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自律型人材(全1記事)

自律型人材とはどんな人のこと? 育成方法と能力発揮のため組織に必要なこと [2/2]

自律型人材の能力発揮には「全体像の把握」も必要

株式会社アクティブ アンド カンパニーの三上真央氏は、社員が自律的に行動するためには、単に個々のタスクをこなす能力だけでなく、自身の業務が組織全体の中でどのような位置づけにあるのか、そして他者とどのようにつながっているのかという「全体像」を把握していることが重要だと指摘します。

全体像が見えていなければ、予期せぬ変化が起きた際に、その情報が誰に、どのような影響を及ぼすかを想定できず、結果として指示を待つしかなくなってしまいます。

例えば、ある情報を誰に連絡すべきかを判断する場面を考えてみましょう。この判断を的確に行うためには、その情報がもたらす影響範囲を特定する必要があります。製造業であれば、自分の担当する工程の変更が、後工程にどのような影響を与えるか。営業職であれば、顧客からのフィードバックを、開発部門やサポート部門とどう連携するべきか。

こうした業務プロセスのつながりを理解していなければ、「関係部署はここだから、すぐに連絡しなければ」という自律的な判断は生まれません。緊急時、逐一上司の許可を得ていては、対応が遅れ、ビジネスチャンスを逃したり、問題が拡大したりする可能性があります。

この「全体像の把握」を促す上で、管理職の役割は非常に大きいと三上氏は言います。上層部から共有された組織の戦略や方針といった上位の情報を、ただ自分のところで留めてしまうのではなく、部下が理解できる具体的な言葉で伝えることが求められます。

あえて情報を部下に伝えることで、部下は自分の業務という点だけでなく、組織全体の流れという線や面で物事を捉えられるようになります。「今、組織全体でこういう動きがあるから、自分のこの業務が、あの部署に影響を及ぼすかもしれない」といった連想が働くようになり、より広い視野での判断と行動が可能になるのです。

「この会社は何のために存在し、この事業は何の目的で推進されているのか」という根幹部分が共有されていれば、社員は上司の指示がなくとも、その目的に沿った自律的な判断を下すことができます。

組織の目的や戦略といった全体像を共有することは、社員一人ひとりの自律的な判断を支える基盤であり、変化の激しい時代を乗り越えるための組織能力そのものと言えるでしょう。

自律型人材の育成は「組織の仕組みづくり」が必要

自律型人材の育成や自律的な組織文化の醸成は、個々の社員の意識や管理職の努力といった「根性論」だけで成し遂げられるものではありません。「研修をやれば社員は自律するだろう」「ニンジンをぶら下げれば走るだろう」といった旧来型の発想は、人の内発的動機や価値観の多様性を扱う現代の組織運営には通用しません。

真に自律的な組織を目指すのであれば、個人の頑張りに依存するのではなく、組織としての「仕組み」を構築することが不可欠です。

その仕組みの根幹をなすのが、「対話の機会」を組織的にデザインすることです。上司と部下の1on1はもちろん重要ですが、そこには評価という利害関係が常につきまといます。したがって、上司以外の他者と対話できる機会を意図的に作ることが極めて重要になります。

例えば、他部署のマネージャーがメンターとなる「斜めの関係」を制度化したり、社外の人材を活用したりして、社員が自身の価値観や感情に安心して触れられる場を提供したりすることも有効な「仕組み」の1つです。

また、「健全な依存」を許容する文化と、それを支える仕組みも欠かせません。前述したとおり、自律とは、何でも1人で抱え込むことではありません。

自分の「Cannot(できないこと)」を明確にし、その中でも「手放すCannot」、つまり他者の助けを借りるべき領域を自覚し、周囲に助けを求めることができる。そして組織もまた、そうした「健全な依存」を奨励し、チーム内で助け合いが生まれるような仕組みを持つことが重要です。

個人の「好き」「得意」といった特性や、「伸ばしたいCannot」「手放したいCannot」といった情報を可視化し、人事データベースなどで共有することも、チーム編成や業務アサインの最適化につながるでしょう。

さらに、社員の成長段階に応じた評価や報酬の仕組みも、自律性を支える重要な要素です。例えば、株式会社ソニックガーデンが導入している「キャリブレーション」という制度では、技術的な習熟度だけでなく、「セルフマネジメント」のレベルも評価の対象となると言います。

レベル1は「報告・連絡・相談や進捗管理といった自己管理ができる」段階。レベル2は「自分の仕事を客観視し、自ら振り返り改善できる」段階。このように自律に向けたステップを明確に定義し、その段階に合わせて報酬を設定することで、社員は自身の現在地と目指すべき姿を具体的に認識し、主体的に成長を目指すことができます。

自律型人材の育成は、一朝一夕に実現するものではなく、数年単位の時間を要する息の長い取り組みです。だからこそ、個人の資質や管理職の力量だけに頼るのではなく、対話の機会、助け合いの文化、成長を促す評価制度といった、組織的な「仕組み」を粘り強く構築していくこと。それこそが、変化の時代を生き抜く、真に自律的な組織への道筋なのです。

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