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マルチタスク(全1記事)

マルチタスクが得意な人と苦手な人の違いとは? 仕事の生産性をあげる「シングルタスク」的思考術 [2/2]

マルチタスクが苦手な人の心理的特徴

複数の仕事を前にして、何から手をつけていいかわからなくなり、パニック状態に陥ってしまう人には、いくつかの共通した心理的特徴が見られます。これらの特徴は、個人の能力の問題というよりも、思考の癖や物事の捉え方に起因することが多いです。

1つは、「完璧主義」の傾向です。1つひとつの仕事に対して高いクオリティを求め、ミスを極端に恐れるため、なかなか次のタスクに移ることができません。すべてのタスクを完璧にこなさなければならないというプレッシャーが、思考の柔軟性を奪い、優先順位付けを困難にさせます。

また、「こだわりが強い」ことも特徴の1つです。自分のやり方や手順に固執するあまり、状況に応じた臨機応変な対応が苦手な場合があります。予期せぬタスクが割り込んできた際に、計画が崩れることへのストレスを感じやすく、思考が停止してしまうことがあります。

さらに、多くの人に共通するのが、「お尻に火がつかないと行動できない」という心理です。これは、危機感が現実味を帯びてこないと、物事の重要性をリアルに感じられない「臨場感」の問題と関係しています。

F太氏は、高校3年生の冬になってようやく受験勉強を始めた自身の経験を振り返り、ギリギリにならないと将来のことを真剣に考えられない癖があったと語っています。

このように、完璧主義、強いこだわり、そして臨場感の欠如といった心理的特徴が複合的に絡み合うことで、複数のタスクを前にした際の思考の混乱やパニックが引き起こされるのです。

マルチタスクによる思考の混乱から抜け出すために

マルチタスクによる思考の混乱や生産性の低下から抜け出し、目の前の仕事に集中するためには、具体的な時間術を身につけることが非常に有効です。

多くのタスクに追われていると、私たちは時間を管理しているつもりでも、実は時間に追われる状態に陥りがちです。そこで重要になるのが、意識的に「集中するための時間」を作り出すという考え方です。

その1つとして、「1日を2つに分ける」という方法をF太氏は紹介しています。これは、1日の時間をゲームにおける「準備フェーズ」と「ゲームフェーズ」のように捉えるアプローチです。

「ゲームフェーズ」とは、実際に仕事に取り組み、成果を出す時間です。一方で「準備フェーズ」とは、その日の仕事(ゲーム)を円滑に進めるために、段取りを整え、思考を整理するための時間です。この準備の時間を、1日の中で「神聖な時間」として意識的に確保することがポイントです。

例えば始業前の30分をカフェで過ごし、その日のタスクを洗い出して優先順位をつけたり、懸念事項をメモに書き出したりする。この「作戦会議」のような時間を持つことで、仕事中に発生するさまざまな雑念や悩みに対して、「今は考えない。準備フェーズで確保した時間に考えよう」と、うまく先送り(ペンディング)することができるようになります。

このペンディングは、単なる先延ばしとは異なります。思考を放棄するのではなく、「後でじっくり考える時間」をあらかじめ確保しておくことで、安心して目の前のタスクに集中できるのです。

ゲームに集中できるのは、その前にキャラクターを育成したり、装備を整えたりする準備の時間があるからこそ、という理屈と同じです。

この準備フェーズを設けるタイミングとしては、1日の始まりである朝が最も効果的とされています。朝のうちにその日の見通しを立てることで、心に余裕が生まれ、自信を持って仕事を進めることができます。

最初は15分でも良いので「自分自身を整えるための時間」を意図的に設けることで、私たちはタスクの波に飲み込まれるのではなく、主体的にタスクをコントロールする感覚を取り戻すことができます。

生産性を高めるための7つの習慣

最後に、グロービス経営大学院の鈴木麻希氏が語る、仕事の生産性が高い人々に共通する思考様式や行動習慣を紹介しましょう。これらは特別な才能ではなく、意識することで誰もが身につけることができるものです。

ここでは、生産性を高めるための代表的な7つの特徴を習慣として捉え、日々の業務に活かすヒントを探ります。

1つ目に「常に生産性を強く意識している」ことです。どんなに小さな業務であっても、「投入する労力(インプット)を最小限に抑え、いかに成果(アウトプット)を最大化できるか」を自然に考えています。この姿勢が、あらゆる行動の質を高める土台となります。

2つ目に、「優先順位をつけるのがうまい」ことです。すべてのタスクを均等に扱うのではなく、最終的な成果へのインパクトが大きい業務を見極め、そこにリソースを集中させます。重要でないと判断したタスクは思い切って後回しにする、あるいは「やらない」という選択も厭いません。

3つ目に、「情報の整理を徹底している」ことです。必要な情報や資料を必要な時にすぐに取り出せるように、デスクトップやフォルダ、デジタルツールを駆使して整理整頓しています。情報を探すという非生産的な時間を徹底的に排除するのです。

4つ目に、「インプットの量が多い」こと。業務に直接関わる知識だけでなく、幅広い分野にアンテナを張り、多様な情報を吸収しています。これが、新たな発想や効率的なアプローチを生み出す源泉となります。

5つ目に、「時間管理能力と集中力がある」こと。マルチタスクを避け、1つのタスクに集中する時間を意識的に作り出します。

6つ目に、「議論をまとめる力」です。会議などの場で、目的から逸れずに結論を導き、チーム全体の生産性を高めることに貢献します。

そして最後に、「高い目標を掲げている」こと。現状維持に満足せず、常に一段上のアウトプットを目指す姿勢が、自身の生産性を見直し、改善し続ける原動力となるのです。

これらの習慣は、マルチタスクに振り回されることなく、主体的に仕事をコントロールするための強力な武器となるでしょう。

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