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アンガーマネジメント(全1記事)

アンガーマネジメントとは? 怒りのメカニズムとその付き合い方・コントロールの方法 [1/2]

【3行要約】
・私たちが感じる「怒り」は外部要因ではなく、自分の中の「べき」という価値観が裏切られた時に生じる感情です。
・組織内では、特にコミュニケーション不足が怒りの根本原因となることが多くあります。
・自己の価値観の可視化や日々の質の高いコミュニケーションを通じて、怒りの感情をマネジメントし、信頼関係を構築しましょう。

アンガーマネジメントが必要になる「怒り」とは

コミュニケーションのズレや、人間関係における摩擦の中心には、しばしば「怒り」という感情が存在します。では、私たちを怒らせるものの正体とはいったい何なのでしょうか。特定の「誰か」の言動でしょうか、それとも不運な「出来事」そのものでしょうか。

多くの人は、怒りの原因を「あの人があんなことを言わなければ」「こんな出来事さえ起きなければ」と、自分以外の他者や外部の状況に求めがちです。しかし、一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介によると、私たちを直接的に怒らせているのは、他者や出来事そのものではありません。真の原因は、私たち自身の心の中に存在します。

それは「~するべき」「こうあるべき」という、私たちが固く信じている価値観や信念、すなわち「べき」です。この「べき」は、個人の理想や願望、あるいはその人にとっての常識を表す言葉です。

例えば、「時間は守るべきだ」と強く信じている人は、約束の時間に遅れてくる人に対して強い怒りを感じるでしょう。「報連相は迅速に行うべきだ」という信念を持つ上司は、部下からの報告が遅れると苛立ちを覚えます。このように、自分が大切にしている「べき」が裏切られたり、踏みにじられたりしたと感じた時に、私たちの心には怒りの火種が生まれるのです。

この「べき」という言葉は、日常会話では「当たり前」「普通」「常識」「~なはず」といった言葉に置き換えられて現れることがよくあります。「普通はこうするでしょ?」「それが常識じゃないか」といった発言の裏には、その人固有の「べき」が隠れています。

この「べき」の扱いは非常に難しいものです。なぜなら、それにはいくつかの厄介な性質があるからです。

1つ目、人が持つ「べき」は、少なくともその本人にとっては絶対的な「正解」です。たとえ他者から見て「それはおかしいのでは?」と思われるようなことであっても、本人はそれを正しいと信じています。

2つ目に、「べき」は人によってその「程度」が異なります。「仕事は一生懸命やるべき」という価値観を共有していたとしても、「締め切り前は徹夜してでも終わらせるべき」と考える人もいれば、「定時が来たので帰るべき」と考える人もいます。どちらも「一生懸命やっている」という認識かもしれませんが、その尺度はまったく異なります。

3つ目、「べき」は固定的ではなく、時間や環境によって「変化」します。自分が新人だった頃に信じていた「べき」と、10年、20年と経験を積んだ現在の「べき」は、同じではないはずです。良くも悪くも、私たちの価値観は常に変わり続けています。

最後に、「べき」には、自分がはっきりと「意識している」ものと、「無意識」のうちに言動に表れてしまっているものがあります。

これらの性質を持つ「べき」が、自分と他者との間に存在する「違い」の根源となります。自分の「べき」は、あくまで自分にとっての理想や常識であり、相手のそれとは異なります。自分の正解が、相手の正解であるとは限りません。

この違いを認識せず、無意識のうちに自分の「べき」を相手に押し付けてしまうことが、アンガーマネジメントが必要になる、コミュニケーションのズレや怒りの感情を生み出す大きな原因となっているのです。

アンガーマネジメントのトレーニング方法

自分を怒らせる原因が、自身の中にある「べき」という価値観にあることを理解したとしても、その「べき」が無意識のうちに働いている場合、なかなか自覚することは困難です。では、どうすれば自分がどのような「べき」を持っているのかを客観的に把握できるのでしょうか。そのための有効なトレーニング方法が、一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介氏が紹介する「べきログ」です。

「ログ」とは、記録を取ることを意味します。アンガーマネジメントのトレーニングでは、自分が何に、どのように怒ったかを記録する「アンガーログ」など、さまざまなログを取る手法が用いられます。その中でも「べきログ」は、自分の怒りの根本原因となっている価値観、すなわち「べき」を可視化することに特化したものです。

「べきログ」の目的は、自分がどのような「べき」「はず」「普通」「常識」「当たり前」を持っているかを書き出し、それを客観的に認識することです。これを続けることで、自分の怒りの火種がどこにあるのか、そして他者との間にどのような価値観の違いがあるのかを具体的に見つけ出すことができます。

人間関係をうまく築けない人は、相手との「違い」にばかり目が行きがちですが、その「違い」の正体こそが、互いの「べき」の相違なのです。このログは、その違いを理解するための第1歩となります。

では、具体的に「べきログ」はどのように行えばよいのでしょうか。1つの方法は、自分が誰かと話している場面、特に新入社員への研修や部下への指導など、何かを教えている場面の会話を録音してみることです。

もちろん、相手には事前に許可を取る必要があります。そして録音を聞き返し、自分が「~べき」という言葉をどのくらい使っているかを確認し、記録します。

重要なのは、「べき」という直接的な言葉だけを追うのではないという点です。「べき」は、しばしば他の言葉に姿を変えて現れます。

・「~のはず」
「こうなっているはずだ」という期待は、「べき」の1種です。

・「当たり前」「常識」「普通」
「普通はこうだよね」「それは常識でしょ」といった言葉は、自分の価値観が絶対であるという前提に基づいています。これもまた、強力な「べき」の表れです。

したがって、ログには「べき」という言葉そのものだけでなく、これらの類義語を自分が使っていた、あるいは心の中で思っていた場面も記録していく必要があります。

これらの言葉を使うこと自体が悪いわけではありません。目的は、あくまで自分の思考の癖や怒りの根本原因となっている価値観を「自覚する」ことにあります。

自分はどんな「べき」を持っているのか。それがわかれば、なぜ特定の状況で怒りを感じるのか、なぜ特定の人との間に摩擦が生じるのかを冷静に分析できるようになります。

この自己分析、すなわち自分自身を振り返る作業を通じて、私たちは初めて自分の感情をコントロールするスタートラインに立つことができるのです。「べきログ」は、そのための最もシンプルかつ効果的なトレーニングの1つと言えるでしょう。

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