【3行要約】
・多くの企業で社内研修の効果が現場で活かされず、一時的なイベントで終わってしまうという課題が発生しています。
・株式会社LDcubeの中島豪氏は、社内研修は外部講師では限界があり、社内トレーナーによる継続的なフォローアップが重要だと指摘。
・講師はアイスブレイクやインタラクティブな活動で受講者を惹きつけ、担当者は社内研修後の行動定着まで一貫サポートする工夫が必要です。
無駄にならない社内研修のやり方
多くの企業が抱える人材育成の課題として、「社内研修で学んだことが現場で活かされない」「社内研修が一時的なイベントで終わってしまう」という点が挙げられます。社内研修の真の目的は、知識をインプットすることではなく、「受講者の行動を変え、それによって具体的な成果を生み出す」ことです。
例えば、営業の社内研修の最終目標は、営業担当者の売上を向上させることにあります。しかし、社内研修を受けただけで自動的に売上が上がるわけではありません。売上を上げるために必要な特定の行動(例えば、効果的なヒアリング、説得力のある提案など)を社内研修で学び、それを現場で実践・定着させるプロセスが不可欠です。
この「行動の定着」をサポートできるのが、社内トレーナーの存在だと、株式会社LDcubeの中島豪氏は指摘します。外部講師は研修を実施することがゴールとなりがちで、研修後の受講者のフォローアップまでコミットすることは困難です。
しかし、同じ組織に属する社内トレーナーであれば、社内研修後も現場で受講者の活動を見守り、継続的なフィードバックやアドバイスを提供することができます。社内研修を「やりっぱなし」にせず、学んだことが実務に活かされるまで一貫してサポートすることで、受講者の行動変容を促し、確実な成果へとつなげることができるのです。
また、「結果につながる教育」という観点から近年特に重要視されているのが、「オンボーディング」です。これは、新しく組織に加わったメンバーが、早期に組織の文化や価値観に馴染み、スムーズに業務を遂行できるよう支援する入社初期の教育プログラムを指します。
特に、即戦力として期待されるキャリア採用の社員が増加する中で、このオンボーディングの巧拙が定着率を大きく左右します。入社直後のサポートが不十分なために、期待したパフォーマンスを発揮できないまま早期離職に至ってしまうケースは少なくありません。これは、まるでゲームの操作方法やルールを教える「チュートリアル」を省略するようなものです。
社内トレーナーによるオンボーディング研修は、新入社員が組織というゲームをスムーズに進めるための操作方法を学び、安心して能力を発揮するための土台を築く上で、不可欠なプロセスと言えるでしょう。
社内研修の実施スタイルをどう選ぶか?
社内研修のテーマやカリキュラムが固まった次に検討すべきは、その社内研修をどのようなスタイルで実施するかという点です。かつて社内研修といえば受講者が一堂に会する「集合研修」が当たり前でしたが、コロナ禍を経て「オンライン研修」という選択肢が一般化し、教える内容や目的に応じて最適な手段を使い分ける必要性が高まっています。
社内研修を行うにあたっては、主に「集合研修」「オンライン研修」「ハイブリッド型研修」の3つのスタイルがあり、それぞれに特徴と準備のポイントが異なります。まず、最も伝統的でイメージしやすいのが「集合研修」です。受講者が1つの場所に集まって対面で実施するため、直接的なコミュニケーションが活発になり、受講者同士のネットワーキングや一体感が醸成されやすいという利点があります。
講師にとっても、受講者の表情や反応をリアルタイムで把握できるため、理解度に合わせて説明を調整したり、場の空気を読みながら進行したりすることが容易です。準備にあたっては、会場の確保、机や椅子のレイアウト設定、必要に応じた音響設備の確認、資料の印刷・配布準備などが主なタスクとなります。
次に、「オンライン研修」は、ZoomやTeamsといったツールを用いてインターネット経由で参加するスタイルです。最大のメリットは場所の制約がないことで、全国どこからでも参加でき、移動交通費や宿泊費といったコストを大幅に削減できます。
準備においては、まず使用するツールの選定と、講師自身がその操作に習熟することが重要です。また、カメラやマイク、インターネット接続といった技術的な環境の確認も欠かせません。コンテンツ面では、画面越しでも視覚的に理解しやすいよう、文字ばかりではなく図やイラストを多用したスライドを用意するなどの工夫が求められます。
さらに、受講者側でツールのインストールや事前の接続テストが必要になる場合もあるため、丁寧な事前コミュニケーションが成功のカギとなります。
最後に、対面とオンラインを同時に行う「ハイブリッド型研修」があります。このスタイルは、受講者の柔軟性を高める一方で、運営の難易度が非常に高くなります。会場の設営とオンライン配信の環境構築という両方の準備が必要になる上、講師は目の前の受講者とカメラの向こうのオンライン受講者の両方に配慮し、細やかなフォローをしなければなりません。
多くの場合、オンライン受講者が疎外感を抱きやすくなるため、高度なファシリテーションスキルが求められます。
重要なのは、どのスタイルにもそれぞれの良さがあり、また「使う筋肉が異なる」ということです。常に初心を忘れず、各スタイルの特性を理解した上で入念な準備を行うことが、受講者にとって有益な学びの場を提供する上では不可欠となります。
受講者を惹きつける、社内研修を盛り上げる8つの工夫
社内研修の成功は、カリキュラムや資料の質だけでなく、当日の場の雰囲気や受講者のエンゲージメントに大きく左右されます。特に社内トレーナーは、受講者が「自分たちのための社内研修だ」と感じられるような、一体感や親近感を醸成することが重要です。
社内研修を活性化させ、受講者を惹きつけるための具体的な工夫を、株式会社LDcubeの中島豪氏は8つ紹介しています。1. アイスブレイクの導入研修の冒頭で、簡単な自己紹介やゲームを取り入れ、受講者の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作ります。例えば「今の気持ちを天気で表してください」といったお題は、手軽に始められ、互いの人柄を知るきっかけになります。
2. ビジュアル要素の活用社内研修のスライドは、文字ばかりの社内資料とは異なります。アニメーション、イラスト、図表などを効果的に使い、視覚的に理解を促進させることが重要です。講師のレクチャーを補助し、受講者の関心を引きつけるデザインを心がけましょう。
3. インタラクティブな活動社内研修の効果は、講師と受講者、あるいは受講者同士の双方向のやり取りによって大きく向上します。ディスカッションやグループワークを積極的に取り入れたり、講師から頻繁に問いかけを行ったりすることで、受講者の主体的な参加を促します。
4. エネルギッシュな話し方講師の声のトーン、抑揚、間の取り方は、社内研修の雰囲気を決定づける重要な要素です。特に重要なポイントを伝える際には、意図的に間を置くことで、受講者の注意をグッと引きつけることができます。単調にならないよう、エネルギッシュな語り口を意識することが大切です。
株式会社LDcubeのフィールドセールスである中島豪氏は、インタラクティブな要素や講師の話し方の重要性について、次のように述べています。
何十回も言いますが、一方的に話を聞いているだけの研修は、やはり退屈ですよね。お互いに関わるかたちの活動をうまく取り入れていただくところが、3つ目のポイントです。
そして4つ目のポイントは、講師の方々はぜひエネルギッシュに話してください。私も「今日、これを言うんだ」というところを意識しているので、けっこう意図してエネルギッシュに話している部分もあったりします。声のトーンや抑揚、間の取り方は非常に重要です。もちろん、一方的に講義をするような場面も必要なんですが、大事なことを言う時、しっかりと間をうまく使っていただくと、参加者の関心をグッと引くことができます。
引用:座学だけはNG、会社の“内輪ネタ”を入れる… プロが教える、社内研修を盛り上げる8つの要素(ログミーBusiness)
5. ポジティブなフィードバック受講者からの意見や質問に対しては、感謝や賞賛の言葉を添えて積極的にポジティブなフィードバックを返しましょう。「その視点はすばらしいですね」といった言葉は、受講者の発言意欲を高め、心理的な安全性を確保します。
6. コンテンツの多様化理論の説明だけでなく、具体的な実例やケーススタディを盛り込みましょう。特に社内トレーナーならではの強みとして、「社内の内輪ネタ」を交えることで、受講者は親近感を覚え、内容を自分ごととして捉えやすくなります。
7. 簡単なエクササイズの実施 長時間の研修では集中力が途切れがちです。数分間の簡単なストレッチなど、体を動かす時間を設けることで、気分をリフレッシュさせ、その後の学習効果を高めることができます。
8. テクノロジーの活用オンライン研修はもちろん、集合研修でも投票機能やチャットツールなどを活用することで、発言が苦手な受講者も意見を表明しやすくなります。リアルタイムで意見を収集・共有することで、社内研修全体の一体感を醸成できます。
これらの工夫は、一つひとつは些細なことかもしれませんが、組み合わせることで研修の質を劇的に向上させる力を持っています。