お知らせ
お知らせ
CLOSE

シェアド・リーダーシップ(全1記事)

「シェアド・リーダーシップ」とは? チームの主体性を高める実践ガイド [1/2]

【3行要約】
・変化が激しいVUCA時代において、1人のリーダーがすべての意思決定を担う従来型マネジメントには限界があります。
・リーダーの孤独と組織の硬直化が課題となる中、メンバー全員がリーダーシップを発揮する新たな組織運営「シェアド・リーダーシップ」が広がっています。
・心理的安全性を土台に、メンバー一人ひとりが自分らしさを発揮できる「余白」のある組織づくりを目指しましょう。

「シェアド・リーダーシップ」とは?

従来のトップダウン型リーダーシップの限界が明らかになる中で、新たな組織運営のかたちとして「シェアド・リーダーシップ」が注目されています。これは、特定の役職者だけがリーダーシップを発揮するのではなく、チームのメンバー全員がそれぞれの強みを活かし、目的達成に向けてリーダーシップを共有し合う(シェアする)という考え方です。

リーダーシップを特定の「ポジション」として固定するのではなく、チーム全体で担うべき「機能」として捉え直すアプローチと言えるでしょう。

シェアド・リーダーシップと混同されやすい概念に「サーバントリーダーシップ」があります。サーバントリーダーシップは、リーダーがメンバーに奉仕し、彼らが能力を最大限に発揮できる環境を整えることに主眼を置きます。

これは、特定のシチュエーションにおいてリーダーシップを発揮する「シチュエーショナルリーダー」をチーム内に何人育成できるかという視点に基づいています。リーダーが支援者となり、メンバーの主体性を引き出すという点でシェアド・リーダーシップと共通する部分もありますが、その本質は異なります。

シェアド・リーダーシップは、さらに一歩進んでメンバー個々人が「自分らしいリーダーシップ」を主体的に発揮し、それをチーム全体で共有することを目指します。

この違いについて、英治出版代表取締役の原田英治氏は、自社の組織づくりの経験を踏まえ、次のように解説しています。
「サーバントリーダー」との違いは何かなと思った時に、シチュエーショナルリーダーは起こしたいこととか目的ありきで、それを担当するリーダーなんですよね。だからどうしてもプロジェクトマネジメントとして、目的を達成するために、そのシチュエーショナルリーダーがトップとなってリーダーシップを発揮しなければいけないんです。

「シェアド・リーダーシップ」の場合は、チームでリーダーシップをシェアしてみんなで目的に向かっていますから、自分らしいオーセンティックなリーダーシップをみんなでシェアすることができる。

そういう組織と考えると、「このシチュエーショナルリーダーにあなたがなってくれたらいいな」という思いのもと、自分がサーバントリーダーとしてフォローしていったり。「支援をしていくから」というだけではなく、目的をみんなで共有した上で、みんなでリーダーシップをシェアして、みんなで目的に向かっていく。

このシェアド・リーダーシップ型の組織がより美しいというか、よりクリエイティビティが発揮されやすいんじゃないかなと考えるようになりました。

引用:創造的でワクワクする組織には「余白」がある 自分らしさが発揮される「シェアド・リーダーシップ」のススメ(ログミーBusiness)

つまり、シェアド・リーダーシップが機能する組織では、メンバーは単に割り当てられた役割をこなすだけでなく、共通の目的に向かって自らの強みや個性を活かしたリーダーシップを発揮します。この転換こそが、変化の激しい時代において組織の柔軟性と創造性を高めるための鍵となるのです。

シェアド・リーダーシップが注目されている背景

近年ビジネスの世界で耳にすることの多い「シェアド・リーダーシップ」とはどのようなものなのでしょうか。その意味を理解するためには、これまでのリーダーシップのかたちを理解することから始まります。

これまで経営者は、いわゆる「孤独」な状態でした。特に強いリーダーシップを発揮しようとすればするほど、その孤独は深まる傾向にあります。

経営に関する課題やプレッシャーを自己責任として過度に1人で背負い込み、従業員や役員、さらには家族にさえ弱音を吐けない状況に陥ることが少なくありません。弱い自分をさらけ出すことが、リーダーとしての資質を疑われることにつながるのではないかという恐れが、彼らを一層孤立させます。

このような状況は、トップダウン型のリーダーシップの限界を示唆しています。変化が激しく、予測不可能な現代のビジネス環境、いわゆるVUCA時代においては、1人のリーダーがすべての情報を収集し、最適解を導き出し、迅速に意思決定を下すことには限界があります。

こうした従来のリーダーシップ像が抱える課題を乗り越え、組織全体で困難に立ち向かうための新たなアプローチが求められています。それは、リーダー個人の力に依存するのではなく、メンバーそれぞれの知見や能力を結集し、組織としてのアウトプットを最大化する仕組みです。

その具体的なかたちこそが、近年注目を集めている「シェアド・リーダーシップ」という考え方なのです。

シェアド・リーダーシップの実現に重要な心理的安全性

シェアド・リーダーシップが効果的に機能するためには、その土台となる組織風土が不可欠であり、その最も重要な要素が「心理的安全性」です。心理的安全性とは、地位や経験にかかわらず、組織やチームの中で誰もが率直な意見や素朴な疑問を安心して口にできる状態を指します。

メンバーが「こんなことを言ったらどう思われるだろうか」「無知だと思われないだろうか」といった不安を感じることなく、本来の業務に集中できる環境のことです。

この逆の状態、すなわち心理的「非」安全なチームは、「恐れのある組織」と言い換えることができます。そこでは、罰や不安がマネジメントの手段として用いられます。例えば、上司と意見が対立すれば人間関係にひびが入ることがわかりきっている場合、たとえ会社や顧客のためになると確信していても、メンバーは口をつぐんでしまいます。このような組織では、本当に価値のある情報やアイデアが表に出てくることはありません。

罰や恐れによるマネジメントが長期的には機能しにくいことは、80年以上前の研究ですでに結論が出ていると、株式会社ZENTech 取締役の石井遼介氏は言います。行動分析学の観点では、ある行動の直後にアンハッピーな出来事(罰)が起きると、その行動が将来的に繰り返される確率は低下するのです。

これを組織の場面に当てはめてみましょう。あるメンバーがミスを犯し、それを上司に報告した際に厳しく叱責されたとします。この場合、上司の意図は「ミスを減らすこと」にあるかもしれませんが、実際に行動分析学的に減少するのは「報告する」という行動です。結果としてミスは減るどころかむしろ隠蔽されるようになり、問題がより深刻化するリスクが高まります。

石井氏は、心理的安全なチームを作るためには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が重要だと言います。メンバーが気軽に発言でき、困った時には自然に助け合い、新しいことにリスクを取って挑戦でき、そして多様な個性や才能が歓迎される。こうした行動が許容され、奨励される文化が心理的安全性の中核となるのです。

シェアド・リーダーシップを育むリーダーの振る舞い

心理的安全なチームを築き、シェアド・リーダーシップを育むためには、リーダーの振る舞いが極めて重要になります。石井氏によると、特に求められるのが、「心理的柔軟性」と呼ばれる心のしなやかさとのこと。これは平たく言えば、「正論を振りかざすのではなく、チームにとって本当に役に立つことを選択する」という姿勢です。

例えば、プライベートな問題でパフォーマンスが落ちているメンバーに対し、「仕事とプライベートは分けるべきだ」と正論をぶつけることは、本人のパフォーマンス回復という目的達成にはあまり役立ちません。

この心理的柔軟性を発揮するための重要なポイントは、マネジメントの焦点を「心の中」や「性格」ではなく、具体的な「行動」に置くことです。私たちは他人の心の中を直接コントロールすることはできません。それは自分自身の心であっても同様です。

「もっとワクワクして仕事に取り組め」と指示されても、すぐにワクワクすることは難しいでしょう。ワクワクという感情は、さまざまな行動や状況が積み重なった結果として生まれるものです。

ビジネスの現場で頻繁に使われる「危機感を持て」という言葉も、実は「心の中」へのアプローチであり、あまり効果的ではありません。リーダーがメンバーに本当に求めているのは、「危機感」という感情そのものではなく、危機感を持った結果として現れる特定の「行動」のはずです。

もしリーダーが「危機感を持て」とだけ指示し、メンバーがその言葉どおりに危機感を抱いた結果、不安で何も手につかず部屋の隅で震えているとしたら、それはリーダーの意図とはまったく異なる結果です。

したがって、リーダーは「危機感」といった抽象的な言葉を使う際に、「具体的にどのような行動を取ってほしいと考えているか」というレベルまで分解して伝える必要があります。

この「行動」にフォーカスするアプローチは、心理的安全性の醸成にも非常に有効です。行動分析学のフレームワークである「きっかけ」「行動」「みかえり」を使ってチームの状況を分析してみましょう。

例えば、「会議で発言する」という行動(話しやすさ)を増やしたい場合、その行動に対する「みかえり」が重要になります。もし発言するたびに「それは違う」「現実的ではない」といったダメ出しばかりされていれば(アンハッピーなみかえり)、発言という行動は次第に減っていくでしょう。

リーダーは、発言に対して肯定的なフィードバックを与えたり、意見を尊重する姿勢を示したりすることで(ハッピーなみかえり)、メンバーが安心して発言できる環境を意図的に作り出すことができるのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: 定例会議はチーム活性化の機会となる

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!