お知らせ
お知らせ
CLOSE

被害者意識の強い部下への対応(全1記事)

被害者意識が強い部下への対処法 上司ができる段階的なアプローチ

【3行要約】
・多くの上司が「言われたことしかやらない」「常に誰かのせいにする」という被害者意識の強い部下に頭を悩ませています。
・被害者意識の強い部下に対処するには、上司自身がその対極にあるアカウンタビリティを身につけることが重要です。
・まずは上司がアカウンタビリティを体現し、部下との対話を通じて気づきを促すことが大切です。

被害者意識を持つ部下の特徴

職場で「言われたことしかやらない」「常に誰かのせいにしている」といった態度を示す部下に頭を悩ませる上司は少なくありません。こうした態度の根底には被害者意識が存在し、その心の内には「本当はやりたくないのに」「なぜ自分がこんなことをしなければならないのか」といった不満が渦巻いています。

被害者意識の悪循環に陥った部下には、主に6つの言動が見られると、プロフェッショナルコーチのあべき光司氏は指摘します。

1つ目は「無視する/否定する」。自分にとって都合の悪い事実やフィードバックから目をそらし、受け入れようとしません。

2つ目は「責任を押し付け合う」。「これは自分の仕事ではない」と主張し、責任の所在を他者や他部署に求めます。

3つ目は「混乱をする」。どうしていいかわからない状態に陥り、思考停止してしまいます。

4つ目は「言い訳をする」。「そもそも、この仕事はやりたくなかった」「あの人がやればよかった」と、自らの行動を正当化するための理由を探し続けます。

5つ目は「様子を見る」。他のメンバーが困っている状況を目の当たりにしても、「自分には関係ない」「大変そうだ」と傍観するだけで、積極的に関わろうとしません。

これら5つに加え、「自分の仕事ではないと断る」「勝手に仕事の範囲を二分化する」「周りが理解してくれないと不満を言う」「過去の失敗を理由に行動しない」といった行動も、被害者意識が強い部下の典型的な特徴です。

重要なのは、人は常に被害者意識があるわけではないという点です。例えば、趣味の活動では非常に主体的に行動する人が、仕事になると途端に被害者意識がある人になってしまうケースは珍しくありません。

また、同じ仕事の場であっても、特定の状況や人物との関わりの中で被害者意識が強く現れることもあります。「あの部長と話す時だけは、いつも被害者意識が強くなってしまう」「この顧客に電話する時は気が重い」といったように、状況に応じて人の意識は変化します。

したがって、まずは部下自身が「今、悪循環に陥っているな」と気づくことが、この状態から抜け出すための第1歩となるのです。

被害者意識の対極にある「アカウンタビリティ」とは何か

プロフェッショナルコーチのあべき光司氏によると、被害者意識の対極にある概念が「アカウンタビリティ」というものです。一般的に「説明責任」と訳されることもありますが、ここで言うアカウンタビリティとは、「主体的に自ら進んで、仕事や事業の責任を引き受けていく意識」を指します。

さらに踏み込んで言えば、「自らの選択肢を増やし続けること」とも定義できます。これは、単に責任をとるという受け身の姿勢ではなく、どんな状況下でも「自分に何ができるか」を問い続け、行動を選択していく能動的なマインドセットです。

このアカウンタビリティの本質を理解するために、精神科医・ヴィクトール・フランクル氏の体験が非常に示唆に富んでいます。第二次世界大戦中、ナチスによってアウシュヴィッツ収容所に囚われたフランクル氏は、明日をも知れぬ命の危機に瀕していました。

多くの収容者が「なぜ自分がこんな目に」「次は自分の番だ」と絶望し、後悔や他者への憎しみに心を支配される中、彼はその状況を「壮大な実験場」と捉えました。彼は、このような究極の状況で人間がどのように反応するのかを冷静に観察し続けることを「選択」したのです。

この選択が、彼を単なる「被害者」で終わらせませんでした。「なぜナチスはこんなことをするのか」「なぜユダヤ人に生まれたのか」と過去を嘆いたり、「あいつが悪い」と他者を責めたりすることにエネルギーを費やすのではなく、「ここで何ができるか」を問い続けたのです。

その結果、彼は終戦まで生き抜き、収容所での体験を基に不朽の名作『夜と霧』を書き上げることができました。もし彼がアカウンタビリティを持たず、自分の選択肢を増やすことを放棄していたら、この作品が世に出ることはなかったでしょう。

このエピソードは、アカウンタビリティが置かれた環境や状況に左右されるものではないことを力強く示しています。どんなに理不尽で絶望的な状況であっても、物事の捉え方や次の一手を自分で選択する自由は誰にも奪えません。

職場の問題に置き換えてみても同様です。「上司が悪い」「会社の方針が悪い」と環境のせいにして思考を停止させるのは、被害者意識の姿勢です。

一方で、現状を所与の条件として受け入れた上で、「この状況で自分にできることは何か」「どうすれば事態を好転させられるか」と考え、行動の選択肢を探し続けることこそが、アカウンタビリティです。この意識を持つことが、個人と組織を成長させる原動力となります。

上司がアカウンタビリティを身につけるための心得

組織や部下にアカウンタビリティを根づかせるためには、まず上司自身がその体現者でなければなりません。上司が被害者意識のある姿勢でいては、部下がアカウンタブルになることは期待できません。

しかし、常に完璧なアカウンタビリティを維持することは困難であり、無理に追求しすぎるとかえって自身や周囲を追い詰めてしまいます。重要なのは、アカウンタビリティが特別な能力ではなく、トレーニングによって習得できるスキルであると理解し、日々の意識と実践を積み重ねることです。

上司がアカウンタビリティを身につけるためには、いくつかの重要な心得があると、プロフェッショナルコーチのあべき光司氏は指摘します。

1つ目に、自分が被害者意識の悪循環に陥っていないか、「ああ、今自分は誰かのせいにしているな」と客観的に自己認識することです。

2つ目に、アカウンタビリティを「追求しすぎない」ことです。何でもかんでも「じゃあどうしよう」と考えていると疲弊しますし、その姿勢を周囲にも求めてしまいがちになってしまいます。

3つ目に、世の中には「自分ではどうしようもない、コントロールできないことがある」と知ることです。郵便ポストが赤いのは変えられない事実であり、その上で何ができるかを考えるのがアカウンタビリティです。

上司はアカウンタビリティを身につけるだけでなく、アカウンタビリティを持つことが自信につながるのだと、部下に対して「自覚させる」ように導く必要があります。そのためには、上司自身が不平不満を口にするのではなく、「で、どうする?」という問いを常に発し続ける姿勢が求められます。また、部下の取り組みに対して「途中経過を定期的にフォローアップする」ことも重要です。

これらの実践においても、完璧主義に陥る必要はありません。人間は1日に6万回物事を考えると言われ、そのほとんどがネガティブな内容であるという説もあるほど、被害者意識の状態は「普通」なのです。

できていない自分に落ち込むのではなく、「被害者意識は普通」と受け入れた上で、100回に1回でもいいから「今の自分の思考はアカウンタビリティだろうか?」と振り返る習慣を持つことが大切です。小さな日々の振り返りの積み重ねが、アカウンタビリティを身につけるためのトレーニングになります。

上司がアカウンタブルな状態を1日に10回示すことができれば、その影響を受けて部下も1日に1回はアカウンタブルな思考を試みるようになるかもしれません。上司の姿勢が、組織全体の文化を少しずつ変えていくのです。

部下の被害者意識が改善されない場合の段階的対処法

上司がアカウンタビリティを発揮し、部下との信頼関係構築に努め、対話を重ねても、残念ながら部下の被害者意識による行動が改善されないケースも存在します。

周囲を疲弊させる「危険社員」の行動を放置することは、組織全体の士気を下げ、優秀な人材の流出を招くため、より毅然とした対応が求められます。ただし、その対応は感情的であってはならず、客観的な事実に基づいた段階的なアプローチが必要だと、研修トレーナーの伊庭正康氏は指摘します。

最初に行うべきは「事実確認」です。他のスタッフから「あの人の行動で困っている」といった訴えがあった場合でも、すぐにその内容を鵜呑みにしてはいけません。伊庭氏が提唱する「SBI情報」のフレームワークを用いて、客観的な事実を把握します。

SはSituation(状況)、BはBehavior(行動)、IはImpact(影響)を指します。いつ、どこで(状況)、その部下が具体的にどのような行動をとり(行動)、その結果として周囲にどのような影響が出たのか(影響)を、訴えてきた本人だけでなく、複数の関係者からヒアリングして確認します。

事実を把握した上で、部下本人との面談に臨みます。ここでの目的は、一方的に説教することではなく、本人に気づきを促すことです。「こういう状況で、あなたはこういう行動をとっているように私には見えている。その結果、このような影響が出ていると懸念している」というように、SBI情報に基づいて客観的な事実を伝えます。

本人が否定したり言い訳を始めたりしても、それを遮らずに「その時はどう思っていたの?」「どうしてそうしたの?」と質問を重ね、まずは本人に存分に話をさせます。

本人の言い分を十分に聞いた後で、「今思えば、他にどんなことができたと思う?」「もしあなたの行動で困っている人がいるとしたら、どう思う?」といった問いかけを通じて、本人に内省を促します。ここで本人が気づきを得て、改善の意思を見せれば、「では、一緒に具体的な対策を考えていこう」と協調的な姿勢で進めます。

しかし、それでも本人が反発し、被害者意識による行動を改めようとしない場合もあります。その際は、上司として譲らない姿勢を示すことが重要です。「私はこの問題を解決したいと考えている。来週の月曜日に、もう1度話し合おう」というように、期限を設けて考える時間を与えます。時間を置くことで、本人が冷静になる可能性もあります。

それでもなお改善が見られない場合は、組織として最終的な決断を下す段階に入ります。「あなたの力は認めているが、今の状態では組織として困る。このままでは一緒に仕事をしていくのは難しい」と、デッドラインを明確に伝えます。この段階では、あらかじめ上長や人事部と連携し、組織としての方針を固めておく必要があります。場合によっては、配置転換などの人事的な措置も検討せざるを得ません。

これは、問題のある部下個人を守るのではなく、組織全体を守るために上司が下すべき、時に厳しい決断なのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!