【3行要約】
・ 「つい仕事を任されがち」な状況は、相手からの信頼の表れでもありますが、多くの場合「認識のズレ」が根本原因となっています。
・山本大平氏は「素を見せていない」ことがズレを生み出すと指摘し、伊庭正康氏はDESC法などの具体的な断り方のテクニックを提案しています。
・ビジネスパーソンは仕事の断り方を学ぶだけでなく、自分の価値観や状況を日頃からオープンにし、そもそも無理な依頼を受けない環境づくりが重要です。
なぜ「つい仕事を任されがち」になってしまうのか?
「仕事を断れずに抱え込んでしまう」という経験は、多くのビジネスパーソンが持っているのではないでしょうか。上司や同僚から「君ならできると思って」「ちょっとこれお願いできないかな」と声をかけられると、つい「はい、やります」と引き受けてしまう。その結果、自分の業務がパンク寸前になり、残業が常態化し、心身ともに疲弊してしまうケースは少なくありません。
このような「つい仕事を任されがちな人」には、ある共通の課題が潜んでいる可能性があります。それは、他者とのコミュニケーションにおける根本的な「ズレ」だと、戦略コンサルタントの山本大平氏は指摘します。仕事を依頼する側は、相手に悪意があって押しつけているわけではないことがほとんどです。むしろ「頼りがいがある」「この人なら安心して任せられる」といったポジティブな評価から依頼をしています。しかし、引き受ける側が内心では「本当はやりたくない」「自分のキャパシティを超えている」と感じている場合、そこに認識のズレが生じます。このズレこそが、「仕事を押しつけられている」と感じる現象の正体です。
では、なぜこのようなズレが生じてしまうのでしょうか。山本氏によると、その大きな要因の1つとして、自分自身の「素」を周囲に見せていないことが挙げられます。
職場という環境では、「嫌われたくない」「良い評価を得たい」「円滑な人間関係を築きたい」といった思いから、無意識のうちに自分を演じてしまうことがあります。
しかしこの問題を解決するためには、ふだんから自分を偽らず、ありのままの姿でいることが重要になります。極端な言い方をすれば、まるで実家で過ごしているかのようにリラックスした状態で、同僚や上司と接することができれば、このようなズレはほとんど解消されるはずなのです。
山本氏は、この「ズレ」の発生メカニズムについて次のように解説しています。
じゃあ、なぜズレが生じるのかを分析していくと2つあって。1つは「忙しすぎて嫌だ」。もう1つが大半なんですが、こっちが良かれと思ったことが良くないという「ズレ」の話です。
なぜそれが起きるかというと、振る側が鎌利さんを知らないから。もう少しブレイクダウンすると、素を見せていない。つまり「嫌われたくない」「好かれたい」というコミュニケーションをずっと取ってきたから。
逆説的にすごくわかりやすく言うと、「僕はこんな人間です」という状態を演じず、極端に言うと「実家の状態」でお互いに接しておけば、そのズレはほぼ解消されるはずなんです。
「鎌利さんはこういう性格で、こういうことが好きでやりたいと言ったから、これを振ろっか」だと、「ありがとうございます」で済むんです。社交辞令で「そういうことをやりたいです、めっちゃ好きです」と言って、それを真に受けられて仕事を振られると「え、マジで……?」ということになるんです。
引用:“つい仕事を任されがちな人”に足りないのは、素を出すこと 嫌な仕事を振られないための未然防止策とは(ログミーBusiness)
仕事を断る前に考えるべき優先順位のつけ方
仕事を依頼された際、引き受けるべきか断るべきかを判断するためには、自分の中に明確な優先順位の基準を持つことが不可欠です。すべての仕事を無条件に引き受けていては、本当に重要な業務にかける時間がなくなり、パフォーマンスの低下を招きかねません。
では、どのようにして優先順位をつければよいのでしょうか。
1つのシンプルな考え方として、戦略コンサルタントの山本大平氏が紹介する「時間軸」を基準にする方法があります。例えば、ご縁が深く、報酬も同程度のクライアント2社から同時に依頼が来た場合、どちらか一方を断らなければならない状況を考えてみましょう。この場合、最も公平で相手にも納得してもらいやすい判断基準は「先に依頼が来たほうを優先する」ことです。
後から来た依頼主に対しては、「大変申し訳ないのですが、先に別件のお約束をいただいておりましたので、今回はそちらを優先させていただきます」と正直に伝えれば、相手も不快な思いをすることは少ないでしょう。重要なのは、後からより条件の良い案件が来たとしても、先約を反故にしないという誠実な姿勢です。
しかし、仕事の優先順位は常に時間軸だけで決まるわけではありません。
そこで役立つのが、「緊急度」と「重要度」という2つの軸でタスクを整理する考え方です。これは「アイゼンハワー・マトリクス」として知られており、タスク管理の基本的なフレームワークです。
具体的には、すべてのタスクを「緊急かつ重要」「重要だが緊急ではない」「緊急だが重要ではない」「緊急でも重要でもない」の4つに分類します。この中で最も優先すべきは、当然ながら「緊急かつ重要」な仕事です。一方で、多くの人が時間に追われる原因となるのが、「緊急だが重要ではない」仕事に振り回されてしまうことで、メールの返信やちょっとした打ち合わせなどがこれにあたります。
仕事ができる人は、将来の成果につながる「重要だが緊急ではない」仕事(先々の準備や自己投資など)の時間をあらかじめスケジュールに組み込み、死守することで、長期的な成功を手にしています。
関係を損なわない、スマートな仕事の断り方
優先順位をつけ、断るべき仕事であると判断したとしても、それをどう相手に伝えるかは非常に重要です。断り方次第で相手との関係性が悪化してしまうこともあれば、むしろ信頼関係が深まることもあります。人間関係を良好に保ちながら自分の時間を守るためには、丁寧に断るためのスキルを身につけておくことが社会人としての必須要件と言えるでしょう。
まず、どんな依頼であっても、声をかけてくれたことへの感謝の気持ちを伝えることが基本です。「ご相談いただきありがとうございます」「お声がけいただき光栄です」といったひと言を添えるだけで、相手に与える印象は大きく変わります。その上で、なぜ引き受けられないのか、その理由を正直に、かつ具体的に伝えることが重要です。
ここで注意すべきは、主観的・感情的な理由ではなく、「現在、○○のプロジェクトで手が離せない状況です」といった客観的な事実を基に説明することです。そして、ただ断るだけでなく、代替案を提示することで、相手の力になりたいという前向きな姿勢を示すことができます。
研修トレーナーの伊庭正康氏は、状況に応じた2つの断り方を紹介しています。
そしてもう少し丁寧に伝えたい時は「DESC法」。これは事実(Describe)、意見(Express)、提案(Suggest)、選択してもらう(Choose)という順番なんですね。
「伊庭さん、これをなんとか我が社のためにお願いしたいと思っている。部長がそれをやってくれと言っている。なので、伊庭さんにはそれをやってほしいと思っている」。大事な取引先からそのように言われたとしましょう。
でも、それは受けられないんですよね。受けると大変なことになっちゃう。「ご相談いただきましてありがとうございます」とは言いながら「大変申し訳ございません、今○○の事情がありまして、○○な状況なんです」というふうにできない事実を言います。
とはいえ意見。「お役に立てるように精一杯努めたいと思っております」。自分の意見ですよね。そして提案です。「例えばいかがでしょうか……」、ここで「例えば」が出てくるんですね。
「○○はお受けすることが難しいんですけども、こういったやり方であればお受けすることが可能ですので」と、提案をしたあとは、選択。「この方向ですと○○ということもできるようになりますので、いかがでしょうか」。この流れ、DESC法でやると丁寧に伝えられるということなんですね。
引用:自分の仕事時間を守る“ムダな依頼を断るスキル” 失礼に思われずに断るためのテクニック(ログミーBusiness)
嫌な仕事を振られないための防止策
上手な断り方のテクニックを身につけることは重要ですが、より本質的な解決策は、そもそも「嫌な仕事」や「無理な仕事」を依頼されないような状況を自ら作り出すことです。そのための最も効果的なアプローチが「未然防止」であり、その核となるのが、前述した「素でいること」です。
日頃から自分の価値観、得意なこと、苦手なこと、そして現在の業務状況などを周囲にオープンにしておくことで、相手はあなたに仕事を依頼する前に「この仕事は彼/彼女に適しているだろうか」「今の状況でお願いしても大丈夫だろうか」と考えるようになります。
これは、自分と価値観の合わないコミュニティや職場環境に身を置かないということにもつながります。例えば、採用面接の段階から自分を良く見せようと背伸びをしてしまうと、入社後にカルチャーフィットのミスマッチが生じ、苦しむことになります。
面接は、お互いの価値観が合うかどうかを確認する場です。自分を偽って入社しても、結局はパフォーマンスを発揮できず、双方にとって不幸な結果を招いてしまいます。お互いに外面だけを取り繕っていては、本質的な相性は見抜けません。したがって、コミュニティに所属する前から「素でいる」ことを意識し、自分に合わないと感じたならば、その時点で距離を置く勇気も必要です。
また、最初の直感は意外と侮れません。「なんとなくこの会社は違う気がする」「この上司とは合わないかもしれない」といった感覚は、言語化できない多くの情報を脳が処理した結果であることが多いのです。その直感を無視して、「給与が高いから」「有名企業だから」といった条件面だけで判断してしまうと、後に人間関係や仕事内容で悩むことになりかねません。
断るという行為は、いわば事後対応です。それ以前に自分を守り、より良いキャリアを築くためには、日頃からの自己開示と、自分に合った環境を見極める「未然防止」の視点が不可欠なのです。