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説明が上手い人(全1記事)

説明が上手い人と下手な人の違いとは? 今日からできる、わかりやすく伝えるためのトレーニング [2/2]

説明が上手な人が巧みに扱う「導入」の技術

説明が上手な人は、本題に入る前の「導入」の設計が非常に巧みです。多くのビジネス書では「結論から話せ」と説かれていますが、真に優れたコミュニケーターは、その結論(主張)を述べる前に、定義」のステップを踏んでいると、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏は語ります。

話の冒頭で適切な「定義」を行うことで、聞き手との間に共通の土台を築き、その後の議論を円滑に進めることができます。

この導入の巧拙が、説明全体の成否を分けると言っても過言ではありません。ビジネスコミュニケーションを100メートル走に例えるなら、導入はスタートダッシュそのものです。スタートでつまずいてしまえば、その遅れを取り戻すのは極めて困難でしょう。だからこそ主張を始める前に、まず「定義」という準備運動を丁寧に行うことが重要なのです。

では、導入において具体的に何を定義すればよいのでしょうか。それは大きく分けて2つの要素があります。1つは「言葉の定義」です。ビジネスシーンで使われる言葉は、時に多義的であり、人によって解釈が異なる場合があります。

例えば、「生産性」という言葉を会議で使う際、ある人は「売上 ÷ 従業員数」をイメージし、別の人は「労働時間あたりの成果物」をイメージしているかもしれません。このような認識のズレを放置したまま議論を進めても、話が噛み合うはずがありません。したがって、話の冒頭で「本日の議論における『生産性』とは、『売上 ÷ 広告費』と定義します」といったように、主要なキーワードの意味を明確に共有しておく必要があります。

これにより、参加者全員が同じ辞書を持って会話に臨むことができ、無用な誤解や混乱を避けることができます。

もう1つは「場の定義」です。これは、「目的」「時間」「前提」を明確にすることを指します。まず、「この会議の目的は、来期の販売戦略を決定することです」というように、その場が何のために設けられているのかを最初に宣言します。これにより、参加者は議論のゴールを共有し、そこに向かって集中することができます。

次に、「今から5分ほどお時間をいただきます」と時間を定義することも有効です。これを言わずに話し始めると、聞き手は「この話はいつ終わるのだろう」という不安を抱き、内容に集中できません。しかし、あらかじめ所要時間を伝えることで、聞き手はその時間内で話を聞くという心構えができ、安心して耳を傾けることができます。

最後に、「前提」の共有も重要です。場の前提を定義することによって、聴衆はリラックスし、身構えることなく話を聞く態勢を整えることができます。

このように、言葉と場を巧みに定義することで、聞き手の中に「どういうつもりで話を聞けばいいのか」という受け皿を作り出すこと。それが、説明上手な人が実践している導入の技術なのです。

説明が上手い人が行う「自分ごと」化させる言葉選び

論理的な構造を組み立て、導入で聞き手との前提を共有したとしても、それだけでは相手の心を動かすには不十分です。聞き手が「それは自分に関係のある話だ」と、いわゆる「自分ごと」として捉えてくれなければ、行動変容を促すことはできません。この「自分ごと化」を促すカギとなるのが、言葉の選び方、すなわち「言い換え」の視点だと、株式会社MASH 代表取締役社長の染谷昌利氏は言います。

私たちは発信する際、無意識のうちに書き手・伝え手としての視点に偏りがちです。しかし、聞いている側はその話を「他人ごと」として捉えています。この隔たりを埋め、相手の心に響かせるためには、徹底して相手の立場に立った言葉を選ぶ訓練が必要になります。
僕ら発信者は、書き手・伝え手という、こっち(相手から見ると反対)の目線なんですよ。聞いているほうは、他人ごとなんです。それを自分ごとに変えていくことによって、また自分の中の印象が大きく変わってきます。

読んでくれた人、聞いてくれた人が、「自分のことだ」と思ってくれると、行動に大きく差が出てきます。(中略)

みなさんに送っている文章は、「今日、このセミナーを聞くことでみなさんはライティングの重要性を肌感覚で理解できるでしょう」と。僕ではなく、みなさんの気持ちになって書いているんですよ。違いはなんとなくわかりますか? 一方的に言われているのと、「理解できるかもしれない」という自分ごとになっている感覚です。

引用:わかりやすい説明ができる人の“言い換え”の視点 相手が自分ごと化してくれる言葉選びのポイント(ログミーBusiness)

また、相手がどの程度の知識や関心を持っているかに合わせて言葉を選ぶことも重要です。専門家同士であれば専門用語で話すのが最も効率的ですが、初心者に同じ言葉を使っても伝わりません。相手が初心者であればあるほど、手を変え品を変え、具体的な事例を交えながら丁寧に説明する必要があります。

抽象的な言葉は聞き手の解釈に委ねられる部分が大きく、誤解を生むリスクがあります。例えば「おいしい」という言葉も、人によって捉え方が異なります。これを「肉汁があふれ出すジューシーな食感で、スパイスの香りが鼻に抜ける」のように具体的に表現することで、聞き手はより鮮明なイメージを共有できます。

このように、相手に合わせて抽象と具体のレベルを自在に行き来できる能力、すなわち語彙の強弱をつけるスキルこそが、会話力や文章力を伸ばす秘訣なのです。

説明を簡潔にまとめるためのトレーニング

わかりやすい説明、説明が上手い人の要諦は、簡潔さにもあります。しかし、特に説明慣れしていない人が頭の中にある複雑な思考を言葉にしようとしても、なかなかシンプルにまとまらないものです。そこで有効なのが、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏が紹介する「1言・1行・1分」という思考トレーニングです。

これは、伝えたい内容を「1言で言うと何か?」「1行のタイトルをつけるとしたら何か?」「1分で説明するとしたら、どのような構成になるか?」という3つのステップで強制的に要約していく訓練です。このプロセスを経ることで、思考の核となる部分が明確になり、話の骨子がクリアになります。

あるプレゼンテーションを準備すると想定して、このフレームワークを適用してみましょう。「1言で言うと、これは『新しい伝え方』に関する話です」「1行で表現するなら、『数学的な話し方』というテーマです」「1分で説明すると、①導入での定義、②論理的な解説、③具体例の3つの要素で構成されます」といった具合です。

このトレーニングを実践すると、実際に話す際にもその構造を活かすことができます。まず「1言で言うと……」と最も重要なキーワードを提示し、次に「もう少し詳しく言うと……」と1行で表現したタイトルで全体像を示し、最後に「具体的には3つのポイントがありまして……」と1分でまとめた構成を解説する。このように、抽象的な概念から徐々に具体的な内容へと掘り下げていくことで、聞き手は混乱することなく、スムーズに話を理解することができます。


この「3つ」という数字も重要なポイントです。営業やマーケティングの世界では、「顧客に届くメッセージは3つまで」と言われています。人は3つまでの要素なら比較的容易に記憶できますが、4つ以上になると「たくさん」という1つの塊として認識してしまい、個々の内容が頭に残らないのです。

したがって、1分で話す内容を3つの要素に絞り込むという訓練は、メッセージを相手の記憶に定着させる上でも非常に効果的です。

この「1言・1行・1分」というシンプルなルールを、日々のコミュニケーションの中で意識的に実践してみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、繰り返すうちに思考の瞬発力が鍛えられ、どんな複雑なテーマでも要領よく、かつわかりやすく説明できる能力が身についていくはずです。

「正しそうに伝える」スキル

これまで、わかりやすい説明のためのさまざまなフレームワークやテクニックについて解説してきました。しかし、これらのスキルを駆使する上で、根底に持っておくべき重要な心構えがあります。それは、私たちが対峙するビジネスの世界には、数学の証明問題のような「絶対的な正解」は存在しないという認識です。

新しい事業を始めるべきか、どのマーケティング施策が最も効果的かといった問いに対して、100%の確信を持って「これが正しい」と言い切れる答えはほとんどありません。市場環境は常に変動し、不確実な要素が複雑に絡み合っているからです。

では、このような正解のない世界で、私たちビジネスパーソンに求められる能力とはいったい何でしょうか。それは「正しいこと」を証明する能力ではなく、「いかに正しそうに伝えられるか」というスキルだと深沢氏は語ります。

この「正しそうに伝える」技術の根幹をなすのが、「数学的な話し方」です。数学と聞くと苦手意識を持つ方も多いかもしれませんが、ここで言う数学とは、複雑な計算式のことではありません。数学が持つ2つの本質的な特徴、「正しいことを証明する技術」と「『わかる』がゴールの学問」というエッセンスを、ビジネスコミュニケーションに応用しようという考え方です。

数学の証明プロセスのように、明確な定義から始め、論理的な飛躍なく主張と根拠を積み重ねていく話し方は、聞き手に「なるほど、その説明は筋が通っているな」「確かにそうかもしれない」という納得感を与えます。絶対的な正解がないからこそ、論理の力で「正しそうだ」と思わせる説得力が重要になるのです。
深沢:私たちが生きているこの世界、ビジネスシーンとかって、正しいものってないと思うんです。(中略)

だから「正しいこと」ってないんじゃないかと。だとすると、私たちビジネスパーソンに求められるものは、「いかに正しそうに伝えられるか」だと思うんですよね。(中略)

「じゃあ正しそうに伝えるために、応用できるもの、借りれるものって何かな?」というものの答えが数学。(中略)

もう1つは、「わかる」を相手に提供できるということですよね。数学は「わかる」がゴールの学問だから、そのエッセンスを使うと、相手に「ああ、なるほどね。確かにそうかもね」と思っていただけると。これは私たちビジネスパーソンにとってもメリットがありますよね。

引用:説明で相手に「確かにそうかもね」と思わせる人の共通点 正解のないビジネスで必要な「正しそうに伝える」スキル(ログミーBusiness)

このスキルは、2つの大きなメリットをもたらします。1つは、チームや組織におけるコミュニケーションを円滑にすることです。論理的でわかりやすい説明は、相手を苛立たせることなく、スムーズな意思疎通を可能にします。

もう1つは、自分自身の思考が整理され、スタンスが明確になることです。ピラミッドストラクチャーのような構造で話そうとすると、必然的に「自分は何を伝えたいのか」を深く考えることになります。その結果、思考がクリアになり、自分の意見に自信を持つことができます。

説明を上手くするために身につけるスキルの数々とは、単なる伝達技術ではなく、思考力そのものを鍛える営みなのです。正解のない荒波の中を進むビジネスにおいて、論理という羅針盤を手にし、「正しそうに伝える」能力を磨き続けることこそが、私たちを目的地へと導いてくれるでしょう。

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