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パワーポイント資料の作り方(全1記事)

伝わるパワポ(パワーポイント)資料の作り方 構成・デザインの考え方から手戻りを増やさないコツまで紹介 [1/2]

【3行要約】
・パワーポイント資料作成では、見た目より「問いに答える」思考が重要です。
・「誰に、何を伝え、どうなってほしいか」を明確にし、大きな問いから小さな問いへと分解をしましょう。
・各問いに2行以内で端的に答え、新聞のような文字のメリハリと色の適切な使用で、伝わる資料を作成できます。

パワーポイント資料を作る時の本質は「問いに答える」こと

パワーポイント資料の作成の際、多くのビジネスパーソンがまずパワーポイントを起動し、白紙のスライドを前にしてデザインやレイアウトから考え始めてしまいます。しかし、これは手戻りや修正の無限ループに陥る典型的なパターンです。

資料とは、突き詰めれば「問題解決の道具」だとうねり株式会社 代表取締役の豊間根青地氏は語ります。どのような資料であっても、必ずそこには「聴き手」が存在し、その聴き手は何かしらの課題や疑問、つまり「問い」を持っています。資料作成の目的は、その問いに対して明確な「答え」を提示し、聴き手の現状から理想の状態へと導くことにあるのです。

例えば、社内での新規プロジェクト提案資料を考えてみましょう。この場合の聴き手は決裁者であり、その最大の問いは「なぜこの予算を承認するべきなのか?」です。この問いに対し、作り手は「なぜなら、このプロジェクトは弊社の重要課題を解決する優れた企画だからです」という答えを、データやロジックを用いて説得力のあるかたちで提示しなければなりません。この「問いと答え」の構造こそが、資料全体の骨子となります。

手戻りが多い資料は、この最も抽象的で根幹となる「問い」と「答え」の設計が曖昧なまま、具体的なスライドデザインという「伝わりやすさ」の部分だけで議論が進んでしまうケースがほとんどです。

作り手も上司も「なんとなくわかりづらい」という感覚的な指摘に終始し、「文字を大きくしよう」「色を減らそう」といった表層的な修正を繰り返してしまいます。しかし、問題の本質は、デザイン以前の論理構造にあることが多いのです。

したがって、資料作成の第1歩はパワーポイントを開くことではありません。この資料が「誰の、どのような問いに答えるためのものなのか」を徹底的に考えることから始める必要があります。

この抽象的な段階で関係者との認識を合わせることが、後のプロセスをスムーズに進め、手戻りを防ぐための最も重要な鍵となります。

パワーポイントの資料作成時、まずは聴き手とゴールを言語化する

パワーポイントで資料作成を始めるにあたって、最初に明確にすべきは「誰に、何を伝え、どのような状態になってほしいのか」という聴き手とゴールの設定だと豊間根青地氏は語ります。

このプロセスを省略していきなりスライドを作り始めると、自己満足的な、誰の心にも響かない資料が完成してしまいます。

「プレゼンテーション」という言葉は、実は「プレゼント」と語源が同じです。どちらも「前に(プレ)差し出す(セント)」という意味を持ち、自分の手元にあるものを相手に渡すという行為を示唆しています。

プレゼントを贈る際、相手の好みや状況を考えずに、自分が贈りたいものやラッピングのデザインから考える人はいません。それと同様にプレゼンテーションもまた、聴き手という相手がいて初めて成立するコミュニケーションなのです。

したがって、資料作成は常に聴き手からスタートしなければなりません。聴き手がどのような人物で、どのような知識や関心を持ち、何を期待しているのかを深く洞察することが不可欠です。その上で、その資料を通じて聴き手にどうなってほしいのか、具体的なゴールを言語化する必要があります。

このゴールは、大きく3つの種類に分類して考えることができます。

・行動の変化
予算を承認してもらう、商品を購入してもらう、提案に同意してもらうなど、聴き手に具体的なアクションを起こしてもらうことを目指すゴールです。提案資料の多くは、この行動の変化を最終目的とします。

・状態の変化
内容を正しく理解してもらう、現状に納得してもらう、知識を習得してもらうなど、聴き手の認識や理解レベルを変化させることを目指すゴールです。報告書やマニュアルなどは、この状態の変化が主目的となります。

・感情の変化
ワクワクしてもらう、感動してもらう、共感してもらうなど、聴き手の感情に働きかけることを目指すゴールです。イベントのオープニングやコンセプト説明など、場の雰囲気作りが重要な場面で設定されます。

これらのゴールのうち、何を主目的に据えるのかを明確に定義し、それを1行の文章で書き出す作業は、資料全体の方向性を決定づける極めて重要なステップです。
聴き手とゴールとサマリー。聴き手とゴールを明確に1行で書くことすら意外と難しいんですね。ちゃんと言葉にする。形にして、頭の中だけでとどめないのがすごく重要です。

引用:営業資料や企画書、報告書の「構成」はググってパクるでいい 資料作成のプロが解説する、章立ての考案よりも大切なこと(ログミーBusiness)

頭の中で曖昧に考えるのではなく、明確な言葉として書き出すことで思考は整理され、資料作成のブレない軸が定まります。この地道な言語化の作業こそが、伝わる資料作りの出発点となるのです。

「大きな問い」から分解して構成を設計する

聴き手とゴールが明確になったら、次はそのゴールに到達するために聴き手が抱くであろう「問い」を設計していきましょう。この問いの設計こそが、資料全体の構成、すなわちストーリーラインそのものとなります。

ここで重要なのは、いきなり細かな問いから考えるのではなく、「大きな問い」から段階的に分解していくというアプローチです。

前述のとおり、資料とは聴き手の「なぜ?」に答えるためのものです。しかし、この大きな問いにいきなり答えることは簡単ではありません。そこで、この大きな問いを、いくつかの「章の問い」に分解します。

記事「きびだんごをあげるから鬼退治を手伝って、をプレゼンすると… フォロワー12万人のプロが教える、伝わるパワポ資料の作り方」で紹介された、桃太郎が動物たちに鬼退治への協力をプレゼンする架空の資料、「桃太郎パワポ」を例にとると、「なぜこのサービスに登録すべきか?」という大きな問いは、以下の3つの章の問いに分解されています。

1. どんな課題から生まれたのか?
2. 具体的にどんなサービスなのか?
3. どうすればそのサービスに登録できるのか?

このように、まず大きな情報の塊を作ることで話の全体像が整理され、聴き手は論理の流れを追いやすくなります。

この「章立て」をゼロから考案する必要はありません。「営業資料 構成」「企画書 構成」といったキーワードで検索すれば、実績のある定型パターンが数多く見つかります。

近年ではChatGPTのような生成AIに「こういう聴き手をこういうゴールに導きたいのだが、どのような章立てが良いか?」と尋ねるのも非常に有効な手段です。重要なのは、独自性よりも、まず論理的な情報の塊を作ることです。

章の問いが決まったら、次にそれをさらに具体的な「スライドの問い」へと分解していきます。これは、各章の中で具体的に何に答えれば聴き手が納得するかを考えるプロセスです。

例えば、「どんな課題から生まれたのか?」という章の問いは、さらに以下のようなスライドの問いにブレイクダウンできます。

1.現在、何が問題になっているのか?
2.その問題の深刻さを示すデータはあるか?
3.我々はふだんどんな事業を行っているのか?
4.その事業における課題は何か?
5.取り巻く環境にはどんな問題があるか?

このように、大きな問いから小さな問いへと階層的に分解していくことで、資料全体の論理構造が明確になります。

断片的な情報や個別のスライドから作り始めてしまうと、全体として何が言いたいのかわからない、一貫性のない資料になってしまいます。必ず、抽象度の高い大きな問いから具体化していくという順番を守ることが、説得力のある構成を設計する上での鉄則です。

このプロセスを通じて、各スライドが答えるべき問いが明確になり、載せるべき情報が自ずと見えてくるのです。

「問い」には2行以内で答える

パワーポイント資料の構成、すなわち「答えるべき問い」のリストが完成したら、次はその一つひとつの問いに対して「答え」を整理していくステップに移ります。ここで最も重要な原則は、各問いに対して「2行以内の短い文章で端的に答える」ことです。

多くの人が陥りがちなのは、質問に対して結論から述べず、背景や経緯、前提条件などを長々と説明し始めてしまうことです。

例えば、「この案件の進捗は順調ですか?」という問いに対し、「田中さんが先週休暇でして、代理店との調整は済んでいるのですが…」といった具合に話し始める人がいます。これでは、聞き手は「で、結局どうなのか?」と苛立ちを感じ、話の要点をつかむことができません。

資料作成においても同様の事態が発生します。せっかくスライドごとに答えるべき問いを設計したにもかかわらず、その答えが長文の解説に埋もれてしまっていては、聴き手は情報を整理するために多大な労力を強いられます。これでは、伝わる資料とは到底言えません。

この問題を避けるために、まずは各問いに対して「はい/いいえ」「順調です/課題があります」「〇〇です」といったかたちで、シンプルかつ明確に答えを記述する習慣をつけましょう。

これは、自分のスタンスを明確に示す行為であり、ある種の勇気が求められます。しかし、この軸となる答えを最初に定めることで思考が整理され、その後の情報整理が格段に効率化されます。

端的な答えを記述したら、次にその答えに説得力を持たせるための「根拠」を付け加えていきます。ここで有効なのが、自分自身に対してツッコミを入れることだと豊間根青地氏は語ります。

例えば、「この施策で高品質・低価格を実現します」という答えを記述したとします。これだけでは、聴き手は「本当か?」と疑問に思うでしょう。そこで、「なぜ高品質・低価格だと言えるんですか?」「具体的にはどういう仕組みなんですか?」といったツッコミを投げかけるのです。この自己ツッコミに対して答える情報こそが、集めるべき根拠となります。

・なぜ?(Why so?)・・・理由や原因を問うツッコミ。
・具体的には?・・・ 詳細や方法を問うツッコミ。
・だから何?(So what?)・・・結論や示唆を問うツッコミ。
・要するに?・・・抽象化や要約を問うツッコミ。

これらのツッコミを活用し、最初に提示した端的な答えを補強していくことで、論理に厚みが生まれます。

この「答え」と「根拠」の整理には、「階層箇条書き」を用いるのが極めて効果的です。見出しとなる「答え」を書き、その下に1段字下げ(インデント)して根拠となる情報を箇条書きで並べることで、パワーポイントのスライドを作らずとも、テキストだけで論理の階層構造を可視化できます。

この作業をWordやメモ帳で行うことで、後のスライド化の工程が驚くほどスムーズになるのです。

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