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燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)(全1記事)

燃え尽き症候群(バーンアウト症候群)とは? なりやすい人・回復に役立つ実践的アプローチを紹介 [1/2]

【3行要約】
・責任感が強くがんばり屋の人ほど陥りやすい「燃え尽き症候群」は、深刻な心身の消耗状態として問題視されています。
・現代の「ハッスルカルチャー」が休息に罪悪感を抱かせ、燃え尽き症候群の温床になっていると警鐘を鳴らします。
・燃え尽き症候群からの回復には「4つのL」でキャリアのバランスを見直し、セルフコンパッション(自分への思いやり)を実践することが効果的です。

社会人が直面する「燃え尽き症候群」(バーンアウト症候群)とは?

多くの社会人が経験する可能性がある「燃え尽き症候群」。特に、学生時代には部活動や受験、アルバイトなど、明確な目標や範囲が定められた中で成果を出すことに慣れていた人々が、社会に出た途端に戸惑い、燃え尽きてしまうケースが少なくありません。

社会における仕事には、学生時代の活動のように明確なゴールラインが設定されていないことが多く、「どこまでがんばれば評価されるのか」「何を達成すれば終わりなのか」という問いに対する答えが自分自身に委ねられます。この「すべてを自分で決めなければならない」という状況が、過剰な努力を招き、結果として心身を消耗させる大きな要因となるのです。

責任感が強く、「がんばらねばならない」という意識を持つ人ほど、この無限とも思える業務の海の中で溺れやすくなります。彼らは自らに高い基準を課し、際限なく働き続けることで成果を出そうとしますが、そのエネルギーはいつか枯渇してしまうものです。

また、かつては部活動などで「全国大会」のような共有された目標に向かって仲間と共に努力する喜びがあったものの、仕事における目標は壮大で、個人の努力だけでは達成感が得にくい場合も多々あります。

この目標との距離感が、仕事への熱量を徐々に失わせ、心身の消耗につながってしまうのです。

燃え尽き症候群を生みやすい「ハッスルカルチャー」

現代社会、特に多くの職場に深く根付いているのが、「ハッスルカルチャー」と呼ばれる文化だと、Wayfarer Studios シニア・バイス・プレジデント兼エグゼクティブプロデューサーのタラ・マルホトラ=フェインバーグ氏は言います。

「努力すれば何でも成し遂げられる」という能力主義(メリトクラシー)の考え方を背景に、常に生産的であることを求め、休息を取ることに罪悪感を抱かせるこの文化は、燃え尽き症候群の温床となっています。

資本主義社会において、私たちの価値はしばしば「何を生産したか」というアウトプットによって測られる傾向があります。その結果、常に何かを生産し、次の達成を目指す「ハムスターの輪」の中にいるような状態に陥りがちです。

このサイクルの中では、今この瞬間に自分自身を置き、心身を休めるという発想が生まれにくくなります。また、このような軍隊の訓練指導員のように自分に厳しく接する方法が、実際には生産性を下げ、先延ばしや自己批判といった悪循環に陥らせることを明らかにしていると、イェール大学の教授であるローリー・サントス氏は語ります。

このような文化は、個人の意識だけでなく、組織のトップダウンによって形成され、正当化されることが少なくありません。休息が必要な時に休むことを許さないような働き方が常態化し、それが組織の風土として定着してしまっているのです。これは特定の業界や企業規模に限った問題ではなく、社会全体に蔓延している課題と言えます。

パンデミックを経て、多くの人がメンタルヘルスへの関心を高め、ワークライフバランスの重要性を認識するようになりました。しかし、私たちの社会システムは、依然として人々の感情的なウェルビーイングを優先する構造にはなっていません。

リモートワークが普及し、通勤時間が削減された企業があるのにもかかわらず、多くの人が依然として疲労を感じているのは、単なる物理的な時間の問題ではなく、常に生産的であらねばならないという心理的なプレッシャーが根底にあるからとも言えるでしょう。

かつての世代はこのような働き方を「ふつう」のこととして受け入れ、対処してきたかもしれませんが、現代ではその歪みが燃え尽き症候群というかたちで顕在化しているのです。

リーダーがしなくてはいけない、燃え尽き症候群に陥った人への対応

燃え尽き症候群に陥った人々は、しばしば「怠けている」「チームプレーができない」「やる気がない」といった誤解やステレオタイプに晒されます。しかし、燃え尽きは個人の弱さや能力不足が原因なのではなく、前述したとおり過剰な責任感や熱意が心身の限界を超えた結果として生じるものです。

この問題に対処するためには、個人の努力を求めるだけでなく、組織、特にリーダーや管理職が職場環境そのものを変革していく視点が不可欠です。リーダーが本当に管理すべきは、製品や顧客ではなく、社内で最も重要な資産である「人」なのです。

エンゲージメントの高いリーダーシップとは、部下の仕事量やプロジェクトの状況を常に把握し、過剰な負担がかかっていないかをチェックすることから始まります。そして、部下が安心して自分の意見を表明し、助けを求められる「心理的安全性」の高い環境を構築することが極めて重要です。

心理的安全性を育むためには、リーダー自身が好奇心を持って部下と接することが求められます。「どうしてる?」「今、必要なことはありますか?」といった問いかけを日常的に行い、部下の状況に関心を示す姿勢が信頼関係の土台となります。心理的安全性の醸成については、下記の記事で詳しく解説しています。

心理的安全性とは? リーダーが実践したいコミュニケーション術とチームづくりの具体策

また、失敗を許容する文化を醸成することもリーダーの重要な役割です。人間は誰しも完璧ではなく、挑戦には失敗がつきものです。最大の成功は、しばしば試行錯誤の中から生まれます。リーダーが「間違っている」ことを恐れず、自らの弱さや失敗をオープンにすることで、部下もまた失敗を恐れずに挑戦し、問題を共有できるようになります。

Blackbird LCC社長のキャサリン・マニング氏は、管理職が本当に時間を割くべき仕事について、以下のように述べています。
あなたが忙しいのはわかりますし、もちろん私たちもみんな忙しいですが、あなたが築いている文化は、どんなプロジェクトでも成功に最も大きな影響を与えますよね。誰か1人の技術的な専門知識よりも、あなたが築いている文化の方がずっと重要なのです。そこには時間を割く価値があります。

私の友人は驚異的な共感力を持つリーダーですが、彼女は直属の部下一人ひとりを毎週チェックをするそうです。30分のうち25分くらいは、仕事以外のことを話していると言っていました。それを乗り切れば仕事のことは5分で処理できますから、私たちが本当に時間を割かなければならないのはそこなのです。

引用:忙しい管理職が、本当に時間を割くべき仕事は“文化づくり” 人が疲弊する組織から抜け出すために必要なこと(ログミーBusiness)

プロジェクトの管理以上に、文化づくりに時間を投資すること。それこそが、従業員の燃え尽きを防ぎ、組織全体の持続的な成功につながる鍵なのです。

キャリアを見つめ直す視点

燃え尽き症候群に陥ると、自己否定の感情に苛まれ、「この会社で通用しなかった自分は、どこへ行ってもダメなのではないか」「自分は社会不適合者なのではないか」という思考の罠に陥りがちです。特に、上司などから「うちで務まらないなら、どこに行っても無理だ」といった言葉を投げかけられると、その思い込みはさらに強化されてしまいます。

しかし、これは大きな誤解です。1つの組織でうまくいかなかったからといって、その人の価値が失われるわけでは決してありません。それは「社会不適合」なのではなく、単に「その会社に不適合」であった可能性が高いと、株式会社ワンキャリアの寺口浩大氏は言います 。

仕事におけるパフォーマンスは、「できる・できない」という能力だけの問題ではなく、「合う・合わない」という相性の問題が大きく影響します。

この視点の転換は、燃え尽き症候群という困難な状況から、自分自身を見つめ直し、キャリアを再構築する貴重な機会へと変える力を持っています。燃え尽き症候群はキャリアの終わりではなく、むしろ自分の価値観や本当にやりたいこと、自分に合った働き方とは何かを深く問い直すための時間となり得るのです。

1人で考え込んでいるとネガティブな思考から抜け出せなくなりがちですが、他者の経験に触れることは、この孤独な闘いにおいて大きな助けとなります。自分と似たような境遇や悩みを抱えていた人が、どのようにして困難を乗り越え、新たなキャリアを築いていったのか。そうした「事実」の体験談は、「自分だけではない」という安心感を与え、凝り固まった思考をほぐしてくれます。

この時、心理学者のガル・ゾーバーマンが提唱する「No-Yay Effect」という考え方も、自分を守る上で参考になります。
No-Yay Effectの仕組みはご想像のとおり、「このプロジェクトレポートをやってもらえますか?」「これをやってもらえますか?」と言われた時、あなたは断ることを約束します。

しかし、ただ「ノー」と言うだけではありません。「私がノーと言ったそのプロジェクトはいつ提出する予定でしたか?」と聞き、その後あなたはカレンダーを見て、その日付にあなたがやらなければならなかったとされていたものを書きます。

そしてあなたが当日その予定を見て、「私はこれをやらなくてもいい。イエーイ」と言います。それがNo-Yay Effectです。要は、私たちがしていることは、自分の時間を積極的に守ることなのです。お金について考えるのと同じように、時間についても優先順位をつけて考えるのです。

引用:燃え尽き症候群にもつながる、現代人の“間違ったがんばり方” 自分に優しくできない人におすすめな思考法とは(ログミーBusiness)

このように、他者の事例や新たな思考法に触れることで、私たちは孤独から解放され、次の1歩を踏み出す勇気を得ることができます。燃え尽き症候群を経験した時こそ、立ち止まり、自分に本当に合った場所を探すための羅針盤を手に入れるチャンスなのです。

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