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仕事でイライラが止まらない(全1記事)

仕事中にイライラが止まらないのはなぜ? 苛立ちの原因・対処法 [2/2]

イライラの背後に隠れているかもしれない深刻な疲労

仕事中に感じるイライラや気分の落ち込みは、単なる「性格の問題」や「気合が足りない」せいだと片付けられがちですが、その背後には、より深刻な心身の疲労が隠れている場合があります。

元陸上自衛隊衛生学校心理教官・心理カウンセラーである下園壮太氏は、現代人のメンタル不調の多くが慢性的な疲労の蓄積によって引き起こされると指摘し、「3段階理論」を提唱しています。この理論は、疲労が深まるにつれて、私たちの心身がどのように変化していくかを段階的に示しています。

第1段階は「通常モード」です。この段階では、私たちは心身ともに健康な状態にあり、仕事でのストレスや一時的な疲労が発生しても、十分な休息によって回復することができます。

例えば、徹夜をしたり上司から厳しい指導を受けたりして落ち込んでも、数日後には元の状態に戻っているのがこの段階です。理性的な思考力が感情を上回り、問題解決にも集中して取り組むことができます。

しかし、疲労が解消されないまま蓄積していくと、第2段階である「モヤモヤモード(プチうつ状態)」へと移行します。この段階の最大の特徴は、ストレスに対する感受性が通常時の約2倍になることです。

同じ出来事であっても、以前の2倍の精神的ダメージを受け、回復にも2倍の時間がかかるようになります。理性と感情の力が拮抗し始め、常に何かに追われているような緊張感に苛まれます。仕事に集中できなくなり、「だるい」「おっくう」「めんどくさい」といった言葉が口癖になるのもこの時期です。

しかし、社会的な活動はまだ可能なため、職場では笑顔で振る舞うものの、1人になると深く落ち込む「闇落ちモード」に陥るなど、感情の波が激しくなります。多くの人が「性格が悪くなった」と感じ始めるのは、この第2段階です。

さらに疲労が深刻化すると、第3段階の「うつ状態」に至ります。ストレス感受性は3倍になり、回復にも3倍の時間を要します。自責感、不安感、無力感といったネガティブな感情に支配され、思考は極端に偏ります。不眠や食欲不振、原因不明の頭痛やめまいといった身体症状も顕著に現れ、社会生活を維持することが困難になります。

この状態は、もはや本人の性格とは異なる「別人化」した状態であり、専門的な介入が必要となります。

下園氏は、この蓄積疲労のプロセスについて次のように解説しています。
ところがですね、私はもう長年この仕事をしていますが、自衛隊の頃から多くのことを観察していると、実は一番(ストレスに影響が)大きいのが疲労の度合い(蓄積疲労)。これによって、センサーが2倍、3倍になる現象があるんです。これは、みなさんあんまりご存じないんですね。(中略)

これは「蓄積疲労の3段階モデル」という私のモデルなんですが、1段階疲労、2段階疲労、3段階疲労と、疲労の度合いがだんだん深まっていくと思ってください。(中略)

ところが、私たちがなんらかの原因で疲れを溜め込んでしまって2段階(疲労)になったら、実は(ストレスを感じるセンサーは)2倍モードなんですね。なぜ2倍モードかというと、前と同じ上司に怒られたり、徹夜したりして、だいたい2日後には回復した場合、同じ出来事だから「今回も2日後には、前日と同じレベルまでにはいくかな」と想定する。

ところが同じ上司からの指導であっても、なんとなく2倍ショックで考え込んじゃうし、抜けるのにも2倍かかるんです。この「抜けるのにも2倍かかる」というのが重要なポイントで、3倍モードになると同じ出来事でも3倍ショックを受けて、回復まで3倍かかるんです。

引用:なんとか仕事はこなせるが、集中力がもたない「プチうつ状態」 知らずに溜まった「蓄積疲労」が、心身にもたらす症状とは(ログミーBusiness)

このように、仕事でのイライラは、心身が発する疲労のサインかもしれません。自身の状態をこの3段階理論に照らし合わせて客観的に把握することが、深刻なメンタル不調を防ぐための第1歩となります。

心の不調に気づくためのセルフチェック

メンタルヘルスを健全に保つ上で、最も基本的かつ重要な鉄則は「人を守る前に、まず自分を守る」ことです。私たちは、特に責任感が強い人ほど、他者への配慮や仕事上の義務を優先し、自分自身の心身が発するSOSサインを見過ごしてしまいがちです。

しかし、自分自身が健全でなければ、他者を支えたり、質の高い仕事をしたりすることはできません。法律(労働安全衛生法)においても、事業者だけでなく労働者自身にも「自分の健康は自分で守る」努力義務が定められており、セルフケアは社会的な責務でもあるのです。

では、多忙な日常の中で、どのようにして自分自身の心の不調に気づけばよいのでしょうか。そのための非常にシンプルで強力な指標が、「食べる・寝る・遊ぶ」という人間の基本的な活動だと株式会社メンタルヘルステクノロジーズ代表取締役の刀禰真之介氏は語ります。

これら3つの要素になんらかの変調が現れた時、それはメンタルが疲弊しているサインである可能性が高いと考えられます。

食べる(食事)
食欲が極端になくなったり、逆に甘いものや特定のものを過剰に食べたくなったりしていませんか。食事は生命維持の基本であり、そのリズムの乱れは心身のバランスが崩れていることの現れです。

寝る(睡眠)
なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、あるいは逆にいくら寝ても眠気がとれないといった睡眠の問題はありませんか。不眠はうつ病の代表的な症状の1つであり、自律神経の乱れを示唆しています。質の良い睡眠がとれていない状態は、心身の回復を妨げ、疲労を蓄積させる大きな原因となります。

遊ぶ(休養・楽しみ)
以前は楽しめていた趣味や活動に対して、まったく興味がわかなくなったり、楽しめなくなったりしていませんか。「遊んでもつまらない」「何かをする気力も起こらない」という状態は、心のエネルギーが枯渇している証拠です。喜びや楽しみを感じる能力の低下は、メンタル不調の重要なサインです。

これらの「食べる・寝る・遊ぶ」は、私たちの心身の健康状態を映し出す鏡のようなものです。もしこれらのいずれかに明らかな変化を感じたら、それは「少し休んだほうがいい」「何か対策を講じる必要がある」という、自分自身からのメッセージです。

このサインを軽視せず、早期に専門家に相談したり、意識的に休息を取ったりすることが、深刻なメンタル不調へと陥るのを防ぐ上で極めて重要になります。日々の生活の中で、この3つの観点から自分自身を客観的にチェックする習慣を持つことが、効果的なセルフケアの第1歩となるのです。

自律神経を整え、ポジティブを作る習慣

心の不調のサインに気づいたら、次に行うべきは具体的なセルフケアの実践です。特に重要なのが、心身の状態をコントロールしている「自律神経」を整えることです。

自律神経は、日中の活動時に優位になる「交感神経」と、夜間のリラックス時に優位になる「副交感神経」から成り立っています。ストレスや疲労が蓄積するとこのバランスが崩れ、夜になっても交感神経が優位なままとなり、不眠やイライラを引き起こしてしまうのです。

このバランスを整える方法として、刀禰真之介氏は今日から始められる具体的な習慣をいくつか紹介しています。

散歩とストレッチ
朝の散歩などで太陽の光を浴びることは、体内時計をリセットし、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促します。また、ストレッチで血行を良くすることも、自律神経の調整に効果的です。

湯船に浸かる
シャワーだけで済ませず、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで副交感神経が優位になり、心身がリラックスモードに切り替わります。ただし、就寝直前の熱いお風呂は逆に交感神経を刺激してしまうため、就寝の90分前までに入浴を済ませるのが理想です。

スマホ対策
スマートフォンやPCの画面から発せられるブルーライトは、交感神経を刺激し、脳を覚醒させてしまいます。寝る1時間前には電源をオフにするか、ブルーライトカット機能を活用することが、質の良い睡眠につながります。

これらの身体的なアプローチに加え、心の持ちよう、つまりマインドセットを意識的に変えていくことも有効です。ポジティブ心理学の研究では、「ポジティブであること」が生産性の向上やうつ病発生率の低下など、科学的に多くのメリットをもたらすことが示されていると刀禰氏は紹介しています。

そして、このポジティブな状態は、習慣によって意図的に作り出すことが可能です。代表的な方法が「three good things」です。これは、1日の終わりにその日にあった「良かったこと」を3つ書き出すというシンプルな習慣です。

毎日続けるのが難しければ、週に1回、月に1回でもかまいません。良かったことを振り返る習慣は、物事のポジティブな側面に目を向ける思考の訓練となり、自己肯定感を高めます。

さらに、目標達成に向けて行動する際には、「スモールステップ」と「ご褒美」の仕組みを取り入れることが、やる気を引き出し、持続させる上で非常に効果的です。

臨床心理士・公認心理師の中島美鈴氏は、この点について次のように解説しています。
こういうふうに大きく見える課題でも小分けにしてやっていくことを心理学では「スモールステップに分けていく」といいます。

この小分けの度合いが小さければ小さいほど、階段を刻めば刻むほど私たちはやる気を起こしやすくなることがわかります。できればその刻んだ階段の各所に、ちょっとしたご褒美が待っていると最高ですよね。(中略)

でも大人になると誰も褒めてくれないので、何かひとつのタスクを終えたらto doリストのチェックボックスに自分でチェックをつけて達成感を味わうとか。チョコレートを買ってきて、この課題が終わったら1粒食べてよいとか、1ページ終わったら1つ食べていいとか。こんなふうにスモールステップの階段の各所にご褒美を散りばめておくと、これがやる気を出す仕組みになるというわけです。

引用:「今日こそやろう」と決めたのに…自己嫌悪でイライラする日々を変えるには(ログミーBusiness)

大きな目標を達成可能な小さなステップに分解し、1つクリアするごとに自分に小さなご褒美を与える。このプロセスは、達成感を積み重ねることで自信を育み、自分へのイライラをポジティブなエネルギーへと転換させてくれるでしょう。

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