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採用の失敗(全1記事)

採用によくある失敗とは? 原因と失敗しないために意識したいポイント

【3行要約】
・採用活動は企業の成長にとって重要な施策の1つですが、多くの企業では戦略的視点が欠け、場当たり的な人員補充に終始しています。
・株式会社キープレイヤーズの高野氏や株式会社壺中天の坪谷氏らは、採用失敗の本質は戦略不足と属人化による悪循環にあると指摘。
・採用成功には経営者自らが先頭に立ち、責任所在を明確にした上で、候補者に「ここで働く価値」を伝える戦略的アプローチが不可欠です。

採用が失敗する企業に共通する課題

採用が失敗する企業の多くは、ある共通の課題を抱えています。それは、ビジネスモデルや事業内容には魅力があっても、候補者側から見た時に「この会社で働きたい」と思える魅力が置き去りにされているという点です。

事業を行う上で、経営者にとっては「これをやれば儲かりそうだ」という明確なメリットが存在しますが、そのメリットは必ずしも働く社員にとっての魅力と直結するわけではありません。「儲かりそうだから」という理由だけで、自らのキャリアを賭けて働きたいと考える人は稀です。特に優秀な人材ほど金銭的な報酬だけでなく、その仕事を通じて何を実現できるのか、どのような成長が得られるのかといった非金銭的な価値を重視します。

採用活動において、この「候補者側のメリット」を明確に言語化し、訴求ポイントとして設計できていない企業は、競争の激しい採用市場で苦戦を強いられます。給与水準が業界内で突出して高いわけでもない場合、候補者には現職に留まるか、他の選択肢を選ぶ理由しかなく、あえてその会社に転職する積極的な動機が見つかりません。

これはBtoBビジネスにおけるブランディングの重要性にも通じるものがあると、The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirectorの三浦崇宏氏は言います。BtoBサービスの意思決定者は、サービスの細かい機能性よりも、「そのサービスを知っているか」「信頼できるか」といったブランドイメージで判断することが多いというのです。

同様に、応募者という意思決定者も、給与や業務内容といった「機能」だけでなく、その企業が持つビジョンへの共感、仕事内容のワクワク感、あるいは「この会社ならまだ成長できる」と感じさせる余白といった「信頼」や「期待」によって転職を決定するのです。

したがって、採用戦略を立てる上では自社のビジネスモデルを語るだけでなく、「なぜここで働くべきなのか」という問いに対して、候補者の心に響く答えを用意することが不可欠です。それは、経営者の視点からの一方的なアピールではなく、候補者のキャリアや人生に寄り添った、説得力のある物語でなければなりません。

採用活動の失敗となる「戦略不足」

採用が失敗する企業に共通する課題は他にもあります。多くの企業において、採用活動は「営業3人、エンジニア1人、経理が辞めたから1人」といったように、場当たり的な人員補充として行われがちです。しかし、株式会社キープレイヤーズ・代表取締役である高野秀敏氏は、企業の採用、特にベンチャー採用で最も重要なのは「戦略」であると断言します。

多くの企業では、この戦略が不在のまま「とりあえずいい人を採ろうか」という曖昧な方針で採用が進められており、それが失敗の根本的な原因となっています。

本来、採用戦略は企業の根幹をなすミッション・ビジョン・バリュー(MVV)から導き出されるべきものです。まずMVVがあり、それに基づいて「いつまでにどれくらいの売上を上げるか」という事業戦略が策定され、その事業戦略を実現するために「どのような人材が何人必要なのか」という人・組織戦略が立てられるという順番が理想です。

しかし現実には、この前工程である事業戦略すら固まっていない段階で、単なるポジションの空きを埋めるための「要員計画」だけが存在しているケースが少なくありません。これは、採用活動がオペレーションに終始してしまっている状態と言えます。

株式会社壺中天・代表取締役の坪谷邦生氏は、採用のオペレーションの中にどっぷり巻き込まれて身動きが取れない状況について、かつての日本軍の失敗を分析した名著『失敗の本質』で描かれた組織の姿にも通じると言います。大きな戦略や全体像がないまま、個別の作戦レベルで「とにかくがんばる」という精神論に陥りがちな点です。

採用現場でも同様に「がんばって、いい人を採ります!」という意気込みはあっても、その「いい人」の定義が現場と合っていないことも少なくありません。属人化した採用活動が繰り返されることで、組織全体として学習する機会が失われてしまうのです。

結果として、採用担当者は大量のオペレーションに忙殺され、本来考えるべき戦略的な採用について頭を使うリソースがなくなり、失敗が繰り返されるという悪循環が発生してしまいます。

責任の不明瞭さも採用の失敗を招く

採用活動が上手くいかない企業に共通する問題には、「採用の責任の所在が不明確である」という点も挙げられます。新しいメンバーを採用するという重要な意思決定において、最終的な権限が経営者にあるのか、配属先の現場にあるのか、あるいは人事部にあるのかが曖昧なままプロセスが進行してしまうのです。

このような状態では、万が一採用が失敗に終わった際に、責任の押し付け合いが発生しやすくなります。

ジャフコグループ株式会社 HRBP兼エグゼクティブコーチ/プリンシパルの坪井一樹氏は、採用を他責にすることの危険性を指摘しています。
経営者の方も、採用を他責にしてはいけない、とおっしゃっていました。仮に会社にフィットしない人が入社して上手くいかないと、極端な話、「採用したのは○○だ」と他責にされてしまうこともあり得ます。そうならないように、ちゃんと「みんなで一緒に働きたいと思って採用したよね」というプロセスを作るのは選考の工夫として大事ですよね。

引用:採用の失敗は他責、入社後は「お手並み拝見」 人が定着しない組織がはまる“負の採用プロセス”(ログミーBusiness)

採用の失敗を特定の誰かのせいにするのではなく、組織全体の課題として捉えるためには、選考プロセスに関わる全員が「自分たちの仲間として迎えたい」という当事者意識を持つことが不可欠です。

そのためには、まず経営陣が採用に対して強力にコミットする姿勢を示す必要があります。株式会社キープレイヤーズ・代表取締役の高野秀敏氏によると、特に社長は、自身の業務時間のうち3割以上を採用活動に充てるくらいの覚悟が求められると言います。経営トップが採用を最重要課題と位置づけ、自ら候補者と向き合うことで、初めて全社的な採用文化が醸成されるのです。経営メンバーが採用にコミットせず、現場や人事に丸投げしている状態では、優秀な人材を獲得することは極めて困難です。

採用は、単に空いたポジションを埋める作業ではありません。会社の未来を共に創る仲間を探す、極めて戦略的な活動です。

「誰を採用すべきか」という議論の前に、「誰が、どのような責任体制で採用に臨むのか」を明確に定義し、関係者全員が納得感を持って進められるプロセスを構築することこそ、採用成功への第1歩と言えるでしょう。

採用活動には営業活動と同じ熱量が求められる

現代の採用市場における大きな変化の1つは、優秀な人材ほど転職活動を積極的には行っていないという現実です。現在の仕事に真摯にコミットしている人材は、SNSで魅力的な投稿を見かけたからといって、気軽に「じゃあ受けてみます」とはなりません。多くの企業が「情報を発信してアピールすれば、良い人材が自然と集まってくる」という幻想を抱きがちですが、それはもはや過去の常識です。

現代の採用は、受け身の「待ち」の姿勢では成功しません。株式会社キープレイヤーズ・代表取締役の高野秀敏氏によれば、むしろ営業活動と同じように、企業側から積極的にアプローチする「攻め」の姿勢が不可欠となっていると言います。

具体的には、自社にフィットしそうな潜在的な候補者を見つけ出し、こちらから能動的にアプローチをかけ、一度断られても諦めずにコミュニケーションを取り続けるといった、営業さながらの動きが求められるのです。特にダイレクトスカウトは「攻めの採用」を実践する上で極めて重要な手法となります。

しかし、近年はAIを活用したスカウトメールが氾濫しており、候補者の受信箱は大量のメッセージで溢れかえっています。その結果、スカウトメール全体の返信率は低下傾向にあり、テンプレート的な文章はほとんど読まれることがありません。

このような状況下で候補者の心に響くのは、手間を惜しまずに書かれたパーソナルなメッセージだと高野氏は言います。特に、社長自らが候補者の経歴を読み込み、その人の強みや経験が自社でどのように活かせるのかを熱意を持って綴った文章は、他の多くのスカウトメールとの明確な差別化となり、高い返信率につながるのです。

採用を単なる人事部門のタスクと捉えるのではなく、経営の最重要課題として位置づけ、経営者自らが先頭に立って候補者にアプローチする。そのくらいの熱量とコミットメントが、今日の採用成功のカギを握っていると言えるでしょう。

採用の代表的な失敗、ミスマッチを生む課題

採用における失敗の代表的なものとして挙げられるのが、ミスマッチです。このミスマッチ問題は、多くの企業が直面する深刻な課題の1つです。特にスキルや経歴のみを重視した採用活動は、短期的には即戦力を確保できたように見えても、長期的には組織に大きなダメージを与える危険性をはらんでいます。

柴田雄平氏が在籍している株式会社koujitsuでは、過去にスキル重視の採用を続けた結果、企業文化とのミスマッチが多発し、早期離職者が続出。最終的には社長と役員の2人だけが残るという組織崩壊寸前の事態にまで陥ったと言います。

この失敗の背景には、採用フローや基準が明確でなかったこと、そして自社が求める人物像が曖昧なまま、勢いだけで採用を進めてしまったという共通の原因がありました。

たとえ20年間人材紹介業に携わってきたプロフェッショナルであっても、自社の組織づくりにおいては同様の失敗を経験することがあります。グレイスグループ株式会社の代表取締役である勝見祐幸氏は、創業初期の組織づくりの失敗について次のように語っています。
最初に組織を作るにあたって、当時の私はたまたま近くにいて、かつちょうど次の仕事を探しているという人に声をかけました。当社のミッションはその意義がわかりやすいため、多くの方が賛同くださり参画してくれました。

しかし、会社のミッションに共感し、私と波長が合う人がビジネスパートナーとして適切かというと、残念ながらそんなことはありません。一緒に仕事をしていく中で次第にズレが生じていき、最終的に初期メンバーは全員いなくなってしまいました。

組織づくりの過程で必要な想像力や洞察力が自分には欠けていると否応なく気づかされました。自分に人を見抜く力はない。その事実を認めた上で、同じような採用の失敗を繰り返さないように役割分担を変えました。

引用:20年間人材紹介業をしていても、自社採用ではミスマッチがある… 初期メンバー全員に去られた社長が組織づくりで得た学び(ログミーBusiness)

このような失敗を繰り返さないためには、採用プロセスそのものを見直し、多角的な視点から候補者とのフィットを検証する仕組みが必要です。

例えば、どんな候補者であっても最低2回の面談を実施し、1次面談には必ず複数人のメンバーが参加することで、評価の客観性を担保します。さらに効果的なのが、インターン期間を設けることです。最低でも3ヶ月程度の期間を共に働くことで、書類や面接だけでは見抜けない価値観やカルチャーへのフィット感を深く確認することができます。

採用では、スキルフィット、カルチャーフィット、キャリアフィットという3つの側面から総合的に判断されるべきものです。

スキルだけでなく、ミッションやバリューへの共感、そしてその会社で働くことが自身の人生にとってどのような意味を持つのかというレベルで合意形成を図ることが、真のミスマッチ防止につながるのです。

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