ミーティングの価値を最大化する「収束」の30秒
ミーティングのプロセスにおける4つのパート「準備」「導入」「進行」「収束」の中で、最も簡単でありながら、最も大きな効果が期待できるのが「収束」パートでの基本動作、すなわち「決まったことと、やるべきことを確認する」ことです。
多くのミーティングでは、議論が白熱したり、時間が押したりする中で、この最後の確認作業が曖昧にされがちです。しかし、このわずかな時間の確認を怠ることが、ミーティング後の認識のズレや行動の遅延といった、さまざまな問題を引き起こす原因となります。
「ミーティングで何が決まったかくらい、全員が覚えているはずだ」と考える人もいるかもしれませんが、現実はそうではありません。同じ議論に参加していても、人によって解釈や重点の置き方は異なるものです。
このわずかな認識のズレが、後になって「私が担当することになっていたのですか?」「営業部が対応すると思っていました」といった責任の所在の曖昧さや、「先週決まったはずなのに、なぜまた同じ議論をしているのですか?」といった手戻りを生み出します。
この「決まったことの確認」の効果は、具体的な事例を通じて理解することができます。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 代表取締役社長の榊巻亮氏が語ったエピソードが、その重要性を物語っています。
そうしたら部長たちが「いいよ。確認しなよ」と温かく言ってくださったので、Aさんは嫌な顔をしながらも渋々、上から「これがこう決まって、これは決まっていないという認識で、ここは営業に連携ということですかね。B案採用で合っていましたか?」と、時間にして30秒くらい、上からザーッと1時間半ほどの打ち合わせの結果を確認してくれました。
すると何が起こったかというと、Aさんが言い終わるか言い終わらないかくらいのタイミングで、部長たちが好きなことを言い出したんですよ。「A、それで合っているよ」という部長もいれば、「いやいやA、何を聞いていたんだ。ここは営業に連携という話じゃないんだ。こういう話でまとまったんだ」と言う人もいたんです。
「B案は採用になったわけじゃなくて、B案を有力候補として継続検討していくという話になったんだ」とか、いろんなことをブワーッと言い出して、僕とAさんを置き去りにして、部長たちでもう1回議論を始めて、「ここはB案採用ということで、結果的には決定でいいんですよね」という声が聞こえてきました。
引用:最後に「30秒」、これをやるだけで会議の締まり方が変わる 誰でもできる、一番簡単で効果が出る「会議の基本動作」(ログミーBusiness)
この事例が示すように、若手の社員が勇気を出して行ったわずか30秒の確認が、ベテランの部長たちの中に存在していた認識のズレを浮き彫りにし、その場での再議論と最終的な合意形成を促しました。
もしこの確認がなければ、各部長が異なる理解のままミーティング室を後にし、プロジェクトの進行に大きな混乱が生じていたことでしょう。
この確認作業は特別なスキルを必要としません。役職や経験に関わらず誰にでも実践できます。1時間や2時間のミーティングの最後に、たった30秒を投資するだけで、その後の無駄な時間やトラブルを防げるのであれば、これを実践しない手はありません。ミーティングの締まり方を劇的に変えるこの基本動作を、ぜひ習慣にすることをお勧めします。
実行した会議を「効果」へとつなげるアクション
ミーティングの価値は、その時間内にどれだけ活発な議論がなされたかだけで決まるのではありません。本当に重要なのは、ミーティングで決定された事項がミーティング後に着実に実行され、具体的な成果につながることです。
そのためには、ミーティング後のフォローアップ、すなわちミーティング後のフェーズにおけるアクションが不可欠となります。ミーティングを主催する者は、ミーティング中の議論をまとめるだけでなく、その後の関係者の行動まで見据えて準備・進行する必要があります。
ミーティング後のアクションでまず行うべきは、議事録の共有と承認です。ミーティング中に作成された議事録を速やかに参加者全員に共有し、内容に相違がないかを確認、承認を得るプロセスを踏むことが推奨されます。このプロセスは、決定事項、ToDo(やるべきこと)、そして各タスクの担当者と期限について、参加者間の認識にズレがないかを最終確認する重要な機会となります。
口頭での確認に加えて、文書として記録を残すことで、後の「言った、言わない」といったトラブルを防ぐことができます。
また、優れた議事録は、ミーティングに参加できなかった関係者にとっても、価値ある情報源となります。議事録を読むだけで、どのような議論を経てその意思決定に至ったのかという経緯が理解できる状態にしておくことが理想です。
議事録は日常的には読み返されるものではないかもしれません。しかし将来何らかの問題が発生し、過去の経緯を振り返る必要が生じた際に、立ち返るべき公式なドキュメントが存在することは、組織にとって大きな安心材料となります。
ミーティング後のアクションを円滑に進めるためには、主催者の心構えも重要です。ミーティングの目的は、参加者が気持ちよく、前向きに次のアクションを起こしてくれる状態を作り出すことにあるという視点を持つことが大切です。
とにかく、相手が次に動きやすいかたちに可能な限り合わせることが大切です。
最後の3つ目は、笑顔で会議を進めて、笑顔で次のアクションの依頼をしましょう。会議の時に険しい顔で議論をし続ける人がたまにおられますよね。でも、険しい顔をして議論することにメリットはありません。
どちらかと言えば、にこっと笑って「○○さん、いついつまでにこれお願いしますね」と言われるほうが、相手に動いてもらいやすいのではないでしょうか。
引用:できるファシリテーターは「会議後」を見据えて準備・進行する ミーティング後に参加者の「前向きな行動」を促す3つのコツ(ログミーBusiness)
この言葉が示すように、相手の立場に立ち、次のアクションが取りやすいように配慮することが、実行力を高めるカギとなります。議事録のフォーマットを相手が使いやすい形式に合わせたり、タスクを依頼する際に高圧的な態度ではなく、協力をお願いする姿勢で伝えたりといった細やかな配慮が、相手の前向きな行動を引き出します。
議事録で明確になったタスクは、その後、共有のタスク管理ツールなどを用いて可視化し、進捗を管理していくことが望ましいです。これにより、誰が何をいつまでに行うべきかが常に明確になり、抜け漏れを防ぐことができます。そしてその進捗状況が、また次の会議に向けた準備のインプットとなっていくのです。
このように、ミーティング・実行・進捗確認というサイクルを回していくことで、ミーティングを組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるのです。