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離職率の改善(全1記事)

離職率の改善に効果的な施策・対策とは? 人材定着を成功させる具体的な実践ガイド [2/2]

離職率の改善におけるデータの重要性

多くの企業が離職問題に取り組む際、経営者や管理職の「思い込み」や「感覚」に頼った意思決定を下してしまいがちです。しかし、財務諸表が会社の財政状態を客観的に示すように、人事、すなわち「人の領域」においても、データに基づいた客観的な現状把握が不可欠です。

例えば「育休を取得した社員は、同期と比べて昇進が2年遅れている」「20代の入社1年以内離職率が、年々倍増している」といった事実は、データを分析して初めて明らかになる組織の課題です。こうした事実を見ずに思い込みで対策を講じても、的外れな結果に終わる可能性が高いのです。

しかし、多くの企業では人事関連のデータが給与システムや勤怠管理システムなど、さまざまな場所に散在しており、部門ごとの離職率を算出するような簡単な分析でさえ、1ヶ月以上かかることも珍しくありません。このデータ活用の障壁を取り払い、人的資本を可視化することが、効果的な離職率改善の第1歩となります。

データ分析がもたらす本質的な価値は、単に集計や見える化が容易になることではありません。データによって客観的な事実が明らかになることで、これまで気づかなかった論点を発見したり、仮説を検証したりすることが可能になり、結果として意思決定の質が劇的に向上するのです。

パナリット株式会社 代表取締役CEOの小川高子氏は、ある企業の事例を挙げて、データがいかに経営判断を覆す力を持つかを説明しています。
例えば、ある企業はデータが見えたことによって、経営陣が意思決定を180度変えたと言います。もともと同社は、3年以内に既存事業から新規事業へ社員の4割を異動する計画を進めていました。

ところが計画を進めているうちに、思った以上に離職率が激増してしまったといいます。これを知った経営層は、「強制的に異動させられたのが嫌で、新規事業の従業員が辞めてしまっているのではないか?」と思い、計画は中断せざるを得ないと思いました。

ところがパナリットを見てみると、実際に辞めていたのは新規ではなく、既存事業の従業員が多いことがわかりました。

詳細を見ていくと、優秀な従業員を新規に取られ、既存事業の生産性は悪化。それを埋めるために残業時間が倍になっていた。それが結果として、既存事業の離職率を悪化させていたんです。

これに気づいた経営層は、もともと「計画は中断しなきゃいけない」と思っていたところ、人選プロセスを再検討したら「計画は続行しても大丈夫」という判断ができました。

引用:ある企業で、離職率が1.5倍に激増した“本当の理由” 人事データ分析でわかった、自社の課題と最適な経営判断(ログミーBusiness)

この事例は、データがなければ経営層の思い込みによって、本来有効なはずの事業計画が中断されていた可能性を示唆しています。離職の真の原因は、異動そのものではなく、優秀な人材を引き抜かれた既存事業の負担増加にあったのです。この事実に気づけたからこそ、同社は人選プロセスを見直すという的確な対策を打ち、計画を続行できました。

思い込みやバイアスを排し、データという客観的な根拠に基づいて議論し、判断すること。これこそが、離職率の改善に立ち向かうための、現代の経営に不可欠な姿勢と言えるでしょう。

「成功循環モデル」が人材定着のカギ

多くの企業が離職率の高さに悩み、さまざまな対策を講じていますが、施策を行っていく上でしばしば「結果」ばかりに目が向きがちです。しかし、業績や成果といった「結果の質」を性急に追い求めることが、かえって組織を悪循環に陥らせるケースは少なくありません。

この問題に対する1つの答えを示してくれるのが、サイボウズ株式会社が実践してきた「成功循環モデル」です。これは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム元教授が提唱した理論で、組織の成果は「関係の質」→「思考の質」→「行動の質」→「結果の質」というサイクルで生まれると説きます。

まず、組織内の「関係の質」が高まる、つまり互いに尊重し、安心して意見を言い合えるような風土が醸成されると、メンバーの「思考の質」が向上します。他責や言い訳が減り、当事者意識を持って前向きなアイデアを出し合うようになります。

質の高い思考は、自然と挑戦的で主体的な「行動の質」へとつながります。そして質の高い行動が積み重なった結果として、最終的に業績向上などの「結果の質」が高まるのです。

このモデルの優れた点は、良い結果がさらに関係性を良くするという、好循環を生み出す点にあります。

かつてサイボウズは、このモデルとは逆の悪循環に陥っていたと山田理氏は言います。離職率が28パーセントに達し、業績も下方修正していた時期、同社は「結果の質」に強くこだわっていました。その結果、社内の雰囲気は悪化し、「関係の質」は著しく低下。メンバーは挑戦を恐れ、言われたことだけをこなすようになり、さらなる業績悪化を招いていたのです。

この悪循環を断ち切るために、同社は事業の成果である「結果の質」と、組織の健全性である「関係の質」を両輪と捉え、まずは改善しやすい「関係の質」から手をつける決断をしました。

山田氏は、当時の状況と変革への決意を次のように語っています。
もともと知っていたわけじゃなくて、「結果の質」にこだわっていたら、結果が出なくて「関係の質」が悪くなり、人は辞めていくと。雰囲気が悪くなると他責や言い訳が出てきて、挑戦もしないし言われたからやるというふうになっていく。

当然結果も出ないし、アメとムチじゃないですけど、無理やりインセンティブを出して「うまく走れ」って尻を叩くようなところに限界を感じたというか。それでいける会社もあるんだろうなと思いましたけど、僕らには無理だったなと思ったんです。

離職率が28パーセントで業績も下方修正していた頃に、少なくとも自分が働いている会社が暗かったり、みんながおもしろくなさそうにしていたら自分もおもしろくないし、「なんでみんなが楽しめない会社を作っちゃっているんだろう」と思ったんですね。

引用:目標や数字を個人に落としていく必要はない サイボウズが、離職率28%の悪循環から抜け出せた「成功循環モデル」(ログミーBusiness)

この気づきから、サイボウズは「どうしたら社員が働き続けてくれるか」を真摯に問い直し、働きやすい環境を整備し、活発な議論を促すフレームワークを構築していきました。その結果、社員の主体性が引き出され、自ら目標を設定し、それに向かって努力する文化が育っていったのです。

この事例は、短期的な成果を追うのではなく、まず良好な人間関係という土壌を耕すことが、持続的な成長と人材定着のカギであることを教えてくれます。

「離職率ゼロ」は本当に理想か?

ここまで離職率を改善するためのさまざまな情報をお伝えしてきました。離職率の改善を図るにあたり、その数値は低ければ低いほど良いという印象を抱く方も少なくありませんが、それは本当なのでしょうか。 
長年にわたり、企業の経営において「離職率が低いこと」は、従業員満足度が高く、経営が安定している証として、経営者が誇るべき指標とされてきました。

しかし、働き方や価値観が多様化する現代において、場づくりの専門集団 NPO法人 場とつながりラボhome’s vi 代表理事の嘉村賢州氏は、この従来の常識に一石を投じ、「離職率ゼロは目指すべきではない」という新たな視点を提示しています。

この考え方の根底にあるのは、会社が社員一人ひとりの人生やパーパス(存在意義)を心から応援するという姿勢です。人の夢や目標は、時と共に変化する可能性があります。

ある社員が「この会社で取り組んでいる事業とは違うことに挑戦したい」と考えた時、会社が本当にその社員の幸せを願うのであれば、その挑戦を応援し、快く送り出すことも1つの選択肢となるはずです。無理に引き留めるのではなく、卒業を祝福する文化があれば、会社と個人の関係はより健全なものになります。

このような考え方は、短期的には人材の流出に見えるかもしれませんが、長期的には企業にとって大きな利益をもたらす可能性があります。嘉村氏は、この新しい関係性を「組織生態系」という言葉で表現しています。
本当に会社が社員の幸せを考えたら、別に離職率ゼロは目指すべきでもなんでもない。もしそこで応援してあげたら、独立した人は「いや、俺はやりたいことが変わって独立したけど、古巣のあの会社は本当にすばらしくて、お前は前の俺の会社に合っていると思うよ」と、たぶん心から言ってくれる。(中略)

そうすると会社外に採用担当や営業担当がいっぱいいる感じになる。僕は「組織生態系」と呼んでいますけど。離職率にこだわった狭い組織よりも、ちゃんと応援して広い組織生態系を育むほうが、より豊かな未来が待っているんじゃないかなと思うんです。

引用:社員の幸せを考えたら「離職率ゼロ」は目指すべきではない 従来の経営の常識を覆す進化型組織の可能性(ログミーBusiness)

会社を辞めた元社員が、自社の良き理解者となり、新たな人材を紹介してくれたり、ビジネスパートナーになったりする。このような、組織の境界を越えたゆるやかなネットワークを育むことこそが、これからの時代に求められる企業のあり方なのかもしれません。

離職という現象を、単なる損失としてネガティブに捉えるのではなく、個人と組織が共に成長するための自然なプロセスと捉え直すことで、より豊かで持続可能な組織の未来が見えてくるのかもしれません。

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