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ベンチャー企業への転職(全1記事)

ベンチャー企業への転職を成功させる方法とは? メリット・デメリット・注意点と合わせて紹介 [1/2]

【3行要約】
・ベンチャー企業への転職は「他には変え難い経験」が得られる一方、大企業とは異なる環境への適応が求められます。
・キープレイヤーズ代表の高野秀敏氏は、企業ブランドを自分の実力と勘違いする人や、仕事の守備範囲を狭く捉える人が失敗しやすいと警鐘。
・ベンチャー企業への転職の成功のカギは、自ら仕事を創り出し、過去の成功体験を手放す柔軟性が求められています。

ベンチャー転職で得られる「ベンチャー企業ならではの経験」とは

近年、キャリアの選択肢としてベンチャー企業への転職を検討する人が増加しています。大企業とは異なる環境で働くことに、多くのビジネスパーソンが魅力を感じています。その魅力の核心にあるのが、ベンチャー企業ならではの経験です。これは大きく分けて、業務の経験面、そして経営に近い感覚面から捉えることができます。

まず経験面における最大のメリットは、新しい仕組みづくりや組織づくりといった、企業の根幹を形成する業務に深く関与できる点です。もちろん、大企業でも同様の業務は存在しますが、その実行におけるスピード感はまったく異なります。

大企業では、新しい取り組みを始める際に過去の前例を探し、社内の多岐にわたる部署や役職者への説得・調整に多くの時間とエネルギーを費やすことが一般的です。結果として、市場の好機を逃してしまうことも少なくありません。

一方、ベンチャー企業では前例のない挑戦が常態であり、意思決定から実行までのサイクルが非常に速いのが特徴です。これによりビジネスの機を逃さずにチャレンジし、スピード感を持ってプロジェクトを推進するダイナミズムを体感できます。

また、責任の所在も大企業とは大きく異なります。大企業では、新規事業が成功して巨額の利益を生んだとしても、その成果は個人のものではなく、あくまで組織に帰属します。逆に、事業が失敗し赤字を出した場合でも、個人の責任が厳しく問われることは少なく、プロジェクトが白紙に戻る程度で済むことがほとんどです。

しかしベンチャー企業では、成功も失敗も個人の責任の割合が大きくなります。この環境は強いプレッシャーを伴いますが、同時に自身の判断と行動が事業に直接的な影響を与えるという、強烈な当事者意識と責任感を育みます。このような経験は、自身のキャリアにおいて非常に貴重な財産となるでしょう。

感覚面では、創業者や経営陣と極めて近い距離で働けることが大きな魅力です。数十人、数百人規模の組織であれば、経営トップと日常的にコミュニケーションを取る機会があり、彼らの思考や意思決定のプロセスを間近で学ぶことができます。大企業では、トップの顔を見ることさえ稀である状況とは対照的です。経営陣と日々対話を重ねることで、自然と自身の視座も高まり、一担当者ではなく経営的な視点から物事を捉える力が養われます。

このように、事業の成長と組織の形成にダイレクトに関わり、経営者と同じ視座で働く経験は、ベンチャー企業でしか得られない、まさに「他には変え難い経験」と言えるでしょう。

ベンチャー転職の報酬面のリアル

ベンチャー企業への転職を考える際、多くの人が期待と不安を抱くのが収入面です。一方ではストックオプションによる一攫千金の夢が語られ、もう一方では大企業に劣る給与水準や不安定さが指摘されます。実際のところ、ベンチャー企業の報酬は企業の成長フェーズや個人の成果によって大きく変動するため、その実態を多角的に理解しておくことが重要です。

まず、大きな魅力として挙げられるのがストックオプション(自社株購入権)です。これは、会社の成長に貢献した社員に対して、将来的に自社の株式をあらかじめ決められた価格で購入できる権利を付与する制度です。

もし入社した企業が株式上場(IPO)やM&A(合併・買収)に成功した場合、株価は付与時の価格から大幅に上昇する可能性があります。そのタイミングで権利を行使して株式を安価に購入し市場価格で売却すれば、数千万円から数億円といった莫大な利益を得ることも夢ではありません。

特に創業初期の早い段階で入社し、重要な役割を担ったメンバーほど、大きなリターンを得る可能性が高まります。この点は、給与所得だけでは得難い、ベンチャーならではの経済的なインセンティブと言えるでしょう。

日々の生活に関わる月々の給与については、かつては大企業に比べて不利な状況が一般的でした。しかし、近年その状況すらも変化しつつあります。

まだ売上が立っていないベンチャーでも、将来性を期待した投資家から10億円を超えるような大型の資金調達が可能になったことで、優秀な人材を確保するために高い給与を提示するベンチャーも増えています。特にIPOが視野に入ってきたミドルステージ以降のベンチャーでは、年収1,000万円を超えるプレイヤーも珍しくなくなりました。

成果を出せば正当に評価され、年齢や社歴に関係なく昇給・昇格のスピードが速いのも特徴です。大企業の年功序列的な給与体系に不満を持つ人にとっては、魅力的な環境と言えるでしょう。

しかし、これらのポジティブな側面だけを見て転職を決めるのは危険です。まず、ストックオプションはあくまで「成功した場合」の報酬であり、その実現は不確実です。多くのベンチャー企業はIPOやM&Aに至ることなく事業を終えます。

また、待遇面では福利厚生が大企業ほど充実していないケースがほとんどです。家賃補助や退職金制度などが整備されていないことも多く、トータルでの待遇を比較すると見劣りする可能性があります。

さらに、特にアーリーステージのベンチャーでは、経営が不安定なため、業績によっては給与が下がったり、最悪の場合、倒産して職を失うリスクもゼロではありません。

転職を検討する際は、目先の給与額だけでなく、企業の成長フェーズ、資金調達の状況、そして事業の将来性を冷静に見極め、ある程度の年収ダウンや待遇面の変化を受け入れる覚悟も必要になるでしょう。

本当に危ないベンチャー企業を見極める方法

ベンチャー企業を評価する際に多くの人が気にする指標のもう1つに「離職率」があります。確かに社員が次々と辞めていく会社と聞くと、「何か問題があるのではないか」「働きにくい環境なのではないか」と不安に感じるのは当然です。しかし、特に急成長しているベンチャー企業においては、「離職者が多い=悪い企業」という単純な図式は必ずしも成り立ちません。

企業の健全性や将来性を見極めるためには、離職者の「人数」という表面的な情報に惑わされるのではなく、その「中身」、すなわち「誰が、なぜ辞めたのか」を深く考察する視点が不可欠だと株式会社キープレイヤーズ代表取締役 高野秀敏氏は語ります。

急成長しているベンチャー企業は、事業拡大に伴って大量の採用を行うことも少なくありません。その結果、ミスマッチが通常より多く生じてしまい、組織を去る人が増えるのはある意味で自然な現象です。重要なのは、その辞めていく人々がどのような人材であるかです。

1つ目のパターンは、パフォーマンスを出せていなかった社員が辞めていくケースです。これは企業が成果を正当に評価し、組織にとって必要な人材とそうでない人材を見極めるプロセスが機能している証拠であり、むしろ健全な状態と捉えることができます。

2つ目のパターンは、非常に優秀で尖った人材が、次のステージとして「起業」するために辞めていくケースです。これは企業がそれだけ魅力的な人材を採用できていた証であり、ネガティブに捉える必要はまったくありません。むしろ優秀な卒業生を輩出する企業として、ポジティブな評価につながることさえあります。

本当に危険な兆候と言えるのは、3つ目のパターンです。それは、組織の中枢を担い、チームプレーヤーとして周囲からの評価も高かった人物が、起業などの明確な目標もなく辞めていくケースです。特に、その企業のビジョンやカルチャーに深く共感していたはずのコアメンバーが離脱した場合、その背景には経営方針への深刻な不満や、事業の将来性に対する見切りなど、根深い問題が隠されている可能性があります。

同様に、CFO(最高財務責任者)や管理部長といった上場準備のキーパーソンが辞める場合も、その理由を慎重に見極める必要があります。単に能力的な問題で交代したのか、それとも「この会社は上場できない」と判断して去ったのかでは、意味合いがまったく異なります。

高野氏は、この点について次のように語っています。
大切なのは組織にとって重要人物とされていて、評価も高い人ですね。「絶対起業してやる」みたいな人はしょうがないです。そうじゃなくて組織向きなチームプレー型の方で、中枢を担っていた人たちが辞めちゃっている。これはインパクトがかなり大きいですね。だから、辞めている人の中身が大事。(中略)

辞めている人と、その理由ですよね。例えばCFOの方ってよく入れ替わるんですね。理由は、証券会社の方とか監査法人の方から「この方では上場は難しいと思います」って言われるケースがあるんですよ。

それなのか、「この会社はもう上場できないから辞めよう」となっているのか(笑)。中身ですよね。

引用:離職率より“誰が辞めたのか”が重要 エンジェル投資家が語る、本当に危ない企業の見極め方(ログミーBusiness)

企業の成長過程において、人の入れ替わりは避けられません。10人の組織で活躍する人材と、100人の組織では活躍する人材が異なります。

離職という現象を恐れるのではなく、その背景にある本質的な理由を探ることで、その企業が本当に投資すべき、あるいは自身のキャリアを賭けるべき場所なのかを、より正確に判断することができるのです。

40代・50代のベンチャー転職は無謀なのか?

ベンチャー企業というと、20代や30代の若い世代が活躍するイメージが強く、40代や50代のビジネスパーソンが転職を考えた際に、「自分のようなベテランが通用するのだろうか」という不安を抱くこともあるでしょう。

実際に、体力やITリテラシー、環境への順応性といった面では若い世代に分があるかもしれません。しかし年齢を重ねたからといって、ベンチャーへの挑戦が無謀だということにはなりません。豊富な経験と実績を持つ中高年層が、ベンチャー企業で大きな価値を発揮するケースは数多く存在します。

その成否を分けるカギは「アンラーニング(学習棄却)」、すなわち過去の成功体験や凝り固まった価値観を一度捨て去り、新しい環境でゼロから学ぶ姿勢を持てるかどうかにかかっています。

近年の大手企業による希望退職の促進などを背景に、40代、50代で新たなキャリアとしてベンチャーを選ぶ人は増加しています。しかし、大企業で長年キャリアを築いてきた人がベンチャーに転職すると、その文化や働き方のギャップに苦しむことが少なくありません。

大企業では当たり前だった潤沢な経営資源(予算、人材、ブランド力)や、整備された社内プロセス、手厚いサポート体制は、ベンチャーには存在しないことがほとんどです。スケジュール管理や資料のコピーといった雑務まで自分で行わなければならない状況に、「こんなことまで自分がやるのか」と不満を感じてしまうようでは、活躍は難しいでしょう。

最も重要なのは、過去の実績や経験則に固執しないことです。変革期にあるベンチャー企業においては、過去の成功体験が必ずしも通用するとは限りません。むしろ、それが新しいアイデアや迅速な意思決定の妨げになることさえあります。大企業でのやり方をそのまま持ち込み、「前の会社ではこうだった」と主張するだけでは、周囲から敬遠され、孤立してしまうでしょう。

活躍しているベテラン人材に共通しているのは、自身の経験を誇示するのではなく、それを新しい環境に合わせて応用し、足りない知識は若いメンバーからも謙虚に学ぼうとする柔軟な姿勢です。これまでのやり方を一度忘れ、新しい組織のルールや価値観を素直に受け入れる「アンラーニング」の実践が不可欠なのです。

もちろん、これまでの経験がすべて役に立たないわけではありません。マネジメント経験や業界知識、培ってきた人脈などは、組織が未成熟なベンチャーにとって大きな武器となり得ます。しかし、それはあくまで新しい環境に適応し、チームからの信頼を得た上で初めて活かされるものです。

もし過去のやり方を変えることが難しいと感じるのであれば、無理にベンチャーに挑戦する必要はありません。自身の経験が最も活きるのは、やはり現職の環境です。そこでさらに実績を積み重ねることも、立派なキャリアの選択肢の1つでしょう。

40代、50代のベンチャー転職は、これまでのキャリアで築き上げたプライドや常識を捨て、新人同様の学習意欲を持てるかどうかが問われる、自分自身への挑戦と言えるのです。

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