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逆パワハラ(全1記事)

逆パワハラとは? 実例・上司と企業に必要な対策を解説 [1/2]

【3行要約】
・職場のパワハラといえば上司から部下への行為が知られていますが、「逆パワハラ」も問題になっています。
・株式会社ジェイフィールの調査によると、課長職の約4割が逆パワハラを経験し、4割以上の人が職場で目撃したという実態が明らかに。
・企業は就業規則への明記や相談窓口の設置、全社的な研修実施、管理職のマネジメント能力強化といった対策を講じ、逆パワハラを防ぐ組織文化の醸成に取り組むべきです。

逆パワハラとは?

近年、職場におけるハラスメント問題への関心が高まっていますが、その中でも特に増加傾向にあるのが「逆パワハラ」です。逆パワハラとは、部下から上司に対して行われる嫌がらせや攻撃的な言動を指します。

従来、パワーハラスメント(パワハラ)は職務上の地位を利用した上司から部下への行為と認識されてきましたが、現在ではその関係性が逆転したケースも深刻な問題として浮上しています。

株式会社ジェイフィールが実施した調査によれば、課長職の約4割が「逆パワハラを経験したことがある」と回答しており、この問題が決して一部の特殊な事例ではないことを示唆しています。また、同調査にて約4割以上の人が職場で逆パワハラを目撃したことがあると答えていることから、多くの職場で部下による上司への過剰な言動が問題視されている実態を浮き彫りにしています。

ハラスメントの問題は、被害を訴える側の主観だけでなく、客観的な事実に基づいて判断される必要があります。厚生労働省はパワハラの定義として、「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の就業環境が害される言動」という3つの要素すべてを満たすものとしています。

ここで重要なのは、「優越的な関係」が必ずしも職位の上下関係のみを指すわけではないという点です。例えば、部下が専門的な知識や経験を有しており、その協力なしには業務が円滑に進まない場合や、人手不足を背景に「辞める」ことを示唆して不当な要求を通そうとする言動も、優越的な関係を背景としたものと見なされる可能性があります。

逆パワハラは、パワハラの定義に当てはまる行為の一類型であり、加害者と被害者の関係が逆転しているに過ぎません。この問題は、単なる人間関係のトラブルではなく、組織全体の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、企業として正しく理解し、適切に対処することが求められています。

逆パワハラが組織に与える3つの悪影響

逆パワハラが職場に蔓延し、放置されると、組織は深刻な機能不全に陥る危険性があります。その影響は単に上司個人の問題にとどまらず、マネジメントラインの崩壊を通じて組織全体に波及します。株式会社PDCAの学校の宮地尚貴氏は、具体的には、主に3つの重大な悪影響が懸念されると指摘します。

1つ目に「上司のメンタルヘルスへの悪影響」です。部下からの執拗な攻撃や理不尽な要求、業務のサボタージュなどに日常的に晒されることで、上司は深刻な精神的ストレスを抱えることになります。これが長期化すると、うつ病などの精神疾患を発症し、休職や退職に追い込まれるケースも少なくありません。

特にプレイヤーとして優秀であった人材が管理職となり、このような事態に陥ることは、企業にとって大きな損失です。また「管理職は大変だ」という認識が社内に広まることで、優秀な社員が管理職になることを敬遠する風潮が生まれ、将来のリーダー育成にも支障をきたす可能性があります。

2つ目に「人材育成の停滞」です。逆パワハラなどによって上司が部下からの過剰な反発を恐れるようになると、業務上のミスや改善点について適切な指導や注意ができなくなります。「強く言うとハラスメントだと騒がれるかもしれない」という萎縮した心理が働き、本来であれば部下の成長のために不可欠なフィードバックを避けるようになるのです。その結果、部下は自身の課題に気づき、スキルを向上させる機会を失います。

また、上司が長年培ってきた専門的な知識や技術、業務ノウハウが次世代に継承されず、組織全体の能力低下を招くことにもつながります。

3つ目に「組織の機能不全」です。逆パワハラによって上司の権威が失墜し、マネジメントラインが崩壊すると、組織の根幹である指示命令系統が正常に機能しなくなります。上司の指示に部下が従わない、報告・連絡・相談が意図的に行われないといった状況が常態化し、組織としての統制が効かなくなります。

これにより、業務プロセスのチェック体制が甘くなり、重大なミスやコンプライアンス違反が発生するリスクが高まります。情報共有も滞り、部門間の連携も阻害されるなど、組織運営にさまざまな悪影響がおよび、最終的には企業の競争力そのものを蝕むことになります。

ベテラン社員の責任感が逆パワハラを引き起こした例

逆パワハラの事例として特に注目すべきは、加害者側に悪意がなく、「会社のため」「業務のため」という正義感や責任感から行動しているケースです。2025年3月の日経新聞で報じられた東京都内のソフトウェア会社の事例は、その典型と言えると、株式会社らしさラボの伊庭正康氏は語ります。この事例では、勤続30年となる50代のベテラン女性社員が、自身より年下で営業部門出身の管理本部長に対して、逆パワハラと認定される言動を繰り返しました。

この女性社員は、約150人の従業員が働きやすい環境を真摯に考える、非常に責任感の強い人物であったとされています。しかし、その強い責任感が、新しい上司のやり方に対する過剰な批判や要求というかたちで現れてしまいました。

具体的には、「こんなことをいちいち言わせないでください」といった責めるような内容のメールを送ったり、フロアに響き渡る大きな声で同様の指摘をしたりする行為を繰り返していました。

さらに「いいかげんに営業を離れて管理本部の一員になってもらえませんか?」「問題が生じた時、仕事への影響を最小限にする方法を考え、実行できる人でないと本部長は務まりません」といった、上司の適性を問うような厳しい言葉を投げかけていました。
女性は非常に優秀な方だったみたいですね。150人の従業員にとって働きやすい職場環境を考える、責任感あるベテランでした。ところがその責任感あるベテランがこんな行為に及んでいたという話をもう少しします。(中略)

正義感は満点ですが、実はこれは行き過ぎていますね。

内部通報が起こり、それによって事態が動き始めます。会社としては就業規則違反に当たるということでけん責処分を与えました。でも女性は納得しません。だって、よかれと思ってやっているんですから。こういうことだったんですね。

引用:部下からの「逆パワハラ」が管理職の負担に “モンスター社員”の暴走を防ぐ4つの対策(ログミーBusiness)

これらの言動は、女性社員自身の視点から見れば、組織を思うがゆえの「正当な指摘」であったのかもしれません。しかし、内部通報をきっかけに会社はこれを逆パワハラと判断し、就業規則違反としてけん責処分を下しました。

女性社員は「よかれと思ってやったのになぜ」と処分を不服とし、会社を相手取って慰謝料200万円を求める訴訟を起こしましたが、東京地裁は会社の処分を支持しました。判決では、女性社員の言動が「表現も厳しく、攻撃的な内容を含み、上司に対するものとしては不適切」であり、職場の秩序を乱す就業規則違反に該当すると判断されたのです。

この事例は、本人の意図がどうであれ、その言動の態様や与える影響によってはハラスメントと認定されうることを明確に示しています。特に長年の経験から自身のやり方に自負を持つベテラン社員が、新しい変化に対して抵抗感を抱いた際に、このような問題が発生しやすい傾向があるため、企業は注意深く対応する必要があります。

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