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ベンチャーのマネジメント(全1記事)

ベンチャー企業の成長を加速させるマネジメントの方法 大企業とは異なる目的と、組織の壁を越えるためのステップも紹介 [1/2]

【3行要約】
・ベンチャー企業と大企業ではマネジメントの目的が大きく異なります。
・ベンチャーでは企業の成長段階によって4つの役割の比重が変わり、これらをきちんと進めることが100人・300人の壁を乗り越えるカギとなります。
・マネージャーは経験やセンスに頼るのではなく、目標設定・戦略方針などを学び、訓練することで成果を最大化できます。

ベンチャーと大企業で異なる「マネジメントの目的」

ベンチャー企業と一般的に大手企業と呼ばれるような安定した組織とでは、マネジメントに求められる目的そのものが大きく異なります。この違いを理解することが、ベンチャーにおける効果的なマネジメントを実践する上での第1歩となります。

安定した組織、すなわち事業基盤が強固で、環境の変化が比較的緩やかな大企業では、マネジメントは「内乱を抑える」側面が強くなります。すでに築き上げた領土を守り、豊かにしていくことが主眼となるため、組織内の規律や秩序を維持し、ハレーションを防ぐことが重視される傾向にあります。

人事においても、抜擢によるリスクよりも年功序列のような無難な選択がなされがちです。

一方で、ベンチャー企業は急成長を志向し、常に激しい環境変化にさらされています。事業基盤もまだ盤石とは言えず、まさに外敵だらけの中で生き残りをかけて戦っている状態です。このような状況下では、「勝利にこだわるマネジメント」が不可欠となると、株式会社EVeM CEOの長村禎庸氏は語ります。

内乱を恐れていては、そもそも村が滅ぼされてしまうかもしれません。とにかく一番強い人間が前に出て戦う、という姿勢が求められるのです。この「勝利にこだわるマネジメント」と「内乱を抑えるマネジメント」は、似て非なるものだと認識する必要があると長村氏は言います。

ベンチャーのマネージャーは、この「勝利」という目的に向かってチームを導かなければなりません。例えば、1度発表した方針であっても、状況が変わり「このままでは目標達成は厳しい」と判断すれば、当初の方針をためらわずに捨て、新しい方針に切り替える柔軟性が求められます。

トップダウンで一方的に指示を出すスタイルも、ベンチャーには合いません。正解がない中でイノベーションを生み出すためには、現場の意見を積極的に取り入れ、チーム全体で最善手を探していく姿勢が重要になります。

大手企業で規律や命令系統を重視するマネジメントを経験してきた人がベンチャーに転職すると、この文化の違いに直面し、自身のやり方がフィットしないと感じることが少なくありません。マネジメントという行為の概要は同じでも、その目的と手法は、組織が置かれた状況によってまったく異なるのです。

ベンチャー企業におけるマネージャーの4つの役割

ベンチャー企業におけるマネージャーの役割は、単にチームの短期的な成果を出すことだけにとどまりません。経営者から業務を委託された存在として、より多角的で中長期的な視点を持つことが求められます。

株式会社EVeM CEOの長村禎庸氏によると、その役割は大きくつに収斂されると考えられ、これらはマネージャーが担うべきミッションの全体像を示しています。

1つ目は、経営陣からオーダーされた成果、つまり短期的な目標を達成する責任があります。チームに与えられたミッションを完遂し、結果を残すことがマネージャーの基本となります。

2つ目は「活用」です。これは、会社から与えられたリソース、すなわちチームメンバー個々人の能力、意欲を最大限に引き出し、持続的に高いパフォーマンスを発揮できる状態を作ることです。メンバーが能力を活かせず、ただ傍観しているような状態では、チームの力は最大化されません。

3つ目は「育成」です。採用やメンバーの育成を通じて、チーム全体の力量を高めることを意味します。会社が成長していく中で、新たな成長領域に人材を輩出したり、自身の後任を育てたりすることも含まれます。チームの力が定常的なままでは、中長期的な成長は見込めません。

そして4つ目が「調整」です。会社が大きくなるにつれて、部署間の連携は不可欠になります。自分のチームが他の部署と円滑に連携し、全社的な業務の流れをスムーズにするための調整能力が求められます。
まず、経営陣からオーダーされた成果を残しましょう、というのが基本だと思います。「今クォーターは、この結果を必ず残してください」と言われれば、「やります」「残します」と言う。それがやっぱりいいと思います。

あとはメンバーの活用。会社から与えられたリソースが5人なら、成果を大きくするために、その5人を最大限に活用するというのがあると思います。あとは、会社はどんどん成長していくので、成長領域に人を出せるようにすること。あるいは、成長領域に自分のリソースを投下できるように、自分の後任をきちんと育てましょうというのがあると思います。

最後は調整ですね。会社がどんどん大きくなっていくと、部署間連携が常に発生します。自分のチームが他の部署とうまく連携できるよう調整スキルを身につけてくださいというのがあると思います。

大きい会社だと、「育成は人事がやる仕事じゃないんですか」「調整は経営企画がやってくれるんじゃないんですか」といった声が出そうですが、ベンチャーはそこを自分でやらないといけないんですね。

引用:トップダウン型のマネジメントが、ベンチャーに合わない理由 マネージャー経験者が、スタートアップに転職して直面する壁(ログミーBusiness)

これらの4つの役割は、企業の成長ステージによって求められる比重が変化すると長村氏は言います。例えば、創業間もないシードステージの企業では、とにかく足元の成果を出す「執行」にほぼすべての比重が置かれます。

しかし、組織が拡大しIPO手前くらいのステージになると、「執行」が8割、「活用」が15パーセント、「育成(伸張)」が5パーセントといったように、他の役割の重要度も増してきます。さらに、メガベンチャーと呼ばれる規模になると、部署間の連携が複雑化し、「調整」の比重も高まり、4つの役割が均等に求められるようになります。

ベンチャーのマネージャーは、自社が今どのステージにあり、自身にどの役割がどの程度の比重で期待されているのかを常に意識し、経営陣とすり合わせながら行動することが極めて重要です。

チームのパフォーマンスを向上させる「目標設定」

ベンチャーのマネジメントにおいて、チームを勝利に導くための羅針盤となるのが「目標設定」と「戦略方針」です。これらを適切に設定し、運用することができなければ、チームは日々の業務に忙殺されるだけで、大きな成果を生み出すことはできません。

まず「目標設定」についてですが、これはチームのパフォーマンスを向上させる「カンフル剤」のようなものであるべきです。100パーセント達成が保証されているような保守的な目標では、チームの創意工夫は生まれにくくなります。

目標には、ある程度の野心的な挑戦性が必要です。設定した時点では達成方法が70パーセント程度しか見えていなくても問題なく、残りの30パーセントの「余白」こそが、チームの知恵と努力を引き出し、成果を最大化するカギとなります。

したがって、「絶対に達成できるのか」という問いは、目標設定の本質から少しずれていると言えます。野心的な目標を掲げ、その挑戦を組織として評価する文化を醸成することが、継続的な成長には不可欠です。

また、目標を設定する際には、その表現方法にも注意が必要です。目標は、行動(Do)ではなく、ある期間の終了時点での状態(Be)を示す「状態目標」として設定することが重要です。

例えば、「MVPを開発する」という行動目標では、達成状態が不明確です。「MVPの開発と検証が完了している」といった状態を目標にすることで、達成度合いが明確になります。これは定性目標においても同様で、達成度合いをS、A、B、Cのようにランク分けし、週次で進捗を可視化できるように定義することで、チームは迷わずに取り組むことができます。

目標を達成するための道筋「戦略方針」

次に、設定した目標を達成するための道筋が「戦略方針」です。これは、「最小の工数で目標を達成するための方法や方向性」を示すものです。リソースが限られるベンチャーにおいて、何が重要かを選別し、そこに集中投下するための指針となります。

戦略方針は、具体的なアクションそのものではなく、「どういう方向性で」達成するのかを示す、ほど良い抽象度を持つことが重要です。例えば、「YouTubeチャンネルを立ち上げてグロースさせるという方向性」といった具合です。この「方向性」が示されることで、メンバーは自律的に具体的なアクションを考え、実行できるようになります。

良い戦略方針は、業務の取捨選択を迫るものです。例えば、「デジタルマーケティングに振り切る」という方針を立てたなら、これまで注力してきたリアルイベントは開催しない、という決断が必要になるかもしれません。それは時に、メンバーのアサインメント変更といった残酷な結論を伴うこともあります。しかし、それくらいの覚悟を持って方針を立てなければ、本当に重要なアクションをあぶり出すことはできません。

戦略方針は、客観的な事実に基づいて策定され、マネージャー個人の好き嫌いや過去の経験に囚われてはなりません。常に鋭い方針を目指すべきです。

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