【3行要約】
・リーダーシップは特別な才能ではなく、組織の誰もが持ちうる影響力のことを指します。
・現代の複雑なビジネス環境では「適応型リーダーシップ」が求められています。
・リーダーへの転換には自らの視座を引き上げ、コンフォートゾーンから踏み出し、変革行動を実践する過程で周囲を巻き込む体験が不可欠です。
“リーダーシップ”の定義から考える、リーダーシップ開発の必要性
リーダーシップという言葉を考える時、多くの人は特定の役職や地位を思い浮かべるかもしれません。しかし現代の組織論において、その捉え方は大きく変化しています。
まず明確に区別すべきなのは、「リーダー」という役割と、「リーダーシップ」という能力です。
株式会社壺中天の坪谷邦生氏は、前者は組織図上のポジション、つまり役職を指しますが、後者は役職とは無関係に発揮される「影響力」そのものを意味すると語っています。この観点からリーダーシップを捉え直すと、それは特定の誰かだけが持つ特別な才能ではなく、組織を構成する誰もが持ちうる力であると言えます。上司が部下に対して持つ影響力はもちろんのこと、同僚同士、あるいは部下が上司に対してさえも、良い影響を与え、チームを前進させる働きかけができれば、それは紛れもないリーダーシップの発揮です。
例えばあるプロジェクトで課題に直面した際、役職を持たない1人のメンバーが率先して解決策を提案し、周囲を巻き込んで実行に移したとします。この時、彼はチームに対して強い影響力を及ぼし、目標達成に貢献しています。これは、彼がリーダーシップという能力を発揮した明確な実績です。
従って、リーダーシップ開発とは、単に次期管理職を育成することだけを指すのではありません。組織に属するすべてのメンバーが、それぞれの立場で周囲に良い影響を与え、自律的に行動し、チームや組織全体の目標達成に貢献できるように、その能力を高めていく取り組み全体を指すのです。この認識を持つことが、効果的なリーダーシップ開発の第1歩となります。
現代に必要なリーダーシップのかたち
前述したとおり、現代のビジネス環境は未来が予測困難で、複雑な状況に満ちています。このような時代において、従来の固定化されたリーダーシップスタイルは通用しにくくなっています
。求められるのは、ミネルバ認定講師の黒川公晴氏が紹介する、「適応型リーダーシップ」です。適応型リーダーシップとは、状況をその都度観察し、問題を特定し、解決策を提示して周囲を巻き込みながら変化を促していくリーダーシップのことで、持って生まれた素質ではなく、後天的に習得可能な「思考スキル」の集合体だと黒川氏は語ります。
この適応型リーダーシップの核となるのは、大きく分けて3つの力です。
1つ目に「システムを捉える力」です。これは、目の前で起きている問題を、個別の事象としてではなく、それを取り巻く全体のシステムの中で捉える能力を指します。この力によって、表層的な対症療法に陥ることなく、根本的な解決策を導き出すことができます。
2つ目に「関係性をマネジメントする力」です。変化を促すためには、他者を巻き込むことが不可欠です。そのためには、信頼関係を築き、共創を生み出す力が求められます。その中心となるのが、EQ(感情の知性)であり、特に「共感力」が重要となります。
相手の立場や感情を深く理解し寄り添うことで、人は心を開き、協力的な姿勢になります。この力は、多様な価値観を持つメンバーが集う現代のチームにおいて、一体感を醸成し、建設的な対話を通じて集合知を引き出すための基盤となります。
自分がいて、システム全体を学びながら、時には人に寄り添って、時にはチームを動かして、時には課題を正しく、ちゃんと自ら率先して定義する。それに対するイノベーション、ソリューションを考えていく。最後に意思決定するとか伝えるとか、これを自由自在に動き回ってそれぞれのスキルを実践できるようになるのが、私たちの目指している適応型リーダーシップのあり方というところですね。
これはたぶんみなさんが日々接しているリーダーだったり組織の課題だったり。あるいはみなさんの組織で今力を入れて伸ばそうとしている能力だったり、このへんを照らし合わせると、いろんな問いと対話が起こるんじゃないかなと思って、材料として今お伝えしています。
引用:リーダーシップは後天的に身につけられる「スキル」 新時代のリーダーの“核”となる3つの力(ログミーBusiness)
3つ目に「不確実な中で課題を推進する力」です。複雑な状況では、何が本当に解くべき問題なのかを見極めること自体が困難です。この力は、曖昧な状況の中から本質的な課題を自ら設定し、たとえ間違っていても修正しながら前進し続ける胆力を指します。
完璧な計画を待つのではなく、仮説を立てて行動し、フィードバックを得ながら軌道修正していく。このサイクルを回し続けることで、不確実性の高いプロジェクトでも着実に成果へと近づけていくことができるのです。
リーダーシップ開発を経て、リーダーになるために
リーダーシップに関する理論やスキルを学ぶことは重要ですが、それだけで人がリーダーに変わるわけではありません。真の変革は、知識を行動に移し、実際の経験の中でしか生まれないのです。
特にプレイヤーからリーダーへの転換期にある人材にとって最も重要なのは、自ら定めた変革課題を実践する過程で、周囲を巻き込むことの難しさと、同時にそのおもしろさを生々しく体感することです。
コンフォートゾーン、つまり慣れ親しんだ自分のやり方や思考の範囲から1歩踏み出し、これまで避けてきた他者への働きかけや、新しい役割に挑戦することは、誰にとっても勇気のいることです。
計画どおりに進まないこと、予期せぬ抵抗にあうこと、あるいは自分の未熟さを痛感することもあるでしょう。しかしこの試行錯誤のプロセスこそが、リーダーシップ開発を経てリーダーになる、その成長に不可欠な学びの宝庫なのです。
株式会社マネジメントパートナー 取締役の関教宏氏は、社員がリーダーへと転換するためには、自分の仕事から組織・チームの成功へと視座を引き上げることが最大のポイントであると述べています。その上で、具体的な変革行動を実践する重要性を次のように強調しています。
(スライドを示して)ですから最も重要なのは、最後のこの4番。変革行動を実践する過程で、周囲を巻き込む難しさやおもしろさを体感することです。コンフォートゾーンから一歩踏み出し、試行錯誤しながら行動するからこそ、成功や失敗の経験から視座を高める気づきが生まれる可能性が高まるんです。
実際には、変革行動を定期的に振り返って、都度修正を図る過程で学びを深めていきます。実際に行動したかしなかったか、その結果何が変わったか、なぜそうなったかと振り返っていきます。
引用:中堅社員をリーダーに育成するための4つのポイント 「人ごと」から「自分ごと」にさせる視座の高め方(ログミーBusiness)
このように、行動した結果を定期的に振り返り、そこから教訓を抽出するサイクルを回すことも重要です。「なぜうまくいったのか」「なぜうまくいかなかったのか」を深く内省し、「自分のどのような思い込みや行動が結果に影響したのか」を突き詰めます。成功体験からはさらなる展開へのヒントを、失敗体験からは繰り返さないための行動変容の要諦を学びます。
この「経験→振り返り→教訓化→次の実践」というサイクルを通じて、これまでとは異なる人間理解や、他者と協働して成果を生み出すことへの手応えを掴んでいきます。このリアルな体感を伴った学びこそが、机上の空論ではない、本物のリーダーシップの視座を育むのです。