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OKR(全1記事)

OKRとは? MBO・KPIとの違い、導入のメリット、具体的な運用方法を紹介

【3行要約】
・OKRは目標を「Objectives」と「Key Results」に分け、挑戦的な目標設定と組織変革を促す革新的フレームワークです。
・ドラッカーのMBOを基にしながらも、ボトムアップのアプローチを重視し、トップダウンの戦略と個人の創造性を両立させる点が特徴。
・ 効果的なOKRには「状態」での目標設定が重要で、単なる仕組みではなく、挑戦を奨励し失敗から学ぶ組織文化と一体となることで機能します。

OKRとは?

OKR(Objectives and Key Results)は、MBO(Management by Objectives and Self-control、目標管理制度)を提唱したドラッカーと親交のあったインテル社の元社長、アンディ・グローブ氏が、自社で目標管理制度を実践する中で体系化した「i-MBO」が原型になっているフレームワークです。

OKRの最大の発明は、目標を2つの要素に分割した点にあります。1つは「Objectives(目標)」です。これは定性的で、人を鼓舞するような測定不可能な目標のことを指します。例えば、インテルが掲げた「インテル8080がモトローラ6800より高性能であることを証明する」といったものがこれに当たります。

もう1つが「Key Results(主要な結果指標)」で、Objectivesの達成度を測るための定量的な指標です。例えば先のObjectivesに対してでいえば、「5つのベンチマークを完成する」「デモを作成する」といった、具体的で測定可能なものがKRとして設定されます。

このように、定性的な「目的・意味」と定量的な「測定可能な指標」を明確に分けることで、目標管理制度をより実践しやすくしたのがOKRなのです。

OKR・MBO・KPIの違い

OKRについてより詳しく知るために、MBO・KPIとの違いについても見ていきましょう。

目標管理は、経営学者のP.F.ドラッカーが1950年代に著書『現代の経営』の中で提唱した概念に由来します。「Management by Objectives and Self-control」の「Management」は、単なる「管理」とは異なります。「管理」という言葉は、特定の基準からの逸脱を防ぎ、統制するというニュアンスを持ちますが、「Management」は組織という仕組みを用いて成果を最大化するための活動全般を指します。

次に「by Objectives」の「Objectives」は、客観的で共通の目的や目標を意味します。組織全体で共有されるべき、明確なゴールです。

そして、最も重要でありながら、現代の目標管理の議論で見過ごされがちなのが「and Self-control」の部分です。「Self-control」は、従業員一人ひとりが自律的に組織へ貢献することを意味します。つまり、やらされ感のあるノルマではなく、自らの役割を理解し、主体的に貢献を果たすという考え方が根底にあるのです。

MBOとOKRで大きく異なる点の1つに、ボトムアップのアプローチを奨励していることが挙げられます。トップダウンで目標が細分化されて下りてくることが多いMBOに対し、OKRは個人やチームが主体的に目標設定に関与することを重視します。これは、イノベーションを組織のDNAとしたい企業にとって非常に有効なアプローチです。

OKRを運用する上でのキーワードは「わくわくするもの」であるべきと、株式会社メルカリ CHRO(当時)の木下達夫氏は言います。上から一方的に与えられた目標に対して、心からの情熱を注ぐことは容易ではありません。しかし、自分自身が設定に関与し、挑戦したいと思えるような目標であれば、内発的なモチベーションが引き出されるからです。

仕組みだけを導入してもOKRは機能しません。その背景にある、対話を重んじ、個人の主体性を尊重する文化と、それを支える具体的なコミュニケーションの場がセットになって初めて、その真価が発揮されるのです。

さらに、目標管理の話題でOKRとともによく登場する単語がKPIです。KPIは「Key Performance Indicator」の略であり、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。これは、組織や個人が最終的なゴールに向かうプロセスにおいて、その達成度合いを定量的に測定するための中間目標を指すものです。

KPIについては下記記事で詳しく説明しています。OKRとの違いをさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

KPIとは? 設定・管理のやり方をKGI・KSFとの違いとともに紹介

OKRを導入する目的

OKRが導入される背景には、特有の環境があります。一般的なMBOは、比較的安定した事業環境を前提として設計されている側面があり、マーケット全体が急拡大している状況では、目標設定そのものが形骸化してしまうリスクを抱えているのです。

例えば、ある企業が「売上20パーセント増」という目標を掲げたとします。しかし、その企業が属する市場全体が30パーセント成長していた場合、この目標は挑戦的とは言えず、特別な努力なくして達成できてしまう可能性があります。これでは、目標管理が組織や個人の成長を促すための仕組みとして機能しなくなってしまいます。

このような課題に対応するために導入されるのがOKRです。OKRは、安定した事業の維持管理ではなく、市場の成長をさらに上回るような挑戦的な「ストレッチゴール」を設定し、組織全体でその達成を目指すためのフレームワークです。予測不可能な要素が多い環境下で、イノベーションを創出し続けるためには、このような野心的な目標設定が不可欠となります。

OKRを導入している株式会社メルカリでは、OKRの運用は、四半期ごとに行われると言います。まず事業部、部門、チーム単位でそれぞれのOKRが設定され、社内に共有されます。そしてそれらの上位目標を踏まえ、社員一人ひとりが自身のOKRを作成するというツリー構造になっています。

このプロセスは、必ずしもトップダウンで厳格に進められるわけではありません。会社や部門のOKRが確定するのを待たずとも、個人が自身の業務に基づいてOKRを更新していくといった、同時並行的な動きも見られます。

もちろん、期初には経営会議で全社OKRが決定され、各部門でも前四半期の振り返りを踏まえた次期OKRの議論が行われますが、そこには個々のチームやメンバーからのボトムアップの視点も組み込まれているそうです。

このように、OKRはトップダウンの戦略的整合性と、ボトムアップの自律性や創造性を両立させるための仕組みとして機能しており、急成長する組織のエンジンとしての役割を担っているのです。

OKRと人事評価の適切な距離感

OKRを運用する上で最も重要かつ難しい論点の1つが、人事評価との関係性です。OKRの達成度が直接的に評価や報酬に結びつくと、従業員は挑戦的な目標を避け、達成が容易な低い目標を設定しようとするインセンティブが働いてしまいます。

これは、OKRが持つ「ストレッチゴールを通じて組織と個人の成長を促す」という本来の目的を損なうことになりかねません。

株式会社メルカリでは、この課題に対して評価対象を「成果」と「行動」の2つに分けることで対応していると言います。まず、「行動」評価は、同社が掲げる3つのバリューを、各グレードで期待されるレベルに応じてどの程度体現できたかを評価するものです。

一方で「成果」評価は、期初に設定したOKRに対して、どれだけのインパクトをもたらしたかの「総量」で評価されます。ここで重要なのは、評価基準がOKRの単純な達成率ではないという点です。OKRは、そもそも達成が困難であることが推奨されるため、達成率そのものが評価の高低を決定するわけではありません。

株式会社メルカリ CHROの木下達夫氏は、その評価のさじ加減の難しさについて次のように語っています。
一般的なMBOではないので、達成が難しいかなという目標を設定するのがOKRです。だから、レッドがあってもぜんぜんいいんですよ。評価がレッド=経営陣が「はい、評価×」ではないのです。大胆な挑戦をして、ちゃんと次につながるような打ち手ができてたら、レッドでも評価は高くなる。

このさじ加減が簡単ではないのが、OKRの運用の難しいところなのかなと思いますし、今日お伝えしたい大事なポイントですね。OKRのフォーマット自体はすごくシンプルです。

引用:OKRは仕組みだけ入れても機能しない メルカリに学ぶ「わくわくするOKR」を作るコツ(ログミーBusiness)

例えば、ある従業員が目標達成率110パーセントという結果を出したとしても、その目標設定自体がその人のグレードに期待される水準よりも低かった場合、「本来は200パーセントの成果を出せたはずなのに、110パーセントしか出せなかった」と判断され、評価は厳しくなる可能性があります。

逆に、目標達成率が70パーセントだったとしても、それが非常に挑戦的な目標であり、周囲の期待を大きく上回るインパクトを生み出していたならば、「よく70パーセントまで達成した。これはすばらしい成果だ」として最高の評価が与えられることもあります。

このように、OKRと評価を完全に切り離すのではなく、また達成率という表面的な数字にとらわれずに、その背景にある挑戦の度合いや創出されたインパクトの総量を多角的に評価するという、洗練された運用が求められるのです。

目標は「動作」ではなく「状態」で設定する

効果的なOKRを設定するためには、その「言語化」の方法にも注意を払う必要があります。多くの目標設定で見落とされがちな重要なポイントは、目標を「動作」ではなく「状態」で定義することです。

例えば、「新規サービスを開発する」という目標を立てたとします。これは「開発する」という「動作」に着目した目標です。この表現にはいくつかの問題点があります。

まず、目標達成の基準が非常に曖昧です。極端な話、1日でも開発作業を行えば「開発した」ことになり、目標を達成したと解釈できてしまいます。これでは、目標が成果を測る指標として機能しません。また、「やったか、やらなかったか」という二元論的な思考に陥りやすく、達成に向けたプロセスを評価したり、成長を支援したりすることが難しくなります。

一方で、目標を「状態」で設定するとどうなるでしょうか。例えば、「新規のサービスが立ち上がっている状態」という目標を設定したとします。この時、この「状態」を達成するためには、具体的にどのような要素が必要かを考えることになります。

例えば、「サービスの企画が完了している」「市場調査やユーザーヒアリングが終わっている」「プロトタイプのテストが実施され、フィードバックが反映されている」などのような、具体的にどのような要素が必要かを考えることになります。

このように、目指すべき「状態」を定義することで、そこに至るまでに必要な複数の「動作」や工程が明確になります。目標が具体的なタスクに分解されやすくなり、行動計画を立てやすくなるのです。

このアプローチは、成果の評価方法にも大きなメリットをもたらします。目標達成が0か100かではなく、グラデーションで捉えることができるようになります。「企画は完了したが、テストは途中までだった」という場合でも、「目指すべき状態の70パーセントまでは到達できた」というように、進捗を具体的に評価できます。

これにより、マネジメントする側は的確なフィードバックや支援を行いやすくなり、目標に取り組む本人も、自身の成長や進捗を実感しやすくなります。目標達成というゴールだけを目指すのではなく、そこに至るプロセス全体を価値あるものとして捉え、学習と成長の機会に変えるためにも、目標を「状態」として設定する視点は非常に重要です。

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