ボスマネジメントのために上司のタイプを見極める
ボスマネジメントは、どんなタイプの上司に対しても有効なスキルですが、そのアプローチ方法は相手の特性によって変える必要があります。
部下として自分の考えを組織に反映させることは重要ですが、単に意見をぶつけるだけでは「上司 vs 自分」という対立構造に陥りかねません。建設的な関係を築くためには、まず上司や会社が何を求めているのかを理解し、自分のやりたいこととどう重ね合わせるか、という発想が不可欠です。
株式会社職場風土づくり代表の中村英泰氏は、上司を大きく3つのタイプに分け、それぞれの攻略法を解説しています。1つ目は、経理や財務部門に多く見られる「ルール遵守」タイプです。このタイプの上司は、決められた手順や規則を重んじます。彼らに対しては、まず自分がルールを守る味方であることを日頃から示すことが重要です。期日を守る、手順どおりに業務をこなすといった基本的な行動を徹底し、信頼を得ることから始めます。
その上で新しい提案をする際は、「Bという方法を導入することで、既存のAという方法に比べてこれだけ時間が削減されます」というように、あくまで相手のルールや価値観の延長線上で、具体的なメリットを提示しながらおうかがいを立てる姿勢が効果的です。
2つ目は、営業や企画部門に多い「新しいことを好む」タイプです。このタイプはルールよりも、奇想天外なアイデアや新しい挑戦を重視します。彼らは部下にも意見を求め、「まずやってみろ」と背中を押すことが多いですが、その期待する方向性を見誤ると「ぜんぜんずれている」と一蹴されてしまいます。そのため、日頃から上司がどのような領域に関心を持っているのかをよく観察し、その分野に沿った提案をすることが重要です。
また、資料の形式、報告のタイミングなどの細かな好みも把握しておくと、提案が受け入れられる確率が高まります。
そして3つ目は、「仕事に対して乗り気ではないように見える無気力」タイプです。すべての管理職が高いモチベーションを持っているわけではありません。このような上司に対しては、自分の考えをいきなり具体化して提案するのではなく、「こういうことができたらいいと思うんですよね」と、日頃から種まきのように小出しに伝えておくことが有効です。
部下側が発信を続けていると、何かのきっかけで上司の関心が向いた時に「そういえば、あの件どうなった?」と声をかけてくれる可能性があります。
諦めて何もしなくなってしまっては、状況は変わりません。将来自分が後輩や部下から「ダメな上司」と言われないためにも、どんな上司とでも協働する術を身につけることは、重要なトレーニングとなるのです。
「困った上司」との向き合い方
理論だけでなく、具体的な「困った上司」との向き合い方を知ることは、ボスマネジメントを実践する上で非常に有益です。
ログミーBusinessの読者であるくろむ氏は、過去に正義感が強いものの感情的になりがちな「ガキ大将」タイプの上司の元で働いたことがあると言います。このタイプは、電話中にキレて携帯電話を床に投げつけたり、「上層部の圧力には屈しない」と自らの正義を振りかざしたりします。
このような上司への対処法は、波風を立てないことを優先しつつ、「いかに上司を気分良くさせ、自分の思う方向に動いてもらうか」という視点を持つことです。「こう考えてみましたが、やはり〇〇さん(上司)のご意見をうかがいたいです」と頼られている感を演出し、ヨイショしつつ実務を進めるのが有効な戦略となります。
一方で、言葉の一つひとつを厳密に定義し、論理や原理原則を突きつけてくる「ロジック」タイプの上司もいるとくろむ氏は語ります。言っていることは正しくても、現場の実情と乖離していることも少なくありません。
このタイプには論理で対抗するのではなく、「一般論としてはこうですが、現状ではこちらを優先すべきです」と、よりフォーカスすべき点を具体的に示したり、自分がその上司より優れている分野で成果を出したりすることで、信頼を得て仕事を任せてもらいやすくなります。
ただし、誤った解釈で仕事を進めるのは最悪の事態なので、時には「考えろ」と怒られることを覚悟の上で、具体的なアクションを確認することも必要です。
また、非常に仕事ができるがゆえに、部下にも無意識に自分と同じレベルの熟練度やスピード感を求めてしまう「目線高すぎ」ボスも存在します。このタイプの上司に対しては、見栄を張らずに「自分は要領が良いタイプではない」「業務の目的を消化できないと先に進めない」といった弱みを正直にカミングアウトすることが有効です。
口頭だけでなく、文書にまとめて1on1を申し出るなど、真摯に伝えることで、上司も部下の思考の癖やペースを尊重してくれるようになります。
これらの事例から学べる重要な視点について、くろむ氏は次のように語っています。
上司も人間で、思考も性格も、仕事への向き合い方も全部が人次第というのは覚えておくといいと思います。その上で、2つの意味で「言葉をそのまま受け止めなくていい」ということも大事だと思います。
1つ目は単に「本心なのか冗談か」です。本当に何気ない言葉に見えても、受け手としては混乱したり傷つくこともあると思います。
あらかじめ「この人はこういうタイプだし」と自分で前置きしておくことで、ダメージが減ったり、より冷静に受け止められたり、頭に血が上ってもいったん落ち着けたりします。
2つ目は、発した言葉はそのままのことを言いたいのか、裏に本質があるのか。「この人、本当は何が言いたいの?」とか「どういうつもりの発言?」と考えながら受け取ると、意外と真意が見抜けるようになったり、そもそも受けるダメージもちょっと減るんじゃないかなと。これは役に立つ視点だと思うので、早めに身に付けておきたかったです。
引用:電話中にキレる、いちいち細かいことを指摘する… 「困った上司」の実例に学ぶボスマネジメントのヒント(ログミーBusiness)
上司を客観的に分析し、その特性を理解した上で、どうすれば自分の望む方向に動いてもらえるかを考える。このしたたかさが、困難な状況を乗り切るためのカギとなるのです。