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承認欲求が強い部下(全1記事)

承認欲求が強い部下の対応で意識したいこと 「認める」から始める適切な指導ガイド [2/2]

部下との信頼関係を築く最適なバランス

部下を育成する上では、承認するだけでなく、時には指導や指摘が必要な場面も当然あります。その際に承認と指導のバランスをどのように取るかは、多くの管理職が悩むポイントです。

重要なのは、承認と指導を対立するものとして捉えるのではなく、一連のコミュニケーションプロセスとして設計することです。具体的には、指導を行う前後に「認める」プロセスを挟み込む、いわゆる「サンドイッチ」構造を意識することが効果的だと、株式会社selftune代表取締役の平岡洋平氏は言います。

例えば、部下の提案が組織の方針と異なり、否定せざるを得ない場合でも、いきなり「それは違う」と切り出すのではありません。まず「君はそう考えているんだね。意見を出してくれてありがとう」と、発言したこと自体を受け止め、感謝を伝えます。

その上で、「ただ、組織全体としてはこういう方向性で進めているから、今回はその観点で再検討してもらえるかな」と指導内容を伝えます。

そして最後に「これからも何か気づいたことがあったら、ぜひ積極的に意見を聞かせてほしい」と再度フォローする。この前後のプロセスがあることで、部下は指導内容を受け入れやすくなり、「もう意見を言うのはやめよう」という気持ちになるのを防ぐことができます。

このような関係性を築くためには、日常的な関わり方が土台となります。関係性コーチングの観点では、肯定的な関わりと否定的な関わりの割合が、健全な関係構築に影響すると言われています。
私は関係性のコーチングをよくするんです。夫婦やチームだったりにコーチングをする中で大事にしているのが、肯定的な関わりと否定的な関わりの割合なんですね。否定がゼロっていうのも、あんまり関係は良くないんです。

夫婦だと5対1ぐらいで、肯定的な関わりが5、否定的な関わりが1ぐらい必要なんです。ただ、実は会社のチームであればもっと具体的に進めていける関係性なので、肯定的な関わりが3、否定的な関わりが1にできると、とても健全な関係が作っていけると言われているんです。

あいさつ1つとっても肯定的な関わりです。なので、部下に言いたいことはたくさんあると思うんですが、「これを言いたい。だからその3倍は『認める』を使おう」と、自分の中でタスク付けするのはいかがかなと思いました。

引用:典型的な指示待ち部下を変えた“上司の接し方” 組織の心理的安全性も高める「承認」のテクニック(ログミーBusiness)

あいさつを交わす、感謝を伝える、小さな貢献に気づいて声をかけるといった日々の肯定的な関わりは、いわば信頼関係の「貯金」です。この貯金があるからこそ、いざという時に指導という「引き出し」を行っても、関係性が破綻することなく、部下はそれを成長の機会として前向きに受け止めることができるのです。

短期的な問題解決だけにとらわれず、長期的な部下の成長と信頼関係の構築という視点を持つことが、指導と承認の最適なバランスを見つけるカギとなります。

「自己肯定感が低い」部下へのアプローチ

前述したような一通りの承認スキルを使ってもなかなか状況が改善しない場合、その部下の行動の根底にある心理を深く理解する必要があります。

なぜ部下は、他者からの承認をそれほどまでに強く求めるのでしょうか。その一因として、部下自身の「自己肯定感の低さ」が考えられます。

Cheer Coaching合同会社代表社員/銀座コーチングスクール日本橋校 代表の橋本ゆり香氏によると、自分自身で自分を認める「自己承認」が十分にできていないため、他者からの評価によってしか自分の価値を確認できない状態に陥っている可能性があると言うのです。

自信がないために意見を言えないタイプがいる一方で、自信がないからこそ、他者からの承認を積極的に取りに行くことで、自分を保とうとするタイプもいます。

このような部下に対して上司が取るべきスタンスで最も重要なのは、冒頭でも紹介した「受け止める」姿勢を貫くことです。「受け入れる」とは、部下の要求や意見にすべて同意し、その通りに行動することであり、これは部下の言いなりになることにつながってしまいます。

そうではなく「受け止める」とは、「君はそう感じているんだね」「そうあってほしいと願っているんだね」と、相手の感情や欲求をジャッジせずに、まずは事実として認識することです。

その上でもう一歩踏み込んだサポートとして、部下自身が自分を認められるようになるための手助けをすることが有効です。例えば、「あなたのその強みを、もっと一緒に引き出していきたいと思っているよ」といった声かけは、上司が部下の可能性を信じ、仲間として伴走する意思があることを示す強力なメッセージとなります。

これは、アドラー心理学で言われる「仲間である」という感覚を伝えることにも通ると株式会社selftune代表取締役の平岡洋平氏は言います。上下関係ではなく、同じ目標に向かう対等な仲間であるという関わり方は、部下の孤独感を和らげ、自己肯定感を育む土台となります。

承認要求が強すぎる部下への対応は、確かに難しい課題です。しかし、その行動の裏にある自己肯定感の低さという根に目を向け、「受け止める」スタンスを堅持しつつ、自己承認をサポートする関わり方を粘り強く続けることで、部下は徐々に他者からの評価に依存することなく、自らの足で立つ力を身につけていくことができるでしょう。

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