お知らせ
お知らせ
CLOSE

Z世代部下への接し方(全1記事)

上司が知っておきたいZ世代の部下への接し方 現場で使えるマネジメントの具体策 [2/2]

「ゆるブラック」を避けるためのZ世代部下との適切な接し方

ハラスメントに対する社会的な意識が高まる中で、部下への指導に過度に慎重になり、厳しいことを言えなくなっている上司が増えています。しかし、この「腫れ物に触るような」態度は、かえって若手社員の成長機会を奪い、離職につながる「ゆるブラック」と呼ばれる新たな問題を生み出していると、株式会社アスマークの奥津直樹氏は言います。

「ゆるブラック」とは、残業がなく働きやすい環境であるものの、指導やフィードバックが不足しているためにスキルが身につかず、将来への不安から若手が辞めてしまう職場のことです。

Z世代は自己成長欲求が強い一方で、将来に対する不安も大きいため、「このままでは市場価値のある人材になれない」と感じると、より成長できる環境を求めて転職を選択します。ハラスメントを恐れるあまりの「ゆるい上司」は、結果的に部下の期待を裏切ることになるのです。

もちろん、ハラスメントは決して許されるものではありません。特に精神的攻撃はパワハラの内訳で最も多く、人格否定は一発アウトであると認識する必要があります。しかし、叱責そのものが悪なのではありません。

奥津氏によると、ある調査で、部下やメンバー自身も「叱責することは必要だ」と考えている人が多数派であったことがわかっています。重要なのは、その「伝え方」なのです。

効果的な指導の原則は、「事実」に基づいてコミュニケーションを取ることです。感情や憶測で話すのではなく、「〇〇という事実に対して、何ができていなかったのか」を具体的に指摘します。そして指摘だけで終わらせず、「どうすれば解決できるのか」を一緒に考え、情報共有することが重要です。このプロセスを通じて、部下は当事者意識を持ち、同じミスを繰り返さないようになります。

また、アンガーマネジメントも上司にとっては必須のスキルです。感情的になりそうになったら一度深呼吸をするなどして、冷静さを取り戻してからコミュニケーションを取ることを心がけるべきです。

奥津氏は、「仕事相手を『取引先の社長の子ども』だと思って対応すれば間違いない」とアドバイスしています。この意識があれば、意図を丁寧に説明し、誠実な対応を心がけることができるでしょう。

「見て学べ」「根性で乗り切れ」といった旧来の精神論はもはや通用しません。しかし、ハラスメントを恐れて指導を放棄することは、上司としての責任を放棄することに他なりません。

相互尊重をベースに、事実で褒め、事実で叱る。この毅然とした姿勢こそが、部下の成長を促し、信頼関係を築く上で不可欠なのです。

Z世代の部下への接し方を考える際の個別アプローチの重要性

株式会社PDCAの学校の宮地尚貴氏は、Z世代の部下のマネジメントを考える上で、ダグラス・マクレガーが提唱した「X理論・Y理論」は非常に有効な示唆を与えてくれるものとして紹介しています。この理論は、人間の仕事に対する動機付けを2つの対立する観点から捉えるものです。

「X理論」は、人間は本来仕事が嫌いで、強制されたり命令されたりしないと働かないという性悪説的な人間観に基づいています。このタイプの人には、アメとムチによる動機づけや、行動を細かく管理するマネジメントが有効とされます。マズローの5段階欲求で言えば、生理的欲求や安全欲求といった低次の欲求段階にある状態です。

一方で「Y理論」は、人間は生まれながらに仕事への意欲を持ち、自ら目標を達成することに喜びを感じるという性善説的な人間観です。このタイプの人には、権限委譲や目標管理を通じて、自己実現の機会を与えるマネジメントが有効とされます。社会的欲求や承認欲求、自己実現欲求といった高次の欲求段階にある状態です。

これまでの話を踏まえると、自己成長意欲が高く、社会貢献を志向するZ世代は、「Y理論」に当てはまるように思えるでしょう。確かに、彼らは高次の欲求を満たせるようなアプローチを求めており、最終的なマネジメントのゴールは、彼らの自律性や自己実現を促すY理論的なものであるべきです。

しかしここで注意が必要なのは、Z世代がY理論的な側面だけを持っているわけではないということです。現実には、「指示されないと動けない」「責任を取りたがらない」「役職に就きたくない」といったX理論的な特徴も、多くの若手社員に見られます。

特に社会人経験の浅い新入社員は、仕事に対する目的や意義をまだ見出せておらず、「一人前になりたい」といった漠然とした目標しか持てていないケースが少なくありません。

このような状態の社員に対して、いきなりY理論的なアプローチ、つまり「自分で考えて行動しろ」と突き放してしまうのは効果的ではありません。まずはX理論的なマネジメント、すなわち具体的な目標を与え、どのような行動が望ましいのかを明確に示し、時には細やかな行動管理を行うことが求められます。

重要なのは、部下一人ひとりの能力、意欲、エンゲージメントのレベルを見極め、アプローチを使い分けることです。

例えば「1年後にどうなりたいか」という問いに対し、具体的なビジョンを語れない社員には、会社側から「君にはこう育ってほしい」という目標を提示し、それが本人のプライベートな自己実現にもつながる可能性を示唆してあげることが有効です。

そして、業務に慣れ、仕事の全体像が掴めてきた段階で徐々に自分で目標を設定させ、行動を考えさせるY理論的なアプローチへと移行していくのです。

Z世代を一括りにするのではなく、個々の発達段階に応じたハイブリッドなマネジメントこそが、彼らのポテンシャルを最大限に引き出すカギとなります。

Z世代の部下のタイプを見極める

Z世代という世代論で若手社員を理解しようとすることは有効な第1歩ですが、最終的には一人ひとりの「個」に向き合うことが不可欠です。同じZ世代であっても、その性格や価値観は千差万別であり、画一的なアプローチでは限界があります。より効果的なマネジメントのためには、部下のタイプを見極め、それぞれに合わせたコミュニケーションを実践することが求められます。

One人事株式会社の田中幸史氏によると、ある米国の研究では、人物タイプを大きく4つに分類していると言います。このフレームワークは、部下への接し方を考える上で参考になります。

1. 堅物タイプ(全体の19パーセント)
優秀ですが融通が利かない傾向があります。彼らには、物事の「優先順位」をはっきりと示し、大げさな表現を避けて論理的に接することが有効です。

2. 指示待ちタイプ(全体の41パーセント)
最も多いタイプで、言われたことしかやらない傾向があります。彼らには大きすぎる目標ではなく、「適度な責任」を与えることで当事者意識を引き出すことが重要です。

3. 変人タイプ(全体の24パーセント)
細かい質問が多く、物事の理由を深く知りたがります。彼らの質問にはイライラせず、丁寧に、時には「プラスαの説明」を加えることで、納得感と信頼を得られます。

4. わがままタイプ(全体の17パーセント)
自分の思いどおりにしたいという欲求が強いタイプです。彼らには細かく指示するのではなく、行動のメリットを強調しながら、ある程度「本人の自主性に任せる」方がパフォーマンスを発揮します。

これらの個人のタイプに加えて、Z世代やゆとり世代といった世代別の特徴(安定志向、プライベート重視など)を掛け合わせてアプローチを考えることで、よりきめ細やかなマネジメントが可能になります。

しかし、現代の管理職はコア業務の増大や人材の多様化により、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを常に意識し続けることに大きな負担を感じています。特にリモートワーク環境下では、従来のような肌感覚での対応が難しくなっています。この「対人疲労」は、上司自身の燃え尽きや、部下との人間関係悪化による離職に直結する深刻な問題です。

そこで重要になるのが、コミュニケーションを個人のスキルだけに頼るのではなく、「仕組み化」するという発想です。タレントマネジメントシステムなどを活用し、日々の目標管理や行動履歴を可視化することで、いくつかのメリットが生まれます。

まず、苦手な部下とも業務上の目標をきっかけにフランクな会話がしやすくなります。次に、システム上のログを通じて定期的なコミュニケーションを担保でき、上司は直接聞かなくても部下の状況を把握できます。これにより公平な評価にもつながります。

人間関係は、関係性が濃すぎても薄すぎてもうまくいきません。システムや仕組みを取り入れることで、上司と部下の間に「ちょうどいい塩梅」の距離感を保ち、対人疲労を減らしながら、部下のセルフマネジメントを促進することができます。

個人のタイプを見極める観察眼と、それを支える仕組みの両輪を回すことが、現代の組織力を高めるマネジメントの要諦と言えるでしょう。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!