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部下への注意の仕方(全1記事)

部下への「上手な注意・叱り方」の技術的なコツ 上司が意識したい成長を促す効果的な伝え方 [2/2]

注意を成長の糧に変えてもらうための言葉の選び方

部下が前向きに注意を受け入れ、次への行動につなげるためには、言葉選びに細心の注意を払う必要があります。

重要なのは、注意する前にまずポジティブな言葉から入ることです。クロス・コンサルティング株式会社 代表取締役の島津愛氏は、たとえ相手の意見が場違いだと感じたとしても、「あっ、そういう意見もあるよね、いいね」や「そういうことを言ってくれてありがとう」といった言葉でまず受け止めることが「シンプルだけどめちゃくちゃ重要」だと語ります。

最初に肯定的な姿勢を示すことで、相手は「受け止めてもらえた」と感じ、その後の注意も素直に聞き入れやすくなるのです。このワンクッションがあるだけで、注意の内容がたとえ厳しいものであっても、相手は「自分のためを思って言ってくれている」とポジティブに受け止められるのです。

具体的な注意の際には、「あなたらしくない」という表現が有効な場合があると、グロースワーク合同会社 代表CEOの宮木俊明氏は指摘します。期待値とずれた報告をした部下に対して使った、この言葉は、単なるダメ出しではありません。この言葉の裏には、「本来のあなたならもっとできるはずだ」という期待と信頼が込められています。

能力を否定するのではなく、本来の力を発揮できていない現状を指摘することで、相手のプライドを傷つけずに改善を促すことができます。さらに、「僕が手伝えることがあったら教えて」と支援を申し出ることで、一方的な批判ではなく、共に問題解決に取り組むパートナーであるというメッセージを伝えることができるでしょう。

これらの言葉選びは、部下との信頼関係を維持しながら、耳の痛いことであっても「愛のある注意」として届けるための重要な技術と言えるでしょう。

一度の注意で行動を起こさせる方法

部下に注意をしてもなかなか行動が改善されないという悩みは、多くの上司が抱えてるものです。この問題を解決するカギは、注意の際に「具体性」を高め、部下自身の「気づき」を促すアプローチにあります。

そのための強力なフレームワークが「経験学習サイクル」と、それを補完する具体的なフィードバック手法です。株式会社O:(オー)の谷本潤哉氏によると、経験学習サイクルとは、以下の4つのステップを回すことで人が成長するという理論です。

1. 経験する
仕事を実行する。

2. 振り返る
 その仕事がうまくいったか、いかなかったかを判断する。

3. 概念化する
 うまくいった要因や改善点を考える。

4. 実践する
 次の仕事にその学びを活かす。

特に、現状改善を積み重ねてゴールを目指す「リバータイプ」の部下は、「振り返る」以降のプロセスが欠けていることが多いと谷本氏は指摘します。彼らは「やったか、やっていないか」で仕事を見てしまい、「やったけど、うまくいかなかった」という視点が抜けがちです。

そのため、上司はまず「そもそも、その仕事はうまくいったの?」と問いかけ、成功・失敗の判断を本人に促すことが極めて重要になります。

谷本潤哉氏は、このサイクルを回すための関わり方について、次のように解説しています。
難しい言い方をしているんですけど、内容はぜんぜん大したことはないです。(スライドの図の)左からスタートするんですけど、とりあえず仕事をすると。仕事をして経験して、そもそもその仕事がうまくいったか、うまくいっていないかをジャッジする。

うまくいった場合は何がポイントだったか、うまくいかなかった場合は何が改善点かを自分の中で考えて、次に同じような仕事があった時に前の仕事を活かすというサイクルですね。これが成長の根幹となりまして、最も科学的に人を育成する方法として推奨されているものなんです。(中略)

実はリバータイプの方は非常に高確率でこのサイクルを回せていないということが統計的にわかっております。これはどこに問題があるんでしょうか? なんとなく勘でおわかりいただけるかもしれませんが、リバータイプは右下の「振り返る」以降がないケースが多いんです。

引用:部下に「こうしたら?」と言わない勇気も必要 マネージャーが陥る部下育成の3つの落とし穴(ログミーBusiness)

このサイクルを効果的に回すために、注意の際の具体性を高める「3つの視点」と「4つの要素」が役立ちます。株式会社ビジネスリサーチラボの黒住嶺氏が提唱するこの手法は、注意の内容を構造化し、改善点を明確にするものです。

3つの視点
  • 目標を再確認する(どうなるべきだったか)
  • やってきたことを振り返る(どう進めてきたか)
  • 次にやるべきことを整理する(次にどうするか)

4つの要素
  • タスク(質・量など)
  • 進め方(プロセス)
  • 確認方法(進捗管理の方法)
  • 個人(考え方や嗜好性)

この3つの視点と4つの要素を組み合わせることで、「タスクの目標に対して、進め方がこうだったから、次はこうしよう」といったように、極めて具体的で的確な注意が可能になります。

上司が安易に「こうしたら?」と答えを教えるのではなく、これらのフレームワークを用いて部下自身に考えさせること。それこそが、1度の指摘で行動変容を促し、自律的な成長を支援するマネジメントの要諦です。

あらゆる注意をする時の土台となる「信頼残高」の重要性

どれほど洗練された注意の仕方のテクニックを駆使しても、上司と部下の間に信頼関係がなければ、その効果は半減してしまいます。建設的な注意が機能するための絶対的な土台、それが「心理的安全性」です。

心理的安全性が確保された職場とは、メンバーが誰に対しても安心して自分の意見を言え、挑戦や失敗が許容される環境を指します。この心理的安全性を、株式会社co-take代表の手嶋武久氏は「信頼残高」という言葉で表現しています。この「信頼残高」は、日頃のコミュニケーションを通じて、相手との間に信頼という名の預金を積み立てていくイメージです。

例えば、ポジティブなフィードバックは信頼残高を増やす行為です。「いつもありがとう」「この前のプレゼン、良かったよ」といった承認の言葉や感謝の表明は、着実に残高を増やしていきます。この残高が十分に貯まっている状態であれば、多少耳の痛い注意をしたとしても、預金が少し減るだけで、関係性が破綻することはありません。

部下は「この人はいつも自分のことを見てくれている。だから、この指摘も自分の成長のために言ってくれているはずだ」と前向きに受け止めることができます。

逆に、ふだんからコミュニケーションが希薄で、何か問題が起きた時だけ話しかけるような上司との間には、信頼残高がほとんどありません。むしろ借金がある状態かもしれません。この状態で注意をしても、「またダメ出しされた」「どうせ自分は評価されていない」と受け取られ、関係性はさらに悪化してしまいます。

手嶋氏は、この信頼残高の重要性について、次のように述べています。
心理的安全性が高い、低いっていうのがあった時に、心理的安全性が高いことの言い方をちょっと変えると、僕は信頼残高がある状態だなといつも思っていて。「この人だったら、なんだかいろいろと信用できるな」とか、「何を言われても大丈夫だな」っていう状況の中でフィードバックをすると、信頼残高が残る状態になると思うんですね。

ただ、これが低い状態でフィードバックすると、信頼残高の借金がある状態になってしまう。そうすると、フィードバックを受け取れないという事象が発生します。「一生懸命しゃべっているのに、なんだか相手には響いていない」みたいな事象が起きるのは、心理的安全性に借金がある状況になっているケースが多いんじゃないかなというふうに思っています。

引用:「上司が正論を言うだけ」のフィードバックはNG 部下を萎縮させずに動かす伝え方の技術(ログミーBusiness)

真に心理的安全性が高い組織では、上司から部下へという一方的な関係だけでなく、同僚同士、あるいは部下から上司へといった、あらゆる方向への注意が日常的に行われる文化が根付いています。

お互いの立ち居振る舞いや行動がどう映ったかを率直に伝え合うことで、相互理解が深まり、組織全体の成長につながるのです。注意の技術を学ぶ前に、まずは日々の関わりの中で信頼残高を積み重ねることが、何よりも重要だと言えるでしょう。

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