お知らせ
お知らせ
CLOSE

早期退職(全1記事)

早期退職のメリットとは? 企業・従業員(中途・新卒)それぞれの行動の背景とともに紹介

【3行要約】
・日本の雇用環境が変化する中、「早期退職」は個人のキャリア戦略における積極的な選択肢として見直されています。
・企業が早期退職制度を導入する目的も多様化し、業績好調な黒字企業でも組織改革の一環として活用するケースも増加しています。
・早期退職から次のステップに進む際は、ビジョンの共有や実務を通じたすり合わせなど、ミスマッチを防ぐ3つのアプローチを意識することが重要です。

終身雇用が前提ではなくなった時代の「早期退職」

現代の日本社会において、「早期退職」という言葉が持つ意味合いは大きく変化しつつあります。かつては、企業の業績悪化に伴う人員整理、いわゆるリストラといったネガティブな文脈で語られることが大半でした。

しかし、終身雇用制度が実質的に形骸化し、働き方の多様化が進む中で、早期退職は個人のキャリア戦略における1つの積極的な選択肢として捉え直されるようになっています。

人生100年時代と言われるようになり、多くのビジネスパーソンが70歳、あるいはそれ以降も働き続ける未来を想定しなければならない職業人生において、1つの企業に留まり続けることだけが最適解とは限りません。

特にキャリアの中盤に差し掛かるミドルシニア層にとって、自らのキャリアを主体的にデザインし直す機会は極めて重要です。社内での昇進や役割に行き詰まりを感じたり、自身の持つスキルや経験を異なる環境で試したいと考えたりすることは、自然な思考の流れと言えるでしょう。

こうした状況において、企業が提示する早期退職制度は、割増退職金や再就職支援といった優遇措置を伴う場合が多く、次のステップへ踏み出すための有力な後押しとなり得ます。

日米のキャリア観の違いを考えてみると、その背景がより明確になります。米国では個々人が自らのキャリアプランを設計し、数年単位で目標を設定して職務を遂行するという意識が根付いています。キャリアは会社から与えられるものではなく、自ら築き上げるものという考え方が浸透しているのです。

一方、日本の従来型の雇用慣行の中では、会社主導のキャリアパスが一般的であり、個人が主体的にキャリアを設計するという意識は比較的希薄でした。しかし時代は変わり、日本においても自律的なキャリア形成の重要性が叫ばれるようになっています。

この文脈で早期退職を捉え直すと、それは単なる「退職」ではなく、自らのキャリアを再構築するための「卒業」や「新たな挑戦の始まり」と位置づけることができます。

もちろん経済的な不安や再就職への懸念など、考慮すべきリスクは少なくありません。しかし変化の激しい時代において、旧来の価値観に固執し、組織にしがみつくこと自体がリスクとなり得ることも事実です。

重要なのは、早期退職という選択肢を冷静に評価し、自身のキャリアにとってプラスとなるかどうかを主体的に判断することです。そのためには社内での評価だけでなく、社外の労働市場における自身の価値を客観的に把握し、常に複数の選択肢を持てるよう準備しておく姿勢が求められます。

企業が早期退職制度を導入する目的

企業が早期退職制度を導入する目的もまた、時代とともに多様化し、より戦略的な意味合いを帯びるようになっています。

かつては赤字企業の最終手段というイメージが強かった早期退職ですが、近年では業績が好調な黒字企業であっても、将来を見据えた組織改革の一環として積極的に活用するケースが増加しています。その背景には、単なる目先の人件費削減にとどまらない、複合的な経営課題が存在します。

現代の企業経営において、事業環境の変化に対応するための組織の若返りや新陳代謝の促進は、持続的な成長のために不可欠です。勤続年数が長い従業員が上位の役職を占めることで、組織構造が硬直化し、若手社員の活躍の機会が失われることがあります。

早期退職制度は、ベテラン社員に新たなキャリアの選択肢を提供しつつ、空いたポジションに若手を登用することで、組織全体の活性化を図るというポジティブな目的で運用されるのです。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や新規事業の創出といった経営戦略上の要請から、既存の人材ポートフォリオを見直し、新たなスキルを持つ人材を外部から獲得するための人材再配置の手段としても活用されています。

新卒における早期退職の原因

早期退職の背景には、新卒社員と中途採用者とで、異なる原因と課題が存在します。これらの違いを正確に理解することは、企業が効果的な定着支援策を講じる上で不可欠であり、また、転職を考える個人が次の職場で成功するための重要な知見ともなります。

中途採用者については前述したとおりの一方で、新卒社員の早期離職に最も大きく影響するのが「リアリティ・ショック」だと尾形真実哉氏は言います。これは、入社前に抱いていた会社や仕事に対する理想と、入社後に直面する現実との間に生じるギャップを指します。

採用活動において企業が良い側面ばかりを強調し、仕事の厳しさや困難な部分を十分に伝えないことが、このショックを増大させる一因となります。
永島:そうなんです。だから、新入社員の早期離職は受け入れ側の問題がほとんどです。早期退職が多いと、みなさんよく採用プロセスを変えていこうとするんですよね。採用の課題として扱う。

でも、それは入社した側の問題ではなく、受け入れた側の問題です。受け入れた側が、採用プロセスで話しているような未来の話をちゃんと理解しているのかどうかが一番の問題なんだと思います。また、面接における評定書の内容が受け入れ部署に共有されているかどうかも確認が必要です。(中略)

永島:やはり組織を運営しているメンバーは、基本的には目の前の組織のことで手いっぱいです。

一方で、最近は部門別で新卒採用を実施したり、採用プロセスの初期段階に部門を巻き込む会社も増えてきました。これは、スタートアップだけではなく、大手企業にもその傾向が現れてきています。とても良い方向だと思っています。実際、採用は未来の組織づくりですから、関わってみるととても楽しいということなんだと思っています。

引用:新入社員の早期離職は、ほぼ「受け入れ側の問題」 元ニトリ人事責任者が語る、採用プロセスの見直しよりも重要なこと(ログミーBusiness)

入社直後に現実を突きつけられる「遭遇型」のリアリティ・ショックに加え、より注意が必要なのが、仕事に慣れてくる2年目に生じやすい「擦り合わせ型」のリアリティ・ショックです。

1年目は目の前の業務をこなすのに必死で周りが見えませんが、2年目になると心理的な余裕が生まれ、自分の適性や会社の将来性について冷静に考え直すようになります。この時期に、理想と現実のズレを乗り越えられないと、3年目以降の離職につながりやすくなります。

多くの日本企業が1年目の研修には力を入れるものの、2年目以降のフォローが手薄になる傾向があり、この「2年目の憂鬱」への対策が大きな課題となっています。

中途社員から早期退職が起きる原因

企業が早期退職制度によって組織の新陳代謝を図る一方で、新たな人材を新卒採用や中途採用によって確保しようとするのは自然な流れです。しかし、中途採用においては「採用ミスマッチによる早期離職」という、根深く、そして深刻な問題が潜んでいます。

スキルや経験豊富なハイスキル人材の獲得に躍起になる企業は少なくありませんが、せっかく採用できたとしても、採用した人材が期待どおりのパフォーマンスを発揮できず、短期間で離職してしまうケースは後を絶ちません。

この問題の根源をたどると、採用された個人の能力や適性だけでなく、むしろ受け入れ側である企業の問題が大きく影響していることが明らかになります。

日本企業、特に歴史の長い大手企業では、新卒一括採用を前提とした組織文化や人材育成システムが長年にわたり形成されてきました。その結果、新入社員に対するオンボーディングは手厚く行われる一方で、社会人経験を持つ中途採用者に対しては、十分なサポート体制が整っていないことも少なくありません。

そこには「中途採用者は即戦力であり、社会人としての経験があるのだから、特別なサポートは不要だろう」という無意識の思い込みが存在すると、『組織になじませる力 ~ オンボーディングが新卒・中途の離職を防ぐ』著者の尾形真実哉氏は語ります。

しかし、これは大きな誤解です。どんなに優れたスキルを持つ人材であっても、新しい組織の文化、暗黙のルール、仕事の進め方、そして何より人間関係といった、形式知化されていない情報に適応するには時間とサポートが必要になります。

この受け入れ側の問題は、中途採用者が感じる疎外感やパフォーマンス不全の直接的な原因となります。周囲の社員は「お手並み拝見」といった態度で様子見をし、本人は「歓迎されていないのではないか」と感じてしまいます。結果として、本来持っている能力を発揮できないまま孤立し、早期離職へとつながっていくのです。

では、この深刻なミスマッチをどうすれば減らすことができるのでしょうか。有効な手法として、以下の3つのアプローチが挙げられると、株式会社みらいワークス 事業企画部 リーダー岩田央子氏は語ります。

1. ビジョンの事前共有型
経営層自らが、事業の将来性や候補者に期待する役割について熱意をもって語り、会社の目指すものへの共感を促します。

2. 現場体感型
選考段階から配属先の社員と交流する機会を設け、良い面も悪い面も含めた現場の「生の声」に触れてもらいます。

3. 実務を通じたすり合わせ型
業務委託契約などで一定期間「お試し稼働」してもらい、実務を通じて上長やチームとの相性、求められる役割や裁量などを具体的にすり合わせます。

これらの中でも、特に入社後のミスマッチを効果的に防ぐのが「実務を通じたすり合わせ型」です。ハイスキル人材にとって重要なのは、単にスキルを持っていること以上に、そのスキルを最大限に活かせる環境があり、周囲と円滑なコミュニケーションを取れるかどうかということが少なくありません。

実際に共に働くことでしかわからない価値観や、仕事の進め方のズレを事前に調整するこのプロセスは、企業と個人の双方にとって、不幸なミスマッチを避けるための最も確実な方法と言えるでしょう。

早期退職を考え、次のキャリアに踏み出す際には、このような「すり合わせ」の機会を積極的に求め、納得のいくまで対話を重ねることが、後悔のない選択につながるのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!