お知らせ
お知らせ
CLOSE

説明が上手い人(全1記事)

説明が上手い人と下手な人の違いとは? 今日からできる、わかりやすく伝えるためのトレーニング [1/2]

【3行要約】
・説明が上手くできない人は、自分が話したい情報を並べるだけで、聞き手の視点が抜け落ちがちです。
・説明とは聞き手の「状態」を変化させることが目的であり、そのためにも相手の現在地とゴールを正確に把握する必要があります。
・ピラミッド構造で思考を整理し、数学的な話し方で「正しそうに伝える」スキルを磨くことが、説得力のあるコミュニケーションへのカギとなります。

なぜ「何が言いたいのかわからない」と言われてしまうのか?

「結局、何が言いたいの?」。会議での報告や上司への相談の際に、このように言われてしまい、言葉に詰まってしまった経験はないでしょうか。

一生懸命に伝えようとしているにもかかわらず、相手に意図が届かないのは非常にもどかしいものです。こうした状況に陥る人には、ある特徴があると「しごおもTV」の豊間根青地氏は言います。それは、説明の焦点を「何を伝えるか」という自分自身の行動に置きすぎている点です。

例えば、部長にプロジェクトの進捗を報告する際、「指摘された部分を修正して、来週の会議に向けて準備を進めているので、一度目を通していただきたい」といったように、自分がやったことや、これからやってほしいことを時系列で話してしまうケースが典型です。しかし聞き手である部長が知りたいのは、その一連の事実ではなく、「プロジェクトは順調なのか、問題は起きていないか」という結論です。

説明がわかりにくいと言われる人は、この聞き手の視点が抜け落ち、自分が話したい情報の断片を並べてしまう傾向にあります。

説明の本質は、言葉を発すること自体にあるのではありません。その目的は、聞き手の「状態」を変化させることにあります。

例えば、プロジェクトの状況を心配している部長が、「このまま任せても大丈夫そうだ」と安心できる状態に導くことこそが、報告のゴールです。この目的を達成するためであれば、極論、言葉による詳細な説明は必須ではないかもしれません。つまり、説明はあくまで相手の状態を変化させるための「手段」に過ぎないのです。

この「状態」という目に見えない要素に着目することが、わかりやすい説明への第1歩となります。

説明が上手な人は、常に「誰に、どのような状態になってほしいのか」を起点に思考を組み立てています。相手が今どのような状態にあり、どこまで伝えればゴールとする状態に変化するのかを逆算し、そのために必要な言葉を最適なかたちで選択し、整理しているのです。

説明が上手い人はどのように話す内容をイメージしているか

説明が上手い人は、話す内容を頭の中でどのようにイメージしているのでしょうか。その思考プロセスを理解するための1つの比喩として、豊間根氏は「山登り」という表見を使っています。

説明とは、聞き手という登山者を、ある現在地から、目的の頂上という高みまで連れて行く行為に他なりません。この比喩が重要なのは、成功する登山(=説明)には、登山者の現在地と目指すべきゴールの両方を正確に把握することが不可欠だからです。もし登山者の現在地を見誤れば、コミュニケーションは成立しません。

例えば、相手が「カーボンニュートラル」という言葉の意味すら知らない麓にいるのに、いきなり「CO2を具体的に何キロ削減します」という山頂付近の話を始めても、「いったい何の話ですか?」と戸惑わせてしまうだけです。

逆に、相手がすでにある程度の知識を持っており、具体的な話を聞きたいと思っている中腹にいるのに、麓からの道のりを延々と説明し始めれば、「その話はもうわかったから、早く先へ進んでほしい」と苛立たせてしまうでしょう。

同様に、目指すべきゴールを間違えても、説明はわかりにくいものになります。

例えば、あるサービスの概要を知りたいという目的でセミナーに参加している相手に対して、料金プランのあまりにも細かい話を延々と続ければ、「そこまで詳しい情報は求めていない」と感じさせてしまいます。

逆に、サービスの導入を検討している相手に、コンセプトや概要ばかりを話していては、「導入に必要なスケジュールや費用がわからないと判断できない」という不満を抱かせることになります。

このように、聞き手の現在地とゴールを正しく設定し、その間にある「理解に必要なポイント」を一つひとつ順番にクリアしていくように組み立てることが、上手い説明のカギを握るのです。
豊間根:まず「説明する時にどういうイメージを持っているか?」なんですけども、僕は説明というのは山登りだと思っています。山登りは好きですか?(中略)

どういうことかというと、要は、人がある場所にいて、「よいしょ、よいしょ」と(山を)登っていって、ある高みまで連れて行く。この行為が説明なんですね。なぜこの概念が大事かというと、「そもそも、まずこの人がどこにいるのか」「どこまで連れていきたいのか」によって、説明の仕方ってぜんぜん変わるんですね。(中略)

だから「今、相手がどこにいて、どこまで連れて行きたいか」をちゃんと明確にして、それをちゃんと理解に必要な間のポイントを(リストにして)、潰す要素を順番に説明していくことを意識すると、けっこうわかりやすくなります。

引用:言いたいことが伝わる「山登り」メソッド 説明上手は“現在地とゴール”の整理ができている (ログミーBusiness)

説明のための思考を整理するフレームワーク

相手の現在地とゴールを明確に定義したとしても、伝えるべき内容そのものが整理されていなければ、説明は明確に伝わりません。そこで有効となるのが、コンサルティングファームなどで徹底的に叩き込まれる思考のフレームワーク「ピラミッドストラクチャー」です。

これは、ピラミッドをイメージし、最も伝えたいメインメッセージを頂点に置き、それを支える複数の根拠や情報を、その下に階層構造で配置していく思考整理術です。この構造を用いることで、話の論理性が担保され、聞き手はメッセージを明確に理解できるようになります。

このフレームワークは、プレゼンテーションやスピーチといった特別な場面だけでなく、日々のメール作成や議事録、さらには口頭での報告など、あらゆるビジネスコミュニケーションにおいて応用できる、いわば思考のOS(オペレーティングシステム)のようなものです。この共通の思考OSを組織内で共有することで、コミュニケーションは飛躍的に円滑になります。

ピラミッドストラクチャーを構築する上で、基本的な作法がいくつか存在します。まず、ピラミッドの頂点に置くのは、最も伝えたい「結論」です。そして、その結論を下支えする根拠は、必ず2つ以上に分解されている必要があります。

なぜなら根拠が1つしかない場合、それは実質的に頂点のメッセージと同じことを別の言葉で繰り返しているに過ぎず、論理的な補強になっていないからです。

例えば、「この施策は実行すべきです。なぜなら、やるべきだからです」という説明には何の意味もありません。複数の独立した根拠を提示することで、初めて主張は説得力を持ちます。

このような、1つの根拠しかなく、きちんと分解ができていない状態を、マッキンゼーでは「マトリョーシカ現象」と呼んでいたと元マッキンゼーで現在はMELIUS事業責任者を務める田中直道氏は語ります。マトリョーシカ現象とは、主張を掘り下げても同じ主張がかたちを変えて出てくるだけで、中身がない状況を指します。これを避けるためにも、根拠は必ず複数に分解することを意識しなくてはなりません。

このフレームワークは、あくまで相手に物事をわかりやすく伝えるための「手段」であり、目的そのものではありません。最終的なゴールは、相手に明確なメッセージを届けることです。

例えば、「ロンドン出張の件ですが、ホテルを探したのですが予約が取れず、大きなイベントがあるためどこも空いていない状況でして……」と、行動のプロセスをボトムアップ式にだらだらと話すのは、明確でないメッセージの典型です。このような説明だと、聞き手は、結局何が言いたいのかを自分で読み解く負担を強いられます。

一方でピラミッドストラクチャーを意識すれば、「ロンドン出張は火曜朝のフライトでお願いします」という結論を最初に伝え、その根拠として「①その日程なら会議に問題なく出席できる」「②ホテルも確保済みである」「③前日の月曜は結婚記念日なのでご家族と過ごせる」といった要素を補足する、という構造的な説明が可能になります。

このように思考を整理する訓練を繰り返すことで、より明確で効率的なコミュニケーションが実現できるようになるでしょう。

わかりやすい説明のために知っておきたいコミュニケーションの基本作法

思考を構造化するピラミッドストラクチャーと並行して意識したいのが、「しごおもTV」の豊間根青地氏が紹介する「QAR」というフレームワークです。これは、「Question(問い)」「Answer(答え)」「Reason(根拠)」の3つの要素を1セットとしてコミュニケーションを組み立てる手法です。この作法を実践することで、話の意図が明確になり、説得力のある伝え方が可能になります。

「Q(Question)」は、「これから何の話をするのか」という問いを宣言するステップです。これは、いわば発言に「見出し」をつける行為に相当します。

「ご相談です」「ご報告です」「ご質問です」といったように、話の目的を最初に示すことで、聞き手は心の準備ができます。「報告なら情報を受け取ればいい」「質問なら答えを考えなければいけない」といったように、聞くスタンスが定まるため、その後の内容がスムーズに頭に入ってくるのです。

最も重要なのが、2つ目の「A(Answer)」、つまり「何が言いたいのか」を明確にすることです。これは単に返答するという意味合いを超えて、「自分のスタンスを取る」という心構えそのものを指します。

ビジネスシーンでは、質問に対して明確に答えず、周辺情報ばかりを話してしまう人が少なくありません。例えば「例の件、順調?」と聞かれて、「田中さんへの連絡は済み、資料も30ページ中20ページまでできていて……」と事実の羅列に終始してしまうケースです。これは「順調です」と言い切った後に「なぜそう言えるのか」と追及されることを恐れ、判断を相手に委ねてしまっている状態、つまり「逃げ」の姿勢です。

わかりにくい説明の根本原因は、このスタンスの欠如にあります。自分が何を言いたいのか、自分はどう思うのかという軸がなければ、情報をどのように組み立てればよいかわかるはずがありません。

逆に、1本の明確な軸さえあれば、たとえ伝え方が多少拙くても、その熱意や意図は相手に伝わるものです。

最後の「R(Reason)」は、そのスタンスを支える「根拠」を示すステップです。「この施策はやったほうがいいと思います」という答えだけでは、スタンスではなく単なる当てずっぽうです。「なぜなら、過去のA社とB社の事例で成功しているからです」といったように、自分なりの仮説と根拠をセットで示すことで、初めて答えは説得力を持ちます。

経験の浅い新入社員であっても、Googleで検索したりAIに尋ねたりすることで、ある程度の根拠を見つけることは可能です。重要なのは、当てずっぽうで意見を言うのではなく、自分なりの根拠を持ってスタンスを取るという意識です。

この「QAR」という思考の型は、単なるコミュニケーション術に留まりません。それは、仕事に対する当事者意識や、自分で決断するというマインドセット、いわば仕事観そのものと深く結びついています。

このフレームワークを意識的に実践し続けることが、わかりやすいコミュニケーション能力を習得するための確実な1歩となるのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: 説明が上手な人が巧みに扱う「導入」の技術

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!