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ワークライフバランス(全1記事)

ワークライフバランスの本質とは? デンマーク・フランスの事例に学ぶ実践法 [2/2]

「休まないのは悪いこと」と考えるフランスの休暇文化

「休むこと」に対する価値観をさらに深めるために、フランスの事例も見てみましょう。フランス在住で、『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』の著者である髙崎順子氏によると、フランスでは休暇は単なるリフレッシュの機会ではなく、労働者の基本的な権利であり、人間の尊厳に関わる重要な要素として社会に根付いていると言います。

また、フランス社会において、年次有給休暇の取得は「賃金」と同格に扱われます。つまり、定められた有給休暇を消化できない、あるいはさせない状況は、給料の不払いと同様の「契約不履行」と見なされるのです。

この背景には、「人間は機械ではないのだから、休まなければ疲弊し、壊れてしまう」という強い認識があります。

この考え方は「休みは良いこと」というレベルにとどまりません。むしろ、「休まないのは悪いこと」という発想が浸透しています。休暇を取ることは、働く人の心身の健康を維持するために不可欠であり、業務管理における重要なタスクの1つとして位置づけられているのです。

これらの理念を象徴するのが、法律で定められた休暇制度です。フランスでは、雇用主は労働者に年間5週間の年次休暇を取得させる義務があり、そのうち最低1回は2週間連続で取得させなければなりません。

驚くべきことに、フランスもかつては「休めない国」でした。1936年に初めて2週間の長期休暇制度が導入された当初は、「休んでいる間にクビにされるのではないか」と疑い、休暇を取ろうとしない労働者もいたといいます。

しかし、政府が「休暇は人間の尊厳である」という理念を掲げ、鉄道運賃の補助や安価な宿泊施設の整備といった具体的な施策を通じて休暇の取得を後押しした結果、バカンス文化は国民の間に定着していきました。

現在では、休める働き方ができない職場は「ブラック」と見なされ、人が集まらなくなり、人手不足が深刻化します。つまり、「休める働き方」を整備しなければ、産業そのものが維持できないという構造になっているのです。

このことは、日本の企業が人材確保と定着に苦慮する現代において、非常に重要な示唆を与えてくれるでしょう。

忙しいから休めないのではなく、「忙しいから休む」

「忙しくて休む暇がない」というのは、多くのビジネスパーソンが口にする言葉です。日々のタスクに追われ、残業や休日出勤が常態化し、休むことに罪悪感すら覚えてしまう。しかし、世界で活躍する一流のプロフェッショナルたちは、まったく逆の発想をします。彼らは「忙しいからこそ、休む」のだと、株式会社クロスリバー 代表取締役社長の越川慎司氏は語ります。

この考え方の違いはどこから来るのでしょうか。一般的に私たちは、「忙しい」という状態を、こなすべき仕事が多いことだと捉えます。しかし一流の人々は、「忙しい」という状態を「仕事をうまく回せていない証拠」だと考えます。

目の前のタスクを次から次へと場当たり的に片付けているだけでは、根本的な問題は解決せず、永遠に「残業沼」から抜け出すことはできません。だからこそ、彼らはあえて1度立ち止まり、休息を取るのです。その時間を使って、心身を整え、現状を客観的に分析し、より効率的に成果を出すための「仕組み化」や「再現性のある方法」を考えます。

休みは単なるサボりではなく、より大きな成果を生み出すための戦略的な時間なのです。
僕は仕事のために仕事をしていて、仕事のために休んでいたから、仕事が中心だったなと。僕はファーストネームがシンジっていうんですけど、彼が「シンジ、お前は野球のルールを知っているか」と。

「野球はスリーアウトで交代だぞ。でもお前は土日も仕事しているよな。要はフォーアウト、ファイブアウトまで仕事をしているんだ。それはズルイぞ。限られたルールの中で成果を残すゲームなんだから、土日に仕事なんかやめろ」と言われたことが、今でも忘れられません。

そこから僕は休日に仕事をするのをやめて、短い時間で成果を残すという効果と効率アップを目指す、ルー語で言うとモア・ウィズ・レス(More with Less)という働き方を考えたんです。

引用:残業沼にはまって土日も働く二流・三流 世界の一流との「休み方」の違い(ログミーBusiness)

この「モア・ウィズ・レス(More with Less)」、つまり「より少ない時間で、より多くの成果を出す」という考え方は、現代の働き方の核心をついています。そしてこの思想は、「ワーク・イン・ザ・ライフ」という概念にもつながります。

これは、仕事と生活を対立するものとしてバランスを取る(ワーク・ライフ・バランス)のではなく、人生(ライフ)という大きな器の中に仕事(ワーク)があると捉える考え方です。

仕事に力を入れるとプライベートがおろそかになる、というトレードオフの関係ではなく、両方を高め合うことを目指します。充実した休みが仕事の質を高め、質の高い仕事が人生を豊かにするのです。

また、休むタイミングも重要です。「疲れたから休む」では遅いのです。心身が疲弊してからでは回復に時間がかかり、パフォーマンスの低下も避けられません。一流の人々は「疲れる前に休む」ことを徹底しています。自分を守り、持続的に高い成果を出し続けるために、予防的に休息をスケジュールに組み込むのです。

もし今、あなたが忙しさに追われ、休むことをためらっているのであれば、発想を転換してみてください。その忙しさから抜け出すためにこそ、今、休息が必要なのかもしれません。

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