即レスが自分にもたらしてくれるメリット
即レスは、返信を受け取る相手に多大なメリットをもたらす行為ですが、実は即レスをする側にとっても恩恵があります。
その最大のメリットは「仕事が速くなる」ことだと、グロービス経営大学院の加藤想氏は語ります。なぜ即レスをするだけで、仕事全体のスピードが向上するのでしょうか。その理由は非常にシンプルで、即レスを習慣化することで、「連絡に対して返信する」というタスクを、わざわざToDoリストに書き出すという行為そのものが不要になるからです。
私たちは、すぐに対応しなかったタスクを忘れないように、手帳や付箋、デジタルツールなどに「〜さんに返信する」といったかたちで記録します。しかし、この「ToDo化する」という行為には、見えないコストが伴っています。
まず、「リストに書き出す」という物理的な手間が発生します。そして、より深刻なのは、そのリストに残った未処理のタスクが、常に自分自身に無言の圧力をかけ続けることです。
「あの件も返さないと」「これもまだできていないな」といった思いが頭の片隅に常に存在し続けることで、脳のワーキングメモリ、いわばCPUを無駄に消費し、目の前の仕事への集中力を削いでしまうのです。これは、多くの未処理案件を抱えることによる、一種の精神的ストレス状態と言えます。
即レスは、このToDo化の手間と、それに伴う精神的プレッシャーから自分を解放してくれる、極めて効果的な自己管理術なのです。連絡が来たらその場で処理する。この単純な行動を繰り返すだけで、タスクを管理するための時間や労力は大幅に削減され、結果として他の重要な業務に注力できる時間と心の余裕が生まれるのです。
加藤想氏は、即レスが返す側にもたらすメリットについて、以下のように説明しています。
ToDo化するということは、それをToDoリストに書く手間も発生しますし、リストがずっと残っていると自分に無言の圧力がかかると言いますか。「早くこのToDoをしないといけないぞ」というプレッシャーをかけることで、脳の余裕やCPUを圧迫していきます。
そこで即レスをすることによって、その手間を減らすことができるので、単純に即レスをする場合としなかった場合で、そこにかける時間や労力が倍ぐらい変わってくるんじゃないかなと思います。
引用:即レスは「する側」にとってもメリットが大きい理由 ToDoリストに追われるストレスを軽減するためのヒント(ログミーBusiness)
即レスを実践するための具体的コツ
即レスが重要であると頭では理解していても、実際にすべての連絡に即座に対応するのは難しいと感じる方も多いでしょう。そこで、即レスをすべき場面と、じっくり考えるべき場面を見極めるための具体的な基準を持つことが有効です。
1つのシンプルな基準として、「5分以内で終わる作業かどうか」を判断軸にすることが推奨されます。例えば、それほど気を遣わなくてもよいメンバーとの飲み会の日程調整や、簡単な資料の確認依頼など、短時間で処理できるタスクは、後回しにせずその場で片付けてしまうのが効率的です。こうした小さなタスクをすぐに終わらせることで、ToDoリストを無駄に肥大化させることなく、常に頭をクリアな状態に保つことができます。
逆に、5分以上かかるような複雑な判断や深い思考を要する案件については、無理に即答しようとせず、きちんと時間を確保して取り組むのが賢明です。
この基準に加えて、日々の業務の中で即レスを習慣化するための具体的なコツも存在します。
その中でも特に効果的な方法として、グロービス経営大学院の熊谷翔大氏は「メールやチャットツールの未読件数をゼロにすることを目指す」という習慣を紹介しています。特に、1日の仕事を終えるタイミングで未読件数を0件にするよう心がけることをお勧めします。これを実践すると、2つの大きなメリットがあります。
1つは、自然と連絡を返すスピードが上がっていくこと。そしてもう1つは、自分が今抱えている未処理の案件が何なのか、一目で把握できる状態を作れることです。実際に、仕事が早いと評価される人々の多くが、この「未読ゼロ」を実践していると言われています。
さらに、即答の心理的なハードルを下げる工夫も有効です。例えば、チャットやメールの返信でよく使う「よろしくお願いします。〇〇」といった定型文を辞書登録しておき、「よ」と入力するだけで自動的に表示されるように設定しておくといった工夫です。これによりタイピングの手間が省け、より迅速な返信が可能になります。
これらの基準やコツは、若手社員だけでなく、日々大量の連絡を受け取るリーダーやマネージャーといった立場の方にこそ、その効果を最大限に発揮するでしょう。
組織全体で即レス文化を醸成することによる効果
即レスは個人の生産性を高めるだけでなく、組織全体の文化として根付いた時に、さらに大きな効果を発揮します。
ある調査において、39社の企業で「なんでも即答する」という行動実験を行ったところ、非常に興味深い変化が現れました。まず、予想どおり組織全体の業務処理スピードが向上し、それに伴って時間外労働、つまり残業時間が減少するという直接的な効果が見られました。これは、個々のタスクの滞留時間が短縮され、プロジェクト全体がスムーズに流れるようになった結果と言えるでしょう。
しかし、この実験で最も注目すべきは、物理的な効率化以上に、働く人々の心理面に現れたポジティブな変化です。越川慎司氏は、この行動実験がもたらした予想以上の効果について、次のように語っています。
エブリシング即答。コンサルティングの場ではあまりふざけられないのでルー語とか使わないんですけど、39社で即答の行動実験をやったんですね。そうしたら、やっぱり全体の処理スピードが速くなったんです。いろんな条件はあるんですけど、いわゆる時間外労働、残業も減りました。そして、一番うれしいのは社員の満足度、働きがいが上がったことです。
即答をする文化になったら、みんなが快適になって人間関係も良くなったっていうんですよ。「仕事が楽しくなった」とか、「働きがいを感じるようになった」みたいに答える人が増えたんですよ。これはめっちゃうれしいですよね。
引用:“タスク渋滞”がないトップ5%社員の特徴は返事の速さ 39社で「なんでも即答」の行動実験をして、職場に現れた変化(ログミーBusiness)
これは、即レス文化がもたらす透明性と安心感が、職場における心理的安全性を高めた結果と考えられます。返信がすぐに来ることで、相手が自分の依頼を認識してくれているという安心感が生まれ、無用な憶測や不安がなくなります。これにより、コミュニケーションが円滑になり、チーム内での信頼関係が深まるのです。その結果、仕事そのものへのエンゲージメントが高まり、働きがいへとつながっていったと推察されます。
こうした文化の醸成には、ビジネスチャットのようなツールの普及も追い風となっています。チャットツールでは、相手がオンラインか、会議中か、といったステータスが可視化されるため、相手の状況に応じた最適なコミュニケーション手段を選択しやすくなります。これもまた、スピード感のあるコミュニケーションを後押しする一因です。
個人の心がけから始まった即レスが、組織文化へと昇華した時、それは単なる業務効率化のテクニックを超え、働く人々がより快適で、やりがいを感じられる職場環境を創造する力となるのです。