【3行要約】
・業績不振な企業ほど、会議時間が長く、参加回数も多いことが明らかになっています。
・ 統計によると、ビジネスパーソンの42パーセントの人は会議終了後も会議内容を理解していない実態が浮き彫りに。
・生産的な会議にするには「報告・連絡」の排除、事前準備の徹底、そして記憶に残りやすい「最初の1分」「最後の5分」の活用がカギです。
業績と会議にかける時間の関係性
職場で行われている会議の長さにウンザリしている人は少なくないのではないでしょうか。実は会議に費やされる時間と企業の業績には、看過できない関係性が存在します。
ある調査では、企業の業績を「上昇」「横ばい」「下降」の3つのグループに分け、会議に関する実態を比較しました。その結果、業績が下降している企業では、会議1回あたりの平均所要時間が他のグループに比べて明らかに長く、1日あたりの平均会議参加回数も最も多いという事実が浮かび上がりました。
このデータは、会議の多さや長さが必ずしも生産的な活動に結びついているわけではなく、むしろ業績不振の一因となっている可能性を示唆しています。
会議に費やされる時間は、役職が上がるにつれて増加する傾向にあります。
Chatwork株式会社の大原瞳氏によると、一般社員層でも1人あたり週に平均3.1時間、年間に換算すると154時間もの時間を会議に費やしていると言います。これが部長クラスになると、年間で434時間以上にも達し、これを人件費に換算すると、企業によっては年間15億円ものコストが会議のために費やされている計算になります。
この膨大な時間とコストが企業の成長に直結する価値を生み出しているのであれば問題ありませんが、もしその多くが非生産的なものであれば、経営にとって大きな損失となることは明らかです。
さらに長時間労働の原因を探るアンケートでは、「無駄な朝礼や会議・打ち合わせが多い」と回答した人が35.7パーセントにものぼりました。この結果は、多くの従業員が日々の会議に非効率性を感じており、それが残業や長時間労働の直接的な原因になっていると考えていることを示しています。
つまり、無駄な会議は人件費という直接的なコストの増大だけでなく、従業員の労働時間を不必要に延長させ、ワークライフバランスを損ない、ひいてはエンゲージメントや生産性の低下を招くという、複合的な悪影響を企業にもたらしているのです。
私たちはどれだけの時間を会議に費やしているか?
では、私たちは自身のキャリアを通じて、一体どれほどの時間を会議に費やしているのでしょうか。この問いについて深く考える機会は少ないかもしれませんが、その時間は決して無視できないほどの規模になります。
ある統計によれば、1日に平均3時間の会議に参加するビジネスパーソンは、その生涯において、実に丸8年分もの時間を会議室で過ごすことになると言われています。これは人生という限られた時間の中で、極めて大きな割合を占めるものです。
この8年間が、自己の成長や企業の発展に資する有意義な時間となっているのか、それともただ浪費されているのか、真剣に問い直す必要があります。
しかし、会議の実態に目を向けると、その膨大な時間が有効に活用されているとは言い難い状況が見えてきます。会議中、参加者の頭の中は必ずしも議題に集中しているわけではありません。「この話は自分に関係ない」「早く終わらないか」といった考えがよぎり、内職をしたり、ただ時間が過ぎるのを待っていたりするケースも少なくないのが実態です。
この状況を裏付ける衝撃的なデータがあります。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社の榊巻亮氏は、会議の実態に関する調査結果を次のように指摘しています。
「会議に参加している人の状態はどんな感じですか?」というデータを取っていて、「参加者が『何をどう議論して、どこまで決めるのか』を事前に十分理解できています」という人は10パーセントしかいないという統計です。
もう1回言いますね。会議が始まる前に、瞬間でもいいですよ、「今日は何を議論するのかな」「どこまで決める予定なのかな」ということをよく理解できている人は10パーセントしかいない。
緑の部分は、「どこまで決めてどう議論したのか、終わるまでには一応理解しました」という回答が47パーセント。衝撃的なのが、会議が終わっても「今日は何を議論して、どこまで決めたのかあんまり理解できませんでした」という人が42パーセントもいるんです。
引用:42%が「会議で決まったこと」をよく理解していない… 人生の「8年分」の時間を費やす会議の実態(ログミーBusiness)
会議が終わった後でさえ、その会議で何が決まったのかを42パーセントもの人が理解していないという事実は、多くの会議が本来の目的を果たせていないことを物語っています。このような状態では、質の高いアウトプットが生まれるはずがありません。人生の貴重な8年分という時間を投資するに値する活動とは、到底言えないでしょう。
ただ長いだけの会議を生産的な時間に変える方法
では、どのようにすれば会議を有意義で生産的な時間にすることができるのでしょうか。そのためにはまず「会議とは何か」という本質に立ち返る必要があります。
一般的に会議で行われるコミュニケーションは「報告」「連絡」「相談」の3つに大別できます。
このうち「報告」と「連絡」については、現代のビジネス環境において、必ずしも会議という形式を取る必要はないと、戦略コンサルタント/事業プロデューサーの山本大平氏は語ります。例えば、営業成績の報告や周知事項の連絡といった一方向的な情報伝達は、チャットツールやメール、共有ドライブなどを活用することで、非同期かつ効率的に行うことが可能です。資料を共有フォルダに格納し、「内容を確認してください。質問があれば連絡を」と一報を入れるだけで、関係者全員が必要な情報を各自のタイミングで確認できます。
これにより、参加者全員の時間を拘束して売上の数値を読み上げるような、非効率な時間を削減することができます。
実際に、定例会議の内容の多くを占める報告・連絡事項を会議から切り離す試みを行った企業では、その会議が復活することはほとんどなく、「一体何のためにやっていたのだろう」という声が上がるケースが多いと山本氏は言います。一方で、「相談」は会議の本質であり、わざわざ関係者が集まって議論する価値のある活動です。例えば、発生した問題に対する解決策を練る会議では、暫定対策と恒久対策をその場で決定する必要があります。そのためには、関係各部署の担当者が一堂に会し、それぞれの立場からメリット・デメリット、リスクなどをリアルタイムで議論し、合意形成を図ることが不可欠です。
また、新商品の企画会議のように、多様なアイデアを出し合い、それらをぶつけ合うことで新たな価値を創造する場も、まさに「相談」に該当します。
このように、複数の人間が集まることでしか生まれない相乗効果や、その場で意思決定を下す必要性がある事柄こそが、会議で取り扱うべき議題なのです。
会議を有意義なものにする第1歩は、「報告・連絡」を徹底的に排除し、会議を「相談」のための貴重な時間として再定義することから始まります。