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プロダクトマネージャー(全1記事)

プロダクトマネージャーとは? 求められる役割・スキル、具体的な育成例を解説 [1/2]

【3行要約】
・プロダクトマネージャーは「プロダクトの価値に全面的に責任を負う」重要な役割です。
・優れたプロダクトマネージャーはコミュニケーションのハブとして機能し、技術を理解しながらも、意思決定の質を高めるために認知バイアスと常に戦っています。
・プロダクトマネージャーは組織の成長に合わせて役割を進化させ、失敗から学び、プロダクト開発への情熱を持ち続けることが、長期的な成功への鍵となります。

プロダクトマネジャーとは?

プロダクトマネージャーという職務の核心を突き詰めると、その責任は「プロダクトの価値に対して全面的に責任を負う」という1点に集約されます。これは単に機能リストを管理したり、開発スケジュールを遵守したりすることとは本質的に異なります。

プロダクトマネジャーの真の役割は、プロダクトが顧客にとってどのような価値を提供し、その結果としてビジネスにどう貢献するのかを定義し、実現し、そしてその成果のすべてを受け止めることにあります。

この責任の重さは、時にチームメンバー全員のキャリアを背負うほどです。例えば、10人のチームでプロダクトを開発する場合、プロダクトマネジャーは1人か2人という少数精鋭であることがほとんどです。

もしプロダクトマネジャーがプロダクトの価値を見誤り、市場に受け入れられないものを作ってしまえば、その開発に費やされたエンジニア5〜6人分の貴重な時間と労力、そして彼らのキャリアの一部が無駄になりかねません。

プロダクトがクローズされれば、そこで得られるはずだった経験や実績は失われます。したがって、プロダクトマネジャーの意思決定は、単なるプロダクトの成否だけでなく、共に働く仲間たちの未来にも深く関わっているのです。

この観点から、プロダクトマネージャーとプロジェクトマネージャーの違いがより鮮明になります。プロジェクトマネージャーがプロジェクトの成功、つまり計画どおりに品質、コスト、スケジュールを守って成果物を完成させることに責任を負うのに対し、プロダクトマネージャーはプロダクトの成功、つまりその成果物が市場で価値を生み出し、顧客に愛され、事業を成長させることに責任を負います。

たとえスケジュール通りに完璧な機能がリリースされたとしても、それが顧客の課題を解決せず、誰にも使われなければ、プロダクトとしては失敗です。プロダクトマネージャーは、その最終的な結果に対して言い訳なく向き合う覚悟が求められます。ゴールが間違っていれば、どれだけ効率的に、どれだけうまくチームを動かせたとしても意味がないのです。

この厳しい現実を直視し、プロダクトの価値を定義し、見つけ出し、そして実現するために全力を尽くすことこそ、プロダクトマネージャーの最も重要かつ根源的な責務と言えるでしょう。

プロダクトマネージャーの柔軟な役割の再定義

プロダクトマネージャーの役割や責任範囲は、決して固定的なものではなく、企業やプロダクトの成長フェーズ、そして組織構造によって大きく異なります。特にプロダクトの規模が拡大し、組織が専門分化していく過程で、プロダクトマネージャーの役割を再定義し、他の職種との連携を最適化することが求められます。

その中でも特に重要なのが、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)との関係性です。

プロダクトマネージャーとプロダクトマーケティングマネージャーの役割が明確に分かれている組織では、両者がセットで動くことで、プロダクト開発と市場展開の連携を強化しています。

このモデルでは、プロダクトマーケティングマネージャーがビジネスサイドのハブとして機能し、市場の要求や事業戦略をインプットします。具体的には、市場調査や競合分析に基づき「市場要求仕様(MRD)」を作成し、プロダクトが市場で成功するための戦略を描きます。

一方、プロダクトマネージャーは開発サイドのハブとなり、プロダクトマーケティングマネージャーから受け取った市場要求を具体的なプロダクトの仕様に落とし込みます。エンジニアやデザイナーと密に連携し、「製品要求仕様(PRD)」を作成して、どのようなUI/UXで顧客に価値を提供するのかを定義します。

この分業体制の利点は、それぞれの専門性を最大限に活かせる点にあります。プロダクトマーケティングマネージャーは「その価値をどういった手段や内容でお客さまに届けるのか」という市場へのアプローチに集中でき、プロダクトマネージャーは「その価値をより具現化して、どのようなUI/UXでお客さまに提供するのか」というプロダクトそのものの創造に集中できます。

両者は、プロダクトの価値や優先順位については共同で検討しつつ、それぞれの専門領域で責任を持つことで、より質の高いアウトプットを目指します。

ただし、この体制が機能するためには、プロダクトマネージャーとプロダクトマーケティングマネージャーの極めて密なコミュニケーションと、互いの役割に対する深い理解が不可欠です。

また、プロダクトの特性によっては、さらに特殊な役割分担が有効な場合もあります。例えば、他のプロダクト開発チームが利用する「社内プラットフォーム」を開発する場合、その「顧客」は社内のエンジニアチームとなります。このようなケースでは、顧客であるプロダクト開発チームのシステムを深く理解する必要があるため、技術的な知見が豊富なテックリードがプロダクトマネージャーのような役割として機能することが効果的です。

このように、プロダクトを取り巻く環境に応じて、プロダクトマネージャーの役割を柔軟に再設計していくことが、組織全体の生産性を最大化する鍵となるのです。

プロダクトマネージャーに必要なコミュニケーション術

プロダクトマネージャーは、組織内における情報の「ハブ」、すなわち連結点としての役割を担います。プロダクト開発は決して1人で完結するものではなく、経営層、エンジニア、デザイナー、マーケティング、セールス、そして顧客といった、多種多様な専門性や立場を持つ人々の力を結集させて初めて成り立ちます。

プロダクトマネージャーはこれらの人々をつなぎ、それぞれが持つ情報、期待、制約を調整し、プロダクトという1つの目標に向かって組織全体を動かしていく中心的な存在です。このハブ機能こそが、プロダクトマネージャーに高いコミュニケーションスキルが要求される根源的な理由です。

例えば、経営層が期待する事業目標と、開発チームが直面する技術的な現実との間には、しばしば大きな隔たりがあります。プロダクトマネージャーは両者の間に立ち、経営の言葉をエンジニアが理解できる要件に翻訳し、同時に技術的な制約や可能性を経営層が判断できるビジネスインパクトに翻訳する能力が求められます。

また顧客の代弁者として、ユーザーインタビューやデータ分析から得られたインサイトを開発チームに伝え、顧客が本当に求めているものは何かを明確に示さなければなりません。

広告やコンテンツのモデレーションチームとは、プロダクトの品質やブランドイメージを守るための基準を共有し、セールスチームとは、プロダクトの価値を市場に的確に伝えるための連携を図ります。

このように、プロダクトマネージャーは組織内のあらゆる情報が行き交う交差点であり、その流れを円滑にし、価値あるアウトプットへと導く調整役なのです。

このコミュニケーションにおいて最も困難な課題の1つが、まだこの世に存在しないものを説明することです。既存の製品の改善であれば、具体的な比較対象がありますが、革新的な新製品や新機能の場合、関係者全員が同じイメージを共有することは極めて難しくなります。
僕の中で一番感じたというか、ほかのポジションでもコミュニケーション能力はすごく必要ですが、特に技術系だと、技術の専門家じゃない人に技術的な話を説明しなければいけないというコミュニケーションスキルが必要です。

さらに、一段上というか、また違う難しさは、まだないユーザー体験を、今僕がみんなにiPhoneの話をして思い浮かんだ絵を、どうやって伝えるんだろうなということです。だからジョブズはすごいなと。プレゼンを聞いてワクワクするのは、たぶんコミュニケーション能力というかそういうスキルが高いんだろうなとは思いますし、すごく必要だなとは僕も感じましたね。

引用:“世の中に存在しないもの”をどう説明するのか あらゆるものをつなぐプロダクトマネージャーに必要なコミュニケーションスキル(ログミーBusiness)

この課題を乗り越えるため、優れたプロダクトマネージャーはさまざまな工夫を凝らします。ラフなスケッチや手書きのワイヤーフレーム、あるいは他社製品のUIなどを引き合いに出し、少しでも目に見えるかたちでイメージを共有しようと試みます。

また、単に仕様を伝えるだけでなく、「この機能が実現したら、ユーザーの生活はこんなにすばらしいものになる」というビジョンを情熱を持って語り、聞き手の心を動かし、ワクワクさせることが不可欠です。

言葉やドキュメントだけでは伝わらない熱量や世界観を共有し、チーム全体を巻き込んでいく力こそ、ハブとして機能するプロダクトマネージャーに求められるコミュニケーションスキルなのです。

プロダクトマネージャーとエンジニアの協業

プロダクトマネージャーとエンジニアリングチームとの連携は、プロダクト開発の成否を左右する最も重要な関係性の1つです。プロダクトマネージャーが技術的な背景を持つことは、連携を円滑に進める上で大きなアドバンテージとなり得ます。

しかし、必ずしもプログラミングスキルは必須というわけではないとイタンジ株式会社 執行役員の永嶋章弘氏、「yamory」プロダクトオーナーの鈴木康弘氏は語ります。より重要なのは、技術的な議論を理解し、エンジニアと対等な立場で対話し、相互の信頼に基づいた意思決定を下せる能力とのことです。

多くのビジネスサイド出身のプロダクトマネージャーが直面する課題は、開発工数の見積もりにおけるギャップです。軽い気持ちで依頼した機能開発に「3ヶ月かかります」と返答され、驚くといった事態は少なくありません。

このギャップを埋めるために、プロダクトマネージャーはプログラミングの構文を覚えるよりも、データベースの構造やSQLを理解することの方がはるかに有益です。どのようなデータが存在し、それをどう組み合わせれば何が実現できるのかという「勘所」を養うことで、実現可能性の判断精度が上がり、エンジニアとの会話も具体的かつ建設的になります。

また、プロダクトマネージャーはビジネス的な優先順位と技術的な投資のバランスをとるという難しい舵取りを担います。特に「リファクタリング」のような、ユーザーから直接見える機能改善にはつながらない技術的負債の返済は、その価値をビジネスサイドに説明するのが難しい課題です。しかし、これを放置すれば将来の開発速度を著しく低下させ、プロダクトの成長を阻害する要因となります。

優れたプロダクトマネージャーは、サービスが技術的にどのように動いているかを理解し、「ここを解消しなければ、将来的にこれだけの機会損失やリスクが生じる」という視点でエンジニアと目線を合わせ、ビジネス的な優先度と比較しながら総合的な判断を下すことができます。

最も重要なのは、プロダクトマネージャーがエンジニアの専門性を尊重し、その役割分担を明確にすることだとImgur社のMuts Inayama氏は語ります。

プロダクトマネージャーの役割は「What(何を)」と「Why(なぜ)」、つまり「どのような課題を解決するために、何を作るべきか」を定義することにあります。一方で、「How(どうやって)」、つまり具体的な実装方法や技術選定はエンジニアの領域です。プロダクトマネージャーが実装の詳細に過度に口を出すことは、エンジニアの自律性を損ない、信頼関係にひびを入れる原因となりかねません。

は、解決したい課題とその背景、そしてそれがユーザーやビジネスにもたらす価値を明確に伝えることにエネルギーを集中させ、その実現方法についてはエンジニアチームを信頼して任せる。この健全な関係性を築くことこそが、中長期的にプロダクトを成功に導く鍵となるのです。

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