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ベンチャー企業の資金調達(全1記事)

ベンチャー企業の資金調達を成功させる実践ガイド 投資家選びから調達後の付き合い方まで紹介 [2/2]

資金調達における投資家の選び方

ベンチャー企業の資金調達における投資家選びは、単なる資金の提供者を探す作業ではありません。特に株式を譲渡するエクイティファイナンスの場合、投資家は株主として長期にわたり経営に関与するパートナーとなります。

重要なのは、調達額やバリュエーションといった条件面だけでなく、その投資家や担当者との「相性」を重視することです。中長期的に事業を共に成長させていく上で、信頼関係を築き、建設的な議論ができる相手であるかどうかを見極める必要があります。

この関係性は、野球のスカウトと選手の関係に似ていると、Sozo Venturesの中村幸一郎氏は語っています。
彼も、「投資家とスタートアップの相性は野球のスカウトのようなものだ」と言っています。「長く長くしっかり関係性を作って、ここぞというタイミングでスカウト(投資)をしていく」ということです。

(スライドを指して)この赤字で囲っているところです。野球のスカウトでいうと、ドラフト前に会うのではなくて小学校の前から、みなさんでいうとシードファイナンスの時から会って、関係性を築き、定期的に事業進捗を聞いたりする。そして、ここぞというタイミングで調達金額や条件面などの具体的な話をしていく、と書いています。

引用:実績は「これから」の状態でVC・投資家から出資を得るポイント 起業当初に資金調達を実現したメルカリ・Airbnbのピッチ資料(ログミーBusiness)

すぐに投資が決まるケースもありますが、多くは数ヶ月から1年以上の時間をかけて関係性を構築し、互いの理解を深めた上で投資に至ります。このプロセスを通じて、投資家が本当に自社の事業に寄り添い、共に汗をかいてくれるパートナーであるかを見極めることが重要です。

一方で、パートナーとして避けたほうがいい投資家のタイプも存在すると、ユニコーンファームCSOの清田享平氏は言います。例えば「今日中に意思決定してほしい」などと不当に決断を迫る「時限爆弾型」、有名ではあるものの投資後のサポートがまったくない「ブランド型」、投資後に追加のフィーなどを要求してくる「過大要求型」、そしてこちらの調達希望額を無視して大幅に低い金額を提示してくる「交渉人型」などです。

最適なパートナーを見つけるためには、1社や2社と会って諦めるのではなく、最低でも2桁以上のVCと面談するくらいの覚悟が必要だと清田氏は語ります。

複数の投資家と対話することで、条件を比較検討できるだけでなく、自社にとってどのようなサポートが本当に必要なのかが明確になり、より良い条件と相性を兼ね備えた投資家を見つけ出すことができるのです。

若手・学生起業家が陥る資金調達の落とし穴

ベンチャー企業の経営者の方の中には、若手起業家や学生起業家の方もいらっしゃることでしょう。若手起業家や学生起業家は情熱や斬新なアイデアという強みを持つ一方で、経験の少なさから資金調達において、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。特に注意すべきは、事業立ち上げ当初の資金的な不安に付け込まれるケースです。

創業期は売上の見通しが立たず、銀行からの融資も難しい状況で、多くの起業家は内心で強い不安を抱えています。その心理状態の中、目の前に現れた「すごそうな人」から「お金を出すよ」と声をかけられると、またとないチャンスに思え、飛びついてしまいがちです。

しかし、株式会社カンリーの代表取締役(共同経営)である秋山祐太朗氏と、株式会社ヒュープロ代表取締役の山本玲奈氏は、こうした安易な申し出に警鐘を鳴らします。
秋山:めちゃくちゃ気持ちわかるなって。確かに「お金を出したい」という人がたまに出てくるんですよね。「お金を出したい」と言ってくれた人は気をつけたほうがいいみたいな話があります(笑)。タダほど怖いものってやっぱりないなって。

「お金を出したい」じゃなくて「いや、俺はそんなに簡単に出さないよ」という人に逆に出してもらう。

山本:おっしゃるとおりですね。

引用:若手起業家が出資を受ける前に警戒すべきポイント スタートアップの資金調達における落とし穴(ログミーBusiness) 

株式や投資契約に関する知識が不十分なまま契約書にサインしてしまい、後になって経営権を著しく制限されたり、市場で悪評のある人物と関わってしまったりするリスクがあります。山本氏自身も、創業時に出資を受ける直前で先輩からのアドバイスによって辞退した経験があると語っており、信頼できる相談相手の存在が極めて重要であることがわかります。

また、若手経営者ならではの課題として、幹部採用の難しさも挙げられます。事業を成長させるためには、自分よりも経験豊富な年上の人材をチームに招き入れる必要がありますが、マネジメントスキルの不足から関係がうまくいかず、組織崩壊につながるケースも少なくありません。

これらの課題を乗り越えるためには、経験を積み、経営者として自信をつけていくことが不可欠です。会社が成長し、事業基盤がしっかりしてくると、純粋にプロフェッショナルとして力を貸してくれる優秀な人材にも出会えるようになります。

若手起業家は、目の前の資金繰りだけでなく、長期的な視点で会社と自分自身の成長を描き、安易な誘惑に惑わされない強い意志を持つことが求められます。

資金調達後の関係構築とVCとの付き合い方

多くの起業家にとって資金調達の成功は大きな目標ですが、それは決してゴールではありません。むしろ投資家という新たなパートナーを迎えて事業を成長させていく、長い航海の始まりです。調達後の投資家との関係構築は、その後の企業の成長速度を大きく左右する重要な要素となります。

ベンチャーキャピタル(VC)との関係性において、最も重要なのは担当者との相性です。契約書に書かれていること以上に、日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を築いていくことが求められます。

株式会社メルカリ取締役の小泉文明氏は、担当者との相性がすべてであり、特に人事異動がある組織体のVCの場合、担当者が異動してしまうことで継続的な関係が途切れてしまうリスクを常に意識していると語ります。

担当者がどれだけ自社の事業に情熱を持ち、「一緒にやりたい」と思ってくれているか。スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏は、リード投資家を決める際の最も重要な判断基準は、話している時の担当者の「目の輝き」だと述べています。

VCには、特定の親会社を持たない「独立系」、銀行や証券会社が母体の「金融系」、事業会社が設立した「事業系(CVC)」などのさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なります。

特に事業会社からの出資は、事業上のシナジーが期待できるという大きなメリットがあります。彼らは自らもモノづくりを行っているため、プロダクトやサービスの価値、事業のポテンシャルを深く理解してくれる傾向があります。詳細な説明をせずとも事業の本質を理解し、投資を前提に話を進めてくれることも少なくありません。

一方で、事業会社は社内決裁プロセスに時間がかかるという側面も持ち合わせています。取締役会の日程から逆算してスケジュールを組む必要があり、意思決定のスピード感は独立系VCや個人投資家に劣る場合があります。

また、投資家とのコミュニケーション方法、つまりオペレーション上の相性も非常に重要です。例えば、freee株式会社では、投資家と自社の会計システムのアカウントを共有し、リアルタイムで経営数値を確認してもらうというオープンな情報共有を行っていると言います。

このようなやり方を歓迎する投資家もいれば、従来通りのレポート形式を好む投資家もいるでしょう。日々の情報共有やアップデートのやり方について、お互いがストレスなくスムーズに行えるかどうかは、長期的な関係を良好に保つ上で見過ごせないポイントです。

ベンチャー企業の資金調達は、単にお金を得るだけでなく、自社のカルチャーやビジョンに共感し、同じ方向を向いて走ってくれるパートナーを見つけるプロセスなのです。

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