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アンガーマネジメント(全1記事)

アンガーマネジメントとは? 怒りのメカニズムとその付き合い方・コントロールの方法 [2/2]

コミュニケーション不足は怒りの根本原因となる

私たちが日常的に感じる「イラっとする」という感情の背景には、個人の「べき」の対立だけでなく、より根源的な問題として「コミュニケーション不足」が潜んでいることが少なくありません。

コミュニケーションが不足すると、特に組織内ではさまざま弊害が生じます。代表的なものが、報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」の質の低下や遅延です。

部下からの報連相が滞ると、彼らは自らの業務を客観的に振り返り、原因を分析する機会を失います。同時に、上司は現場の状況を正確に把握できず、経営判断の遅れといった深刻な問題につながる可能性があります。

コミュニケーションの希薄化は、さらに組織内の人間関係、特に上下関係に歪みを生じさせます。対話が少ないと、部下は上司を実際以上に「大物」で近寄りがたい存在だと感じ、逆に上司は部下が「本当に仕事をしているのだろうか」という根拠のない疑念を抱くといった錯覚が生まれやすくなります。

このような状況で最も重要なのは、「何を言うか」よりも「誰が言うか」、つまり発言の土台となる「信頼関係」です。信頼関係が築かれていれば、たとえ厳しい指摘であっても「自分のために言ってくれている」と前向きに受け止められます。しかし信頼関係がなければ、同じ言葉でも「嫌味を言われた」「管理されている」といったネガティブな感情を抱かせてしまいます。

例えば、社長が現場の社員に頻繁に声をかけるという行為も、信頼関係があれば「気にかけてくれている、ありがたい」と感じられますが、なければ「細かく口出しされてうざい」と感じてしまうでしょう。仲の良い友人から「誕生日をお祝いしたい」と言われればうれしいですが、苦手な相手から同じことを言われたら、素直に喜べないのと同じです。

では、この不可欠な信頼関係を築くためのコミュニケーションは、どのように取ればよいのでしょうか。管理職の中には「飲み会」や「ゴルフ」といった業務外の交流を挙げる人もいますが、それだけでは十分とは言えません。最も効果的なのは、日々の業務の中にコミュニケーションの機会を組み込むことです。

その具体的な方法として推奨されるのが、「日報を口頭ベースで行う」ことだと、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏は言います。1日の終わりに3分から5分程度、部下と上司が面と向かい、「今日はこんな業務を行い、ここでつまずきました」「こういう工夫をしたらうまくいきました」といった生きた情報を交換するのです。

これを毎日続けることで、業務の進捗管理だけでなく、部下の悩みや成長をリアルタイムで把握し、信頼関係を着実に築いていくことができます。

また、上司は報連相を受ける際に、「結論から話そう」「それは主観?事実?」といった指導を行うことで、部下の論理的思考力や整理能力を育成する機会にもなります。日々の業務報告を、単なる作業ではなく、質の高いコミュニケーションと教育の場として捉え直すこと。これが、コミュニケーション不足という根源的な問題を解決し、結果として怒りや不信感の芽を摘むことにつながるのです。

価値観の変容を促す「メタ認知」の重要性

怒りの感情をコントロールし他者との良好な関係を築くためには、表面的なテクニックだけでなく、より深いレベルでの自己変容が求められます。そのカギを握るのが、「非認知能力」と、それを育む「メタ認知」という考え方です。

まず「非認知能力」とは、学力テストなどで測定できるIQや知識といった「認知能力」とは対照的に、数値化することが難しい内面的な力の総称を指します。心の知能指数と呼ばれるEQ、ライフスキル、ソフトスキルなども、この非認知能力に含まれます。

具体的には、自制心、忍耐力、協調性、共感力、やり抜く力といった、私たちが社会で生きていく上で不可欠な資質がこれにあたります。

岡山大学 准教授の中山芳一氏によると、現代社会において、この非認知能力の重要性はますます高まっていると言います。AIをはじめとする科学技術の急速な進歩、人生100年時代という長寿化、そして気候変動や世界情勢の不安定化など、私たちはかつてないほど不確実で複雑な時代を生きています。

かつてのように「良い大学に入り、良い企業に就職すれば安泰」という単純な成功モデルはもはや通用しません。知識をインプットするだけの認知能力だけでは、この変化の激しい時代を乗り越えることは困難であり、変化にしなやかに対応するための心の力、すなわち非認知能力が不可欠となっているのです。

重要なのは、この非認知能力は「伸ばすことができる」、つまり後天的に「変えていくことができる」という点です。中山氏は、この変容のプロセスについて次のように解説しています。
例えば我々が生まれながらに持っている気質とか、3〜4歳ぐらいまでの低年齢時に形成されていく性格とか、いわゆる発達障害特性のような生まれながらに持っている基本特性。こういったものは、我々の人格とか非認知能力にものすごく影響を与えます。

気質や性格、基本特性ってすごくベースですが、それこそ年齢を重ねれば重ねるほど、はっきり言ってもう変えられませんよね。

じゃあ何を変えていくのかというと、ここで非常に重要になってくるのが「価値観」です。(中略)

そこで必要になってくるのが、価値観だけではなくて「自己認識」です。自己認識とは、言い方を変えれば「自分が周りからどう見られているのか」ということです。

自分のとっている行動で、周りはどういう印象を受けているのかとか、自分を客観的に見る。そして客観的に見て、その上で自分の行動を調整する。つまり、「モニタリング」と「コントロール」です。なので、ここでメタ認知が非常に関わってきます。

引用:年齢を重ねて、性格は変えらなくても「価値観」は変えられる 不確かな時代を生き抜くために、大人が取り組む「メタ認知」(ログミーBusiness)

中山氏が指摘するように、生まれ持った気質や幼少期に形成された性格を変えることは非常に困難です。しかし、私たちが変えることができるもの、それが「価値観」と「自己認識」です。

「自己認識」、すなわち「自分を客観的に見る力」こそが「メタ認知」です。メタ認知とは、自分自身の思考や行動を、もう1人の自分が少し高い視点から観察し、必要に応じて修正する能力のことです。

例えば「短気な性格」そのものは変えられなくても、「カッとならず、寛容な人間になりたい」という「価値観」を持つことはできます。そして、イラっとした瞬間にメタ認知を働かせ、「今、自分は怒りを感じているな。でもここで感情を爆発させると、人間関係が悪化する。ぐっとこらえよう」と自分の行動をコントロールする。

このプロセスを繰り返すことで、「ぐっとこらえる」という行動が習慣化し、定着していきます。これが「行動特性」の変化であり、非認知能力が伸びた状態です。

このように、メタ認知を通じて自身の価値観と行動を結びつけ、意識的に行動を変容させていくこと。これこそが、怒りの感情に振り回されることなく、不確かな時代を生き抜くための本質的なアプローチと言えるでしょう。

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