあると考えております。ある意味で、ソフトな圧力かもしれないですが、非常に抵抗するのが難しい種類の圧力になっていると思います。

それに加えて、私がこの視察で学んだことの1つになるんですが、放送法が最初にできた1950年代、日本がまだ主権国家だったときに、独立した規制機関があったと聞いております。しかし、それが戦後の政権によって廃止されたというような歴史があると聞いております。

そういう歴史的な背景を見ると、独立した規制機関が存在しないというのが1つの原因になっているのではないかと考えております。

政府の高官などが情報を管理しようとすることは、政治家にはよくある抵抗だと思います。どの政治家、どの政権にもあることかもしれません。それは、民主国家においても同じだと思います。

しかし、法的な意味でも、組織的な構造的な意味でもそれに抵抗することが、なかなか難しいというような現状があると思います。

日本外国特派員協会はジャーナリズムの最後の砦

記者2:フリーランスジャーナリストの田中龍作と申します。ここ、FCCJ(‎日本外国特派員協会)は我々にとって、ジャーナリズムの最後の砦と考えられます。安倍政権は、このFCCJだけはコントロールできないと、私は申し上げたいと思います。

首相官邸から彼らのスタッフに対して命令があったそうです。このFCCJのスキャンダルをなんとかしろと意見があったそうなんですが、ご存知ですか? 彼らは、このFCCJのスキャンダルを何か調査しろと指令があったそうです。ご存知でしょうか!?

デビッド:今のは質問ですか?

司会:「ご存知ですか?」という質問だそうです。

デビッド:知りません。

司会:はい。ありがとうございます。では、次、お願い致します。

国からの招待がなければ、我々は調査できない

記者3:パトリックと申します。2つ質問がございます。1つ目です。今回、外務省からの招待があったということですが、一体、招待というのはどういうことなんでしょうか? ほかの国を調査する権利もあるのでしょうが、どういった仕組みで今回、訪日が叶ったのでしょうか?

ほかの国もお仕事で訪問されると思いますが、報道の自由ということについてほかの国の状況をお話いただけますでしょうか?

デビッド:私の今回の訪日においては国連の特別報告者という立ち位置であります。国連人権理事会から任命を受けて、今回、独立して調査を行うべく日本に来日しております。

年間300回から400回、表現の自由に関する様々なトピックで、世界中の国々とやりとりをしています。そして、テーマ別の報告書を出しております。国連人権理事会、それから国連の安全保障理事会に対する報告を行っております。より長い報告書を出すわけです。

すべての特別報告者がこういうことを行っているわけですが、勝手に調査をすることはできません。国からの招待がなければ、我々は調査を行うことができません。

今回は、外務省からの招待があったわけですけれど、日本に関しては、いわゆる招待状があるわけです。常時、招待状があります。つまり、国連の特別報告者に対しては、つねにオープンに「招待をしますよ」と。「国連の仕組みを我々は受け入れますよ」いう姿勢を表現しているのだと思います。ですから、いつでも来てくださいと。

今回、特別秘密保護法に関する調査も1つのテーマとして上がっていましたし、先ほど、デイビッドさん(司会)がおっしゃったレポートに関する具体的なトピックもありましたので、これは本当に訪日するための確固たる理由があると考えました。ですので、今回、この時期に日本に来ることを選んだわけです。

もう1つは、日本のような民主主義国家を訪問するというのは、日本における市民的および、政治的権利に関する国際規約の19条(注:表現の自由)があると。これは日本が批准したものであります。

それからもちろん日本国憲法の21条(注:集会の自由、結社の自由、表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密)があるからです。この21条は、市民的および、政治的権利に関する国際規約の第19条を反映しています。

ある意味、21条はICCPR(注:市民的及び政治的権利に関する国際規約)より強いものであると思います。なぜかというと、日本国憲法第21条には、検閲は禁止と書いてあるからです。

このような法律、憲法を持った日本に来日したわけですけれども、ほかの海外の状況はと言いますと、先月は、同じくらいタジキスタンで時間を過ごしました。11月はトルコに訪問する予定であります。(注:タジキスタンとトルコは報道規制が非常に強い国家)

非常に異なるシステムを俯瞰(ふかん)することになるわけです。メディアの状況は国ごとにまったく異なるということです。

政府、広告、スポンサーからの懸念がある

記者4:マーティン・クンと申します。ドイツの新聞記者です。まずは、短いフォローアップの質問をさせていただきたいと思います。

日本を国際的に比較しますと、たとえばほかの民主国家に比べると、日本はどういう立場にあるのか、そして、今の傾向をどういうふうに評価されているでしょうか?

2つ目の質問なんですが、経済的な圧力についてです。今回の訪日の間には、たとえば、メディアにおいての広告代理店や、放送局の広告主から、どういうかたちの圧力があるのでしょうか?

デビッド:今回、具体的な比較をすることは少し控えたいと思います。なぜかというと、ほかの国では、詳細な調査をまだ行っていないという理由があるからです。

一般的なことをいくつかお話したいと思います。まず1つは、日本におけるベースライン、法的な基盤は非常に高いと思います。そして、社会的な期待も高いと思われます。日本における社会の中で、表現の自由に対する期待が高いということがあると思います。

しかし、最近の傾向を見てみますと、とくに、メディアの独立に関してなのですが、非常に懸念があります。たとえば、日本国内の法律、または国際人権法における義務もそうですし、ほかの民主国家に比べてもそうなんですけれども。

法的な義務、法的な制限、政府からの規制、組織的な限界が、根本的な心配事になっています。そういったことが背景にありまして、日本のメディアの独立というのは、残念ながら弱くなってしまっていると思います。

2つ目の質問にもリンクするのですが、経済的なことについては、今回の訪日の間には、具体的にお話する機会はありませんでしたが、こういった環境の中での役割について、私から具体的な質問はしておりませんが、いくつかの話の中でそういった話題がありました。

すべてのジャーナリストが経営のレベル、ビジネスのレベルでどういうふうに物事が進められているのかについて。

現場のジャーナリストすべてに言える話ではありませんが、どういった問題がデリケートな話題だと見なされているのか、どういったテーマをジャーナリストとして記事にすることが難しいのか。間接的かもしれませんが「政府、広告、スポンサーからの懸念がある」というようなことがあります。

今回、私からは、それについての細かい調査は行っていないですが、少なくはない発言者、インタビューの中でそういった人たちからの話が何回かありました。

総務省の高市大臣とは会う機会が持てなかった

記者5:ガーディアンのジャスティン・マッカーリーです。こんにちは。先ほど、何人かのジャーナリストがあなたに情報提供をするとき「匿名で」とおっしゃっていた、という話をしてくださいましたね。

政府の怒りを買うようなという言葉は、適切かどうかわかりませんが、そういったテーマについて、やはり圧力を感じて「匿名で」とおっしゃるジャーナリストが多いというお話がありましたけれども、一体どういうトピックなんでしょうか?

それから、実際に総務省の高市大臣と話をすることはできたのでしょうか? 彼女はなんとおっしゃったのでしょうか?

デビッド:2つ目の話なんですけれども、まず私が来日したときに、メディアから頼まれました。高市大臣に会ってくれと依頼を受け、私たちは何度も高市大臣に会いたいということを申し入れましたが、国会の審議中であるということと、会期中であるということをおっしゃっていました。

今回、非常に短い時間の中で、高市大臣の発言に関する質問をする機会は短いながらに何度もありました。結局、彼女には会えなかったわけですが、我々がなんとなく結んだ結論は、放送法4条に関することなんですけども、「電波を停波する可能性があるということ」。これは、やはりおっしゃったということですね。

(参照:【全文】高市早苗氏「電波の停止がないとは断言できない」放送局への行政指導の可能性を示唆

ほかの省庁の意見からも確認できました。ですから、政府はそのように「停波をする権利がある」ということを確認できた状況であります。こんな話をトピックとして議論してまいりました。こういった話は、みなさん、今さら驚きではないと思います。

原発に関する発言で番組が降板になるコメンテーター

デビッド:福島第一原発に関するコメントも同様であります。そういう話も聞きました。

フリーランスのコメンテーターのみなさんが、厳しい質問をテレビでなさったと。そうすると、非常に有名なテレビ番組から降板することになったというような情報もありました。

また、これだけ多くのコメンテーターが同時期に一気に降板することが重なったということは、非常に異例であるとおっしゃっていました。

司会:日本の海外における評判を気にしてのことだという話はありましたでしょうか? 少なくとも日本がいくつかのダウントレンドを経験している中で、日本の評判を気にするというようなことはありましたか?

デビッド:いえ、私はその件については、これからも訪日、あるいは調査を繰り返しながら、意見をまとめていきたいと思っております。

メディアの公平性、独立性についても、これから話を詰めていきたいと思っています。

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