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ベンチャー企業への転職(全1記事)

ベンチャー企業への転職を成功させる方法とは? メリット・デメリット・注意点と合わせて紹介 [2/2]

大企業からベンチャー企業への転職の失敗ポイント

大企業からベンチャー企業への転職は、近年増加傾向にあり、多くの成功事例がある一方で、新しい環境に適応できず苦戦するケースも少なくありません。

特に大企業からベンチャー企業への転職において、多くの経験者がつまずくポイントが、無意識のうちに染み付いた「大企業ならではの常識」が、ベンチャーという異なる生態系では通用しないという現実です。

特に、これまで所属していた企業の強大なブランド力や看板を、自分自身の力だと勘違いしてしまうことは、転職後に深刻なギャップを生む最大の原因となります。この勘違いを正せないままでは、周囲からの期待に応えられず、やがて組織の中で居場所を失ってしまうことになりかねません。

大企業出身者が直面しがちな課題は多岐にわたります。1つ目に、仕事の守備範囲の狭さです。大企業では業務が細分化・縦割り化されており、自分の担当領域に集中することが求められます。しかし少数精鋭で運営されるベンチャーでは、職務記述書の範囲を越えて、組織全体の課題解決に貢献する「越境」が当たり前です。自分の仕事はここまで、と線を引いてしまう姿勢は評価されません。

2つ目に、経営幹部の役割に対する誤解です。大企業では管理職の仕事は「管理」が中心ですが、ベンチャーでは社長や役員自らが手を動かすのが日常です。アシスタントもいない環境で、自ら資料を作成し、アポイントを取るなど、プレイングマネージャーとしての動きが求められます。

コスト意識の違いも大きな壁となります。潤沢な予算の中で仕事をすることに慣れていると、交通費や接待交際費といった経費の使い方に無頓着になりがちです。ベンチャーでは、限られた資金をいかに有効活用するかが常に問われるため、シビアなコスト感覚が不可欠です。

また、採用力の差も認識しておく必要があります。大企業の名前を出せば優秀な人材が集まる環境とは異なり、ベンチャーでは採用に苦労するのが普通です。そのため、既存のメンバーでいかに成果を最大化するかが重要であり、一人ひとりに求められるパフォーマンスレベルは非常に高くなります。

こうしたベンチャー特有の環境や前提を理解せず、大企業時代の感覚のまま振る舞ってしまうと、深刻なミスマッチが生じます。

キープレイヤーズ代表の高野秀敏氏は、ベンチャー転職における勘違いについて、次のように警鐘を鳴らしています。
『ベンチャーの作法 「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術』にもいろんなことを書いたんですけども、その1つが、企業ブランドを自分のブランドだと勘違いしてしまう。大手の看板でやっているところが抜けないみたいな話ですね。(中略)

2つ目は経営幹部の仕事を勘違いしている。ベンチャーだと、やっぱりまったく手が動かない(人)というのはかなりキツくて。社長でも、自分でなんでもやってる人が多いんです。秘書の人とかアシスタントの人があまりいないんですよね。自分でできないといけない。(中略)

3番目は仕事の守備範囲を勘違いすることです。やはり、幅広くいろいろできたほうが良い。大手だと縦割りなので、他に影響しないほうが良いんですけど、ベンチャーの場合、ちゃんと根回しをすれば越境したほうが良いですね。

引用:大企業→ベンチャーの転職にありがちな“7つのつまずき” 会社のブランド力を自分の実力だと勘違いする人の失敗例(ログミーBusiness)

これらの勘違いは、個人の能力とは別の次元で転職の成否を大きく左右します。大企業で優秀だった人材が、ベンチャーで「使えない」と評価されてしまう悲劇は、こうした環境理解の不足から生まれるのです。

転職を成功させるためには、過去の成功体験やプライドはいったん忘れ、新しい組織の文化とルールを謙虚に学び、自らを適応させていく姿勢が何よりも重要となります。

ベンチャー企業の採用側はどこを見ているのか?

ベンチャー企業への転職を成功させるためには、求職者側の視点だけでなく、採用する企業側の視点を理解することが極めて重要です。特に、成長途上のベンチャー企業が経験者採用で陥りがちな「失敗」のパターンを知ることは、求職者が面接で何をアピールすべきか、そしてどのような企業を避けるべきかを見極める上で大きなヒントとなります。

多くのベンチャー経営者が経験する採用の失敗、それは「スキルを重視し過ぎる採用」だと、株式会社JAM 代表取締役社長の水谷健彦氏は語ります。

事業が軌道に乗り始め、組織が拡大フェーズに入ると、これまで自社にはいなかった大手同業他社からの経験者が応募してくることがあります。これは採用担当者や経営者にとって非常によろこばしいニュースであり、「この人が入社すれば、停滞している事業が一気に進むのではないか」「リーダーシップを発揮して組織を変革してくれるはずだ」といった過度な期待、いわば「妄想」が膨らみがちです。

この期待感が先行すると、採用プロセス全体に「この人を採用したい」という強い「合格圧力」がかかります。その結果、候補者のスキルや経験を客観的に精査する視点が曇り、自社とのフィット感を冷静に見極めることなく採用に至ってしまうのです。これを「盲目採用」と呼ぶこともできます。

しかし、このようなかたちで採用された人材が、期待どおりに活躍する確率は決して高くありません。業界経験者といっても、前職で担当していた業務範囲や役割、関与の仕方はさまざまです。プロジェクトのリーダーとして方針決定から実行までを主導してきたのか、それとも誰かが決めた方針の中でオペレーションを担ってきたのかによって、保有するスキルは異なります。

この「テクニカルスキル」を具体的につぶさに確認することなく、「経験者」という肩書きだけで採用してしまうと、入社後に「期待外れだった」というミスマッチが生じます。

水谷氏によると、採用側が本当に見るべきなのは、テクニカルスキルに加えて、より本質的な2つの能力です。

1つは「コンセプチュアルスキル」、すなわち戦略立案能力や問題解決能力といった思考力です。役職が上がるほど、物事の本質を捉え、複雑な課題に対して的確な方針を打ち出す力が求められます。

もう1つは「ヒューマンスキル」、すなわち他者への影響力やコミュニケーション能力です。どんなに優れた戦略を立てられても、それをチームに伝え、共感を得て、メンバーを動かすことができなければ、組織としての成果にはつながりません。経験者採用では、これら3つのスキル(テクニカル、コンセプチュアル、ヒューマン)をバランス良く見極めることが不可欠です。

一方で、経験の浅い若手採用の場合は、これらのスキルよりも「ポテンシャル(潜在能力)」と「スタンス(仕事への向き合い方)」が重視されます。成長意欲や責任感、倫理観といった土台がしっかりしていれば、スキルは入社後にいくらでも鍛えることができるからです。

求職者としては、自身の経験フェーズに応じて、これらのどの部分を重点的にアピールすべきかを意識することが重要です。そして、もし面接の過程で、企業側が自分の経歴やスキルだけを見て過度な期待を寄せていると感じたなら、それは危険な兆候かもしれません。入社後の大きな期待値ギャップを避けるためにも、冷静な視点を持つ企業を選ぶことが賢明です。

ベンチャー企業で重要になる「自走力」

ベンチャー企業の門を叩くにあたり、重要視される能力は何かと問われれば、それは間違いなく「自走力」です。大企業のように整備された業務フローや詳細なマニュアル、手厚い研修制度は存在しないことがほとんどです。ここでは、仕事は上司から「与えられる」ものではなく、自らが「創り出す」ものという意識が不可欠となります。

具体的な指示がなくとも、会社の目標達成のために今何をすべきかを自分で考え、仮説を立て、周囲を巻き込みながら実行していく力が、個人の評価と企業の成長に直結します。

この「自走力」の根幹をなすのが、「仮説設定能力」です。ベンチャー企業が対峙するのは、前例のない課題や未開拓の市場であることが多いため、常に「こうすればうまくいくのではないか」という仮説を立て、それを検証するサイクルを高速で回していく必要があります。

上司からの指示を待つのではなく、「現状の課題はこれで、それを解決するためにはこの施策が有効だと考えます。まずはこれを試してみませんか?」と自ら提案し、周囲を動かしていく主体性が求められます。このプロセスを苦に感じず、むしろ楽しめる人こそが、ベンチャー企業で活躍できる人材と言えるでしょう。

このような環境では、いわゆる「評論家」は必要とされません。組織や仕組みの課題を指摘し、理想論を語るだけでは何の価値も生み出さないからです。重要なのは、課題を認識した上で、「では、自分はどう動くか」という当事者意識を持ち、自らが手足となって解決策を実行することです。

成長途上の組織が求めているのは、自ら動いて結果を出せる人材、ただ1人です。この「結果フォーカス」のマインドセットは、ベンチャーで働く上での基本作法と言えます。

また、自走力は個人の業務範囲を越えて発揮されるべきです。ベンチャー企業では、職務記述書に書かれた範囲だけをこなすのではなく、組織全体で発生している課題、いわゆる「落ちているボール」を積極的に拾いにいく姿勢が歓迎されます。

例えば、営業担当者であっても、採用活動がうまくいっていなければ自らリファラル採用に協力したり、プロダクトに改善点があればエンジニアにフィードバックしたりと、自分の職務を越境して貢献することが期待されます。これは、組織が小さく、一人ひとりの行動が会社全体に与える影響が大きいためです。

大企業で上司からの指示に基づいて行動することに慣れている人にとって、この働き方は大きな挑戦となるかもしれません。しかし自分で仕事を作り、仮説を立て、周囲を巻き込みながら結果を出していく経験は、ビジネスパーソンとして飛躍的な成長をもたらします。

ベンチャーへの転職は、単に職場を変えるだけでなく、仕事に対する根本的なスタンスを「指示待ち」から「自走」へと転換する、キャリアにおける重要な変革点となるのです。

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