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マイクロマネジメント(全1記事)

マイクロマネジメントとは? 部下への悪影響と、適切な管理に改善するための3ステップ [1/2]

【3行要約】
・マイクロマネジメントは部下に「監視されている」と感じさせ、信頼感とパフォーマンスの低下を招くことが課題となっています。
・マイクロマネジメントの研究では、細かすぎる管理が部下のストレス増加や創造性の低下につながり、組織全体の生産性を阻害してしまいます。
・適度な管理を実現するには、目的と期待を明確化し、段階的に業務を任せ、成長を促す振り返りを行うという3つのステップが効果的です。

マイクロマネジメントとは?

マイクロマネジメントとは、「組織内のあらゆる側面について、細部を過剰に管理すること」と定義されています。上司と部下の関係においては、日常業務の内容から勤怠管理に至るまで、あらゆる側面を細かく管理する行為を指します。

株式会社ビジネスリサーチラボの黒住嶺氏は、研究では、マネジメントにおける過干渉といえる具体的な行動として以下の4つを指摘しています。

1つ目は「監視」です。業務の細部にわたって監視し、常に指示を出し続ける行為がこれにあたります。

2つ目は「コントロール」です。意思決定をすべて自分で行おうとし、部下など他者の意見を拒絶する傾向を指します。他者が業務に介在することを嫌うのです。

3つ目は「細部への執着」です。資料の体裁や見た目といった、本質的ではない非常に細かい点に過剰にこだわります。

4つ目は「ミスへの反応」です。自分自身のミスは顧みず、他者のミスに対しては非常に敏感になり、細かく指摘する姿勢を指します。

これらの行動は、部下に対して望ましくない影響を与えることが指摘されており、マネジメント手法として大きな課題をはらんでいます。

マイクロマネジメントがもたらすデメリット

マイクロマネジメントは、部下に対して深刻な悪影響を及ぼします。その影響は精神的なストレスから業務パフォーマンスの低下まで、多岐にわたります。

まず挙げられるのが、「ストレスの増加とエンゲージメントの低下」です。上司から業務の進捗を逐一確認され、何度も細かい指摘を受けることは、部下にとって強いプレッシャーとなります。この絶え間ないプレッシャーは、職場で感じるストレスを増大させる直接的な原因です。さらに上司からやり方を細かく指定されることで、仕事が「やらされ仕事」と化してしまいます。

その結果、部下は「なぜこの仕事をしているのか」という業務の意義や魅力を感じにくくなり、仕事に対するエンゲージメント、すなわち熱意や貢献意欲が著しく低下してしまうのです。

「信頼感の低下」も重大な問題です。上司から頻繁かつ細かく指摘を受けることで、部下は「自分は細かく言われないと理解できない、能力の低い人間だと思われているのではないか」と感じるようになります。

これは、部下が「上司は自分の能力を過小評価している」と認識することにつながり、上司と部下の関係性を悪化させ、信頼関係を損なう原因となります。信頼に基づかない関係性の中では、健全なコミュニケーションは生まれず、チームワークも阻害されてしまいます。

そして最も深刻な影響の1つが、「パフォーマンスの低下」です。一見すると、上司が細かく指示を出すことで業務の質が上がるように思えるかもしれません。しかし、研究ではマイクロマネジメントが多い上司の下では、部下の創造性や業務の質が低下することが報告されています。パフォーマンスが低下するメカニズムについて、黒住氏は次のように指摘しています。
特に創造性の部分では、細かく管理されるような状況では、「リスクを取りづらい」ことが反応としてあります。細かく管理されて、かつ逐一指摘を受けるということなので、例えば「今までと違うやり方をしてみよう」という挑戦をすると、「なぜ言われたようにやらないのだ」と、余計に非難を受ける可能性が高くなるわけです。

ですので、新しいことに挑戦することのリスクを取りづらくなってしまうので、創造性が低くなっていくということです。

2つ目の反抗する点に関しては上司の方からきつく管理されるので、自分から「職場にどんどんと貢献していこう」と思いづらくなってしまう。つまり、上司の扱いに対する不服さ(がある)ということです。自分なりに反抗するという姿勢で業務の質が落ちてしまいます。

引用:部下が「監視されている」と感じる上司の行動 細かなマネジメントがもたらす部下への悪影響(ログミーBusiness)

このように、部下は失敗を恐れて萎縮し、新しいアイデアを出すことや改善提案を躊躇するようになります。また、上司の過剰な管理に対する不満から、無意識のうちに反抗的な態度を取り、業務の質を自ら下げてしまうこともあるのです。

マイクロマネジメントになってしまう構造的なジレンマ

マイクロマネジメントの悪影響を考えると、つい管理職である上司を一方的に「悪者」として捉えがちです。しかし、この問題は単純な個人の資質だけに起因するものではなく、上司と部下という関係性が持つ構造的なジレンマから生じている側面があることを理解する必要があります。

上司は、マネージャーとして部下のパフォーマンスを管理し、生産性を高めるという役割を組織から与えられています。そのため、部下は必然的に「管理される側」という立場に置かれます。この「管理する側」と「される側」という関係性が、特に上司にとってのジレンマを生み出す土壌となるのです。

このジレンマを説明する概念として、「set up to fail 症候群」というものがあると黒住氏は語ります。直訳すると「失敗するように仕組まれている症候群」となり、まさに上司が陥りやすい負の循環を示しています。

管理職の役割は、部下のパフォーマンスを引き出し、成長を促すことです。その役割を遂行する中で、ある部下のパフォーマンスが低いことに気づいた場合、上司は当然ながらその部下に対して関与を強める必要があります。より具体的にアドバイスをしたり、進捗を細かく確認したりといった行動を取るでしょう。

しかし、この上司による関与の強化が、部下にとっては「過干渉」と感じられてしまうことがあります。部下は「信頼されていない」「細かく監視されている」と感じ、前述したようにストレスの増加やモチベーションの低下を招きます。その結果、皮肉なことに、部下のパフォーマンスはさらに下がってしまうのです。

パフォーマンスがさらに低下した部下を見て、上司は「もっと関与しなければならない」という思いを強くします。そして、さらに管理を強化するという行動に出ます。これが、パフォーマンスの低い部下に対して上司が関与を強めれば強めるほど、部下のパフォーマンスがさらに低下していくという「負の循環」です。

上司は部下のパフォーマンスを上げようという善意の動機から行動しているにもかかわらず、その行動が結果的にパフォーマンスを下げるという、まさに失敗するように仕組まれた状況に陥ってしまうのです。

この現象は、上司だけを責めるべきではないことを示唆しています。むしろ、管理職が真面目に職責を果たそうとすればするほど、この罠にはまりやすい構造があるといえるでしょう。

マイクロマネジメントの対極にある「放任」マネジメント

マイクロマネジメントが多くの弊害をもたらす一方で、その対極にある「放任」もまた、同様に深刻な問題を引き起こすリスクをはらんでいます。上司は部下を管理することが仕事であるため、「放任するわけにもいかない」という現実があります。

マイクロマネジメントになることを恐れるあまり、フィードバックや提案を極端に減らしてしまうと、今度は部下から「管理してもらえていない」「支援が不足している」と受け取られてしまう可能性があるのです。

部下の視点から「支援が不足している」と感じる現象は、大きく2つの研究テーマから捉えることができると黒住氏は語ります。1つ目はリーダーシップ研究からのアプローチで、部下が「上司がリーダーとして期待される役割を果たしていない」と判断する状況です。適切な管理やアドバイスといった、リーダーに期待される行動が上司から見られない場合、部下はそれを「放任」と見なします。

もう1つは、組織からの支援が感じられないというテーマです。部下は上司の行動を非常に敏感に観察しており、自分が正当に評価されているか、業務で困った時に助けてくれるか、公平に扱われているかといった点を注視しています。

重要なのは、部下は上司の支援の度合いを、会社全体からの支援の代弁として捉える傾向があるという点です。つまり、上司からのサポートが不十分だと感じると、それは会社全体に対する不満や不信感につながっていきます。

特に上司が「部下のためを思って自発的にフォローしてくれている」と感じられる行動があるほど、部下は十分な支援を受けていると認識し、「放任されていない」と感じるのです。

では、「放任」は部下にどのような影響を与えるのでしょうか。興味深いことに、「放任」はマイクロマネジメントと類似した悪影響をもたらすと言います。

1つ目に、「精神的ストレスの増加」です。上司からの適切な指示やアドバイスがないため、自分が何をすべきかという役割が曖昧になります。その結果、手探りで仕事を進める必要が生じ、業務負担が増加し、精神的なストレスが高まるのです。

2つ目に、「職場満足の低下」です。上司からの支援不足は会社全体の評価に直結するため、仕事や職場に対する満足度が低下します。

3つ目に、「生産性の低下」です。上司からのアドバイスという、業務遂行に必要なリソースが得られないため、生産性が落ちてしまいます。

さらに、放任は「仕事の先延ばし」につながるリスクも指摘されています。上司から見られていないという感覚は緊張感を薄れさせ、タスクの引き継ぎや進め方、達成水準などが曖昧になるため、明確なタスクが優先され、曖昧なものは後回しにされがちになるのです。

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