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自律型人材(全1記事)

自律型人材とはどんな人のこと? 育成方法と能力発揮のため組織に必要なこと [1/2]

【3行要約】
・自律型人材は「1人で何でもできる人」ではなく、自らの価値観に基づき周囲を巻き込む人材です。
・組織環境が自律性を阻害する場合、どんな資質を持つ人でも能力を発揮できないという現実があります。
・企業は研修だけでなく「対話の機会」「健全な依存」を促す仕組みを構築し、自律的な組織文化を醸成しましょう。

自律型人材とは

「自律」という言葉を考える時、多くの人が「1人で何でもできる」「他人に頼らない」といったイメージを抱きがちです。しかし組織における「自律型人材」とは、そのような孤立した存在を指すのではありません。自律型人材について知るためには、まず「自律」と同音異義語である「自立」の意味を明確に区別する必要があると、エール株式会社 取締役の篠田真貴子氏は言います。

「自立(independence)」が経済的な独立など、他者に依存せずに独り立ちしている状態を指すのに対し、「自律(autonomy)」は、他者から与えられた規律ではなく、自らが立てた規律や価値観に従って行動することを意味します。つまり、自律の反対語は「依存」ではなく「他律」なのです。

この定義からわかるように、「自律的であること」と「独り立ちしていること」はまったく異なります。むしろ組織の中で自律性を発揮するためには、他者と健全に依存し合い、協力できる関係性が不可欠となる場面も少なくありません。

さらに重要なのは、「個人が自律的な資質を持っていること」と、「その人が特定の組織や環境の中で自律的に働けるかどうか」は別問題であるという点です。例えば、ある個人が本来は非常に自律的な思考や行動様式を持っていても、属する組織の文化や環境がそれを許容しなければ、その能力は発揮されません。

具体例の1つとして、篠田氏はPTA活動の経験を紹介しています。ふだんの仕事では極めて自律的に動いている人でも、PTAのような場では、前例踏襲が重んじられ、個人の意見や主体的な行動が求められない環境であれば、他律的に振る舞うことを選ぶかもしれません。これは、その人の資質が失われたのではなく、環境が自律的な働き方を促していなかった結果です。

したがって、企業が「自律型人材を育成したい」と考えるのであれば、その視点は社員個人だけに向けられるべきではありません。むしろ「自社は社員の自律性を促す組織になっているか」「管理職は部下一人ひとりと、それぞれの自律性を引き出すような関係性を築けているか」といった、組織側の環境要因をこそ問う必要があります。

自律型人材の育成とは、単に個人のスキルやマインドセットを変えることではなく、自律性が発揮されやすい組織環境や文化を創造していく取り組みそのものなのです。

自律型人材の育成のために必要な管理職の姿勢

では、そんな自律型人材を育成するためにはどのようなことが必要なのでしょうか。自律的に動ける人材を育成する上で、報告・連絡・相談、いわゆる「報連相」の徹底が基本とされることは言うまでもありません。

しかし、業務が複雑化し、前例のない課題に直面することが常態化した現代において、従来の報連相だけでは不十分な場面が増えています。特に報告や連絡といった一方向の情報伝達とは異なり、双方向のやりとりを必要とする「相談」は、その難易度が一際高くなるのです。

「お客様にはお茶と名刺、どちらを先にお出しすべきですか?」といった明確な正解が存在する問いであれば、上司に相談すればすぐに答えが得られます。しかし、自律的な人材が向き合うべき課題は、「どうすればお客様との信頼関係をより深められるか?」といった正解がないものがほとんどです。

このような問いに対しては、部下が自分なりに考え抜き、完璧な提案を準備してから上司に相談しようとしても、上司もまた明確な答えを持っているわけではありません。結果として、対話は行き詰まり、部下は1人で悩み続けることになります。

こうした状況を打開するために不可欠なのが、「雑談」と「雑な相談」ができる関係性です。答えのない問いに直面した時、完璧なプランを練り上げる前に、「ちょっと今、こんなことで悩んでいて……」「こういう可能性も考えたんですけど、どう思われますか?」といったように、思考の途中段階を気軽に共有し、共に考える。このような「雑な相談」が、新たな視点やアイデアを生み出すきっかけとなります。
報連相の中で一番難しいのが相談なんですね。報告・連絡は、Slackとかメールを投げておけばいいんですよ。それで報告・連絡は終わり。だけど相談は、相談した後、返してもらわないといけないし、返してもらったやつに対してさらに返さないと相談にならないので難しいんです。

できないうちは定型的な決めたことを相談するだけなのですが、だんだん難しい仕事が自分に回ってくると、決まった答えがあるものばかりじゃない。正解がわかっていない上に、上司もわかっていない時には、もう雑に相談するしかないんですね。

引用:自律的に動く部下の育成には数年かかる “利益だけじゃない”人材育成に倉貫義人氏が取り組む理由(ログミーBusiness)

もちろん、「雑な相談」は誰にでもすぐにできるわけではありません。それ自体が高度なスキルであり、日頃からの信頼関係が土台となります。上司が部下の相談に対して、「もっと考えてから持ってこい」と突き放すのではなく、「なるほど、一緒に考えよう」という姿勢を示すこと。そして部下もまた、自分の未熟さや悩みをオープンにできる心理的安全性が確保されていること。この両方が揃って初めて、生産的な「雑な相談」が可能になります。

自律的に動ける人材とは、決して1人ですべてを解決できるスーパーマンではありません。むしろ、答えのない問いに対して、周囲を巻き込み、雑談や雑な相談を通じて集合知を引き出しながら、より良い解を共創していける人材です。

組織には、そのような協働的な問題解決を促すため、フォーマルな会議の場だけでなく、日々の雑談の中からイノベーションの芽が生まれるような、風通しの良いコミュニケーション環境を整えることが求められます。

自律型人材が能力を発揮するために必要なスキル

自律型人材がその能力を最大限に発揮するためには、自身の行動の原動力となる「動機の源」を深く理解していることが不可欠だと、昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏は指摘します。動機の源とは、個人が心からやりがいを感じる理由や、自分を突き動かす大切な価値観を指します。

この内発的な動機が自らが目指す「ありたい姿」やビジョンと結びついた時、「クリエイティブテンション」と呼ばれる強いエネルギーが生まれます。これは、現状と理想のギャップを埋めたいという強烈な欲求であり、創造性や問題解決能力、学習意欲を飛躍的に高めるのです。

しかし、多くの人は自身の「動機の源」を明確に意識していません。例えば、プロジェクトが成功した際には誰もが喜びを感じますが、その喜びの源泉は人それぞれ異なります。

「チーム一丸となって目標を達成できたこと」に喜びを感じる人もいれば、「誰も思いつかなかった独創的なアイデアが実現したこと」に満足感を覚える人もいます。「競合他社に打ち勝ったこと」が最大の喜びである人もいるでしょう。これらの違いこそが、個人の動機の源を浮き彫りにします。

この動機の源を自覚するためには、「リフレクション(内省)」が極めて有効な手段となります。特に、自分の意見や感情を客観的に見つめる「メタ認知」の技術は、自己理解を深める上で欠かせません。

そのためのフレームワークとして、熊平氏が紹介しているのが「認知の4点セット」です。これは、ある「意見」の背景には、必ず過去の「経験」があり、その経験には特定の「感情」が紐づいており、さらにその根底には判断の尺度となる個人の「価値観」が存在するという考え方です。

例えば、「リフレクションを日本の当たり前にしたい」という意見を持つ人がいるとします。その背景を探ると、「過去に不確実性の高いプロジェクトで行き詰まった際、リフレクションによって現状を理解し、次の一手を見出すことができた」という成功体験(経験)があります。その時に「先が見えないストレスから解放され、うれしかった」(感情)という記憶が刻まれました。

そして、その根底には「人の持つ潜在能力が開花することに最大の喜びを感じる」という個人的な価値観が存在します。リフレクションは、まさにその潜在能力を開花させるための強力なツールであると確信しているのです。

このように、自らの意見や行動の背景をリフレクションによって深く掘り下げることで、自分が何を大切にし、何に突き動かされているのかという「動機の源」が明確になります。

与えられた仕事であっても、その中に自分なりの目的を見出し、動機の源と結びつけること。これこそが、VUCA時代に求められる真の主体性であり、自律的な働き方の土台となるのです。

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