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ボスマネジメント(全1記事)

ボスマネジメントとは? 上司との協力関係を築くための3つの戦術・逆効果アプローチ [2/2]

タイプ別「困った上司」への具体的な対処法

ボスマネジメントの理論を理解しても、目の前の上司が個性的で一筋縄ではいかない「困った上司」である場合、具体的な対処に悩むことも少なくありません。しかし、相手のタイプを客観的に分析し、その特性に合わせたアプローチを取ることで、状況を改善できる可能性があります。

ここでは、出版・広告業界で働くくろむ氏が経験した、まったく異なる2つのタイプの上司への対処法を参考に、実践的なアプローチを紹介します。

1つ目は「正義感で大暴れするガキ大将タイプ」の上司です。このタイプは「部下は俺が守る」という強い正義感を持ちながらも、感情のコントロールが苦手で、くろむ氏の体験談としては、電話中にキレて携帯電話を投げつけたり、過去の武勇伝を語ったりするような行動が見られたと言います。このような上司に対しては、正面から論理でぶつかるのは得策ではありません。重要なのは、相手の感情をいかにマネジメントするかです。

くろむ氏は、このタイプの上司への対処法として、次のように語っています。
ガキ大将タイプの上司はもう基本的にはヨイショなわけで。「こう考えてみたけど、やっぱり○○さんの考えを聞きたい」という感じで、やることもやりつつ、相手に頼られている感を与えてあげるのが良い対処法でした。

誤った方向であっても正義感を持っている人なので、波風を立てないことを優先しつつ、「上司をいかに気分よくしつつ、自分の思うほうに転んでもらうか」という隠しミッションを遂行していました。

引用:電話中にキレる、いちいち細かいことを指摘する… 「困った上司」の実例に学ぶボスマネジメントのヒント(ログミーBusiness)

このアプローチのポイントは、相手の自尊心を満たしつつ、実質的な主導権はこちらで握るという、したたかな戦略です。敬意を払い、意見を求める姿勢を見せることで相手を気分良くさせ、その上で自分の望む方向へ巧みに誘導していくのです。

2つ目は「論理や原理原則志向でチクチク刺してくるロジックタイプ」の上司です。このタイプは、言っていること自体は正しく、論理的であるため、反論が難しいのが特徴です。しかし、現場の実情を無視した正論を振りかざすこともあり、部下としては窮屈さを感じます。このような上司に対しては、論理で真っ向勝負を挑むのは得策ではありません。

くろむ氏は、ロジックで勝てない相手には、別の土俵で勝負をすることが有効だったと語ります。具体的には、「一般論や論理的にはこうだが、実情としてはこうなっている」というように、原理原則だけでは解決できない現場のリアルな情報を提供することで、議論の焦点をずらすのです。

また、その上司が持っていない専門知識やスキルなど、自分が優れている分野の仕事で成果を出すことも有効だと言います。自分の得意分野で圧倒的なパフォーマンスを見せることで、上司もその部分については口出しせず、最低限の管理に留めて任せてくれるようになるのです。

ただし、このタイプの上司と仕事を進める上では、指示が曖昧な場合に「具体的にはこれをすれば良いですか」と確認し、解釈の齟齬を防ぐことが不可欠です。聞きすぎると「自分で考えろ」と叱責されるリスクもありますが、誤った解釈で進めてしまうほうが被害は大きいため、そこは我慢が必要です。

このように、上司のタイプを見極め、相手の思考パターンや行動原理に合わせて、こちらの立ち回り方を柔軟に変えていくことが、困難な状況を乗り切るカギとなります。

ボスマネジメントの根幹をなすコミュニケーション術

効果的なボスマネジメントの根幹をなすのは、上司との円滑なコミュニケーションと、それによって築かれる強固な信頼関係です。しかし、日々の業務に追われる中で、上司との認識のズレは無意識のうちに生じ、それがストレスや非効率の原因となります。

ここでは、上司の期待値を適切にコントロールし、信頼を勝ち取るための具体的なコミュニケーション術を3つの観点から解説します。

1つ目に、「上司のスピード感に必死に食らいつく」ことです。メールやチャットへの返信速度、資料作成などの依頼に対するアウトプットまでの期間など、仕事における時間感覚は人それぞれです。

多くの場合、経験豊富な上司のほうが、部下よりも仕事のスピード感は速い傾向にあります。上司の視点に立つと、部下に依頼した仕事の進捗がわからない状態は非常にストレスフルです。悩んでいるのか、順調なのか、あるいは忘れているのかが不明では、適切なフォローもできません。したがって、仕事の質(クオリティ)を追求する前に、まずは応答や進捗報告の速さ(スピード)を最優先することが重要です。

上司の期待するスピード感に応え続けることで、「この部下はレスポンスが早く、安心して仕事を任せられる」という信頼が着実に積み重なっていきます。

2つ目に、「上司が好むコミュニケーションスタイルを把握し、それに合わせる」ことです。ある上司は、要点をまとめたテキストでの報告を好むかもしれません。一方で別の上司は、口頭で直接話しながら議論を深めることを好むかもしれません。

重要な案件や「ここ一番」という場面では、こうした上司の好みに合わせてコミュニケーションの手段を選ぶことが、スムーズな意思疎通につながります。これは相手に媚びるということではなく、メッセージを最も効果的に伝えるための戦略的な配慮です。

相手が受け取りやすいかたちで情報を届けることで、誤解やストレスを減らし、自分の意図を正確に伝えることができるようになるのです。

3つ目に、「自分の弱みやできないことを正直に伝え、期待値をコントロールする」ことです。特に、上司が非常に優秀で、部下にも自分と同じレベルを無意識に求めてしまうタイプの場合、このアプローチは極めて有効です。

見栄を張って「できます」と言ってしまい、結果的に期待に応えられなければ、信頼を大きく損なうことになります。マーケティング・製品開発業のカメ氏は、要領が良いタイプではない自分に対し、上司が過大な評価をしていると感じた際、文書を作成して「自分はこういう人間なので、あなたの感覚で仕事をこなせると思わないでください」と正直に伝えたといいます。このカミングアウトの結果、評価が下がるどころか、むしろ自身の思考ペースを尊重してもらえるようになり、得意な仕事が回ってくるようになったそうです。

できないことを正直に開示することは、上司に自分の「取扱説明書」を渡すようなものです。中には勇気がいると感じる方もいるかもしれませんが、これをすることにより、上司は部下に対する期待値を現実的なレベルに調整でき、無理のない仕事の割り振りが可能になるのです。

これらのコミュニケーション術は、上司の懐にうまく入り込み、信頼関係を構築するためのカギとなります。最終的には、上司を手のひらの上で転がすくらいのしたたかさを持って、戦略的に関係性を築いていくことが、仕事の成果と楽しさの両方を手に入れるための極意だと言えるでしょう。

ボスマネジメントは部下のマネジメントにも応用できるのか?

ボスマネジメントのスキルを磨くことで、現在の上司との関係を改善するだけでなく、将来自分がリーダーとして部下を持つ立場になった際にも役立てることができると考える人は多いでしょう。

しかし、ここで注意すべきは、上司への働きかけである「上方影響力」と、部下への働きかけである「下方影響力(部下マネジント)」では、効果的なアプローチが異なるという点です。両者の違いを理解せず、ボスマネジメントの手法をそのまま部下マネジメントに適用しようとすると、思わぬ失敗を招く可能性があります。

株式会社ビジネスリサーチラボの伊達洋駆氏によると、上方影響力と下方影響力の最も大きな違いは、「戦術の多様性」と「一貫性」にあると言います。上司に対する働きかけ、すなわち上方影響力においては、前述してきたとおり、多様な戦術を使い分けることが効果的です。上司の状況や案件の性質、その時々の機嫌など、状況は常に変化します。

いつも同じアプローチでは「また同じことを言っている」と一蹴されてしまうため、時には論理で説得し、時には価値観に訴え、時には相談を持ちかけるといった、臨機応変な対応と戦術のバリエーションが求められるのです。

一方で部下に対する働きかけ、すなわち下方影響力においては、多様性よりも「一貫性」が重要視されます。リーダーである上司が、その時々で言うことや指示の出し方を変えてしまうと、部下は「今回はどういう基準で判断すればいいのだろう」「どの指示に従えばいいのか」と混乱してしまいます。

特に組織として戦略を実行していく段階においては、一貫したメッセージと働きかけがなければ、チームはまとまりを欠き、効果的に動くことができません。部下マネジメントにおいてはブレない軸を持ち、一貫した姿勢で部下に接することが、信頼と実行力を生むのです。

このようにボスマネジメントで求められる「柔軟性・多様性」と、部下マネジメントで求められる「一貫性」は、ある意味で対照的です。この違いをあらかじめ認識しておくことは、非常に重要でしょう。

しかしながら、ボスマネジメントの経験が、優れたリーダーシップの土台となる側面も確かに存在します。その1つが「ペルツ効果」として知られる現象です。これは上司の上方影響力が強い、つまりボスマネジメントがうまい上司ほど、その部下に対する下方影響力も効果的になるというものです。

自分の上司に対してうまく働きかけ、組織内で必要な調整や資源獲得を行ってくれる上司を見ると、部下は「この人の下で頑張れば、自分の努力が報われる」「この上司は頼りになる」と感じ、モチベーションが高まります。結果として、部下もその上司の指示に積極的に従うようになるのです。

結論として、ボスマネジメントの戦術そのものを部下マネジメントに直接転用することは避けたほうが良いですが、ボスマネジメントを通じて培われる「組織の力学を理解する力」や「他者を動かすための調整能力」は、間違いなく将来のリーダーシップの礎となります。上司をうまく動かせるリーダーは、部下をもうまく動かすことができるのです。

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