お知らせ
お知らせ
CLOSE

仕事でイライラが止まらない(全1記事)

仕事中にイライラが止まらないのはなぜ? 苛立ちの原因・対処法 [1/2]

【3行要約】
・仕事中のイライラは他者への不満だけでなく、自分自身への嫌悪感からも生じており、多くの人が苦しんでいます。
・元陸上自衛隊衛生学校心理教官・心理カウンセラーの下園壮太氏は「蓄積疲労の3段階モデル」を提唱し、疲労が深まるほどストレス感受性が2〜3倍に高まると警告。
・相手に過度に期待せず、自分の行動パターンを見直し、「食べる・寝る・遊ぶ」の変化に注意を払うことで、心の平穏を取り戻すことができるでしょう。

あなたが仕事でイライラしてしまう原因

仕事でイライラする時、私たちはその原因を特定の人物や出来事に求めがちです。しかし、ストレスの発生メカニズムはそれほど単純ではありません。

株式会社メンタルヘルステクノロジーズ代表取締役の刀禰真之介氏は、ストレスの本質を「期待値のズレ」であると説明しています。これは、私たちが抱く「こうあるべきだ」「こうなってほしい」という期待と、目の前の現実との間に生じるギャップが、ストレスという感情的な反応を引き起こすという考え方です。

例えば、都心で急いでいる時にタクシーがすぐに捕まらないと、私たちは強いイライラを感じます。これは「急いでいるのだから、タクシーはすぐに見つかるはずだ」という高い期待があるためです。一方で、時間の流れがゆったりした沖縄のような場所で同じ状況に遭遇しても、「まあ仕方がないか」と受け流せるかもしれません。

この場合、「すぐには捕まらないかもしれない」という低い期待値が、ストレス反応を抑制しています。このように、同じ出来事であっても、私たちがどのような期待を抱いているかによって、ストレスの度合いは大きく変化するのです。

この「期待値のズレ」という視点に加えて、ストレスの原因をより深く理解するためには、「職業性ストレスモデル」が役立つと刀禰氏は語ります。このモデルでは、ストレス要因を以下の3つに分類しています。

1. 個人的要因
遺伝的な要素やもともとの性格、過去の経験など、個人が持っている特性です。ストレスに対する感受性の高さは、この個人的要因に大きく影響されると言われています。

2. 職場でのストレッサー
仕事の量や質、裁量権の有無、職場の人間関係、役割の曖昧さなど、職場環境に起因する要因です。企業が直接的に介入し、改善を図ることが可能な領域でもあります。

3. 職場以外でのストレッサー
家庭の問題、経済的な悩み、プライベートな人間関係など、仕事以外の生活で発生する要因です。これらのストレスが職場でのパフォーマンスや精神状態に影響を及ぼすことも少なくありません。

私たちのイライラやストレスは、これら3つの要因が複雑に絡み合って生じています。例えば、個人的に完璧主義な傾向がある人が、膨大な仕事量を抱え、さらに家庭内に問題を抱えている場合、ストレスは増幅され、メンタル不調に陥るリスクは著しく高まります。

したがって、仕事のイライラに対処するためには、単に職場の問題だけを解決しようとするのではなく、自分自身の特性を理解し、プライベートな領域も含めた総合的な視点から原因を探ることが不可欠です。

自分が何に「期待」し、どの要因がその「ズレ」を大きくしているのかを分析することが、効果的なストレスマネジメントの第1歩となるでしょう。

自分をイライラに追い込む無意識の「思い込み」

職場で感じるイライラの背景には、私たちが無意識のうちに抱えている「思い込み」が深く関わっていることがあります。臨床心理士・公認心理師の中島美鈴氏は、この思い込みを「スキーマ」と呼び、それが私たちの感情や行動に大きな影響を与えていると指摘します。

スキーマとは、幼少期からの経験を通じて形成された、物事の捉え方や価値観の核となる部分であり、ふだんは意識されることのない「常識」や「当たり前」として心の中に根付いています。

特に多くの人を苦しめているのが、「みんなで仲良くしなければならない」というスキーマです。私たちは幼い頃から、家庭や学校で「協調性」を重んじる教育を受けてきました。その結果、「職場の人とは、たとえ気が合わなくても良好な関係を築くべきだ」「誰からも嫌われるべきではない」という考えが、無意識の呪縛となって私たちを縛り付けているのです。

このスキーマが強いと、嫌いな同僚に対しても無理に好意的に接しようとしたり、相手の些細な言動に過敏に反応したりして、多大な精神的エネルギーを消耗します。そして、「仲良くできない自分」に対して自己嫌悪を抱き、イライラを増幅させてしまうという悪循環に陥ります。

また、職場という環境においては、「人から評価されたい」というスキーマもイライラの大きな原因となり得ます。この思い込みが強い人は、自分の価値を他者からの評価に依存させる傾向があると言います。

そのため、少しでも批判されたり、努力が正当に評価されなかったりすると、ひどく落ち込み、やる気を失ってしまいます。大嫌いな上司からでさえ評価を得ようと必死になり、自分の感情を押し殺してしまうこともあります。

しかし、他者の評価は常に公平であるとは限りませんし、すべての努力が報われるわけでもありません。この現実と「評価されて当然だ」というスキーマとの間にギャップが生じた時、私たちは強い不満と無力感、そして怒りを感じるのです。

これらのスキーマは、それ自体が悪いわけではありません。しかし、あまりに強固で柔軟性を欠いた「〜ねばならない」という思考は、私たちを生きづらくさせ、うつ病のリスクを高めることも指摘されています。

大切なのは、自分がどのようなスキーマを持っているかに気づき、それが本当に今の自分にとって必要なのかを問い直すことです。

「職場は仕事をする場所であり、必ずしも全員と親友になる必要はない」「他者からの評価は1つの指標に過ぎず、自分の価値を決定づけるものではない」といった、より柔軟で現実的な考え方を取り入れることが、不必要なイライラから自分を解放するカギとなるでしょう。

仕事中のイライラに振り回されない、「期待しない」という処世術

職場の人間関係、特に苦手な同僚や上司との関わりは、多くの人にとって尽きない悩みの種です。この問題に対処する上で、臨床心理士・公認心理師の中島美鈴氏は、まず見直すべきは「ゴール設定」だと指摘します。前述したとおり、私たちは無意識のうちに「職場の人みんなと仲良くする」「嫌いな相手にも嫌われないようにする」といった、非常に高い、そしてしばしば非現実的なゴールを掲げてしまいがちです。

しかし、職場の第1の目的は、友人を作ることではなく、組織として生産性を上げ、成果を出すことです。したがって、ゴールを「仕事が滞りなく進む程度の情報交換ができる関係性」に再設定することが、精神的な負担を軽減するためには重要です。

この現実的なゴールに基づき、相手との関わり方を具体的に「仕分け」するのも有効な手段です。例えば「挨拶はする」「業務上必要な報告・連絡・相談は行う」「依頼された仕事への礼は言う」といった、仕事を円滑に進めるために不可欠な行動は実践します。

一方で、「昼休みを一緒に過ごす」「プライベートな話題を共有する」といった、必ずしも必要ではない情緒的な交流は避ける、というように明確な線引きをするのです。このように割り切ることで、「相手を好きにならなければ」というプレッシャーから解放され、精神的な距離を保ちながら淡々と業務を遂行できるようになります。

さらに、人間関係のストレスを根本的に減らすための強力な処世術として、「相手に過度に期待しない」という考え方があります。『嫌な仕事のうまい断り方』の著者である山本大平氏は、この点について次のように述べています。
今の境遇にダイレクトに答えられているかわからないんですが、そもそも「あんまり断られても気にしない」という前提でつきあえばいいのかなと思っていて。僕がひねくれた性格になっちゃったから、あんまり人に期待してないんですよね(笑)。(中略)

「リアクションがなくても仕方ないや」みたいな。正直、家族でもそれぐらいのトーンでいたりするので、意外と自分自身は楽になりますね。

引用:仕事も私生活も、ストレスを減らすコツは“相手に期待しない” 『嫌な仕事のうまい断り方』著者が教える処世術(ログミーBusiness)

このように、相手の言動や反応に対して「こうしてくれるはずだ」「こうあるべきだ」という期待を持つと、それが裏切られた時に私たちは失望し、イライラします。しかし「そもそも他人は自分の思い通りには動かない」という事実を受け入れ、期待値を下げておけば、心は大きく揺さぶられることはありません。

見返りを求めず、自分の行動は自分の責任で行い、相手の反応は相手の課題として切り離す。この姿勢は、一見冷たいように聞こえるかもしれませんが、実は自分と相手の双方を尊重し、健全な境界線を引くための知恵なのです。

この「期待しない」という処世術を身につけることで、私たちは他人の言動に振り回されることなく、自分自身の心の平穏を保つことが可能になります。

自分に対するイライラ(自己嫌悪)を変えるには

仕事でのイライラは、同僚や上司といった他者に対してだけ向けられるものではありません。「今日こそ勉強しようと決めたのに、まただらだら過ごしてしまった」「なぜ私はこんなに意志が弱いのだろう」というように、目標を達成できない自分自身に向けられるイライラもまた、非常に辛いものです。

このような自己嫌悪からくるストレスは、他人との関係を切れば終わる問題とは異なり、自分自身と向き合い続けなければならないため、より根深い苦しみにつながることがあります。

この「自分へのイライラ」を解決するためには、根性論や精神論に頼るのではなく、行動科学の知見に基づいた具体的な工夫が有効です。その1つが、「活性化エネルギー」の法則を応用することです。活性化エネルギーとは、何か行動を起こす際に「よっこいしょ」と乗り越える必要がある心理的な障壁であり、このエネルギーは活動のスタート時に最も多く消費されるという特徴があります。

つまり、一度腰を据えてリラックスモードに入ってしまうと、再び活動モードに切り替えるためには大きなエネルギーが必要となり、行動へのハードルが格段に上がってしまうのです。

例えば、仕事から帰宅し、「少し休んでからお風呂に入ろう」とソファに座ってしまったが最後、なかなか動けなくなってしまう「風呂キャンセル」という現象は、まさにこの法則によるものです。

このパターンを断ち切るためには、行動の「順番」を見直すことが重要です。帰宅後、一息つく前に、玄関から直接お風呂場に向かう。このように、最もエネルギーが必要な「やるべきこと」を最初に片付けてしまえば、その後の時間を解放感と共に過ごすことができます。

お風呂に入ってリフレッシュすれば、心身が活性化し、その勢いで勉強などの次のタスクにも取り組みやすくなるかもしれません。

もう1つの秘訣は、行動する「場所」を見直すことです。私たちの脳は、「自宅はくつろぐ場所」と長年の経験から学習しています。そのため、家で勉強や仕事のような集中力を要する活動をしようとすること自体が、脳の習慣に逆らう不自然な行為である可能性があります。

もし自宅での作業がうまくいかないのであれば、脳がまだ緊張モードにある帰宅途中の時間を活用するのが理にかなっています。例えば、職場と自宅の間にあるカフェで勉強を済ませてから帰宅する、あるいはスポーツジムでお風呂まで済ませて帰るといった方法です。

これにより、「家に帰ったらあとはリラックスするだけ」という明確なオン・オフの切り替えが可能になり、行動の遂行率が高まるだけでなく、睡眠の質の向上にもつながるのです。

自分を責める前に、自分の行動パターンを分析し、エネルギー効率の良い「順番」と「場所」を設計することが、自己嫌悪のループから抜け出すための賢明なアプローチと言えるでしょう。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: イライラの背後に隠れているかもしれない深刻な疲労

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!