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人事評価制度の形骸化(全1記事)

なぜ人事評価制度は形骸化してしまうのか? 運用で防ぐ5つの視点と3つの設計ポイント [2/2]

人事評価制度を設計する際の「3つのポイント」

評価の納得度を高めるためには、信頼される評価者の存在が不可欠ですが、同時に制度そのものの「仕組み」にも工夫が求められます。

株式会社メルカリの岸井隆一郎氏は、評価制度の仕組みとして納得度を高める上で重要となるポイントを3つ挙げています。これらは、評価者が適切に運用するための土台となる考え方であり、制度設計の根幹に関わる要素です。

1つ目は「ポリシーの明確化」です。これは、人事制度が何を目的とし、会社としてどのようなスタンスを大事にしているのかをクリアにすることです。メルカリでは「Mercari Culture Doc」という文書で、エンプロイージャーニーの各段階における会社のスタンスを明文化していると言います。

そこには「メルカリのカルチャーと自身の今の大事にしたいものが合わなければ、メルカリを去ってもいい」といった踏み込んだ内容も含まれており、万人受けする言葉ではなく、会社としての明確な姿勢を示しています。

このように根本的なポリシーが共有されていることで、評価制度の仕組みに対する人それぞれの解釈がブレるのを防ぎ、一貫性のある運用を可能になっています。

2つ目は「わかりやすさ」です。制度設計があまりに複雑でテクニカルになると、運用する側もされる側も理解が追いつかなくなり、形骸化の原因となります。基本的な骨格はできるだけシンプルに保ち、誰もが直感的に理解できるような仕組みを目指すことが重要です。

そして3つ目が「浸透にかけるコミュニケーション量」です。優れた制度を設計しても、それが現場の従業員に正しく理解されなければ意味がありません。メルカリでは、制度導入後も継続的にアップデートを繰り返しており、その都度、現場の理解を揃えるために多大な時間と量をかけたコミュニケーションを行っているそうです。

制度に関する説明会や対話の場を設けることはもちろん、特に力を入れているのが「キャリブレーション」と呼ばれる評価の目線合わせの会議だと言います。
そもそもの評価の説明をするとか、それに対する対話の場を設けることもありますし、弊社は評価の中の運用でキャリブレーションというものを組んでいます。それぞれのマネージャーが自分のレポートラインのほうを評価した後に、横の目線を揃えて、お互いの評価基準のブレがないかをすり合わせていくような場を設けています。

ここはかなり現場の負担も大きく、運用負担も大きいですが、マネージャーの目線を合わせていったり制度への理解を深めていく上では、かなり寄与している部分かなと思います。

引用:人事評価の納得度を高める“3つのポイント”とは メルカリ流・制度設計のカギと今後の課題(ログミーBusiness)

これらの3つのポイントは、人事評価制度を単なるルールブックではなく、組織の血肉として機能させるための本質的な要件と言えるでしょう。

人事評価制度を経営戦略と連動させ、組織成長のエンジンとするために

人事評価制度は、単に従業員の処遇を決めるためだけの仕組みではありません。本来は経営戦略を実現し、組織を成長させるための強力なエンジンとなるべきものです。

しかし、制度が経営と切り離され、人事部門だけの閉じた仕組みになってしまうと、その力は発揮されず、形骸化の一途をたどります。機能する人事評価制度を構築・運用するためには、経営的な視点を持つことも非常に重要なのです。

まず大前提として、人事評価制度が有効に機能するためには「腹八分の年収」が確保されている必要があると白潟総合研究所株式会社の白潟敏朗氏は指摘します。従業員が生活に不安を感じるような低い給与水準では、どんなに精巧な評価制度を導入してもモチベーションは上がらず、不満の種となるだけです。組織全体の給与水準を適正に保つことが、すべての土台となります。

その上で、評価制度の目的を明確に定義することが重要です。白潟氏は、人事評価を「過去の成果」への報奨と、「将来の貢献」への期待という2つの側面で捉えることを提案しています。過去の成果に対しては業績連動賞与(インセンティブ)で報い、将来への貢献期待に対しては月々の給与(昇給)で応えるというように役割を分けることで、評価の基準が明確になります。

前述したとおり、人事評価制度は経営戦略と連動していなければなりません。ミッション・ビジョン・バリューがあり、それを実現するための戦略があり、その戦略を実行するための戦術やプロセスがあります。人事評価制度は、この一連の流れの中で、従業員の行動を戦略の方向へと導くための羅針盤の役割を果たすのです。

経営者には、人事評価を単なるコストや管理ツールとして捉えるのではなく、組織全体のパフォーマンスを最大化し、ビジョンを実現するための重要な経営機能の一部として位置づけ、継続的に改善していく視点が求められます。

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