【3行要約】
・自己肯定感の重要性は知られているものの、日本人の幸福度や自己肯定感は欧米と比べて極端に低いという課題があります。
・株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏は、トップビジネスマンでも自己肯定感の低さに悩むケースが多いと指摘。
・ビジネスパーソンは行動と結果を切り分け、短所の長所変換や感謝の習慣で自己肯定感を育んでいきましょう。
自己肯定感とは何か?
自己肯定感とは、自分自身を否定することなく、ありのままを受け入れている感覚のことを指します。これは自分の中に存在する「感覚」であり、他者からの評価や特定の成果によって左右されるものではありません。
重要なのは、物事がうまくいっている時や良い状況にある時だけでなく、うまくいっていない時や失敗した時も含めて、自分に対して「OK」を出せる状態であるということです。これは、近年注目されているウェルビーイングな状態、すなわち心身ともに満たされた状態とも深く関連しています。
株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏によれば、自己肯定感は「幸福度」の土台となる非常に重要な要素です。自己肯定感が低いと、たとえ何かを達成したとしても、心からの達成感や充実感を得ることが難しくなります。仕事をしていても楽しさや幸福感を得にくくなるなど、日々の生活の質に大きな影響を及ぼすことがあります。
日本は欧米などの先進諸国と比較して、幸福度や自己肯定感が極端に低いというデータも存在すると三浦氏は指摘します。三浦氏がトップビジネスパーソンやトップアスリートのコーチングを行う中で、社会的に成功しているように見える人々でさえ、自己肯定感の低さに悩んでいるケースは少なくないそうです。
また、自己肯定感が低い状態は、失敗からの回復力にも影響を与えます。何かにつけて自己否定をしてしまう傾向があるため、仕事で失敗した際に立ち直りが遅くなったり、最悪の場合、立ち直れずに諦めてしまったりすることがあります。
ビジネスの世界では、1度の挑戦で成功することは稀であり、何度も試行錯誤を繰り返しながら物事を成し遂げていくことが求められます。自己肯定感の低さが、この粘り強く挑戦し続ける力を削いでしまうことは、キャリアを築く上で大きな障害となり得るのです。
したがって、自己肯定感を育むことは、幸せな人生を送るための基盤を築くと同時に、困難に立ち向かうための精神的な強さを手に入れることにもつながるのです。
自己肯定感が低い人の特徴
では、その自己肯定感が低い人には、どのような特徴があるのでしょうか。その1つが、自分自身の短所にばかり目が向いてしまうことです。
株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏によると、自己肯定感の低い人は自分の短所をたくさん挙げることができますが、長所についてはなかなか思い浮かばない傾向があると言います。しかし、本人が「短所」だと思い込んでいる事柄は、見方を変えれば「長所」になり得ることもあります。
例えば「仕事が遅い」という自己評価は、他者から見れば「じっくりと確実な仕事をしてくれる」という信頼に値する長所と捉えられているかもしれません。このように、自己肯定感が低い人は、自分自身に対して一方的でネガティブな評価を下してしまいがちなのです。
また、自己肯定感が低い人は、結果を過度に求めすぎる傾向もあります。
株式会社学びデザインの荒木博行氏は、行動と結果には、必ずギャップが存在すると指摘します。例えばスポーツの試合では、どれだけ万全の準備と努力をしても、相手や運の要素によって負けることがあります。この時、「試合に負けた」という結果だけを見て自分を評価してしまうと、自分自身を応援することができなくなってしまいます。
自己肯定感を育むためには、コントロール不可能な「結果」と、自分でコントロール可能な「行動」を切り分けて考える視点が不可欠です。自分がやるべき行動をきちんと実行できたのであれば、そのプロセス自体を評価し、自分を認めてあげることが大切なのです。
この「行動」と「結果」を切り分ける考え方は、フィードバックを受け止める際にも重要になると荒木氏は語ります。他者からの評価という「結果」に一喜一憂しすぎると、心が疲弊してしまいます。特にSNSの普及により、関係性のない不特定多数からネガティブなフィードバックが届く可能性がある現代では、他者評価に過敏になるのも無理はありません。しかし、他者が自分のことをどう思うかは、自分ではコントロールできない領域です。
まずは自分でコントロールできる範囲の「会った人には必ず挨拶する」といった具体的な行動目標を立て、それを達成できた自分を認めることから始めるのが良いでしょう。結果ではなく、自分の行動に焦点を当てることで、他者の評価に振り回されない安定した自己評価の軸を築くことができるようになります。
自己肯定感を高める方法
自己肯定感を高めるための第1歩は、自分自身を正しく理解することから始まります。多くの人は、自分自身の本当の価値に気づいていません。特に自己肯定感が低い人は、自分のネガティブな側面ばかりに目を向けがちですが、それは単なる思い込みである可能性が高いのです。
株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏が提案する方法の1つは、短所を長所に変換してみることです。最初に自分が短所だと思っていることを書き出します。次に「これを長所に変換できるとしたら、どういう言葉になるだろうか」と考えてみるのです。
例えば、「頑固」は「意志が強い」、「心配性」は「慎重で思慮深い」と言い換えることができます。このように、物事を捉える視点を変えるだけで、自己評価は大きく変わります。この作業は、短所や長所という二元的な捉え方から脱却し、それらをすべて含めた「自分の特徴」としてニュートラルに受け入れるためのトレーニングになります。
さらに効果的なのは、親しい友人や家族に自分の長所について聞いてみることです。自分では短所だと思っていたことが、周りからは「すごい長所だ」と認識されているケースは少なくありません。他者からの客観的なフィードバックは、自分では気づけなかった新たな自己の側面に光を当ててくれます。
自己理解を深める上で、「アイデンティティ」の確立も非常に重要です。アイデンティティとは、「自分が何者であるか」という核となる部分であり、自己肯定感の基礎の1つと言えます。
『親から始まる「正解のない時代」を生き抜く世界基準の子育て』の著者であるアイシャ・レバイン氏によれば、自分の意見を持つためには、まず「私(I)とは誰なのか」を理解する必要があると言います。「自分はどんな人間で、どんな経験をしてきて、どうなりたいのか」という自己認識が明確であってこそ、自信を持って「私はこう思う」と主張できるのです。自分という人間をしっかりと理解していれば、「みんなと違うから」という理由で意見を引っ込めたり、周りに流されたりすることがなくなります。
自分に対する間違った評価を手放し、ありのままの自分を「特徴」として受け入れること、そして「自分とは何者か」という問いに向き合い続けることが、揺るぎない自己肯定感を育むための確かな1歩となるでしょう。
自分を応援する内なるコーチを育てる習慣
自己肯定感を高めるための効果的な習慣として、「自分自身の中に自分を応援するコーチを宿す」という考え方についても知っておきましょう。これは、自分自身の最大の味方となり、常に自分を励まし、勇気づける内なる声を持つことを意味します。
株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏は、コーチの役割を「応援してくれる人」だと定義します。もしコーチがクライアントに対して「何やってんのお前」といった否定的な言葉を投げかければ、それはもはやコーチではありません。
私たちを取り巻く環境には、アドラー心理学で言うところの「勇気くじき」をする人が存在することがあります。そんな中で、自分自身までもが自分に対して勇気くじきをしてしまえば、誰も自分を勇気づけてくれる人はいなくなってしまいます。だからこそ、自分の中に自分だけのコーチを持つことが重要なのです。
三浦氏は、この「心のエネルギー」をいかに上げていくかは、才能のレベルをも超える重要な要素だと考えていると言います。自分を応援する習慣は、やり抜く力を高めることに直結するのです。
うまくいかなかったことがあったりしても、「ダメだな」ではなくて、「ここまでやったじゃん」「じゃあ今どれぐらいきてる?」って。うまくいかなかったかもしれないけど、例えば6合目まで来てるんだったら、「じゃああと4合登るだけだよね」「6合まで来てんじゃん。あとまず1合登ろう。2合登ろう」って、そういうふうに語りかけてくれるようなコーチを、自分自身でする。
これはまさに習慣ですよね。これをやってみること。みなさんの心のエネルギーをいつも上げることになると思います。
引用:感謝ができなくなるのは「当たり前だ」と思っているから コーチングのプロが教える、自己肯定感が高まる3つの習慣(ログミーBusiness)
この考え方はグロービス経営大学院教員の若杉忠弘氏が紹介する、「セルフ・コンパッション」にも通じます。セルフ・コンパッションを実践しているリーダーは、つらい状況に直面した時に「自分はリーダーに向いていない」と自己否定するのではなく、「リーダーなら誰でもこういう時は大変だろうな」と捉えることができます。これは、自分の中に思いやりを持って励ましてくれるコーチがいる状態と言えるでしょう。
自分を応援する内なるコーチを育てることは、単に気分を良くするだけでなく、困難な状況を乗り越え、成長していくための力強い支えとなるのです。
感謝の習慣をつけることも自己肯定感を高める方法として有効
自己肯定感を高めるための習慣の中で、非常にシンプルでありながら絶大な効果を持つのが「感謝の習慣をつける」ことです。感謝という行為は、私たちの心のあり方を根本から変え、自己肯定感を育む上で極めてパワフルな力を持っています。
株式会社チームダイナミクス代表の三浦将氏によれば、感謝の反対の概念は「感謝しないこと」ではなく、「当たり前」だと思うことです。私たちの日常生活は、数えきれないほどの「当たり前ではないこと」に支えられています。
毎朝、目が覚めること。蛇口をひねれば水が出ること。時間通りに電車が来ること。注文した料理が運ばれてくること。これらは決して当たり前ではありません。もしこれらすべてを自分だけでやらなければならないとしたら、途方もない労力と時間が必要になります。
これらの事柄一つひとつに対して「当たり前ではない、ありがたいことだ」と意識的に感謝することで、世界の見え方は大きく変わります。
感謝の習慣を実践していくと、思考のパターンがポジティブに変化し、他者への接し方にも良い影響が現れます。常に感謝の心を持っている人は、自然と周りの人に対しても親切で思いやりのある行動が取れるようになります。
そして、心理学で「返報性の法則」と呼ばれるように、人から親切にされたり感謝されたりすると、相手もまたお返しをしたいという気持ちになります。つまり、自分が他者に感謝を表現することで、周りからも感謝される機会が増えるという好循環が生まれるのです。
この「他者から感謝される」という経験は、自己肯定感を高める上で非常に重要な役割を果たします。人から「ありがとう」と言われる経験を積み重ねることで、「自分は他者に貢献できる存在だ」「自分は感謝されるに値する人間だ」という肯定的な自己観念(セルフイメージ)が、無意識のうちに強化されていくのです。この感覚こそが、自己肯定感の核となる部分です。
最初は意識的に「感謝できること」を探す必要があるかもしれませんが、続けていくうちに、日常のささいな出来事にも自然と感謝の気持ちが湧くようになります。この習慣は、特別な道具も時間も必要とせず、今この瞬間から始めることができる、最も手軽で効果的な自己肯定感を高める方法の1つと言えるでしょう。