お知らせ
お知らせ
CLOSE

チームビルディング(全1記事)

チームビルディングとは? 5つの成長段階から見る意味・各段階で実践したいことを紹介 [2/2]

なぜ「リーダーシップのない組織」は機能不全に陥るのか

このように、チームビルディングを考える上で、リーダーシップの役割は極めて重要です。しかし、多くの組織ではリーダーシップとマネジメントが混同され、結果として「リーダーシップのない、マネジメントだけの組織」が生まれてしまっています。

このような組織は、一見すると統制が取れているように見えますが、長期的には深刻な機能不全に陥る危険性をはらんでいます。

リーダーシップが欠如し、管理(マネジメント)のみが強調される組織では、さまざまな問題が顕在化します。

まず挙げられるのが、「指示待ち人間」の増加です。メンバーは自ら考えることをやめ、上からの指示がなければ動けない状態になります。これは、組織全体の硬直化を招き、変化への対応力を著しく低下させます。新しいアイデアや改善提案は生まれず、ただルーティンワークをこなすだけの集団となり、成長は完全に停止します。

また、コミュニケーションは必要最低限の報告・連絡に終始し、部門間やメンバー間の協働は失われます。それぞれのメンバーが自分の担当範囲に閉じこもり、組織全体としての相乗効果、すなわちシナジーはゼロに等しくなります。

このような環境は、メンバーの不安感を増大させます。明確な方向性が示されないまま、ただ管理されるだけの状況は、働く人々から仕事への誇りや一体感を奪い、信頼関係の欠如を招きます。最悪の場合、上意下達の力関係がハラスメントの温床となり、メンバーは萎縮して発言や行動が抑制され、組織の活力は完全に失われてしまうでしょう。

これに対し、リーダーシップのある「信頼関係」をベースにした組織では、まったく異なる現象が起こります。メンバーは互いを尊重し、絶対的な安心感を持って自らの能力を最大限に発揮できるようになります。

失敗を恐れずにチャレンジする文化が生まれ、そこから得られた学びを次に活かすPDCAサイクルが自律的に回るようになります。メンバーは自信を持って仕事に取り組み、自ら考え、能動的に動く組織へと変貌を遂げるのです。このような組織では、イノベーションが生まれやすくなり、生産性も飛躍的に向上します。

イベント「脳科学で導くあなたのチームビルディングに足りないもの~脳磨きが幸せな強いチームをつくる~」の参加者からは、リーダーシップのないマネジメントだけの組織について、以下のような意見が寄せられました。
みなさんに対する問いかけからスタートをさせてください。「チームビルディングって何でしょう?」ということに関して、2つの問いをご用意しております。ぜひみなさん、チャットでお答えいただければと思います。

まず1つ目は「リーダーシップのない、マネジメントだけの組織では、どのようなことが起こると思いますか?」。今日の1つのキーワードにもなります「リーダーシップ」。リーダーシップがあるマネジメント、リーダーシップがないマネジメントでは、どのようなことが組織で起こると思うでしょうか?

続々とチャットをいただいてますね。「組織が硬直して成長しない」「必要最低限の報告しかしなくなる」「協働ができない」「シナジーゼロ」「烏合の衆」。「烏合の衆」というワードは、なかなか言い得て妙だなと思いますね。「方向がわからず組織として機能しない」「指示待ち人間ばかりになってしまう」。

これもありますね、「現場・職場の全員が不安を抱えたまま仕事をすることになっちゃう」「仲間意識、一体感、チームメンバー間の信頼感の欠如」。(中略)

「ハラスメント、上意下達の関係性が生まれてしまう」「方向性がバラバラ」「萎縮してしまい発言・行動が抑制されてしまう」。なるほど。「ルーティーンを回してしまうだけの組織になる」。

引用:「指示待ち人間」「ハラスメント」が起きる組織はなぜ生まれる? 脳科学から考える、あなたのチームビルディングに足りないもの(ログミーBusiness)

リーダーシップとは、単に役職者が持つべきスキルではありません。それは、組織のビジョンを示し、メンバーを鼓舞し、信頼関係を構築することで、集合知性を引き出す力です。

このリーダーシップが組織の隅々まで浸透することで、初めてチームは単なる個人の集まりを超えた、強力な生命体として機能し始めるのです。

「心理的安全性=ゆるふわな仲良しチーム」ではない

近年、チームビルディングの文脈で「心理的安全性」という言葉が頻繁に使われるようになりました。これはチームのパフォーマンスを向上させるための重要な要素として認識されていますが、その本質はしばしば誤解されがちです。

多くの人が抱く「何を言っても許される、ゆるふわな仲良しチーム」といったイメージは、心理的安全性の本来の意味とは大きく異なります。

心理的安全性とは、組織やチームの中で、対人関係のリスク、すなわち「無知だと思われる」「無能だと思われる」「邪魔をしていると思われる」といった不安を感じることなく、自分の考えや意見を安心して発信できる状態を指します。

重要なのは、これが単なる「仲の良さ」や「居心地の良さ」を意味するのではないという点です。むしろ、チームの目標達成やより良い成果のために、建設的な意見の対立や健全な批判が歓迎される文化こそが、心理的安全性の本質です。

しかし、日本の多くの従来型組織、特にヒエラルキーが強い組織では、この心理的安全性を確保することが非常に困難です。上司が部下に指示を出し、部下はそれに従うという一方通行のコミュニケーションが常態化している環境では、「文句を言わずに言うことを聞け」という空気が支配的になりがちです。

このような文化に慣れ親しんだマネージャーにとって、部下から異論や反論が出ること自体が「都合が悪い」と感じられ、無意識のうちに心理的安全性を損なう言動を取ってしまうことがあります。

さらに重要なのは、心理的安全性はチームビルディングのゴールではなく、あくまで出発点、つまり「前提条件」に過ぎないという認識です。心理的安全性が確保されたからといって、すぐにハイパフォーマンスなチームが生まれるわけではありません。

それは「お互いに言いたいことを言えなくて、空気を読んで我慢している状態」、すなわちタックマンモデルにおける第1ステージ(フォーミング)を終わらせるためのものなのです。

心理的安全性が確立されて初めて、チームは次の第2ステージ(ストーミング)へと進むことができます。メンバーは「この相手になら、自分のアイデアを言っても大丈夫そうだ」と感じられるようになり、活発な意見交換や試行錯誤が始まります。このプロセスでは一時的にパフォーマンスが低下するように見えることもありますが、これこそがチームとして成長していくために不可欠なステップです。

つまり、心理的安全性とは、健全な衝突や対立を可能にするための土台であり、ぬるま湯のような環境を作ることではありません。目指すべきは、メンバーが互いにリスペクトを持ちながらも、チームやプロジェクト、そしてユーザー体験をより良くしていくという共通の目標に向かって、率直に意見をぶつけ合える、規律あるチームなのです。

リモートワーク環境におけるチームビルディングの課題と解決策

新型コロナウイルスのパンデミック以降、リモートワークは多くの企業で標準的な働き方となりました。この変化は、チームビルディングに新たな、そして深刻な課題を突きつけています。

オフィスという物理的な空間で自然に生まれていた雑談や非公式なコミュニケーションが激減し、チームの一体感や信頼関係を維持することが格段に難しくなったのです。リモート環境下では、従来のチームビルディング手法が通用しないケースも多く、意識的な工夫が求められます。

この課題に対する最も重要なアプローチは、「気持ち」ではなく「仕組み」で解決しようとすることです。メンバー個々人の「積極的にコミュニケーションを取ろう」という意志に頼るだけでは、限界があります。そうではなく、組織としてコミュニケーションが自然に発生し、信頼関係が構築されるような「仕組み」をデザインすることが不可欠です。

フルリモート環境でも実践可能なチームビルディングの仕組みには、さまざまなものがあります。例えば、プロジェクトの開始時に行う「キックオフ」では、単なる業務説明に終わらせず、チームが目指すべきマインドセットや価値観を共有する場とします。これにより、全員が同じ方向を向いてスタートを切ることができます。

また新しくメンバーが加わった際には「ポートフォリオ見あいっこ会」などを開催し、それぞれのスキルセットや経歴、大切にしていることを開示し合うことで、相互理解の第1歩を深めます。

日々のコミュニケーションにおいては、ITツールを戦略的に活用することがカギとなります。例えば、Slackなどのチャットツールでは、投稿に対して必ずなんらかのリアクション(スタンプなど)を返すというルールを設けることで、「投稿が無視される」という発信への心理的ハードルを下げることができます。

また、意図的に暖色系のスタンプを多用するなど、ツール全体の雰囲気をポジティブで発信しやすいものにデザインすることも有効です。

さらに、用事がなくても集まれるオンライン上の共同作業スペース(SlackのハドルやDiscordなど)を用意し、雑談やちょっとした相談が生まれる偶発性を担保することも重要になるでしょう。非同期のコミュニケーションを活性化させる仕組みも欠かせません。

こうした仕組みについて、Goodpatch Anywhereの五ヶ市壮央氏は次のように述べています。
私たちが特に意識しているのが、複数の文脈でコミュニケーションを取れる状態を作ることです。Slackで吐き出す、DiscordやSlackのハドルで集まる、ほかに360度フィードバックと1on1のようなかたちで関係性を変える。

「発信する情報の何を振り返るか」を変える。同じことを同じ場で言い続けるのはなかなか難しいと思いますが、その情報のやり取りをする文脈(コミュニケーションの文脈)を変えることで、さまざまな角度でそれぞれが個人の情報を吐き出す、対話をする、はたまた振り返りのためのアイデアを出していく。

私たちの取り組みは、いわゆる心理的安全の中でもゆるふわな仲良しではなく、チーム、プロジェクト、ユーザー体験をよくしていくことを目指しています。

引用:コミュニケーションの課題は気持ちではなく仕組みで解決する フルリモートでもできるチームビルディング(ログミーBusiness)

このように、同期・非同期、公式・非公式といった複数のコミュニケーションチャネルを意図的に設計し、組み合わせることで、リモートワークの壁を乗り越え、強くしなやかなチームを構築することが可能になるのです。

チームビルディングを停滞させる「フォーミング体質」

多くの組織がチームとして機能せず、成果を出せない根本的な原因の1つに、「フォーミング体質」と呼ぶべき文化的傾向があると、楽天グループ楽天大学学長の仲山進也氏は語ります。

これはタックマンモデルにおける第1ステージ(形成期)の状態に組織全体が留まってしまう現象を指し、チームの成長を著しく阻害します。

フォーミング体質とは、具体的には対立や摩擦を極端に恐れる文化のことです。この体質を持つ組織には、いくつかの特徴が見られます。例えば、「お互いに助け合わなくても各自のがんばりでこなせる仕事量である」という状況は、一見すると効率的に見えますが、メンバー間の意見のすり合わせや協働の必要性をなくし、チーム化を阻みます。

また、他人をコントロールしやすいヒエラルキーや同調圧力を好み、自分と意見の違う相手を対話することなく「敵」と見なす傾向も顕著です。

このようなフォーミング体質は、正解が1つに決まっている定型業務を効率的にこなす上では、ある程度機能してきました。しかし外部環境が激しく変化し、過去の成功体験が通用しなくなった現代においては、この体質は致命的な弱点となります。

正解がわからない状況では、多様な意見をぶつけ合い、試行錯誤を重ねる中でしか新しい道を見出すことはできません。フォーミング体質は、その試行錯誤のプロセス、すなわち第2ステージ(ストーミング)へ移行すること自体を拒絶してしまうのです。

さらに厄介なのは、1度は成功してチーム化した組織でさえ、環境の変化によってこのフォーミングの状態に「逆戻り」してしまうことがあるという点です。

例えば、新しいメンバーが加わったり、事業内容が変化したり、あるいは競合の出現によって従来のやり方が通用しなくなったりした場合、チームは再び「そもそも我々は何をすべきか」という原点から考え直す必要に迫られます。これは、実質的に第1ステージに戻っている状態です。

ここでフォーミング体質が顔を出すと、組織は変化に対応できず、過去の成功体験に固執したまま衰退していくことになります。

この根深い体質を克服するためには、リーダーが意識的に行動を変える必要があります。対立を恐れず、むしろ健全な議論を奨励する。メンバーが安心して意見を言える心理的安全性を確保した上で、チーム全体の課題として議論を深めていく。

この地道なプロセスを粘り強く続けることによってのみ、組織はフォーミングの殻を破り、変化に対応できる真の「チーム」へと成長することができるのです。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!