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ベンチャーのマネジメント(全1記事)

ベンチャー企業の成長を加速させるマネジメントの方法 大企業とは異なる目的と、組織の壁を越えるためのステップも紹介 [2/2]

ベンチャー企業が持続的に成長するために

ベンチャー企業が持続的に成長するためには、行き当たりばったりの人材育成ではなく、計画的にメンバーを育て、組織力を高めていく仕組みが不可欠です。そのカギを握るのが、メンバーのスキルから考えると難易度は高いものの、失敗しても大きな問題にはならないためにチャレンジさせやすい仕事の活用です。

計画的に人を育てるには、このような機会を意図的に創出することが極めて重要になります。しかし、リソースが常に不足しているベンチャーにおいて、このような仕事は、そもそも存在しないことが多いのが実情です。そんな中でおすすめの方法の1つが、「重点育成対象」を定め、1人のマネージャーあたり1〜3人程度に絞って集中的に育成することです。

育成目標を設定し、進捗を管理しながら、具体的な行動計画を進めていきます。そして、月に1度でもマネージャー同士で各々の育成対象者の進捗を共有し合う場を設けることができれば、組織全体として「人が育つ会社」へと近づいていくことができるでしょう。

また引用でも語られているように、組織化を進める上では、育成だけでなく採用も重要です。特に、新しく入社したメンバーがいかに早く活躍できるかは、企業の成長速度に直結します。そのためには、オンボーディングのプロセスにおいて「初期の成果」を意図的にデザインすることが求められます。

短期間で達成可能な具体的な成果を設定し、それを達成させることで、本人は信頼と自信を得て、さらなる成功への好循環に入ることができるのです。

組織の壁を乗り越えるためのマネジメントステップ

企業の成長は一直線に進むものではなく、特定の従業員数に達した段階で成長が鈍化する、いわゆる「組織の壁」に直面します。特にベンチャー・成長企業では、「100人の壁」や「300人の壁」といった言葉がよく使われます。これらの壁の正体は、組織の成長段階に応じてマネジメントのスタイルを変革できなかったことに起因する場合がほとんどです。

ラリー・グライナーが提唱した企業成長の5段階モデルは、この現象を理解する上で非常に示唆に富んでいます。このモデルでは、企業は「創造性による成長」から始まり、成長の過程で「リーダーシップの危機」や「自主性の危機」といったさまざまな危機を乗り越えながら、マネジメントのスタイルを進化させていくとされています。

このモデルにおける5つのマネジメントステップは、以下のように続きます。

1.創造
2.指示(行動でマネジメント)
3.権限委譲
4.調整
5.協業(文化でマネジメント)

多くのベンチャー経営者は、自らが縛られることを嫌う傾向があるため、ステップ2の「指示(行動でマネジメント)」やステップ4の「調整」といった、ある種の集権化や仕組み化を伴うステップを飛ばしがちです。創業者による創造(ステップ1)から、いきなり権限委譲(ステップ3)や文化でのマネジメント(ステップ5)に移行しようとするのです。

この飛ばされたステップこそが、「100人の壁」や「300人の壁」の正体であると考えられると、株式会社人材研究所 代表の曽和利光氏は語ります。

「100人の壁」は、多くの場合、ステップ2の「行動でマネジメント」ができていないことに起因します。PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成し、事業を拡大していくフェーズでは、「これが勝ちパターンだ」という型が見つかります。この段階で求められるのは、個々の自由な試行錯誤ではなく、その勝ちパターンを組織全体で徹底的に実行することです。

しかしこれを怠り、いきなり成果(結果)で縛る権限委譲に進むと、成果がまばらになり、できる人とできない人の差が激しくなり、組織は疲弊してしまいます。

同様に「300人の壁」は、ステップ4の「調整によるマネジメント」が欠如していることに関連していると考えられます。部門が増えて組織が複雑化してくると、各部門の自律的な活動だけでは全社的な最適化が図れなくなります。ここで部門間の連携を促し、全体として機能させるための「調整」という集権的な仕組みが必要になるのです。

ベンチャーのマネージャーは、自社が今どの成長段階にあり、次にどのマネジメントスタイルへの移行が求められているのかを冷静に見極める必要があります。時には、自由な文化とは逆行するように見える「仕組み化」や「標準化」といったステップを意図的に踏む勇気が、組織の壁を乗り越えるためには不可欠なのです。

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